税理士の報酬相場は依頼の内容、顧問契約かどうかで異なります。この記事では、税理士の報酬相場について詳しく解説していきます。
この記事の監修税理士
高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷
契約形態はスポット契約と顧問契約の2種類
税理士に支払う報酬は、契約形態により異なります。また、売上規模によっても基本となる金額が変わってきます。
税理士との契約の違いやその支払い報酬の違いについてみていきましょう。
スポット契約
税理士に仕事を依頼する際に、スポット契約という方法があります。スポット契約とは、必要なときに必要な業務だけ依頼する契約のことです。
確定申告や決算申告といった業務について、単発で税理士に依頼します。具体的な業務としては次のような業務を挙げることができます。
- 記帳代行業務
- 法人税・所得税・消費税・地方税の税務書類の作成及び税務代理
- 事業承継の相談
- 法人成りの相談
- 会社設立サポート
- 株価評価の算定
- 相続税・贈与税の税務書類の作成および税務代理
税理士とスポット契約をするメリットは、必要なときに必要な税務サービスを受けることができるということです。資金に余裕がなく、税理士を雇う余裕がない場合などに重宝します。
税理士とスポット契約をするデメリットとしては、受けられるサービスが少ないということです。
税務に関する業務毎に契約を結ぶことになるので、契約した業務にしか税理士は対応してくれません。そうした意味で、長期的な経営計画に沿ったタックスプランニングなどもしにくくなるというデメリットもあります。
顧問契約
顧問契約とは、税理士と継続的な契約を結ぶことです。そのため、会社の税務に係る業務すべてを基本的には税理士が代行してくれます。税理士と顧問契約を交わせば、税務に関する適切なアドバイスを受けることができたり、資金調達が容易となったり、正確な税務申告ができるようになります。
経営者が抱える経営上の悩みについても税務・会計の専門家としてアドバイスをしてもらえるので安心です。節税対策の提案など経営に専念できるようになります。
ただし、税理士と顧問契約を結ぶ場合には、毎月の顧問料を支払う必要があります。顧問料は、スポット契約よりも包括的な税務サービスを受けることになるのでコストが嵩みます。
支払う顧問料より高い節税効果などが見込める場合には顧問契約をした方がメリットも大きくなりますが、そうでない場合には、顧問契約よりもスポット契約の方が合理的であると考えることができます。
税理士報酬規定の廃止により自由化
2002年まで税理士報酬は、税理士法によって報酬の上限が定められていました。ほとんどの税理士事務所は、税理士報酬をこの税理報酬規定に基づいて算定していたことから、どこの税理士事務所に税務サービスを依頼しても差はありませんでした。
しかし、この法律は税理士事務所間の競争を阻害してしまうことが問題視されるようになり、廃止され税理士報酬は自由化されました。その結果、顧問料金やスポット契約の料金にもばらつきが見られるようになっています。
したがって、どれくらい税理士報酬を支払うかについては、メリット、デメリットを考慮し、自分で見極めなければなりません。
税理士以外に税理士業務を依頼するのはNG
税務相談をはじめとする下記3つの税理士業務は、税理士法第十八条に規定する登録税理士に限定されています。
- 税務相談
納税者から税金についての相談に応じる業務です。登録税理士でなければ、納税者から税金について相談を受けることはできません。 - 税務代理
税務代理とは作成した申告書等を税務署へ申告する場合や、税務調査の際に納税者の代わりに説明する業務です。 - 税務書類の作成
決算書や確定申告の書類を自分の判断にもどづいて作成する業務です。会計帳簿の記帳代行や財務関係の事務作業なども含まれます。
上記3点の税務業務は、どんなに税金に詳しい人であっても登録税理士でなければ業務をおこなえず、資格を有しない人がおこなえば有料・無料にかかわらず違反行為となります。
年商別 個人事業主が支払う税理士への報酬は?
それでは、具体的に税理士報酬としていくらくらい支払う必要があるのでしょうか?
ここでは年収1000万円未満の個人事業主の場合に絞って詳しく紹介していきます。税理士事務所によっては、報酬体系が異なることもあるので、一つの目安として活用してもらえればと思います。
税理士にかかる平均的な報酬相場
税理士が顧問契約で税務処理だけ雇う場合、相場は13,000円(月額)程度です。売上がそれほど多くない場合、税理士を雇わずとも、税務処理自体は行なうことができるので、税理士を雇うコストもそれだけ安くなっています。年商1000万円未満の個人事業主は、税理士にとって税務業務自体がそれほど大きな負担とはならないので、税理士に対して支払われる報酬も比較的少なくなります。
スポット契約として結ぶ、申告代行や記帳代行は税務処理のなかでは難しい業務にあたらないので、税理士報酬も少なくなります。
年商別の顧問契約にかかる費用
年商 | 顧問相場(月額) | 申告代行(年額) | 記帳代行(月額) |
~1,000万円 | ¥13,000~ | ¥76,000~ | ¥6,000~ |
1,000~3,000万円 | ¥17,000~ | ¥96,000~ | ¥7,000~ |
3,000~5,000万円 | ¥21,000~ | ¥116,000~ | ¥10,000~ |
5,000~1億円 | ¥28,000~ | ¥145,000~ | ¥13,000~ |
1億円 | 要相談 | 要相談 | 要相談 |
年商が上がるにつれて、行わなければならない税務処理も複雑となります。その結果として、税理士に支払われる報酬も高くなっていきます。
年商別 法人が支払う税理士への報酬の目安
法人の場合も同じように年商ベースで税理士に支払う顧問料が変わってきます。
年商別の顧問契約にかかる費用
年商 | 顧問相場(月額) | 申告代行(年額) | 記帳代行(月額) |
~1,000万円 | ¥15,000 | ¥107,000 | ¥7,000 |
1,000~3,000万円 | ¥19,000 | ¥129,000 | ¥8,000 |
3,000~5,000万円 | ¥23,000 | ¥150,000 | ¥11,000 |
5,000万円~1億円 | ¥29,000 | ¥173,000 | ¥14,000 |
1億円~5億円 | ¥40,000 | ¥210,000 | ¥20,000 |
5億円~10億円 | ¥50,000 | ¥235,000 | ¥26,000 |
10億円以上 | 要相談 | 要相談 | 要相談 |
決算申告
一方、確定申告業務のみを税理士に任せる場合、確定申告業務は年に1回となるので、そのときに税理士報酬を支払えば良いということになります。年商1,000万円の法人であれば、確定申告業務に関する税理士報酬の相場は107,000円程度ですが、年商1,000万円〜3,000万円ともなれば、確定申告業務に関する税理士報酬は129,000円程度となります。
年商が3,000万円〜5,000万円程度ともなれば、確定申告業務に関する税理士報酬は150,000円(月額)程度となり、年商が5,000万円〜1億円程度となると、173,000円程度になります。
年商が1億円を超えるようになると、税理士も業務の負担が大きくなるので、210,000円(月額)程度となります。
さらに、5億円を超えるようになると、税理士報酬もさらに高くなり235,000円(月額)程度となります。10億円以上については、相談して報酬を決めることになります。
概して、年商1,000万円未満の個人事業主と比べて、年商1,000万円を超えるような法人の報酬は、申告業務が割高になることがわかります。この理由は、大規模な会社の税務処理には手間がかかるため、それだけ料金も高くなるからです。
記帳代行
記帳代行業務を依頼した場合、税理士報酬は月額となるのが普通です。なぜなら、記帳業務は毎日継続して行なうことが基本となるからです。
年商1,000万円の法人であれば、記帳業務代行は7,000円程度ですが、年商1,000万円〜3,000万円ともなれば、記帳業務代行は8,000円(月額)程度となります。
年商が3,000万円〜5,000万円程度ともなれば、記帳業務代行は11,000円(月額)程度となり、年商が5,000万円〜1億円程度となると、14,000円(月額)程度になります。
さらに、5億円を超えるようになると、税理士報酬もさらに高くなり26,000円(月額)程度となります。10億円以上については、相談して報酬を決めることになります。
概して、年商1,000万円未満の個人事業主と比べて、年商1,000万円を超えるような法人の報酬は記帳代行業務についても割高になることがわかります。この理由は、大規模な会社の税務処理には手間がかかるため、それだけ料金も高くなるからです。
具体的な税理士の業務とおおよその報酬額
税理士報酬のおおよその報酬相場が理解できたでしょうか。税理士報酬は税理士によって考え方が異なるので、これを参考にして税理士報酬を払いすぎていないかどうか確認してみてください。
訪問(打ち合わせ)
税理士が行なう代表的な業務の一つが打ち合わせです。税理士がクライアント先を訪問し、前月分の試算表にもとづいて、会社の実態をチェックし、財政状態や経営成績に関するアドバイスをしてくれます。節税対策のアドバイスももらえます。訪問の場合、訪問頻度によって報酬額も変わってきます。
訪問(1回につき):5,000円〜10,000円程度 |
記帳代行
税理士に日々の記帳業務を任せることもできます。定期的に税理士に必要な書類(伝票や領収書)を渡すことで、記帳業務を代行してくれます。報酬額は記帳の作業量によって変化しますが、売上高によって概算されることもあります。
記帳代行:5,000円〜10,000円/月 |
給与計算
税理士に毎月給与明細を作ってもらう作業を任せることも可能です。場合によっては、郵送してもらうこともできます。給与計算をする場合には、従業員の毎月の出勤データが必要となるので、給与締日以降できるだけ早く税理士にデータを送る必要があります。なお、税理士報酬の額については、従業員の人数に応じて変化します。
給与計算:1,000円/人 |
データ管理
税理士に顧客のデータをわたして、顧客のデータを管理・分析してもらうこともできます。顧客データの管理は顧客の個人情報を守るためにも重要です。こうした業務を税理士に委託すれば、電子データのバックアップやウイルス対策費用など、ITに関わるコストを削減できます。
1件あたりのデータ管理:2,000円程度 |
月次決算報告
月次決算を税理士に作ってもらうことも可能です。月次決算を作ってもらうことで、資金繰りの状況などを詳しく確認できるようになります。月次決算については、仕訳数によって税理士報酬が決められており、領収証の数、得意先の数、仕入先の数、預金通帳の行数の合計に応じて、税理士報酬も高くなっていきます。
毎月の仕訳数 | 振替伝票 | 手書き帳簿 | 領収証等 |
50まで | 5,500円~ | 6,500円~ | 8,000円~ |
100まで | 8,000円~ | 10,000円~ | 13,000円~ |
150まで | 10,500円~ | 13,500円~ | 18,000円~ |
200まで | 13,000円~ | 17,000円~ | 23,000円~ |
250まで | 15,500円~ | 20,500円~ | 28,000円~ |
300まで | 18,000円~ | 24,000円~ | 33,000円~ |
350まで | 20,500円~ | 27,500円~ | 38,000円~ |
400まで | 23,000円~ | 31,000円~ | 43,000円~ |
450まで | 25,500円~ | 34,500円~ | 48,000円~ |
500まで | 28,000円~ | 38,000円~ | 53,000円~ |
500超 | 要相談 | 要相談 | 要相談 |
確定申告
年に一度税理士が行なう代表的なものが、税務申告です。税務申告は、個人事業主が行なう場合には確定申告となります。確定申告では、決算書を作成し、それに基づいて税額を計算して税務申告書を作成します。個人事業主であれば、所得税の計算や消費税の計算などが煩雑となる傾向がありますが、税理士に任せてしまえば安心です。
確定申告・・・・・月額顧問料の4〜6ヶ月分 |
決算申告
税務申告のうち、法人(会社)が行なうのが決算申告です。法人税法の計算は非常に難易度が高いため、税理士に任せた方が安心です。税務申告のソフトは高額となるので、税理士に任せている会社が非常に多くなっています。
確定申告・・・・・月額顧問料の4〜6ヶ月分 |
年末調整
年末調整は従業員の給与・賞与などの計算を正確に行なうことに加えて、扶養控除等申請書といった各種申請書を踏まえた上で、従業員の納税額を計算しなければなりません。年末調整の対象となる従業員数に応じて報酬が決まることが多いです。
年末調整・・・・・従業員10人まで基本料金2万円+1人増えるごとに1,000円追加 |
消費税申告
消費税申告は、非常に複雑で特に個人事業主には難しいことから、税理士に任せてしまうのが安心です。消費税の申告が必要な課税事業者であれば、法人は課税期間の翌日から2ヶ月以内、個人事業主は3月31日が納付期限です。報酬額は決算申告の費用に含まれていることがほとんどとなっています。なぜなら、決算が完了していないと、消費税額を算定することはできないからです。
消費税申告・・・・・決算料に含まれる |
決算付随物作成
決算に付随して、固定資産税などを納めるために必要となる固定資産台帳を整理したり、勘定科目の内訳書などを作成してもらうことも可能です。
固定資産台帳の作成 | 10,000円 |
勘定科目内訳書の作成 | 20,000円 |
法人事業概況書の作成 | 10,000円 |
総勘定元帳の印刷 | 1ページ×15円+1,000円 |
法人税等申告書作成
法人であれば、法人税だけではなく、事業税や住民税を納めなければなりません。これら法人税等の計算は非常に複雑な計算が必要となるので税理士に任せましょう。
法人税等申告書作成・・・・・20,000円(会社の規模によって金額が上乗せされます) |
顧問契約書に収入印紙は必要?
税理士と顧問契約を結ぶ際、顧問契約書に収入印紙が必要な場合と不要な場合があります。契約の内容によって要・不要が異なるほか、報酬額で収入印紙代も違うため注意が必要です。「請負契約」と「委任契約」による違いや顧問契約書の入手方法をみていきましょう。
顧問契約には請負契約と委任契約がある
税理士との顧問契約には「請負契約」と「委任契約」の2種類があります。請負契約とは依頼された仕事が「完成物」であること、たとえば「決算書」や「確定申告書」など、作成した成果物に対して報酬を支払う内容の契約です。請負契約では、完成した仕事が依頼者に要求に沿っていない場合は報酬を請求できません。
一方、委任契約とは依頼された仕事を処理する過程に対して報酬を支払います。税務相談や書類のチェックなど、具体的な成果物がない場合は委任契約となるのです。委任契約では、仮に依頼主が満足する結果でなかった場合でも報酬を請求できます。
請負契約に限り収入印紙が必要
収入印紙は請負契約の場合に必要であり、委任契約では不要です。請負契約は印紙税法上、「第2号文書」に該当するとされ、契約書に記載された契約金額に対応した収入印紙を貼り付けます。
営業者間で契約が3ヶ月を超える請負契約に該当する「第7号文書」でも収入印紙が必要ですが、「税理士は営業者に当たらない」とされているため収入印紙は不要です。
また、第2号文書に該当する請負契約であっても、電子取引では収入印紙が不要となります。「ペーパーレス化を推進したい」「収入印紙代を節約したい」とお考えの場合は、電子取引を導入している税理士事務所をチェックしてみましょう。
顧問契約書の入手方法
顧問契約書はインターネットでテンプレートをダウンロードできるサイトがあります。「税理士 顧問契約書 テンプレート」または「税理士 顧問契約書 サンプル」などと検索すれば、無料で入手できるサイトを見つけられるので活用しましょう。また、利用にあたっては登録が必要なサイトと不要なサイトがあります。使い勝手のよいほうを選んでください。
参考:ひな形ジャーナル |
税務を依頼する税理士の選び方
先に説明したように、税理士報酬はスポット契約か雇用契約なのかによって大きく変わります。依頼する業務内容などによっても変わってくるので、自分の希望に合った税理士に依頼することが大切です。ここからは、税務を依頼する税理士をどのように選んだら良いかについて詳しく説明していきます。
業界の知識、仕事経験が豊富な人
税務には様々な種類があるので、税理士には得意分野があります。そのため、依頼を検討している税理士がどのような経歴で、どのような業務経験をしてきたかを知ることが重要です。税理士に登録したばかりで、年商1,000万円以下の会社の決算申告しかしたことがないという税理士もたくさんいます。したがって、良い税理士を見つけるためには、業界の知識、仕事経験をきちんと踏まえることが大切です。
柔軟で親身になって対応してくれる人
税理士を探すときは、柔軟で親身になって対応してくれる人を探すようにしましょう。税務処理は、税理士だけでできるものはありません。経営者と税理士がきちんとコミュニケーションをとって、会社にとって有利となるような対応をしてくれる税理士を探すことが大切です。
会話ができ、相談ができる人
人として信頼でき、何でも相談することができる税理士に依頼しましょう。信頼できる税理士がいることで会社の経営もうまくいくようになりますし、心理的・時間的な負担も少なくてすみます。
税務の専門家としてはもちろん、会社の経営についてのアドバイスまでしてくれるような税理士であれば、経営者も積極的に経営のことを相談したくなります。きちんと会話ができ、相談に乗ってくれる税理士こそが本物の税理士であると言えるでしょう。
監修税理士のコメント
高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷
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税理士とのお付き合いは長きに渡るもの。費用も大切ですが、自分との相性や人柄なども事前に確認しておきましょう。
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この記事の監修税理士
高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷