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個人事業主の屋号・雅号とは?登録・変更の方法と銀行口座について解説!

最終更新日: 2022年12月16日

個人事業主として開業するうえで屋号・雅号について気になっているという方は多いのではないでしょうか。

この記事では屋号の基本的な知識や決まりから登録しておくことのメリットまで詳しく解説していきます。屋号を付ける際の注意点についても触れていきますので、開業を検討している方はぜひ目を通してみてください。

個人事業主の屋号と雅号について

個人事業主の屋号と雅号について
個人事業主の屋号と雅号について

個人事業主が名乗る「屋号」と「雅号」には明確な違いがあります。「屋号」「雅号」とはどういったものなのか、社名との違い、必ず必要なものなのかという点について詳しく見ていきます。

屋号とは?屋号と社名の違いは?

屋号とは個人事業主が事業上名乗る名前のことで、銀行口座や名刺、契約書、領収書などの公的な書類にも記載が可能です。また店舗や事務所を構えている場合は店舗や事務所の名前を屋号として使うこともできます。

屋号と社名は似ていますが、事業形態に明確な違いがあります。屋号は個人事業主が使用するものであるのに対し、会社名は法人が事業上使用する名前の事を指します。

雅号とは?ペンネーム、旧姓にも使える

雅号とは文筆業や画家、芸能活動を営む場合に本名とは別に名乗る名前のことです。法人における会社名が個人事業主の屋号に当たりましたが、雅号は個人名となります。

雅号はペンネームとして名乗ることも可能です。また旧姓を雅号として登録し、結婚後に同じ名前で活動することもできます

屋号を必要とする書類、手続きは?

屋号を必要とする書類や手続きは主に下記の通りです。個人事業主として開業すると、屋号の付いた銀行口座の開設が可能となります。他にも融資カード・QRコード決済の導入にも屋号が必要です。

  • 銀行口座の開設
  • 融資
  • カード・QRコード決済の導入

屋号なしでも大丈夫?

個人事業主には必ずしも開業時に屋号を付けなければならないという義務はありません。そのため開業届の申請時や確定申告の書類についても屋号の欄は未記入で問題ありません。

もし開業届提出後に屋号が必要となった場合でも、後から申請することが可能です。屋号の付け方に迷っている場合は、先に開業届を提出したあとで納得のいく屋号を考えてみても良いでしょう。

屋号・雅号の登録・変更方法

屋号・雅号の登録・変更方法
屋号・雅号の登録・変更方法

屋号・雅号に登録・変更の義務はありませんが、屋号の付いた銀行口座の開設や融資を受ける場合などには登録の控えが必要となります。この項では屋号・雅号を登録・変更する方法について見ていきます。銀行口座の開設を考えている方やその他屋号・雅号の登録を希望する方は参考にしてくださいね。

個人事業主の開業届け出を提出

屋号は「個人事業の開業・廃業等届出書」の「屋号」欄に記入し、税務署に提出することで10分程度で登録をすることができます。提出は郵送でも可能なうえ、登録費用なども必要ありません。「個人事業の開業・廃業等届出書」は国税庁のホームページからダウンロードすることが可能です。

屋号に権利を持たせたい場合は、屋号を商号登記することも可能です。ただしその際は法務局へ申請が必要となり、費用も3万円かかります。時間も1週間ほどかかるため、商号登記の申請は必要に応じて行うようにすると良いでしょう。

参考:個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

確定申告の際、記入でもOK

屋号は確定申告の際に「屋号」欄に記入することでも登録が可能です。屋号の登録に関してその他に特別な手続きを行う必要はありません。

開業届提出の際に屋号を記入していなかった場合も同様に、確定申告での登録が可能です。

屋号・雅号の変更方法

屋号・雅号の変更を行う際には特別な届け出は必要ありません。事業を営むうえで必要なタイミングで変更することが可能です。屋号の変更回数に制限はないため、必要に応じて何度変更しても問題ありません。

確定申告の際に新しい屋号・雅号を記入すれば変更の申請を行ったことになります。また開業届を再度新しい屋号・雅号で提出しても変更を受理してもらうことができます。確定申告前に変更を申請しておきたい場合は税務署に再度開業届を提出しましょう。

個人事業主が屋号・雅号を使うメリット

個人事業主が屋号・雅号を使うメリット
個人事業主が屋号・雅号を使うメリット

個人事業主が屋号・雅号を使うことにはどのようなメリットがあるのでしょうか?必要に応じて任意で名乗ることができる屋号・雅号ですが、事業を営むうえでどのように有利に働くのか見ていきましょう。

信用を得ることができる

屋号・雅号を使用することは個人事業主として社会的な信用を得ることに繋がります。請求書や名刺、その他文書に屋号・雅号を記載することでビジネスとして事業を行っていることを取引先にアピールすることが可能です。

商工会の加入や銀行口座の開設、融資の申請といった社会的な信用度が大切となる場では屋号を申請した開業届の控えが必要です。屋号・雅号は無料ですぐに登録が可能なので、社会的な信用力を上げたい場合は申請しておくと良いでしょう。

覚えやすい屋号でビジネスに繋がる

覚えやすい屋号はビジネスチャンスを広げることにも繋がります。屋号に地域性や事業内容、専門性、業種、業態といった要素を取り入れることで、個人事業主としてどういった事業を行っているのかをアピールすることができるでしょう。

第三者に屋号を使ってわかりやすく自分の事業を印象づけることができれば、そこから興味を持ってもらうことも可能です。名前だけでビジネスチャンスを広げることができるのは、屋号を持つことの強みだと言えます。

屋号に事業内容を含めることができる

前述の通り、個人事業主の名乗る屋号は事業内容を含めることが可能です。屋号を持っていないと個人名のみでしか取引が行えないため、何を事業として行っているのかという点が相手に伝わりづらいというデメリットがあります。

屋号に事業内容を含む場合の例は下記の通りです。屋号を上手く使って、ビジネスチャンスへと繋げていきましょう。

  • ○○建築
  • ○○デザイン事務所
  • ○○フォトスタジオ
  • 美容室○○
  • ○○制作
  • ○○企画

屋号・雅号を決める際の注意点!

屋号・雅号を決める際の注意点!
屋号・雅号を決める際の注意点! (画像提供:PIXTA)

個人事業主が屋号・雅号を名乗ることに法的な義務はありませんが、決まりや配慮すべき点について把握しておかないと後々トラブルになることもあります。せっかく決める屋号・雅号がトラブルの元となることを防ぐためにも、注意点についてしっかりと確認していきましょう。

登記・商標登録の確認

屋号・雅号を決める際は、既に登記や商標登録されている屋号・法人名を避けるようにします。同じ業界で同じ屋号を付けた場合、同名の法人に問題が発生した際には風評被害を受けてしまう可能性や、その他トラブルの元になることがあります。

特に商標登録されている屋号に関しては、同名であることで相手側に訴訟を起こされることもあるため注意が必要です。

登記されている会社名は国税庁のホームページから、商標登録されている屋号は「特許情報プラットフォーム」というサイトから確認することができます。屋号を決定してしまう前に一度確認しておくようにしましょう。

会社・法人表記はNG(使用できないワード)

個人事業主が下記の例ような会社と誤認されるような表記を使用することはNGとなっています。これは会社法第7条に会社でない者が会社であると誤認されるような表記をしてはいけないと定められているからです。これは誤認される恐れがある場合、英語やカタカナなどの表記の種類に関係なく使用することができません。

「○○銀行」や「○○保険」「○○証券」など銀行や保険会社と間違われるような表記をすることも法律上禁じられていますので、屋号を決める際には避けるようにしましょう。

会社・法人と誤認される表記の例

  • ○○法人
  • ○○カンパニー
  • ○○コーポレーション
  • ○○株式会社
  • ○○合同会社

記号、英語表記について

屋号には記号を使用することも可能ですが、銀行口座の開設や営業許可の申請といった場面では特殊な表記だと受付ができない場合があります。そのため屋号は商業登記に使うことのできる記号や表記の範囲内で決めておくと安心です。

英語表記に関しても基本的に問題なく使用することができますが、前述の通り会社であると誤認されるような表記は禁止されていますので注意しましょう。

登記に使用することができる表記

文字 記号 数字
  • ひらがな
  • 漢字
  • カタカナ
  • ローマ字(大文字・小文字)
  • 「&」アンパサンド
  • 「’」アポストロフィー
  • 「,」コンマ
  • 「-」ハイフン
  • 「.」ピリオド
  • 「・」中点

※ただし中点を最初や最後に使うことはできない

  • アラビア数字

屋号に使用できない英語表記

  • Inc.
  • Co.,Ltd
  • Corporation

個人事業主が複数の屋号を持つ場合

展開する事業ごとに個人事業主が複数の屋号を持つことは特に制限がありません。開業届の控えが不要であれば税務署への申請も必要ないため、事業によって適切な屋号を名乗ることができます。

ただし事業内容によって屋号を使い分ける場合は書類の記名や名刺など、その時携わっている事業ごとにしっかりと管理をする必要があります。また確定申告時には屋号ごとではなく個人事業主としての所得を申請するため、帳簿上分けていても合算しなければならないため注意が必要です。

夫婦がそれぞれ個人事業主の場合、住所は同じでも大丈夫?

夫婦が同一住所でそれぞれ個人事業主として同じ屋号を申請することは問題ありません。ただし確定申告の際には同一住所の同じ屋号で手続きを行うことになるため、別事業としての区別が付きにくく脱税を疑われる恐れもあります。

同一住所でもそれぞれ別の屋号であれば事業としての区別が明確になります。夫婦でそれぞれ個人事業主として活動する場合は、住所が一緒でもお互いに別の屋号を使用することが望ましいでしょう。

個人事業主の銀行口座

個人事業主の銀行口座
個人事業主の銀行口座

個人事業主として銀行口座を開設する場合、口座の名義に屋号を使うことが可能です。屋号付きの口座は、プライベートの口座と分けて管理ができるため様々なメリットがあります。ここではメリットだけでなく確定申告時の口座の使い分けの方法についてもご紹介していきます。

口座名は「屋号+氏名」

銀行口座は原則氏名での開設となりますが、一部の銀行では屋号付きの口座を作ることが可能です。その際口座名は「屋号+氏名」での申請となります。

口座名に屋号が付いていることで、取引先や顧客に振り込みのお願いをする場合などに振込口座の間違いを防ぐことができます。またプライベートな口座との区別が明確になるので、帳簿の管理を行ううえでもわかりやすく便利です。

融資を受ける際に屋号が必要になる場合も

融資を受ける際には、屋号を申請した時の「個人事業の開業・廃業等届出書」の控えが必要になることがあります。屋号を名乗ることや変更に関して申請の義務はありませんが、融資を受けることを見当している場合は税務署へと早めに届け出を行っておきましょう。

確定申告、税務調査が楽になる

確定申告時には1年間で行った全ての取引について帳簿にまとめる必要があります。プライベートな口座を事業用にも使用している場合、確定申告の際に関係ない私的な支出まで記帳しなければなりません。

もし税務調査の対象となった場合も事業用口座があると対応が楽です。個人名の口座で事業の取引を行っている場合、どれが事業上の支出であるのか区別が付きにくい上プライベートな支出まで見られてしまうことになりますが、口座を分けていればその心配がありません。

また事業用の取引を行った通帳は保管しておく義務もありますので、私的な口座とは分けて管理しておくと良いでしょう。

確定申告の還付金は個人口座がベター

確定申告の還付金は本来払いすぎていた税金が返還されたものなので収入にはなりません。しかし確定申告の還付金が屋号の付いた事業用口座に振り込まれることで、帳簿上仕分けを行う必要が出てきます。

一方還付金が個人口座に入金された場合は特に仕分けの必要はありません。そのため確定申告の還付金の振込先は個人口座を指定しておくと帳簿上の手間を省くことができるのでおすすめです。

監修税理士コメント

高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷

個人事業主の方が屋号を使用する最大のメリットは、「この屋号で事業としての活動を行っている」ということを対外的にアピールできることだと思います。小規模な事業で法人化するのはハードルが高いと思いますが、個人的な感覚ですが屋号を用いていれば対外的な信用も上がると思いますので、うまく活用すると良いと思います。

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この記事の監修税理士

高崎文秀税理士事務所 - 東京都文京区本郷

文京区水道橋駅近くで、低価格で品質の高いサービスをご提供する税理士事務所を運営。起業家向けに月額1万円、決算料なしからの税務顧問を提供する。 創業したばかりでお金と時間に余裕がない、という方でも経理、節税、税務調査などを心配せず、本業に集中して頂き、1日でも早く事業を軌道に乗せて頂くことをコンセプトしている。事務所HP : https://ft-taxacc.com/