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個人事業主の必要経費とは|車や家賃も経費で落とせる?

最終更新日: 2022年12月27日

個人事業主やフリーランスの方は、事業に関わる支出であれば「必要経費」として計上できます。とはいえ「どこまで経費に計上してよいのか」と判断に悩むことも少なくありません。

「できるだけ節税につなげたい」あなたのために、具体例を交えながら経費計上のポイントについてわかりやすく解説します。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

 

必要経費とは「収入を得るためにかかるお金」のこと

パソコンを使う男性

必要経費とは「収入を得るために必要なお金」のことです。個人事業主が事業を行なううえで発生した費用を、経費として計上できます。

必要経費は「売上に直接係る仕入代金(売上原価)」と「日常的に発生する支出」の2つに大きく分けられます。例えば、仕事に使用するパソコンや文房具、人件費や交通費などが該当します。

個人事業主の所得税は、1年間の総収入から必要経費を差し引いた所得に対して、税率を掛けて計算されます。そのため、経費を漏れなく計上することが節税につながるのです。

 【ルール①】事業と関わる費用であること

必要経費は事業と関連する必要があります。

例えば、事業主の飲食代。事業を行っていなくても、日常生活でも発生する費用ですので必要経費にはなりません。しかし、得意先と仕事上の打ち合わせをするための飲食代であれば、交際費などで必要経費とすることができます。

【ルール②】 事業のために「使用」していること

事業と関連していて実際に支出した費用であっても、1~12月の間に使用していない費用は、その年度の必要経費とすることができません。

例えば、次の費用は支出した全額をその年度の必要経費にすることはできず、来年度以降の必要経費に配分することになります。

①仕入れた商品で期末に在庫となっている場合

10万円以上の減価償却資産を取得した場合(税務上の特例を除く)

③ライセンス料などの複数年度分を一括して支払った場合

【ルール③】領収書などの証拠書類が残っていること

領収書はお金を払ったことを支払先が証明する書類です。領収書は事業を行う上で発生する支出を「必要経費」として、税務署に認めてもらうための証拠となるものです。

経理処理や申告・納税を行う場合に必要となる書類ですので、受け取った後にきちんと保管する必要があります。

また経費を支出したことを証明する領収書は、確定申告を終えた後も「7年間 (白色申告の場合は5年間)」保管することが義務付けられています。税務調査で提出を求められることもありますので、年度別、月別、費目別などにファイリングしておきましょう。

按分して経費にできるもの【家賃や車も計上可能】

家賃も経費にできる?家事按分とは

家賃や車のリース料・ガソリン代など、事業用とプライベート用で用途が混在している費用は、支出した額に事業用比率を乗じて必要経費とすることができます。これを「家事按分」といいます。

按分の際には、事業用とプライベート用で使用した割合を「客観的かつ合理的に説明できる」比率で定めなければなりません。

家賃 

自宅を事務所と兼用している場合の家事按分の考え方は次の通りです。

【対象とする経費】

  • 賃貸の場合;家賃など
  • 持ち家の場合:修繕費、固定資産税、住宅ローンの利息、保険料など
【按分の考え方例】

  • 面積比率:事務所として使用している部分の面積÷総面積
  • 時間比率(休日だけに使っている場合など):使用日数÷総日数×面積比率

納品を行ったり、営業活動を行ったりする時に自家用車を使用している場合の家事按分の考え方は次の通りです。

【対象とする経費】

  • リース料
  • 減価償却費
  • ガソリン代
  • 租税公課
  • 修繕費
  • 保険料
  • 駐車場代 など
【按分の考え方例】

  • 走行距離比率:事業用走行距離÷総走行距離
  • 時間比率(休日だけに使っている場合など):使用日数÷総日数

水道光熱費

自宅を事務所として使用すると水道光熱費が発生します。デスクワーク中心の個人事業主と飲食店など店舗経営を行っている個人事業主では、水道光熱費の割合は大きくことなります。営む事業によって案分比率は異なってきます。

【対象とする経費】

  • 電気料金
  • 水道料金
  • ガス料金 など
【按分の考え方例】

  • 事業の内容によって合理的な案分割合を決める

 (例:デスクワーク:ガス・水道代は少な目、飲食店:ガス・水道代は多め)

通信費

スマホやパソコンなどをプライベート用と共用している場合も、家事按分で必要経費に計上できます。

【対象とする経費】

  • 固定電話
  • 携帯電話の料金
  • インターネット料金
  • プロバイダ料金
  • 郵便料金 など
【按分の考え方例】

  • 実績比率:通話履歴、アクセス履歴、郵便履歴など
  • 時間比率(曜日や時間帯など):使用日数(時間)÷総日数(時間)

実は経費にできるもの3

実は経費にできるもの3選

必要経費とすることができるのは、「事業に関連すること」「その年度に使用すること」が基本です。その判断基準は結構難しく、必要経費に計上できるものをうっかりするケースがあります。実は必要経費にできるという意外な支出をいくつかご紹介します。

カフェでの食費

個人事業主の場合、カフェを利用する機会は結構多くなります。待ち時間にカフェでパソコン作業をした経験のある方も多いのではないでしょうか。また、クライアントとお昼を一緒にしながら打ち合わせを行うこともあります。

このような場合の飲食代は、事業に関連し、実際に支払いを行いますので、必要経費とすることができます。お客様との打ち合わせの場合は、会議費又は交際費、お客様と同席していない場合は雑費として必要経費にすることができます。

ご祝儀や香典

見落としがちな経費として一見事業とは関係ないと考えられる祝儀や香典。こうした出費も必要経費と認められることもあります。もちろん、事業との関連性が求められますので、取引先や従業員などへの出費に限られます。

また、ご祝儀などは領収書がもらえないケースが多くあります。そのためには、支払った事実を確認できる資料を準備しておく必要があります。招待状、案内状などに加え、「いつ・誰に・どこで・いくら」支払ったのかをきちんとメモを残しておきましょう。

スーツなどの洋服代

スーツのような衣服については、生活費の代表例なので、事業との関連性が薄いと基本的には必要経費とは認められません。逆にプライベートでは着用せず、事業にだけに使う衣装や身の回り品は、必要経費に認められる可能性が高くなります。

・商談・取引先訪問などの専用にしているスーツなど

・常駐先などで職務として必ず着用しなければならないもの

・飲食店などでの従業員の制服

 

 

【コラム】勘定科目とその種類

勘定科目とは、事業を行っていく上で発生するお金の動きを、会計帳簿に記録するために必要な分類項目の名称のことです。勘定科目は、損益計算書と貸借対照表それぞれにどちらに関連するかで大別されます。

必要経費の勘定科目は、損益計算書の費用に分類されます。勘定科目は、使用した費用の内容がわかるような名称にします。

【必要経費の勘定科目例】

仕入 商品の仕入代金、仕入時に発生する運賃など
外注費 業務委託費
給与手当 従業員の給料、時間外勤務手当等
法定福利費 従業員の社会保険料(事業主負担分)など
福利厚生費 慶弔見舞金、社内レクリエーション費用、従業員の健康診断費用など
消耗品費 ボールペンなど事務用消耗品、パソコンなど
貸借料 設備等のリース料、レンタル料
修繕費 建物や車両、備品などの資産にかかる修繕費
水道光熱費 電気代、水道代、ガス代など
接待交際費 取引先への飲食などの接待費用

注意!経費にできないもの3

経費にできないもの3選

個人事業主の必要経費に出来ないものとしては、個人事業主本人や配偶者など関連する費用や税金関連が主なものです。また、本来であれば必要経費と認められるものであっても、領収書や請求書等支出を裏付ける証憑が無い場合も必要経費として認められません。

福利厚生のための費用

福利厚生費とは従業員の労働意欲を向上させるために会社が拠出する費用です。そのため、個人事業主、配偶者など、従業員が平等に利用できる費用であれば、福利厚生費として認められます。しかし、従業員がいなく、個人事業主と配偶者などだけの場合、福利厚生費を必要経費にすることはできません。

例えば、歓迎会など、全員が参加する食事会の費用を全て負担した場合は福利厚生費となります。しかし、従業員がいないと単なる生活費とみなされてしまい、必要経費とすることができません。

健康診断の費用

従業員を雇うと、個人事業主でも、従業員の健康診断を行う義務があります。従業員の健康診断の費用については、事業主の負担となり、福利厚生費として必要経費となります。

しかし、個人事業主には、自分自身に対して健康診断を行う義務はありません。健康診断は個人として受けることになり、負担した費用は必要経費にはなりません。また、確定申告で医療費控除の対象とすることもできません。

家族への給与

従業員に支払う給与は経費として扱えますが、配偶者など家族に支払う給与は基本的には必要経費として認められません。同じ家計で生活している配偶者などへの支払いは、実質的に個人事業主本人への支払いと見做されるからです。

しかし、小規模事業者などでは家族経営を行っているケースも多いため、一定の手続きと条件を満たすことで家族に支払った給与を経費として認められています。それが、専従者控除制度です。

専従者として認められるには、「生計を一にする親族」「15歳以上」「6ヶ月以上従事」の条件を満たす必要があります。

正しい経費計上で賢い節税を

パソコンを使い考え事をするサラリーマン
(画像提供:Leonardo da/Shutterstock.com)

個人事業主にとって、必要経費の取り扱いは面倒なものかもしれません。しかし、費用計上できるものとできないものを正しく理解して適切な処理をすることは、個人事業主としての基本動作でもあります。

必要経費をきちんと会計に織り込むことで、事業の業績把握と健全な節税対策が可能となります。必要経費を正しく計上して、賢く節税につなげていきましょう。

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この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

こんにちは、神戸市で会計事務所を開業している安田亮と申します。 私は大手監査法人と東証一部上場企業で働いてきましたが、上場企業の経理部の方でも決算や税務申告が分からない、良い経理人材を確保できない、繁忙期にどうしても人手が足りないなど、様々な悩みを持っておられることに気付きました。 1つの会社の中で縛られることなく、もっと色々な企業様や、これから事業を起こそうとしている個人の方々に私自身の知識・経験を活かして決算・税務申告業務、経営全般のサポートをしていきたいという思いから、31歳になった2018年に神戸市中央区で独立開業しました。 公認会計士・税理士・FPのトリプルライセンスを有しており、実務経験も豊富ですので、実務能力には自信があります。その知識・経験を活かして皆様の経営に貢献していきます!