エアコンを取り付けるには室内機(エアコン本体)と室外機をつなぐ配管を通すための配管穴が必要です。
配管穴は壁に直接開けるもので、エアコンを取り付けたい場所に配管穴がなければ新たに開けなくてはなりません。
配管穴を開ける費用相場や工事の内容、依頼前の注意点などを解説します。
エアコン取り付けに必須の「穴あけ工事」とは?
エアコンは室外機と室内機の両方がセットになって室温の調整を行っています。
室外機と室内機は冷媒ガスを行き来させるための配管でつながっており、配管を通すための穴が配管穴(スリーブ穴)です。
配管穴には室内機内部で発生した水分を屋外に排出するためのドレンホースも通します。
木造の壁であれば内径70mmの穴を開けると配管類を通せます。
一般的にエアコン本体の背後に隠れるように開けられるので、一度エアコンを設置するとなかなか目につかない部分です。
穴あけ工事が必要になるケース
新しくエアコンを設置するとき、配管穴が開いていなければ穴あけ工事が必要です。
古いエアコンと交換で取り付ける場合は、配管穴に配管等を通せるなら工事は必要ありません。
新しく家を建てるときは、建築時点で適切な位置に配管穴を開けることが多いです。
建築時点で穴あけを行うことで建物へのダメージを最小限に抑えて施工できるメリットがあります。
穴あけ工事の費用相場は?
エアコン取り付け業者に依頼をしたら、穴あけ工事も含めた「標準工事」が提供されることがほとんどです。
標準工事に含まれることが多い内容を以下にまとめました。
- 室内機の取り付け
- 室外機の取り付け
- 穴あけ工事(1か所まで)
- 配管・電線の接続(4mまで)
- 真空引き(エアパージ)
- 試運転
標準工事は10,000~15,000円ほどが相場価格です。
ただし業者によって標準工事に含まれる内容は異なります。
見積もりをもらったら必ず標準工事の内容も含めて必要な工事は受けられるのか、料金は適正であるかチェックしましょう。
追加料金が発生するケース
壁の素材が特殊な場合は穴あけ工事に追加費用が発生します。
代表的な壁材と追加費用の目安は以下の通りです。
壁材 | 1か所穴あけ工事の相場 |
---|---|
木材(木造住宅) | 2,000~3,000円 |
モルタル | 2,000~3,000円 |
ALC(軽量気泡コンクリート) | 3,000~4,000円 |
コンクリート | 12,000~15,000円 |
タイル、レンガ | 7,000~9,000円 |
ガルバリウム(金属) | 7,000~9,000円 |
木造住宅やモルタル外壁、ALC外壁は採用している住宅が多いので、業者もノウハウを積んでいます。そのため料金は比較的安くすみます。
コンクリートや金属の壁は施工の難易度が高いため、費用が高額になる点には注意が必要です。
エアコン取り付け費用について、関連記事にも詳細があります。
エアコンの穴あけ工事はどこに依頼するべき?
エアコンの穴あけ工事のみを依頼するのはあまり一般的ではありません。
たいていの場合はエアコンの設置工事を依頼し、その中に穴あけ工事も含まれています。
しかしながら穴あけ工事のみを依頼できる業者もあります。
代表的な例を確認してみましょう。
エアコン取り付け業者
エアコン工事を専門に行っている取り付け業者であれば、穴あけ工事に失敗することはないでしょう。
エアコンを設置したい場所から考えて、どの位置に配管穴を開ければ良いかを考えてくれます。
エアコン工事業者に直接依頼するほか、家電量販店経由で設置を依頼できます。
家電量販店経由で依頼するときは標準工事の内容を確認し、穴あけ工事が含まれているかを必ず確認しましょう。
ハウスメーカーや工務店
新築物件であれば建築を担当したハウスメーカーや工務店に相談しましょう。
図面などの情報があるため、建物の重要な部分を傷つけることなく施工ができます。
今つけたい場所のほかにも、今後エアコンを取り付けるかもしれない場所や部屋にも配管穴を開けておくと、必要になった際にスムーズに取り付け工事をできます。
穴あけ工事を依頼する業者の選び方
穴あけ工事を依頼する業者を選ぶときは、相見積もりをとって業者を比較しましょう。
業者によって得意とする工事の種類は異なるので、価格だけでは分からない業者の強みなどをチェックすることで、依頼してからのミスマッチを減らせます。
施工中の事故に関してどの程度の補償を受けられるかも確認しましょう。損害賠償保険に入っていることが確認出来たら安心材料になります。
口コミや評判、実績数の確認も忘れずにしてください。多くの利用者から高評価をされていて、施工実績が多い業者であれば安心して依頼できます。
穴あけ工事の工程
穴あけ工事は以下の順番で進みます。
美観や配管の保護のために設置する化粧カバー(配管カバー)を設置する場合は、パテで塞いでから行います。
手順1:エアコンの設置位置と穴あけ箇所の目安をつける
まずはエアコンの設置位置を決めます。エアコンの位置が決まらないと配管穴の位置も決められません。
エアコンの設置位置に関しては以下の条件があります。
- エアコン専用コンセントから電源を取れる位置
- 火災報知器から1.5m以上距離がある位置
- 床面から1.8~2.5mの高さの位置
配管穴の位置はエアコン本体よりもやや低い位置にし、勾配をつけることでエアコン内部で発生した結露水を効率よく排出できるようにします。
穴は垂直に開けるのではなく、室外側の穴がやや低くなるように若干の勾配をつけるのが重要です。
エアコンの適切な取り付け位置の情報は関連記事にも記載されています。
手順2:筋交いや柱・電線が通っている場所を確認する
図面を参考に柱や筋交いなど、構造上傷つけてはならないものの周辺を避けて配管穴の位置を決定します。
自分で行う場合は下地探し用のアイテムを使うと効率的にできます。
柱などがなくても電線や配管が通っている可能性があるので、配管穴を開ける位置が決まったからといってすぐに穴あけ作業ができるわけではありません。
手順3:内壁の石膏ボードのみに穴を開ける
穴を開ける位置を決めたら、まず室内側の壁面にのみ穴を開けます。コアドリルを使って石膏ボードに穴を開け、壁が抜けたらすぐに止めます。
配管穴を開ける位置に本当に筋交いや配管がないかを確認するための作業です。
この作業を省いてしまうと筋交いや柱、配管などを傷つけてしまうリスクがあるので、必ずやらなくてはなりません。
手順4:穴の位置に障害物がないことを再確認し外壁に穴を通す
穴の位置に障害物がないことが確認出来たら、外壁にも穴を通します。
室内側が高く、室外側をやや低くして勾配をつけることで、エアコン内部で発生するドレン水を効率よく排水できます。
勾配が逆になっていたり、平行な穴になっていたりするとスムーズに排水ができないので室内機からの水漏れなどのトラブルが発生します。
手順5:スリーブを設置する
穴が貫通したらスリーブを設置します。配管穴をそのままにしておくと、壁材や断熱材がむき出しのままになってしまい、壁の内部の劣化が早まります。
スリーブは結露の発生防止や害虫・害獣の侵入を阻止する重要な役割を持つパーツです。
スリーブを設置したらスリーブ内部と口の周りにコーキングを施します。コーキングをすると気密性が高まるので、エアコンの効率にも関わってきます。
手順6:配管を通しパテで隙間をふさぐ
スリーブに冷媒銅管やドレンホースをまとめた配管類を通し、パテで隙間を埋めます。
冷媒銅管は壁に沿わせるように設置しますが、銅管を傷つけてしまうとガス漏れの原因になります。
手作業で曲げるかチューブベンダーという折り曲げ器具を使って曲げるのが一般的です。
パテで隙間を埋めたら、化粧カバーで配管を覆います。化粧カバーを使わない場合は配管テープを巻いて作業は終了です。
穴あけ工事を依頼するときの注意点
エアコンの取り付けに伴い穴あけ工事を依頼するときは注意点が2つあります。
依頼をしてから後悔しないよう、あらかじめ注意点に当てはまらないかをチェックしておきましょう。
賃貸物件は大家に許可を取ってから行う
賃貸物件はあくまで借り物なので、勝手に穴あけ工事をしてはいけません。大家など物件の所有者に連絡し、工事の許可を取ってください。
大家の連絡先が分からない場合は管理会社に連絡をしましょう。管理会社を経由して施工業者に依頼を出せるケースもあります。
賃貸物件は退去時に原状回復が必須です。無許可で工事を行うと退去時に高額な現状修復費用が請求されることがあるので注意してください。
図面を用意し柱や筋交い・配線の位置を明確にする
穴あけ工事は壁に直接穴を開けるので、壁の内部にある柱や筋交い、配線の位置が分かっていないと大きな事故を誘発します。
自分が所有する物件であれば必ず図面を用意し、柱など傷つけてはいけないものがどこにあるのかを明確にしましょう。
取り付け位置を決めていたものの、配管穴の位置に配線があったため施工当日に計画を練り直すということは珍しくありません。
事前に施工業者へ必要な情報を開示し、どの位置であれば問題なく配管穴を開けられるかをよく相談しておくと良いでしょう。
穴あけ工事を自分で行うのはオススメできない
手先が器用でDIYの経験があるのなら、エアコンの取り付けを自分でやってみようと思われるかもしれません。
しかしながら穴あけ工事を自分で行うのはオススメできません。それには3つの理由があります。
安易に自分で施工を行うことで大きなトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
穴あけ工事を自分で行うことにどのようなリスクがあるのかを確認しましょう。
理由1:建物を損壊するリスクが高い
「配管を通す穴をあけるだけだから簡単」と思うかもしれませんがそんなことはありません。
配管穴の位置は建物にとって重要な筋交いや柱を避けた位置に開けなければなりません。さらに配線や水道管などのインフラ設備を傷つけることはあってはならないことです。
うまい具合に必要な勾配を取った穴をあけられるとも限りません。
建物を傷つけてしまうと安全に暮らしていくことも難しくなるので、穴あけ工事を自分で行うことはおすすめできません。
理由2:費用の節約にはならない
穴あけ工事を自分で行おうと考える人の中には、エアコン取り付け工事費用の節約を目的としている人もいるでしょう。
1か所の穴あけ工事であれば標準工事に含まれていることが多いです。
コアドリルやハンマードリル、貫通スリーブなど必要な道具を揃えるだけで標準工事費用の相場を上回ってしまいます。
節約するつもりがかえって出費が増えてしまうことになるので、業者に依頼してエアコンの取り付けをしてもらった方がコストパフォーマンスが高く、安心です。
理由3:エアコンを壊してしまう可能性がある
一見無事に穴あけに成功したように見えても、細かな部分のミスが原因でエアコンに悪影響を与えてしまうことがあります。
室外に向けて作る勾配はミスの発生しやすいポイントです。勾配が不十分だとドレン水が排水されないだけでなく、逆流してしまいエアコンの電気部品をショートさせてしまう可能性があります。
そのほかにも、たとえば貫通スリーブを設置し忘れた場合、ネズミなどの害獣が入り込んで配線類をかじるなどの被害が発生します。
穴あけせずにエアコンを取り付ける方法
賃貸物件で大家の許可が下りない、設置場所が確保できないなどの理由で穴あけ工事ができないこともあるでしょう。
そのような場合に役立つのが窓用エアコンと窓パネルです。
窓用エアコンと窓パネルは違う悩みを解消できるものなので、自分の置かれている状況に合わせて適したものを選びましょう。
窓用エアコンを設置する
本体背面から空気を取り込み、温度調整した空気を室内に送ります。機構そのものは壁掛けエアコンと大きく変わりません。
価格も30,000~40,000円ほどとリーズナブルな製品が多いので、エアコンが欲しいけれど予算的に厳しいという方にもおすすめです。
以下に窓用エアコンの長所と欠点をまとめます。
窓用エアコンの長所
- 簡単に設置できる
- 本体価格がリーズナブル
窓用エアコンの欠点
- 窓を閉められないので防犯面に不安が残る
- 電気代が高価になりがち
- 動作音が大きい
関連記事ではおすすめの窓用エアコンの紹介や使用時の注意点などを解説しています。あわせてご覧ください。
窓パネルを利用する
窓パネルは配管用の穴を設けたパネルのことで、窓の一部分にはめて使用します。
配管穴を開けなくとも配管類を通せるので、壁を傷つけられないときに用いられる手段です。
パネル1枚あたりの価格も安く、1,000円ほどでネット通販やホームセンターで購入できます。
ただし窓パネルを設置することで、窓を完全に施錠出来なくなるというデメリットがあります。安心して使うには補助錠などを購入し、防犯対策が必須です。
ミツモアでエアコン取り付け業者を探そう
穴あけを含むエアコン取り付け工事を依頼する業者を効率よく見つけるには、一括見積もりサイトがおすすめです。
一括見積もりサイト経由の見積もり依頼であれば、エアコン取り付け業者ははじめから他社を意識した見積書を提出してくれます。
ミツモアでは地域密着型を含め、最大5社からの見積もりを受け取れます。見積もりの比較も簡単にできるので、業者選びに迷うことはありません。