1月1日~12月31日までに得た収入から所得税や住民税などの税金を計算して申告するのが確定申告です。
アルバイトなど給与所得者の場合、勤務先で年末調整をしていれば基本的に確定申告は必要ありません。
しかし年収が103万円を超える人や、以下のケースに当てはまる人は確定申告が必要です。
本記事ではアルバイトで確定申告の対象になるケースから申告のやり方、源泉徴収票がないときの対処法まで解説します。
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
アルバイトで確定申告が必要な4つのケース
確定申告とは個人が負担すべき税金の計算を行い、その税額を納付する手続きです。
アルバイトは基本的に年収が103万円以下であれば、確定申告の義務はありません。アルバイトなどの給与所得者は、給与所得控除額55万円と基礎控除額48万円、総額103万円の控除が適用されるためです。
一方で年収が103万円を超えると確定申告の義務が発生します。とくに次の4つのケースに1つでも当てはまるアルバイトの人は注意が必要です。
また年収が103万円以下であっても、確定申告することで還付を受けられる可能性もあります。
勤務先で年末調整されていない
- 年収が103万円を超える場合:確定申告が必要
- 年収が103万円以下の場合:確定申告は不要(ただし還付の可能性がある)
年末調整とは納めすぎた税金がある場合に勤務先を通じて納付(還付)される仕組みです。
アルバイトなどの給与所得者は、毎月の給料が88,000円を超えると所得税が天引き(源泉徴収)されます。すでに税金を納付している状態のため、自分で確定申告する必要もありません。
ただし年末調整を受けていないと税金が調整されないので、確定申告で納税する、または還付を受ける必要があります。
年末調整を受けるには「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の勤務先への事前提出が必要です。小規模な会社や個人商店などは、この手続きをしていないこともあるため注意しましょう。
【年収が103万円を超えて、年末調整されていない場合】
年収が103万円を超えると所得税がかかります。年末調整されていない人は確定申告のうえ、納税が必要です。
学生アルバイトの場合、勤労学生控除という制度を利用すると所得税がかからない金額を130万円まで増やせます。勤労学生控除は年末調整か確定申告で申請するため、いずれにせよ確定申告が必要です。
ただし学生は103万円を超えた時点で、親の扶養から外れます。親の年収に扶養控除が適用されなくなり、所得税・住民税あわせて何万円も税額が増えることもあるため、103万円を超える可能性がある場合は十分に注意しましょう。
【年収が103万円以下で、年末調整されていない場合】
アルバイトとしての年収が103万円以下であれば、納付すべき所得税はありません。
ただし給料が88,000円を超える月があると所得税が徴収されているため、年末調整しないと税金を納めすぎている可能性があります。
この場合、確定申告をすれば税金が還付される可能性が高いです。
アルバイトを掛け持ちしている
- 年収が103万円を超える場合:掛け持ち先が年収20万円以上だと確定申告が必要
- 年収が103万円以下の場合:確定申告は不要(ただし還付の可能性がある)
複数のアルバイトを掛け持ちしている場合、年末調整ができるのはメインの勤務先1社のみです。
【年収103万円を超えてアルバイトを掛け持ちしている場合】
アルバイトの年収が103万円を超えており、掛け持ち先で20万円を超える年収がある人は確定申告が必要です。納税すべきか、還付を受けられるかは人によって異なります。
掛け持ち先の年収が20万円以下なら確定申告は不要です。ただし、申告することで還付を受けられる可能性があります。
【年収103万円以下でアルバイトを掛け持ちしている場合】
アルバイト掛け持ちでも年収が103万円以下なら、確定申告する必要がありません。ただし源泉徴収をされていたら、確定申告で還付を受けられる可能性があります。
年末までにアルバイトを辞めた
- 年収が103万円を超える場合:確定申告が必要
- 年収が103万円以下の場合:確定申告は不要(ただし還付の可能性がある)
年末調整は年末まで在籍している人が対象です。そのため年内にアルバイトを辞めてしまうと、年末調整を受けられず、確定申告が必要になります。
年内に次の勤務先が見つかった場合は、前の勤務先から受け取った源泉徴収票を新しい勤務先に提出すれば、確定申告する必要はありません。前職分の金額を年末調整の計算に含められるためです。
しかし年内にアルバイトを辞めただけの場合、年末調整はされないままなので確定申告しましょう。
たとえば、アルバイトをしていた人が10月いっぱいで退職すると、その時点で1月~10月に支給された給与の額と源泉徴収された税額が確定します。しかし年末調整されないので、これらの金額を記載した源泉徴収票を受け取るのみです。
この場合も、税金を納めすぎている可能性があるため、確定申告すれば還付を受けられます。受け取った源泉徴収票を使って確定申告をしましょう。
副業での所得が20万円を超える
- 年収が103万円を超える場合:副業所得が20万円を超えたら確定申告が必要
- 年収が103万円以下の場合:確定申告は不要(ただし還付の可能性がある)
アルバイトに限らず、給与所得者の方が副業をして所得を得た場合、副業での所得金額が20万円を超えると確定申告しなければなりません。
たとえばウーバーイーツの配達員の報酬、アフィリエイトやブログの運営で得られた所得(利益)が20万円を超えれば、確定申告が必要です。
一方、所得金額が20万円以下であれば確定申告はしなくても問題ありません。
なお「年末調整を受けていない」「アルバイトを掛け持ちしている」など他の理由で確定申告しなければならない場合は、副業の所得が20万円以下でも確定申告に含める必要があります。
フリマアプリでの不用品売却は所得に含まれない
古着や古本などの不要品をフリマアプリで売却した場合は、生活用動産を売却したものとして非課税となります。そのため、20万円を超える売却収入があっても確定申告は必要ありません。
しかし、転売により所得を得ている場合の利益は課税対象の所得となるので確定申告が必要になります。
なお、30万円を超える骨董品は生活用動産には該当しません。不要品だからとフリマアプリで売却した場合も確定申告する必要があるので高額品売却の際は注意が必要です。
住民税の申告は「20万円ルール」の適用外なので注意が必要
副業による所得が20万円以下であれば確定申告しなくてもいい「20万円ルール」の取扱いは、所得税についてのみ適用されるものです。
住民税についてはこの20万円ルールは適用されず、申告しなければならないため注意が必要です。
アルバイトで年末調整に加えて確定申告するとよいケースも
アルバイトで年末調整をしていても、確定申告をした方がよい場合があります。医療費控除や住宅ローン控除などは、年末調整ではなく確定申告しなければ適用を受けられません。
控除を受けたい場合、忘れずに申告を行いましょう。
- 医療費控除
- 住宅ローン控除の適用初年度
- 寄附金控除(ふるさと納税のワンストップ特例制度が適用できる場合を除く)
- 雑損控除
アルバイトの確定申告のやり方
アルバイト収入の確定申告の流れは以下の通りです。
- 必要書類を用意する
- 確定申告書を作成する
- 申告書を提出する
源泉徴収票など、必要な書類を揃えたうえで申告書を作成していきましょう。
①必要書類を用意する
確定申告をするためには、まず必要な書類を揃えるところから始めます。
- 確定申告書
- 源泉徴収票
- 控除証明書類
- マイナンバーカード
- 本人確認書類
確定申告書
確定申告書には2022年まではAとBの2種類がありましたが、2023年より1種類に統合されました。
アルバイトや、副業をしているサラリーマンの場合も新しい確定申告書を使用しましょう。
確定申告書は国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。
源泉徴収票
勤務先から発行された源泉徴収票を用意します。年度の途中で退職したり転職したりした場合は、元の勤務先から取り寄せておきましょう。
源泉徴収表には以下の内容が記載されています。
①支払金額
②給与所得控除後の金額
③所得控除の額の合計額
④源泉徴収税額
⑤配偶者・扶養親族の情報
⑥社会保険料等の金額
⑦各種控除の金額
源泉徴収票がない場合は、「源泉徴収票がない場合の対処法」をご確認ください。
控除証明書類
社会保険料や生命保険料の控除を受ける場合は、保険会社から発行される控除証明書が必要です。
また、医療費控除を受ける場合は医療費の領収書や保険組合から発行される「医療費のお知らせ」を準備します。
マイナンバーカード
確定申告書には自分のマイナンバーを記載します。マイナンバーカードを持っていない場合は、マイナンバー通知カードや住民票の写しで確認できるようにしておきましょう。
本人確認書類
確定申告書を紙で提出する場合は、本人確認書類としてマイナンバーカードの写しか、マイナンバーを確認できる書類(通知カードか住民票の写し)と運転免許証や保険証などの写しを添付します。
e-taxで電子申告する場合は、本人確認書類の添付は不要です。
②確定申告書の作成
確定申告書には申告書第一表と第二表がありますが、このうち申告書第二表から記入します。
住所や氏名を記入した後、源泉徴収票を見ながら「所得の内訳」に収入金額(源泉徴収票の「支払金額」)、源泉徴収税額を記入します。
勤労学生控除が受けられる学生アルバイトの人は、「本人に関する事項」の「勤労学生」欄にチェックを入れます。
第二表への記入を終えたら、次は第一表に次の手順で記載していきます。
- Aに源泉徴収票の支払金額を記入
- 必要経費として一定の給与所得控除を差し引いた所得金額をBに記入
- 基礎控除や勤労学生控除など適用できる所得控除額をCに記入
- 所得金額から所得控除額を差引き、所得税額表に応じた税率で所得税を計算しDに記入
- 所得税額に2.1%をかけた復興特別所得税額をDに記入
生年月日の1つ目の欄には、平成生まれであれば4、昭和生まれであれば3を記入してください。
国税庁のホームページには、指示に沿って数字を入力していくだけで、税額まで計算し、確定申告書を作成する「確定申告書作成コーナー」もあります。
税率計算など難しいことを考えなくても自動計算してくれるのでおすすめです。
③申告書の提出
確定申告書ができたら、所轄の税務署に提出します。提出方法は次の3種類があります。
- 税務署へ持参
- 税務署に郵送
- e-Tax
マイナンバーカードと、マイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォンがあれば、確定申告のデータをそのまま送信できる電子申告システム「e-Tax」が利用できます。
確定申告書を出力したり、税務署や郵便局にもっていく手間も省けるので便利です。
源泉徴収票がない場合の対処法
確定申告を作成する際には、収入額や源泉徴収額を記入する必要があるので源泉徴収票は不可欠です。
手元に源泉徴収票がなくても勤務先に再発行を依頼したり、勤務先から発行されない場合は税務署に相談したりできるので安心してください。
なくしてしまったら勤務先に再発行を依頼する
源泉徴収票をなくした場合は、勤務先に再発行を依頼しましょう。企業には源泉徴収票の発行、再発行が義務付けられており、通常は、2週間程度で再発行してもらえます。
勤務先でもらえない場合は税務署に相談
役員や従業員に対して報酬や給料を支払った事業者は、1年間の支給総額や源泉徴収税額をまとめて記載した源泉徴収票を交付しなければなりません。しかし中には、源泉徴収票を交付してくれない問題のある事業者もいます。
そのような場合は税務署に相談しましょう。どうしても解決策が見つからない場合は、自身の住所を管轄する税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できます。
届出書を提出する際には、給与明細など実際に給料を支給されていたことを証明する書類を準備しておくと、スムーズに手続きが進められます。
会社の倒産により、源泉徴収票の発行を依頼できない場合は、会社の財産を管理している破産管財人に発行を依頼します。具体的な依頼先が分からない場合は、最寄りの税務署や税理士に相談するのがおすすめです。
アルバイトで確定申告をしないとどうなる?
アルバイトやパートの確定申告では、払いすぎた税金を還付してもらう還付申告が一般的です。けれど、源泉徴収されていない収入がある場合や、副業収入がある場合は、確定申告をして追加納税する必要がある人もいます。
確定申告を忘れることで税金の還付が受けられない場合があります。詳細は「アルバイトで年末調整に加えて確定申告するとよいケースも」をご覧ください。
さらに、確定申告をしないと、無申告加算税や延滞税のペナルティが課されることがあります。
忘れると「無申告加算税」
確定申告をして納税する場合は、いつでも申告書を提出できるわけではありません。確定申告ができるのは、対象となる年の翌年の2月16日~3月15日と決められています。(曜日やその年の事情などで延長される場合もあります)
決められた期間に申告しなかった場合は「無申告」とみなされ、通常の納税額に加え無申告加算税が課せられます。
無申告加算税は納税額50万円までが15%、50万円を超えると20%と高額です。
期限後申告は「延滞税」
確定申告を忘れたことに気づき、税務調査など税務署からの指摘を受ける前に自主申告した場合は期限後申告となります。期限後申告した場合は無申告加算税が軽減されます。
期限後申告の場合、税金の納付期限は当日です。申告した日に納税できなかった場合は、翌日から納付日までの日数に応じた延滞税も課せられます。延滞税は延滞期間が2カ月を超えると税率が高くなります。
2カ月以内に納付した場合、令和3年1月1日から令和3年12月31日までの期間は年2.5%、2カ月を超えると年8.8%になります。
アルバイトで確定申告しなくても済むための3つのポイント
「確定申告は手間がかかりそうだし、できれば避けたい…」と考える方も多いのではないでしょうか。
そんなときは、次の3つのポイントを意識しながらアルバイトをしましょう。
- 年収を103万円以下に抑える
- 年末調整のある会社をバイト先に選ぶ
- 年内にバイトを辞めた場合は年末までに新しい勤務先を見つける
働き方を少し工夫するだけで、確定申告の必要がなくなります。
年収を103万円以下に抑える
アルバイトの年収を103万円以下に抑えれば税金は発生しません。そのため、仮に確定申告していなかったとしても問題とはならないのです。
また、アルバイトの方を他の家族の扶養親族として配偶者控除や扶養控除の適用を受けられるため、家族全体で見たときに最も税負担を軽減できます。
収入金額は自分で調整できるため、確実に確定申告しなくてよくなるのもいい点です。
年末調整のある会社をバイト先に選ぶ
大企業や知名度のある企業など、法令遵守の意識が高いであろう会社で働けば、年末調整に関して正しく対応していることが多いので年末調整を受けられないリスクを回避できます。
通常はアルバイトとして働いていれば年末調整を受けられます。
しかし、年末調整をきちんと行っていない事業者もあるため、誰もが年末調整を受けられるとは限らないので、アルバイト先を選ぶ際に意識するとよいでしょう。
年内にバイトを辞めた場合は年末までに新しい勤務先を見つける
年末調整を受けるためには、年末まで勤務先に在籍していなければなりません。アルバイトの収入を得ているのにその勤務先を辞めてしまうと、年末調整を受けられなくなります。
しかし、年内にアルバイトを辞めてしまったとしても、新しいバイト先でまとめて年末調整をしてくれるので確定申告の必要がなくなるのです。
監修税理士からのコメント
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