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医療費控除とは|対象や申請方法、還付金がいくら戻るのかを解説

最終更新日: 2024年06月28日

医療費控除とは、年間の医療費に応じて受けられる所得控除制度です。主に年間の医療費の金額が10万円を超えると申請できます。家族の医療費も合算することが可能です。

医療費の金額によっては数万円の還付金が戻るケースもあるため、高額な費用がかかった人はぜひ控除を受けましょう。

ただし医療費控除は年末調整で適用できないため、受けるためには確定申告が必要です。

今回は医療費控除の要件や対象となる医療費の例、確定申告で医療費控除を申請する方法について詳しく解説します。

この記事を監修した税理士

京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台

横浜市青葉区を拠点として、中小規模法人のお客様を中心に、税務・会計サービスを提供しております。また、融資の獲得支援や経営に関するコンサルティングなど、中小企業の経営支援にも積極的に取り組んでおりますので、お気軽にお問い合わせをいただければと存じます。

医療費控除とは?対象期間や対象者

聴診器と錠剤と電卓

医療費控除とは年間の医療費が一定金額を超えた際、その額に応じた所得控除が受けられる制度です。1月1月から12月31日までの期間に支払った医療費が対象で、家族を含めて1年間に支払った医療費の一部を所得から控除できます

医療費控除を受けるためには確定申告が必要です。年末調整では受けられないので注意しましょう。

1年間の医療費が主に10万円を超えると受けられる

【医療費控除の対象になる金額】

  • 年間所得が200万円以上の場合:10万円を超えた費用
  • 年間所得が200万円未満の場合:所得の5%を超えた費用

医療費控除は1年間の医療費が上記の条件にあてはまる場合に対象となります。年間医療費が10万円以下の場合でも、所得金額が少ない場合は対象となることがあるので、自分が対象となるかついて必ず確認するようにしましょう。

医療費控除による控除額の計算式は以下の通りです。

(実際に払った医療費の合計額-保険金などにより補てんされる金額)-10万円(注)

(注)その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5パーセントの金額

たとえば医療費の総額が50万円で、保険金などによる補てん額が0円ですべて自費で支払った場合、「50万円-10万円=40万円」となり10万円を超えた部分である40万円が医療費控除の対象です。

なお年間所得が200万円未満の場合は、医療費のうち所得の5%を超える部分が医療費控除の対象となります。

家族の医療費を合計し、まとめて適用できる

医療費控除は本人の分だけでなく、生計を同一にする家族の分もまとめて控除することが可能です。

「生計を同一にする」は同居している必要はなく、遠くで暮らしている祖母や単身赴任中の父親の分もまとめられます。

最も所得の高い人がまとめて控除を申請すると良いでしょう。所得税は累進課税方式なので最も所得の高い人が控除を受けることで、より効率的に節税ができます。

セルフメディケーション税制なら1万2000円以上の市販薬購入でOK

セルフメディケーション税制とは、薬局やドラッグストアで購入した対象医薬品にかかった費用を控除できる制度です。処方箋なしで買える市販の薬の購入費が対象であり、医薬品の購入費が1万2000円を超えた場合に控除を受けられます。

セルフメディケーション税制は医療費控除の特例であり、通常の医療費控除よりも利用しやすい制度です。

医療費控除の要件を満たしていなくても、セルフメディケーション税制であれば控除を受けられる可能性があります。医療費控除との併用はできないため注意しましょう。

医療費控除の対象になる費用は?

歯医者で治療を受ける男性

医療費控除には入院費や治療費はもちろん、通院や治療に関連する交通費や薬などの金額も含まれます。

一般的に含まれる医療費控除の対象をまとめました。より詳しく知りたい人は、以下の記事も参照ください。

対象となるもの

病気の治療に必要だとみなされた費用は基本的に医療費控除の対象として扱われます。

治療費等
  • 診療費・治療費
  • 出産費用
  • 視力回復手術費用
  • 柔道整復師にかかる際などの施術費用
交通費
  • 通院の際に必要となる交通費
  • タクシー費(公共交通機関が利用できなかったなどの事情がある場合)
医療器具・医薬品等
  • 義手や松葉づえなどの医療器具
  • 治療に必要な医薬品

対象にならないもの

病気の治療ではない、予防や美容で支払った費用は基本的に医療費控除の対象としては扱われません。

治療費等
  • 美容整形などにかかる費用
  • 美容を目的とした歯列矯正など
  • 疲労回復を目的としたマッサージなどにかかる費用
  • 健康診断などにかかる費用(大きな疾病が見つからなかった場合)
交通費
  • 自家用車のガソリン代や駐車場代
  • 必ずしも必要でない場合のタクシー費
  • 出産に際しての里帰りにかかる費用
医療器具・医薬品等
  • 疾病の治療に関わらない補聴器などの医療器具の購入費用
  • 予防や健康維持のための医薬品の購入費用

入院費や診療費、治療費

入院費や診療費、治療費は基本的に医療費控除に含まれます。対象になる支出の具体例は以下です。

  • 診療・治療の対価
  • 医師等の送迎費
  • 入院時の部屋代や食事代
  • 医療器具の購入費やレンタル費
  • 義手・義足・補聴器・眼鏡・松葉づえ等の購入費
  • 治療に必要な医薬品の購入費
  • 治療のための柔道整復師等による施術の対価

以下のような費用は医療費控除の対象になりません。治療や診療のために直接必要であった費用のみが医療費控除の対象になります。

  • 自身や家族都合による個室入院の差額ベッド代
  • 入院中にとる食事のうち、病院から支給された以外のもの
  • 治療と無関係の眼鏡や補聴器等の購入費
  • 病気の予防や健康増進を目的とした医薬品代
  • 疾病の発見がされなかった人間ドックや健康診断の費用

出産費用、不妊治療

出産費用や不妊治療にかかった費用は医療費控除の対象です。具体的な例を紹介します。

  • 妊娠の診断を受けてからの検診や検査費用
  • 出産による入院のために利用したタクシー代
  • 助産師による分べんの介助の対価
  • 不妊症の治療費や人工授精等の費用
  • 出産にともなう入院中に支払う部屋代や食事代

なお入院に際して購入した身の回り品の費用や入院中の外食費等は、医療費控除の対象外です。里帰りの交通費も対象になりません。

出産費用の医療費控除については以下の記事で詳しく解説しています。

視力回復やインプラント手術

眼科や歯科で受ける治療について、医療費控除の対象となるのは目や歯の治療に関する対価のみです。視力回復やインプラント手術の費用は、医療費控除の対象となります。

視力回復治療に関する費用のうち、医療費控除の対象となる支出の例は主に以下の2つです。

  • レーシック手術の費用
  • オルソケラトロジー(角膜矯正療法)

眼鏡やコンタクトの購入費は、視力回復の治療の対価ではないため医療費控除の対象となりません。ただし治療のために必要であり、医師の指示で用いる場合は医療費控除の対象となります。

人工歯根を埋め込むインプラント手術は、基本的に医療費控除の対象です。ただし、美容目的の場合は医療費控除の対象になりません。

通院の際の交通費

通院の際にかかった交通費のうち、以下の費用は医療費控除の対象になります。

  • バスや電車などの公共交通機関
  • 公共交通機関を利用できない場合に使うタクシー代
  • 付き添いの交通費(患者1人で通院できない場合のみ)

原則として、以下の交通費は医療費控除の対象外です。

  • 必ずしも必要でない場合のタクシー代
  • 自家用車のガソリン代や駐車料金
  • 出産に際する里帰りにかかった費用

医療費控除の対象となる交通費については以下の記事で詳しく解説しています。

OTC医薬品(セルフメディケーション税制利用時のみ)

OTC医薬品とは、ドラッグストア等で医師の処方箋がなくても購入できる一般医薬品です。OTC医薬品は通常の医療費控除ではなく、セルフメディケーション税制を利用する場合に控除対象となります。

なお、すべてのOTC医薬品がセルフメディケーション税制の対象となるわけではありません。控除対象となるのは以下いずれかの要件を満たす医薬品のみです。

  • スイッチOTC医薬品(医療用医薬品から一般医薬品に転用された薬)
  • セルフメディケーション税制対象品目として指定されている医薬品

セルフメディケーション税制の対象となる医薬品の種類は、厚生労働省の公式サイトの案内をご確認ください。

美容整形や歯列矯正、マッサージ

原則として、美容整形や審美目的の歯列矯正、リラクゼーション目的のマッサージは医療費控除の対象外です。医療費控除の対象となるのは、治療や診療に直接必要とした費用のみとなります。

言い換えると、治療目的の行為であれば歯列矯正やマッサージも医療費控除の対象です。医療費控除の対象となる歯列矯正の例として以下の2つが挙げられます。

  • 発音がしにくい・食事に支障がある等、機能的な問題から歯列矯正が必要と判断された場合
  • 不正咬合により発育過程での成長阻害が懸念されるために子どもの歯列矯正を行った場合

医療費控除で還付金はいくら戻る?計算方法を解説

【医療費控除の還付金の計算方法】

医療費控除の還付金額の計算

医療費控除の還付金は以下の手順で求められます。

  1. 医療費総額を計算
  2. 医療費控除額を計算
  3. 医療費控除額と所得税率を参照して還付額を計算

確定申告には時間も手間もかかります。労力に見合った還付金が返ってくるかどうか計算してみましょう。

1.1年間に払った医療費の総額を計算する

1年間の医療費総額を計算します。家族の医療費も合算したい場合には、ここで合わせて計算します。

健康保険組合などから送付される医療費通知書などがあれば、医療費総額を確認することができるため有効活用しましょう。

2.医療費控除の対象額を計算する

医療費控除の対象額を計算します。計算方法は申請者の年間所得によって異なります。医療に対して保険金などが発生した場合には、その額も差し引いて計算しましょう。

<総所得金額が200万円以上の場合>

医療費の総額から控除対象外となる10万円を差し引く

【例:医療費総額50万円、保険金額5万円の場合】

50万円-10万円-5万円=35万円

(医療費総額)-(控除対象外の金額)-(保険金額)=(医療費控除額)

<総所得金額が200万円より少ない場合>

医療費総額から所得の5%にあたる額を差し引く

【例:総所得金額100万円、医療費総額20万円、保険金額2万円の場合】

20万円-5万円-2万円=13万円

(医療費総額)-(総所得金額の5%)-(保険金額)=(医療費控除額)

3.医療費控除額と所得税率を参照して還付額を計算する

計算で算出した医療費控除額に所得税率を掛けることで還付額を算出できます。所得税率は以下の表のように個人の所得に応じて決定されます。

課税される所得金額 税率
195万円以下 5%
195万円を超え 330万円以下 10%
330万円を超え 695万円以下 20%
695万円を超え 900万円以下 23%
900万円を超え 1,800万円以下 33%
1,800万円を超え4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

参考:所得税の税率|国税庁

還付金の計算例【課税所得が250万円の人の場合】

具体例とともに、還付金の計算をシミュレーションしてみましょう。ここでは、年間医療費が20万円のケースと50万円のケースで解説します。

課税所得250万円の人の所得税率は10%です。

【医療費総額20万円、保険金額5万円の場合】

<医療費控除額>

20万円-10万円-5万円=5万円

<還付金>

5万円×10%=5000円

【例:医療費総額50万円、保険金額5万円の場合】

<医療費控除額>

50万円-10万円-5万円=35万円 

<還付金>

35万円×10%=3万5000円

計算結果からもわかるように、医療費総額が高ければ高いほど還付金も多くなります。

還付金の計算はシミュレーションツールがおすすめ

「計算をせずにもっと簡単に具体的な金額を知りたい」あなたにおすすめのツールが「医療費控除の計算(簡易シミュレーション)」です。

医療費控除額や所得税の還付金に加えて、住民税の減税額や還付金額と減税額の合計も表示されるため、より具体的な医療費控除の金額を把握できます。

利用に際しての登録なども不要で、年間の医療費と所得を入力するだけで簡単に計算を行うことができます。医療費控除に関する金額をさらに詳しく知りたいという方には最適のツールとなっています。

医療費控除でかえってくる還付金の早見表【所得別】

確定申告を行った際に還付金が大体いくら戻るかが分かるように、医療費控除の還付金を表にまとめました。「計算がめんどくさい」「おおよその金額が分かればよい」という人はぜひ参考にしてみてください。

課税所得金額 所得税率 医療費総額20万円 医療費総額30万円 医療費総額50万円
200万円 10% 1万円 2万円 4万円
400万円 20% 2万円 4万円 8万円
600万円 20% 2万円 4万円 8万円
800万円 23% 2万3千円 4.6万円 9万2千円
1000万円 33% 3万3千円 6.6万円 13万2千円
2000万円 40% 4万円 8万円 16万円

なおこの表は、保険金などによる差し引きはないものとしています。他の控除を適用させた金額を知りたい場合は、シミュレーションツールを利用すると良いでしょう。

医療費控除を確定申告するとき必要な書類

医療費控除に必要な書類を解説

医療費控除の必要書類は、確定申告のやり方によって異なります。各書類をしっかり確認したうえで申請手続きを行いましょう。

医療費控除の申請で必要な各書類の詳しい説明や書き方は、以下で解説しています。

医療費控除の必要書類

提出が必要な書類 保管が必要な書類
スマホやパソコンで申告(e-Taxを利用)の場合
  • 確定申告書
    ※e-Taxで作成し、そのまま電子で提出します。
  • 医療費控除の明細書【内訳書】
  • 医療費の領収書
    ※5年間の保存が必要です。
  • 医療費通知(医療費のお知らせ)
  • 医療費に係る使用証明書等(おむつ証明書など)

e-Taxの場合、医療費控除の明細書に必要情報を記入すれば、医療費通知や各種証明書の添付を省略できます。

確定申告書を紙で提出する場合
  • 確定申告書
  • 医療費控除の明細書【内訳書】
  • 医療費通知(医療費のお知らせ)
  • 医療費に係る使用証明書等(おむつ証明書など)
  • 医療費の領収書

医療費控除の明細書は、国税局のサイトからダウンロードできます。

医療費通知書は国民が加入している健康保険組合から送付される、医療費に関する情報が記載された書類です。加入している健康保険組合によって書類の見た目は異なるので注意しましょう。

医療費通知書を前述の医療費控除の明細書に添付することで、明細書の記入手順を省略できます。

なお医療費の領収書は添付する必要はありません。ただし5年間の保存が義務付けられているため、必ず保管しておきましょう。

医療費控除の確定申告を簡単に終わらせる方法

医療費控除の手続きの流れを解説します

医療費控除の適用を受けるためには確定申告が必要です。医療費控除は年末調整での適用ができないため、年末調整を受けた人でも確定申告を行う必要があります。

医療費控除の申請期限、すなわち確定申告の期限は、所得税の申告義務の有無によって異なります。

所得税の申告義務がある人は、受付期間である2月16日〜3月15日に確定申告が必要です。還付申告のみの場合なら、その年の翌年1月1日から5年間であれば提出ができます

スマホやパソコンでの申請が便利

医療費控除の申請をスマホやパソコンで行うと提出書類が少なく済むため便利です。e-Taxを利用した申請には以下4つの方法があります。

  • 医療費通知情報をマイナポータル経由で取得する(医療費通知のxmlデータを利用する)
  • 書面の医療費通知を利用して入力する
  • 書面の医療費領収書から入力する
  • 療費集計フォームを作成し、確定申告書等作成コーナーの医療費控除の入力画面で読み込む

最も手軽な方法は、1つめの「医療費通知情報をマイナポータル経由で取得する」やり方です。ただし、事前にマイナポータルの連携を行う必要があります。

マイナポータル連携を利用した医療費控除の入力方法は、以下の動画で詳しく解説されています。

紙で提出する場合の申請方法

続いて、確定申告書を紙で提出する場合の医療費控除の申請方法を紹介します。大まかな流れは以下の通りです。

  1. 医療費控除の申請に必要な書類を用意する
  2. 「医療費控除の明細書【内訳書】」に必要事項を記入する
  3. 「医療費控除の明細書【内訳書】」の「医療費控除額」(G)欄の数字を、確定申告書第一表の「医療費控除」㉗欄に転記する
  4. 必要書類を税務署に持参、または郵送して提出する

確定申告書を紙で提出する場合の具体的な書き方は、以下の記事で詳しく解説しています。

医療費控除を受けたい人は確定申告をしよう!

医療費控除を受けるには確定申告が必要です。年末調整では受けることができません。

「普段は会社で年末調整をしている」といったサラリーマンの方でも、医療費控除を受けたい場合は確定申告で申請する必要があります。

うっかり医療費控除を申請するのを忘れて、損しないように注意しましょう。

確定申告に強い税理士を探す

監修税理士からのコメント

京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台

医療費控除を受けるには確定申告が必要となるため、普段確定申告になじみのない会社員の方にはハードルが高く感じるかもしれません。国税庁の確定申告に関するインターネットサイト等において必要な手続きが分かりやすく解説されているので、やり方がよく分からないという方は参考にしてください。また、どうしても自分ではできない場合は、税務の専門家である税理士に相談すると良いでしょう。

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