自宅のコンセントをDIYで増設する場合、電気配線を扱う作業が必要なため、電気工事士の資格が必要です。電気工事士の資格が必要な理由や、知識がない人がコンセント増設作業を行うリスク、有資格者が作業にあたる際の手順などについて解説します。
自宅のコンセント増設にも資格が必要となる
コンセントを増設する際には、『電気工事士』の資格が必要です。「自宅だから大丈夫だろう」と考えて自分で増設すると、さまざまなリスクが生じます。電気工事士の資格がない場合は、必ず業者に依頼しましょう。
電気工事士の資格が必要な理由
電気工事士とは電気設備の設置や移動などの工事に必要な国家資格で、一般住宅の配線工事をする際に必要です。コンセント増設は電気工事なので、電気工事士の資格者が行うよう『電気工事法』で定められています。
無資格で行った場合は電気工事士法違反に該当し、3カ月以下の懲役または3万円以下の罰金が科せられます。自宅の配線工事でも例外ではありません。
電気工事士の資格が必要となる作業は、コンセント増設や交換のほかに、照明器具の移設・交換、防犯カメラの設置など、電線の接続が発生する作業です。
電気工事士二種の資格があればDIYで可能な作業が増えるため、趣味で取得する人もいます。
知識なしでコンセントを増設するリスク
コンセントや電線を扱う作業を安全に進めるためには、適切な工具や部材を使用し、正確な手順で行わなければなりません。資格や知識がない人がコンセントの増設工事を行うと、法律違反になるだけでなく、さまざまな事故のリスクが生じるためです。
例えばコンセントを正しい位置に配置できないと、配線が熱を持ち、ショートの原因になります。また配線の被膜の扱いを間違えると、感電事故につながる恐れがあります。
資格や知識がない人がコンセント増設のような配線作業を行うと、ショートや漏電、感電から火災や事故のリスクが高まるため、必ず有資格者に作業を依頼しましょう。
コンセント増設にかかる工事費用
コンセント増設を業者に依頼する場合の、工事費用について紹介します。
作業内容 | 費用相場 |
---|---|
コンセントの差込口増設 | 5,000~1万円 |
既存配線の延長・分岐 | 7,000~2万円 |
分電盤から新しく配線を引いて増設 | 1万5,000~2万円 |
コンセント増設にあたって天井裏や壁の中に配線を隠したい場合、天井や壁などに穴をあける工事が発生するケースもあります。その場合は料金が加算されるため、見積もり時に確認しておきましょう。
DIYでコンセントを増設する手順
電気工事士の資格を持っておりDIYに挑戦してみたい、という方向けにコンセントを増設する方法について解説します。
上の動画も分かりやすいので参考にしてみてください。
コンセント増設に必要な道具
コンセントを増設する際に必要な道具は以下の通りです。必要な道具はホームセンターでそろえることができます。ドライバーなどの道具をすでに持っているという方は購入する必要はありません。
- コンセントの本体
- コンセントのカバープレート
- パネルボックス
- ケーブル(VVF線)
- ペンチ
- 壁の穴開け用のカッター、引き回しノコギリ
- ドライバー(マイナス・プラス)
- 水平器
ドライバーなどが家にある場合、コンセント本体やケーブルなどそれぞれ安価なものを揃えたとして、3,000~4,000円が目安です。
ドライバーやペンチ、カッターなどの工具も揃える場合は5,000~7,000円ほどが目安となります。
コンセントを増設する手順
コンセント増設のDIYは、以下の手順で進めてください。
手順①:ブレーカーを落としておく
感電事故などのリスクをなくすために、回路のブレーカーを落としてから作業しましょう。
手順②:既存のコンセントを取り外す
まずは既存のコンセントを取り外しましょう。プレート部分は手で両端をつかむとカンタンに取れますが、プラスチックが破損しないように優しく扱ってください。
壁内にはパネルボックスなどがネジで固定されているので、すべてドライバーで緩めて取り外しましょう。
手順③:増設箇所の壁に穴を開ける
増設箇所の壁に穴をあけましょう。穴を開ける場所と既存のコンセントとの距離を測っておき、増設用に購入したVVFケーブルの長さが足りるかどうかをしっかり確認してください。
穴を開ける位置が決まったら、水平器を使って仮設置してみて、切る場所にマジックペンなどで目印を付けます。
ペンで記した場所に沿って、引き回しのこぎりやボードのこぎり、ハンマーカッターなどで穴を開けましょう。
手順④:既存コンセントから渡り配線する
既存コンセントから電源を分岐するために、増設用に購入したVVFケーブルを使って渡り配線をします。
ケーブルの絶縁被膜を10cmほどカットして、黒と白の芯を出してください。それぞれの黒い被膜と白い被膜は、コンセントに差すぶんの長さだけ剥きます。
コンセントの裏に「ストリップゲージ」という凹みがあるので、そこに合わせるとちょうどよい長さになる仕様です。
VVFケーブルの絶縁被覆を剥くと、白と黒の線が2本出てきます。
コンセントの裏側を見てW(またはN)と書いてある穴に白い線、反対側に黒い線を差し込んでください。
間違って配線してしまった場合は引っ張っても抜けません。マイナスドライバーで「電線はずし穴」を押すと外すことができるので、配線しなおしましょう。
手順⑤:壁にコンセントを取り付ける
コンセント本体を軽くネジで止めたら、水平器を使って水平かどうかを確認しましょう。確認出来たら、コンセントをネジできちんと締めて完成です。
コンセントは左側の穴の方が長く、右側の方が短い作りになっています。コンセントの上下がわからなくなってしまった場合には、2つの穴の長さを確認し、正しい状態で取り付けましょう。
手順⑥:既存のコンセントを設置しなおす
増設するコンセントの設置が終わったら、渡り配線のために取り外した既存のコンセントを取り付けなおしましょう。
このときも水平器を使い、また上下の向きに気を付けて設置してください。
手順⑦:通電を確認する
増設したコンセントも既存のコンセントも設置できたら、ブレーカーを上げて通電を確認しましょう。
ためしに電化製品などを差し込んで、両方のコンセントが使用可能か、すべての差し込み口から電気が通っているか確認してください。
コンセントを増設するとメリットが大きい場所
コンセントから離れた場所にある電化製品を使う場合は、延長コードが必要になります。多くの電化製品を使用している場所が、タコ足配線になっているケースも多いでしょう。コンセントを増設すればこうした状況を解消でき、快適に電化製品を使えるようになります。
寝室・子ども部屋
スマホで目覚ましのアラームをかけて、寝ている間に枕元で充電する人も多いでしょう。そのため寝室にコンセントを増設すると、利便性が高まります。USBの充電口が付いているコンセントなら変換アダプタが不要なので、コンセントの周辺がすっきりします。
スマホだけでなく電源式の目覚まし時計やベッドサイドライトなどを使う場合も、枕元にコンセントがあると便利です。
子ども部屋はデスク照明だけでなく、学習で使うPCやタブレット用の電源も必要です。デスク周辺にコンセントを増設すると、タコ足配線を解消できます。
キッチン
キッチンは冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、食洗機、ポット、ミキサーなど、多くの家電製品を使用するため、コンセントが不足しがちです。特に電子レンジや食洗器などは消費電力が大きいので、専用のコンセントを用意するのがおすすめです。
しかし水がかかる場所にコンセントを設置すると、感電のリスクが生じます。キッチンのコンセントを増設するのであれば、水場から離れた場所にしましょう。
屋外
高圧洗浄機や生垣バリカンの使用時や、防犯カメラやセンサーライトの設置など、屋外で電力を必要とする機会は多いため、防水タイプのコンセントを増設するのも一案です。電気自動車の充電設備や給湯器を設置する場合は、専用のコンセントが必要です。
屋外にコンセントを増設する場合、屋内のコンセントから延長する、分電盤から配線を引くなどの方法があります。
配線の状況に合わせて増設する必要がある上、屋外は屋内よりコンセント増設の難易度が高い傾向にあるので、業者に依頼する場合は見積もり時にしっかり相談しましょう。
リビング
リビングはテレビ、ゲーム機、空気清浄機、掃除機、暖房器具など、多くの電化製品を使用する場所です。
テレビを設置したい場所からコンセントが遠いと、延長コードを使わなければなりません。DVD・ブルーレイなどのレコーダーや、スピーカーなどの周辺機器を設置したい場合は、延長コードがタコ足配線になってしまうでしょう。
その場合は口数が多いコンセントを増設し、電源タップを活用すれば、配線がすっきりします。
コンセントの増設は資格を持つプロに任せよう
コンセント増設のように電気配線を扱う作業を行う際には、電気工事士の資格が必要であると電気工事士法で定められています。電気工事士は電気設備の設置や移動などの工事に必要な、国家資格です。
自宅だからといって、資格や知識がない人がコンセントの増設作業を行うと、法律違反になるだけでなく、ショートや感電など事故のリスクが高まります。
安全にコンセントを増設するためにも、作業は必ず有資格者が行いましょう。資格がない場合は業者に依頼する必要があります。