会社員の方で副業をしている方の中には「個人事業主になりたい」と思っている方も多いのではないでしょうか?その中でも会社にバレるのが心配の方もいるでしょう。
会社員が副業で個人事業主になるのに問題はありません。また、住民税を「普通徴収」にして自分で納付すれば会社にバレずに副業ができるんです。
本記事では会社員が個人事業主になることのメリット・デメリットから、確定申告や社会保険に関しての内容までたっぷり解説します。
この記事を監修した税理士
風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川
会社員は副業で個人事業主になれる!
会社員が行う副業が「反復・継続・独立」の3要件を満たしていれば、個人事業主として事業を展開することができます。
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つまり、会社員でも以上の要件を満たす業務を行えば個人事業主といえるのです。
事業になるケース |
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事業にならないケース |
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不用品売却等の一時的な取引や、会社に雇われて行っている仕事は個人事業主になれないので注意しましょう。
住民税の徴収を工夫すれば会社にバレない!
確定申告の際に住民税の徴収方法を「普通徴収」に切り替えれば、会社に副業がバレる心配もありません。
住民税の納付方法は給料と一緒に副業分も会社が納付する「特別徴収」と、確定申告をした副業分は自分で支払う「普通徴収」の2つがあります。
住民税は前年の総所得によって決まるので、副業の収入があると給料だけの収入の場合に比べて支払う住民税が高くなるのです。
そのため、住民税を特別徴収にしてしまうと収入が高いことに不審を持たれてしまい、会社にばれるケースが非常に多くなります。
住民税の納付方法を切り替えるには確定申告が必要になるので、忘れずに行うようにしましょう。
個人事業主になったら確定申告が原則必要【不要なケースを紹介】
会社員の税金の手続きは全部会社がやってくれるので個別で申告しなくてもよいですが、個人事業主になったら原則確定申告をしなければなりません。
しかし、個人事業主でも以下のケースに当てはまれば確定申告は不要です。
- 事業所得が赤字
- 給与所得と退職所得以外の所得合計額が20万円以下
事業所得が赤字
事業所得が赤字の場合、収入はゼロで支払う税金がないため確定申告は必要ありません。
ただし事業所得が赤字であっても、青色申告をしている場合は赤字分を翌年に繰り越すために確定申告が必要になることもあります。
翌年以降に利益が出た際は赤字分を相殺でき、節税にもつながります。
給与所得と退職所得以外の所得合計額が20万円以下
給与所得と退職所得以外の所得金額が20万円以下の場合も確定申告は不要です。
所得は売上から経費を差し引いた金額で、副業で稼いでも所得が20万円を超えなければ確定申告をしなくてもよいのです。
面倒な確定申告を避けたい方は、漏れずに経費計上を行い20万円以内に所得を抑えるとよいでしょう。
副業で個人事業主になる6つのメリット
個人事業主になると、主に次のような利点があります。
- 経費の範囲が広がる
- 青色申告で最大65万円の控除を受けられる
- 赤字を出したら損益通算ができる
- 青色申告で赤字を最大3年間繰越できる
- 家族に支払う給料を経費にできる
- 屋号をつけられる
経費の範囲が広がる
確定申告をする際、所得の種類を選んで記入することになりますが、個人事業主になると「事業所得」として申告できるようになります。
事業所得は通常の副業で選択する「雑所得」に比べると、経費として認められる範囲が広くなるのが特徴です。
経費として申告できるということは、その分所得が下がるということなので、支払う所得税が少なくなります。
青色申告で最大65万円の控除を受けられる
青色申告をすると最大65万円の青色申告特別控除を受けられます。
確定申告には簡単な「白色申告」と、より詳細な記帳が必要な「青色申告」があります。
個人事業主になって青色申告の承認申請書を提出すると、青色申告で確定申告を行うことが可能になり10万円~65万円の控除が受けられます。
しかし、青色申告するにはいくつか要件があるので、以下の記事を参考にしてみてください。
損益通算ができる
副業で赤字が出てしまった場合、個人事業主なら本業の利益を損益通算をして、その分の税金の還付を受けられるようになります。
個人事業主になっていないとこの損益通算ができないので、赤字になってしまっても支払う税金は減りません。
青色申告で赤字を最大3年間繰越できる
青色申告を選択すれば事業所得が赤字になっても、最大3年間損失の繰越が可能です。
つまり次年度以降利益が出た場合、申告した赤字と相殺できるので節税効果があります。
家族に支払う給料を経費にできる
個人事業主なら「青色申告の承認申請書」と「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出したうえで、確定申告を青色申告で行えば家族への給料を経費に計上できます。
家族と一緒に副業の事業を行っているなら、これは税金面で大きなメリットになりますよね。
屋号をつけられる
個人事業主になると自分の名前ではなく屋号を使って事業ができます。
屋号をつけると事業用の銀行口座の開設や、事業用のクレジットカードの作成が可能です。
さらに、個人の名前で事業を行うよりも屋号をつけた方が社会的信用が高まり、取引での信頼が上がったり資金調達がしやすくなったりします。
屋号の登録は「開業届」の提出だけなので簡単です。「屋号」欄に記入し、書類を提出すれば屋号の登録は完了します。
屋号に関する詳しい内容は以下の記事を参考にしてみてください。
副業で個人事業主になる3つのデメリット
副業で個人事業主になるメリットはたくさんありますが、次の3つのデメリットもあります。
- 会計処理が複雑になる
- 失業手当が受けられない
- 本業に支障をきたす可能性がある
個人事業主になる際は、メリット・デメリットをどちらも把握したうえで検討するとよいでしょう。
会計処理が複雑になる
個人事業主で青色申告をする場合、最大65万円の控除額や赤字繰越のメリットがありますが、白色申告に比べて会計処理が煩雑になります。
【青色申告の要件】
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このように、白色申告よりメリットが大きい青色申告ですが、その分手間が増えるデメリットも存在します。
会計処理が難しくても節税したい方は青色申告を検討してみるのもよいでしょう。
失業手当が受けられない
雇用保険では会社を辞めてから過去2年のうちは、一定期間の雇用保険者期間があれば基本手当がもらえます。
しかし個人事業主になった場合、この失業手当を受け取る事はできません。
失業保険はあくまで次の就職先を見つけるための手当てなので、個人事業主として立派に働いている場合は対象外となるのです。
失業手当てを見込んで個人事業主になろうとしている方は注意が必要でしょう。
本業に支障をきたす可能性がある
副業は本業に影響しない程度に行えば問題ありませんが、副業の規模が拡大していくにつれて、副業にあてる時間が多くなるでしょう。
結果として本業にあてる時間が多くなり、本業に支障をきたす可能性があるので注意してください。
また、副業が大きくなるほどお金の管理などやらなければいけないことが多くなり、自分の自由時間が削られる点にも気を付けましょう。
個人事業主になるには「開業届」を提出するだけでOK
個人事業主には誰にでも簡単になれます。なぜなら所轄の税務署に「開業届」を出すだけだからです。
開業届は国税庁のホームページから簡単にダウンロードでき、開業届の費用は掛かりません。
ただし、開業届の提出期限には注意してください。
開業届の提出期限は開業日から2か月以内、もしくはすでに開業している場合は、確定申告をする3月15日までに提出する必要があります。
また、職業によって事業税率が異なるので開業届を提出する際の職業にも注意が必要です。
ほとんどの事業税率は5%ですが、事業によっては3%や4%のものもあります。
【事業税率】
事業税率 | 事業の種類 |
5% | 物品販売業、飲食店業、物品貸付業、不動産貸付業、請負業、写真業、旅館業、医業、税理士業、デザイン業、弁護士業、美容業、コンサルタント業、クリーニング業、など |
4% | 畜産業、水産業、薪炭製造業 |
3% | あんま・マッサージ業、指圧・はり・きゅう業、など |
ちなみに、開業届に記入する職業は一番所得が多い事業になります。税率が低いからと言って税率が低い事業は書けないので注意してください。
会社員が個人事業主になったら社会保険・税金はどうなる?
会社員が個人事業主になっても社会保険を個別で加入する必要はありません。
また、税金は会社からの給料と副業の事業所得を併せて算出することが重要です。
個人事業主として社会保険の加入は不要
健康保険や厚生年金保険などの社会保険は、本業である会社員もしくは個人事業主のどちらかでしか加入できません。
通常、会社では厚生年金保険や社会保険に入っているはずなので、あえて個人事業主になったからといって個人事業主として社会保険などに加入する必要はないのです。
給与所得と事業所得を合わせて税金を算出
所得税は、総所得額に税率をかけて算出します。日本は累進課税制度が採用されていて、所得が多いほど税金が高くなるシステムです。
【所得税率】
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,950,000円未満 | 5% | 0円 |
1,950,000円以上
3,300,000円未満 |
10% | 97,500円 |
3,300,000円以上
6,950,000円未満 |
20% | 427,500円 |
6,950,000円以上
9,000,000円未満 |
23% | 636,000円 |
9,000,000円以上
18,000,000円未満 |
33% | 1,536,000円 |
18,000,000円以上
40,000,000円未満 |
40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
個人事業主として副業を行う場合利益が出るケースが多いはずですが、万が一赤字になった場合は損益通算ができるので税金が少なくなります。
税理士に聞く!節税・青色申告に関する疑問
副業を始められたばかりの方が抱きがちな疑問点について、税理士先生に見解を伺いました。ぜひ参考にしてくださいね。
Q:個人事業主として数百万の利益が出る予定です。今からできる節税対策はありますか?
【退会済】 - undefined
「まずは正当に経費に算入できる支出がないか点検しましょう。たとえば、家計と事業の両方で利用しているのに、すべて家計で負担している支出などです。事業で使用した部分を按分して経費に算入することによって、追加でキャッシュアウトすることなく、所得を減らすことができます。 保険や年金に加入する、少額の固定資産を購入するなどの節税策は、キャッシュに余裕がある場合に考えましょう。」
Q:今年から青色申告を始めようと思います。白色申告に比べてかかる手間はどの程度増えるのでしょうか。
土屋久仁男税理士事務所 - 東京都足立区佐野
「青色申告であっても白色申告であっても、基本的な手間はさほど変わりません。なぜなら、事業所得や不動産所得がある場合は規模に関係なく取引状況を記帳して、帳簿を保管する必要があるからです。 節税を考えるのであれば、青色申告の届出をしておいたほうが税金面でのメリットが大きいと思います。」
個人事業主の確定申告は税理士に依頼を
個人事業主になると普段から帳簿付けをしなければなりません。青色申告をするのであれば、煩雑な作業が必要になります。
とくに確定申告の時期になると、書類集めや計算などに奔走することになるでしょう。しかし時間がないサラリーマンにとって、これらの手続きはかなりの手間ですよね。
そこでおすすめなのが、確定申告の手続きを税理士に依頼することです。
確定申告は税理士に依頼を
税理士は、確定申告など税務関連のプロフェッショナルです。税理士に依頼すると、確定申告の際に必要となる様々な作業や手続きなどを、すべてまとめて代行してくれます。
素人が忙しい時間の合間を縫って確定申告するよりもよっぽど確実ですし、手間もかかりません。
確定申告の依頼はお手頃な値段で行ってくれるケースが多いので、資金に余裕がなくても安心です。
青色申告の帳簿付けも指導してくれる
税理士に依頼すれば、普段の帳簿付けも指導してくれます。青色申告の帳簿付けは難しいので、挫折してしまう人が多いのが現実。
税理士に頼めば、基礎から分かりやすく指導してくれるほか、間違いがあれば修正してくれます。
帳簿付けのミスで税務署から指摘が入るのは避けたいものですよね。税理士に頼めば、そうしたトラブルを防げるでしょう。
経営や節税に関するアドバイスもくれる
税理士は、起業・副業・節税などに関する専門家でもあります。
税理士に依頼することで、経営や節税に関する適切なアドバイスももらえます。それぞれの経営状況に応じたアドバイスをくれるので、長い目で見れば相談費用以上のリターンが得られるはずです。
監修税理士からのコメント
風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川
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しかも一括見積もりは完全無料です。契約前にそれぞれの税理士とチャットでやり取りすることも可能となっています。副業の税金や確定申告などで悩んでいる方は、ぜひミツモアであなたに最適な税理士を探して、相談してみてくださいね
この記事の監修税理士
風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川