エアコンを設置するためには専用のコンセントが必要です。基本的に通常のコンセントで代用したり、延長コードを使ったりすることはできません。
他の電化製品のコンセントを誤って差し込まないよう、エアコン専用のコンセントは違う形状になっています。
エアコンを使うのに専用のコンセントが必要な理由
エアコンは電気製品の中でも電力の使用量が多い機器です。このため通常のコンセントでは運転に必要な電力を供給しきれず、ブレーカーが落ちやすくなります。
またエアコンの運転中はケーブル内を大量の電気が流れ続けている状態です。
エアコンのケーブルを通常のコンセントに挿していると、同じコンセントを使っている他の電気製品にもたくさんの電気が流れて、故障してしまうかもしれません。
強い電流によってケーブルやコンセントが熱くなり、火災を起こす危険もあります。エアコンを快適に、そして安全に使うためにも、安定した電力を供給できる専用のコンセントが必要なのです。
現在販売されているエアコンは、専用のコンセントがないと設置できないようになっています。
通常のコンセントとの違い
ただしコンセントの数だけ回路があるのではなく、ひとつの回路を複数のコンセントが共有しています。
通常のコンセントは、このように電力を分け合う形で成り立っているため、ひとつ当たりの電力量が少なめ。
一度に大量の電力を流したり回路が同じコンセントを同時に使ったりすると、ブレーカーが落ちることもあります。
電子レンジやドライヤーなどを一気に使ってブレーカーが落ち、部屋が真っ暗になるということを誰でも1回は経験しますよね。
一方でエアコン専用コンセントには専用の回路が割り当てられ、他のコンセントと電力を分け合うことなく単独で使えるので、エアコンの運転に必要な大量の電力を確保できるのです。
エアコン専用コンセントの見分け方
エアコン用のコンセントがどれなのかが分からない状態では、購入を検討できません。
通常のコンセントとエアコン用コンセントを見分けるためには、まず「壁の上側」を見て、次に「コンセントの形状」を見ます。
具体的に見ていきましょう。
位置と形状
エアコン用コンセントを見分けるポイントは「付いている位置」と「形状」です。
通常のコンセントは壁の下の方に付いていますが、エアコン用コンセントは壁の上の方に付いています。エアコンの電源コードは短いため、コードが届く範囲に設置しているのです。
またエアコン用コンセントは穴の形状も特徴的です。通常は縦長の穴が2つですが、エアコン用には穴が3つあります。
通常は2~3個あるプラグの差し込み口も、エアコン用にはひとつしかありません。
ただし稀に、壁の上の方にあるにもかかわらずエアコン用ではないコンセントもあります。また古い建物の場合、エアコン用となっていても専用回路ではないケースがあるので注意が必要です。
間違えるとブレーカーが落ちたり、故障・発火の危険が高まったりするため、自分で見分けられない場合は専門業者に確認してもらいましょう。
形状が異なる理由
エアコン用コンセントの形状が通常のものと異なる理由は、電圧の種類にあります。
家庭用のコンセントには100V用と200V用の2種類があり、一般的な家電製品には100V用、エアコンのような使用電力が大きな製品には200V用のコンセントを使うのが基本です。
もしコンセントの穴が全て同じ形状だと、100Vと200Vの見分けがつかずどのコンセントを使えばよいのか分からなくなってしまいます。
接続の間違いによる故障や事故を防ぐために、あえて形状を変えているのです。
コンセントの電圧と使用電力が合っていないと故障の原因になるだけでなく、火災などの大事故につながる可能性もあるため注意しましょう。
エアコン専用コンセントの形状の種類
ひと口にエアコンといっても機種によって使用電力が違います。全部で4種類の形状があるため、間違えないように注意しましょう。
エアコンの適応畳数 | 形状 | |
100V 15A | 6~8畳 | 縦の穴が2つ |
100V 20A | 10~12畳 | 片方の穴がL字 |
200V 15A | 14畳以上 | 穴が3つ |
200V 20A | 16畳以上 | バラバラな形の穴が3つ |
リビングなどの広い部屋を冷やせるタイプは200Vですが、狭い部屋に適した100Vタイプのエアコンもあり、一概にはいえません。
また、同じ家でも部屋によってコンセントの形状や電圧が違うことも、十分あり得るのです。
そのほか、200Vと100Vはどちらもアンペア数によってさらに2種類に分かれており、穴の形状も違います。
コンセントの形状と対応可能なエアコンとの関係を見ていきましょう。
一般的な100V 15A用
100V 15A用は通常のコンセントと同じく、縦長の穴が2つ平行に並んだ形状です。
流れる電気の量は通常のコンセントと同じで、エアコン以外の電気製品にも使えます。
その代わり、冷暖房のパワーはそれほど強くありません。6~8畳程度の狭い部屋に付いていることが多いコンセントです。
単身用の1LDKなどに設置されているエアコンには、この形状に対応している型がついている場合が多く、見た事がある人も多いタイプといえるでしょう。
片方がL字になった100V 20A用
100V 20A用は寝室や広めの子ども部屋など、10~12畳の部屋で見かけるタイプです。
縦の穴がふたつあり、片方がアルファベットLやTを横向きにしたような形状になっています。
2人暮らしでも使えるような広めのリビングダイニングを持つ部屋や、ファミリー向けの部屋にも多く使われているのがこのタイプです。
3つの穴が開いた200V 15A用
200V 15A用は、主に14畳以上の部屋で使われるコンセントです。
上に横長の穴がふたつ、下には半円形の穴があり、目を閉じた人の顔のようにも見える形をしています。
半円形の穴は、漏電事故を防ぐための「接地極」です。高い電力でも対応できる耐久性を備えているタイプのコンセントといえます。
3つの異なる穴が開いた200V 20A用
200V20A用も穴がみっつのコンセントですが、穴の形状が全て違うのが特徴的です。
下の穴は15Aと同じく半円形の接地極で、上の穴は片方横長でもう片方がL字型になっています。
エアコンの中でも使用電力量が多い、16畳以上の製品に対応可能です。
200Vのコンセントを使うのに必要な条件
12畳以上の広い部屋に対応したエアコンを設置するためには、200Vの専用コンセントが必要です。
ただし全ての家で200V用コンセントが使えるわけではありません。契約している電気量を見直したり、分電盤を交換したりしないと使えないケースもあります。
200Vを使うのに必要な条件は何か、具体的に見ていきましょう。
電圧線が単相三線式である
200Vのコンセントを使うためには電圧線が「単相三線式」でなければなりません。築年数の浅い家なら基本的には単相三線式になっているはずですが、古い家は単相二線式の可能性があります。
心配な人は、分電盤に接続されている電気配線の本数をチェックしてみましょう。
赤・白・黒の3本がそろっていれば、単相三線式です。白と黒の2本しかない場合は単相二線式なので、電圧変換の工事が必要になります。
契約電気容量は30A以上か
エアコンを不具合なく使用するためには、30A(アンペア)以上の電流が必要です。
前述したとおり、エアコン1台に必要な電力は15A、20Aなどです。もし同時にドライヤーを使ったり、2台以上のエアコンをつかったりすると、30A以下ではブレーカーが落ちてしまいます。
分電盤を見て「30A」やもっと大きい数字の表記があるか確認しましょう。契約電気量を色で判別している分電盤もあるので、表記がない場合は電力会社に確認しましょう。
「電気ご使用量のお知らせ(検針票)」や領収書からも契約電気容量を確認できます。
ただし地域や電力会社によっては、アンペアごとの契約ではないことも。自宅の契約プランを確認しましょう。
分電盤に「専用回路」があること
エアコンは多くの電力を使うため、1台毎に他のコンセントとは別の専用回路が必要です。分電盤の中に「エアコン」と書かれたブレーカーがあれば専用回路なので、問題なく使用できます。
専用回路がない場合も、空いている回路があれば簡単な工事だけで使えるようになります。エアコン専用回路も空いている回路もない場合は、分電盤を増設しなければなりません。
エアコン専用コンセントがない場合は新設工事が必要
エアコンを付けたい部屋に専用コンセントがないときは、増設する以外に方法はありません。分電盤の回路が空いているなら、2万円程で増設工事が可能です。
ただしエアコン用のコンセントは専用回路を使用するため、分電盤から直接コンセントまでケーブルをつなぐ必要があります。
分電盤は廊下や玄関に設置されていることが多く、ケーブルを通すためにドアや壁に穴を開けざるを得ないケースもあります。自宅を売却するときや賃貸住宅を退去するときに、元に戻すための修理費用がかかる可能性もあり注意が必要です。
コンセント工事はほとんどの場合短時間で終わりますが、古い家では大規模な工事が必要になるケースもあります。エアコンを使いたい時期に間に合うように、余裕を持って行動しましょう。
形状が合わない場合はコンセントの交換で対応可能
エアコンの電源プラグと専用コンセントの形状が合わない場合は、コンセントを交換すれば使えるようになります。
200V 15A用と200V 20A用のように電圧が同じで穴の形状が違うだけなら、数千円で交換可能です。
100V用と200V用のように電圧が異なる場合は、電圧を変更するための工事が加わります。電圧線が単相三線式なら配線を入れ替えるだけですから、費用はそれほどかかりません。
コンセントの増設も交換も、基本的にはエアコンの設置と同時に施工できます。購入時にコンセントの状況を伝えて、工事内容や料金について確認しておきましょう。
別途電圧交換工事が必要なケースもある
電圧線が単相二線式の家は元々100Vの電源しか使えません。コンセントを200V用に変更する場合は、外部から200V用の電線を引き込む大がかりな工事が必要です。
工事に伴い電力メーターやブレーカーも交換しなければならず、費用も時間もかかります。200Vのエアコンを設置する際は慎重に検討しましょう。
延長コードは危険なので使わない
エアコンは専用コンセントのすぐ近くに設置するのが基本です。しかしインテリアや風向きなどの理由で、延長コードを使って違う場所に設置したいと思う人も多いのではないでしょうか。
エアコンは大量の電力を使うため、一般的な延長コードでは電流に耐えられず発火する危険があります。
ホームセンターなどに行くとエアコン専用の延長コードを入手できますが、長期間の使用に耐えられる保証はありません。
コンセントから離して設置したい場合は延長コードを使わず、コンセントの位置を変えるか、増設するようにしましょう。
エアコン専用コンセントの増設にかかる費用の目安
エアコン用コンセントの増設や電圧交換工事は、電気工事の資格を持つ専門業者でなければできません。業者に依頼するとどのくらいの費用がかかるのか、不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
エアコンのコンセント工事の内容は、大きく分けて以下の3種類です。
- 専用コンセントの増設
- 形状の違うコンセントに交換
- コンセントの電圧変更
コンセントがない場所に増設する場合は、分電盤のエアコン専用回路から天井裏などを使ってケーブルを通す必要があります。施工に手間がかかるので、費用も高めです。
またエアコン設置当日にあわせてコンセント工事ができるよう、事前に業者と相談しておきましょう。設置工事とコンセント工事を別の日におこなうと、そのぶん出張費用がかかります。
専用コンセントの増設
そもそもエアコンの電源コードを挿せるコンセントが無いとき、新しく増設する必要があります。
専用コンセントの増設にかかる費用は、分電盤からコンセントまでの距離や、壁に穴を開けるかどうかによって変わるものです。
最低でも12,000~16,000円程の費用がかかると考えておきましょう。
形状の違うコンセントに交換
コンセントの形状交換は、2,000~3,000円程度で工事可能です。使用するエアコンの電源コードにあわせて、適した形状のコンセントに替えます。
エアコンの設置当日に「コンセントの形が合わない」ことが判明しても、必要な部品が足りなくて作業できず、二度手間になる可能性があります。
あらかじめコンセントの形状や、使用する電圧、アンペア数などを確認して業者に伝えておきましょう。
コンセントの電圧変更
コンセントの電圧変更は、2,000~5,000円程度で工事できます。
日本で100Vから200Vに変更するときには、「単相三線式」という、3本の電線を引きこむ工事が一般的です。
エアコンの出力にあわせて、電気のアンペア数を上げることで、コンセントが使用できるようになります。
工事にかかる時間は、一般家庭で数時間、オフィス規模でも1日程度と短めです。
賃貸物件でエアコン専用コンセントがないときの対処法
賃貸物件に住んでいる人は、エアコンの新設や買い換えを検討する前に管理会社に連絡しましょう。
エアコンが必要と判断されれば、設置費用等を管理会社が負担してくれるかもしれません。
むしろ勝手にエアコンを設置したりコンセントを交換したりすると、退去時にトラブルに発展する可能性があります。先に連絡を入れることで、無用な出費やもめ事を避けられるでしょう。
エアコンを設置する前に確認すること
室内機・室外機の位置はどこにするか
エアコンを設置する際は、コンセントが近くにあるか、室外機の場所から近いか、といった点に注意しながら位置を決めます。
新しいエアコンを購入する前に、望む場所に取り付けることができるかどうかを確認しましょう。
賃貸の場合は、原状回復のことを考えておく
賃貸の部屋に新しくエアコンを取り付ける場合、大家さんや管理会社に確認をとる必要があります。
もし確認を取らずに、勝手に自分でエアコンを設置すると、原状回復(入居前の状態に戻す)のために費用がかかってしまいます。
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