医療費控除は確定申告を行なって自ら申告しないと、税制の優遇が受けられない仕組みです。年間10万円を超える医療費を支払っている人は医療費控除の対象となる可能性が高く、知らないまま放置していると損をしてしまうことも。
「医療費控除の申告はいつまでにすればよいのか」とお悩みのあなたのために、医療費控除の期限や、さかのぼって申告する方法を解説します。
この記事を監修した税理士
風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川
医療費控除の申請期限はいつまで?
医療費控除の申請期限は確定申告と同様に翌年の「3月15日」までです。例えば2022年に支払った分の医療費を控除したい場合は、2023年3月15日までに申告しましょう。
また確定申告の期限を過ぎてしまった場合でも、医療費控除は「5年以内」なら後からさかのぼって申告が可能です。そのため、2022年に支払った分の医療費は2027年12月31日まで申請できます。
原則、期限は確定申告と同じで翌年の「3月15日」まで
医療費控除は年末調整で受けられないので、控除を適用するには「3月15日」までに所得税の確定申告をしなければなりません。
原則、確定申告の申告期限は翌年の2月16日から3月15日と定められていますが、還付申告(※)の場合は、翌年の1月1日から申告を受け付けています。
※還付申告とは、源泉徴収された税金や予定納税をした税金が納め過ぎになっている場合に申告できる制度のこと |
還付申告を利用すれば「5年以内」なら後からでも申告できる
医療費控除の申請は「5年以内」であれば後からでも還付申告できます。翌年の1月1日から5年間、12月31日までが期限です。例えば2022年分の医療費控除を忘れていた場合、2027年12月31日まで還付申告可能です。
5年間の還付申告できる期限を超えた場合は、やむを得ない事情があったとしても還付を受けられないので注意しましょう。もちろん「医療費控除」も例外ではありません。医療費控除の要件を満たしているのであれば、できるだけはやく申請することをおすすめします。
医療費控除はいくらから申告できるのか
医療費控除は全ての人が受けられるわけではありません。「医療費が年間10万円以上」もしくは「医療費が総所得金額の5%以上」のいずれかの条件にあてはまる場合、控除が適用可能です。
医療費が1年間で10万円以上
医療費控除は「自己」または「自己と同一生計で暮らしている配偶者や家族」の医療費の合算が「年間10万円以上」かかった場合に受けられます。
また必ずしも同居していなければ受けられないものではありません。勤務や修学によって別に暮らしていたとしても、生活費など家族間において生計を一にする場合は医療費を合算して10万円を超えていれば、医療費控除の対象になります。
1年間の医療費が総所得金額の5%以上 (総所得金額が200万円未満の場合)
その年の総所得金額が「200万円未満」の場合は、総所得金額等の「5%以上」の医療費を支払っていれば医療費控除を受けられます。
例えば、総所得金額が100万円の人が年間9万円の医療費を実際に支払った場合「4万円」の医療費控除を受けられます。
【計算式】
(実際に支払った医療費の合計額)-(総所得金額×5%)=医療費控除額 9万円-(1oo万円×5%)=4万円 |
医療費控除は5年分まとめて申告できる?
その年の確定申告の期限を過ぎても、5年間ならさかのぼって申告できる医療費控除。5年分まとめて申告可能ですが、5年間の医療費を合算することはできません。
過去5年分はまとめて申告可能
医療費控除の還付申告を行なう場合、過去5年分を同一タイミングでまとめて申告することは可能です。しかし、医療費控除の対象とする医療費は「1年単位」でなければなりません。
たとえば2018年と2019年に支払った分の医療費を2022年に還付申告する場合、それぞれの年の医療費と所得額を使用して「年単位」で2回の申告を行ないます。
【注意】5年分の医療費を合算することはできない
医療費控除は5年間までさかのぼって申告可能ですが、5年分の医療費を合算して申告することはできません。
つまり「5年間の医療費の合計が10万円」ではなく、あくまでも「その年の1月1日から12月31日までの1年間に払った医療費の合計が、10万円以上であるかどうか」が判断基準となります。
医療費控除の対象となるもの【具体例】
医師からの診断による診療や治療はもちろん、医薬品や通院のための交通費なども医療費控除の対象に含まれます。しかし、美容整形費用や予防接種、健康増進のための治療や医薬品などの費用は対象になりません。
医療費控除の対象にできる項目
医療費控除の対象となる医療費は以下のとおりです。
医療費控除の対象経費 | 具体例 |
医師からの診断による診療・治療など | 医師または歯科医師に支払った治療費 |
医師からの診断により、治療のためのあん摩や針灸、柔道整復師の費用 | |
医師からの診断により受ける健康診断費用 | |
治療としての歯科矯正や虫歯、入れ歯の費用 | |
医師からの処方箋により購入した薬代 | |
市販の風邪薬や下痢止め | |
医師からの診断による医薬品 | 治療のための医薬品の費用 |
通院するための交通費 | タクシー代(緊急性が強い場合に限る) |
通院にかかる交通費 | |
医師からの診断による医療器具 | 義手や義足、補聴器などの費用 |
その他 | 保健師や看護師による療養費用 |
通院の際にかかる交通費も対象になりますが、「医師による診療を受けるために直接必要なもの」もしくは「通常必要なもの」に限られます。
医療費控除の対象にできない項目
医療費控除の対象外となる医療費は以下のとおりです。
医療費控除の対象外経費 | 具体例 |
診療・治療など | 美容整形費用 |
美容歯列矯正やインプラント費用 | |
予防接種 | |
健康増進のための治療費用 | |
疲労回復のための治療費用 | |
疾病が発見されなかった人間ドック代 | |
医薬品 | 予防や健康増進のための医薬品 |
交通費 | タクシー代(緊急性のない) |
自家用車のガソリン代 | |
医療器具 | 治療とは関係のない眼鏡代 |
その他 | 実際に支払っていない未払いの医療費 |
美容整形のための費用や健康増進のための治療費用などは、医療費控除の対象になりません。次の記事では医療費控除の対象になるかどうかの判断基準を具体例を交えながら解説しています。ぜひ合わせて参考にしてください。
医療費控除を受けるための方法
医療費控除を受けるためには確定申告をしなければなりません。所得税の還付を受けるための申請方法や必要書類、スマホ申請について解説します。
【今年の分を申請する方】確定申告で申請する
今年の分の医療費控除を申請する場合は確定申告で申請します。
例年、所得税の確定申告は、1月1日から12月31日までの所得を翌年の2月16日から3月15日の間に申告します。言い換えれば、約1か月の間に所轄税務署に申告書類を提出することにより確定申告が完了します。
一方、還付申告は、還付を受けようとする年度の翌年1月1日から受付を開始しています。例えば、2021年分の所得税が還付であることが確定している場合、2022年2月16日を待たずに1月1日から還付申告が可能です。
【過去5年間の分を申請する方】還付申告で申告する
過去5年間の分の医療費控除をさかのぼって申告する場合は、還付申告を行ないます。
還付申告の申請方法は確定申告と同じです。確定申告書の各種所得金額を合計し、合計した合計所得金額から医療費控除等の所得控除を差し引きます。所得に応じた所得税率(累進課税)を掛け合わせて所得税を算出します。
最後に住宅ローンなどの税額控除を差し引き、算出された納めるべき所得税の金額が源泉徴収税額等より少ない時に還付申告と判定することができます。
また過去5年分の医療費をまとめて還付申告するのではなく、1年ごとに医療費控除の要件を満たしているかを判定。医療費控除の要件を満たしている場合に限り、還付申告が可能です。
必要書類は「確定申告書」と「医療費控除の明細書」
医療費控除の還付申告に必要な書類は以下のとおりです。
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医療費控除の明細書の書き方や資料等については、国税庁ホームページからダウンロード可能です。
また、医療費の領収書やレシートについては提出不要ですが、5年間の保管義務が生じます。
提出方法
医療費控除の申請提出方法は3通りです。税務署に直接持ち込むか郵送、インターネットを使って家でできるe-taxがあります。
入力方法に不安がある方は税務署に直接いけば、丁寧に教えてくれますが混み合うデメリットもあります。郵送やインターネットでの申告なら家で済ませるので、スムーズな申告が可能です。
スマホでも医療費控除を申請できる
医療費控除はスマホからでも申告可能です。
【スマホ申告の流れ】
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スマホを使えば、確定申告を簡単に行なえます。医療費控除の要件に該当する方は、スマホから確定申告をしてみてはいかがでしょうか。
監修税理士からのコメント
風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川
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この記事の監修税理士
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