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副業の個人事業主になるタイミングはいつ?会社員が開業するメリットや確定申告を解説

最終更新日: 2024年02月29日

副業ブームとはいえ多くの人が一歩踏み出せないなか、すでに会社員をしながら副業を始めたり収入を得られたりしている方は才能も行動力もある逸材と言えるでしょう。

収入が得られるようになると考えるのが「開業」ですが、個人事業主と副業の違いがよくわからない、いつなればいい、そもそも会社員をしながらなれるのか?という疑問もあるはずです。

本記事では、会社員が副業で個人事業主として開業するメリットやタイミングを、各種必要手続きや成功するためのポイントとともに詳しく解説します。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・1級FP技能士)1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格、2010年京都大学経済学部経営学科卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

副業でも個人事業主になれる?

結論、副業でも個人事業主になることは可能です。

近年では会社員と個人事業主、2つの顔をもって働いている方は多く、厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表しているほど、当たり前になりつつあります。

とは言え、副業を始めたばかりで、個人事業主というワードにあまりピンとこない方もいらっしゃるでしょう。

そこで本章では、個人事業主の定義や届出の必要有無などについて解説していきます。

個人事業主とは?

個人事業主とは“自ら事業を行なっている”個人のことを指します。

一方で、比較対象とされる会社員というのは、特定の企業と雇用契約を結んで仕事をしている「被雇用者」に該当しますので、当然個人事業主ではありません。

つまり、個人で完全に仕事を受注、もしくは独自商品をリリースしている場合などが個人事業主に該当します。

個人事業主と副業の違い

個人事業主と副業の違いは以下の通りです。

  • 個人事業主=自ら事業を行なっている個人
  • 副業=本業以外に仕事をしていること

副業というのは、本業以外の仕事全般を指した言葉であり、個人事業主の他に「アルバイト」「パート」などの仕事も該当します。つまり、副業の中に「個人事業主」という労働形態があるということです。

個人事業主と副業という言葉は世間的に混同されがちですが、上記の通り明確な違いがあることを理解しておきましょう。

副業の個人事業主は開業届が必要?

結論として、開業届を提出する必要はありません

前述の通り、個人事業主というのは自ら事業を営んでいるかどうかが判断軸です。

つまり、個人事業主になるということと、開業届を提出するという行為はイコールではありません

とは言え、副業の個人事業主でも開業届が必要になるケースやメリットもあります。

開業届の提出が必要になるケースは「継続して仕事をしている」ということが挙げられます。一方で、断続して年に数回ほどしか個人事業主として仕事をしていない場合は、開業届を提出する必要はありません。

また、開業届を提出するメリットとしては、主に以下の点が挙げられます。

  • 青色申告特別控除が受けられる(青色申告承認申請書の提出が必要)
  • 損益通算が可能
  • 損失の繰越しが可能
  • 経費として計上できる範囲が広がる

なお、デメリットもあり「各種書類の作成に手間がかかる」や「失業手当が受け取れない可能性もある」という点が挙げられます。

個人事業主になる目安

開業届提出済みの個人事業主となる目安は以下の通りです。

  • 個人事業主として本格的に仕事を始めるとき
  • 継続的に仕事を受注できると判断したとき
  • 個人事業主として確定申告が必要なとき

特に、個人事業主としての収入が増加傾向にある場合は、税制上開業届を提出したほうが良いでしょう。原則として、副業収入が「20万円以上」になると確定申告する必要があります。その際、開業届および青色申告承認申請書を提出していると「青色申告」が可能になるため、特別控除が適用されます。

副業で個人事業主になる6つのメリット

副業で個人事業主になるメリットは以下の6つです。

  • 必要経費を計上でき節税につながる
  • 青色申告特別控除を受けられる
  • 損失や赤字を繰り越せる
  • 本業と副業の所得を損益通算できる
  • 起業・独立時の練習になる
  • 家族への給与を経費にできる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.必要経費を計上でき節税につながる

個人事業主であれば、仕事をしていく上で必要な備品やWebツールなどの出費が経費として計上できます。

上記の出費が経費として計上でき、結果として節税につながりますので、個人事業主として仕事をする大きなメリットであるといえるでしょう。

例えば、仕事で使用するメモノートや付箋といった文具、月額料金で支払っているWi-Fi利用料などが経費になります。

その点、アルバイトやパートといった副業であれば、上記のような備品も“自己購入”となるでしょう。

2.青色申告特別控除を受けられる

個人事業主として仕事し、なおかつ開業届および青色申告承認申請書を提出していると「青色申告特別控除」が受けられます。

青色申告特別控除とは、所得税を確定申告する際に課税所得から一定額を差し引ける制度のことであり、個人事業主の所得税が軽減されます。

一方の白色申告は、申告書類が簡易的であり、申告業務に時間がとられないというメリットはありますが、青色申告のような特別控除が受けられないことを理解しておきましょう。

さらに詳しい内容は、以下の記事で解説していますのでそちらもぜひご覧ください。

3.損失や赤字を繰り越せる

個人事業主で開業届を出しており、なおかつ青色申告承認申請書も提出している場合は「損失や赤字を繰り越す」ことが可能です。なお、赤字は該当事業年度の翌年から最長3年間繰り越しできます。

現在はまだ軌道に乗り切れていない個人事業主の方でも、開業にともなう提出書類を正確に提出していれば適用される税制ですので、慌てず確実に事業を成長させられるでしょう。

4.本業と副業の所得を損益通算できる

個人事業主は、本業と副業の所得を損益通算することが可能です。

つまり、個人事業主として行っている副業が赤字であっても、本業の収入(給与および賞与)と相殺できるということです。

損益通算することにより、納税額がおさえられ節税対策につながりますので、個人事業主であれば覚えておくべきポイントであるといえます。

なお、「事業所得」で赤字を出した場合は他の所得と損益通算できますが、「雑所得」で赤字を出した場合は他の所得との損益通算は認められませんので、あらかじめ理解しておきましょう。

5.起業・独立時の練習になる

副業の個人事業主として仕事をしていると、今後の「起業・独立」にあたっての練習になるといえます。

現状は本業が会社員という場合でも、ゆくゆくは独立して副業を本業にしたいと考えている方も非常に多いでしょう。

起業・独立すると、経理および税務関係、慣れない書類の作成などが必要になりますので、副業時の経験が生かされるといえます。

現段階で、個人事業主として上記のような業務を行っておくと、起業・独立時点で非常に有利となるでしょう。

6.家族への給与を経費にできる

個人事業主として事業を営んでいく中で、家族を働き手として迎えた場合は、その給与を経費にすることが可能です。つまり、身内で仕事を回しながら家庭の収入を担保し、支払う給与を経費化できるので、節税対策につながるということです。

なお、同一生計親族に給与を払って経費に入れるためには青色事業専従者給与に関する届出」という書類を事前に提出しておく必要がある点に注意しておきましょう。

副業で個人事業主になる5つのデメリット

副業で個人事業主になるデメリットは以下の5つです。

  • 確定申告に時間と手間がかかる
  • 失業保険を受け取れない可能性がある
  • 税金の負担が大きくなる
  • 自由な時間が少なくなる
  • 会社に副業がバレるかもしれない

それぞれのデメリットを詳しく見ていきましょう。

1.確定申告に時間と手間がかかる

個人事業主として仕事をすると、確定申告という税金の申告義務が必ず発生します。

この確定申告は、収入や支出を細かく計算したのちに専用の書類を作成しますので、想像以上に手間がかかる業務となります。

ましてや「青色申告」となると、税務に関する基礎知識はもちろんのこと、書類関連も非常に複雑で調べることが多いといえます。

なんとか完成までこぎつけたとしても、少しのミスがあれば税務署からの指摘や修正の対応に追われてしまいます。

そのような時間と手間をかけたくないという方は、税務のプロである税理士に業務を依頼することがおすすめです。

ミツモアでは、簡単に複数の税理士から見積りがとれるため、これから個人事業主になろうと考えている方はもちろん、すでに個人事業主で確定申告が心配な方におすすめのサービスです。

ミツモアで税理士に見積りをとり、具体的な依頼費用が把握できれば、個人事業主としての方向性もきっと見えてくることでしょう。

2.失業保険を受け取れない可能性がある

個人事業主として副業する以上、本業を退職した際の「失業保険」が適用されてない可能性はあらかじめ把握しておきましょう。

失業保険というのは、被雇用者でなくなった場合の「無職期間収入」を補うものであり、言葉の通り“無職”であることが適用条件の一つです。

個人事業主として副業を始めていると、本業がなくなっても無職であるとはいえないため、保険適用外と判断されるケースがほとんどです。

なお、個人事業主としての収入が安定していない期間に本業を退職し、失業保険を受け取りたい場合は、個人事業主の「廃業届」を提出する必要があります。

3.税金の負担が大きくなる

個人事業主として事業を営み、利益が増えると必然的に「各種税金」の負担が大きくなります。

特に所得税に大きく関係している問題であり、個人事業主の場合は「累進課税」という所得が上がれば上がるほど税率も高くなる方式が採用されています。また、その他にも「個人事業税」や「消費税」、「住民税」などの負担もかかるため、個人事業主になるデメリットであるといえるでしょう。

なお、消費税については、2023年10月1日から導入された「インボイス制度」も深く関係しているため、個人事業主の税負担が増える要因となっています。

4.自由な時間が少なくなる

個人事業主として副業することで、プライベートに割ける「自由な時間」が少なくなります。

一般的には、平日の日中は本業、平日の夜および休日に副業、というスケジュールの方がほとんどでしょう。

上記を見てもわかる通り「本業から帰宅しても仕事」「本業が休みの日も仕事」という、実質プライベートタイムがない状態になります。

この点をあらかじめ理解した上で、個人事業主として副業をスタートしなければ、後々「こんなはずではなかった」と精神的疲労に悩まされる可能性もあります。

これから個人事業主として副業を始めようとしている方は特に、把握しておくべきポイントとなります。

5.会社に副業がバレるかもしれない

個人事業主として副業をしていると、本業の会社に“バレる”可能性があります。

これは、本業の会社が従業員の副業を禁止している場合に挙げられるデメリットです。当然、会社の方針として禁止されている行為ですから、なにかしらのペナルティや副業を強制的にやめさせられることになるでしょう。

また、副業がバレる要因としては「住民税」が挙げられます。

基本的に被雇用者は、会社が個人の住民税を納付する「特別徴収」という方法が適用されています。そして、このように会社の管理下にある住民税は、個人の“全収入”から算出されるため、必然的に副業の実績がバレてしまうという流れになります。

とはいえ、会社に副業がバレない方法もあり、以下の記事で解説していますので、詳しくはそちらをご覧ください。

副業で個人事業主になるには?手続きをわかりやすく解説

副業で個人事業主になるには、まずは自ら営める「職種を選定すること」が重要です。バイトやパートなどでない限り、個人で事業を進められれば、それだけで個人事業主になります。

しかし、前述の通り、開業届を提出し「本格的な個人事業主」としてスタートする場合は、いくつか手続きをする必要があります。

本章では、その手続きについて一つずつ詳しく解説していきます。

1.開業届を提出する

出典:国税庁ホームページ

まずは「開業届」を提出しましょう。

開業届を提出することは、本格的な個人事業主としてスタートする第一歩です。

個人事業主が行う開業届の作成および提出は、法人と比較すると簡単であり、書類関連も国税庁のWebサイトからダウンロードできます。

実際の提出までの流れとしては、開業に係る必要事項を記載し、税務署の窓口に持参もしくは郵送して完了となります。

2.青色申告承認書を提出する

出典:国税庁ホームページ

青色申告を希望する場合は「青色申告承認書」の提出が必須です。

これは、前述の開業届と同じタイミングで作成および提出すると良いでしょう。

なお、同時に提出できない場合は、2ヶ月以内に提出する必要がありますので、早めの対応を心がけておきましょう。

3.事業用の口座・クレジットカードを作成する

個人事業主としての「事業用口座・クレジットカード」を作成しましょう。

この点は、前述の提出書類のような必須項目ではなく、あくまでも任意の手続きになります。とはいえ、これから事業を進めて拡大しようと考えているのであれば、作成しておくことをおすすめします。

理由としては、事業の収支と個人(プライベート)の収支を明確に分けることで、経理や税務をスムーズに進められる点が挙げられます。

上記の収支を同じ口座、およびクレジットカードで管理してしまうと「どちらの出費かわからない」という問題が発生しやすいといえます。

4.会計ソフトを導入する

副業の個人事業主であったとしても「会計ソフトの導入」は検討するべき項目です。

日々の経理をしたり資金繰りをチェックしたりするために、帳簿の作成は必須であり、青色申告であれば「複式簿記」という形で提出するのが原則です。

これらの会計業務をソフト未使用で進めていくのは困難であり、加えて、負担や効率を考えても会計ソフトの導入は必要不可欠であるといえるでしょう。

また、個人事業主としての収入が向上・安定してきた段階では「税理士への依頼」も検討すると良いでしょう。

税理士への依頼パターンは「確定申告のみ」や「継続的な顧問契約」など、状況に応じて決めることが可能です。

なお、税理士へ依頼する際、重要ポイントの一つとして「事前に見積りをとる」ということも挙げられますので、ミツモアで複数の税理士から見積りをとり、比較検討することをおすすめします。

副業の個人事業主として成功する3つのポイント

副業の個人事業主として、成功するためのポイントは以下の3つです。

  • 時間管理を徹底する
  • 必ず契約書を結ぶ
  • デジタルツールを活用する

本章では、それぞれのポイントを詳しく解説していきます。

1.時間管理を徹底する

時間管理を徹底することで、以下のような効果があります。

  • 仕事を効率的に進められる
  • プライベートの時間を確保しやすくなる
  • 仕事にメリハリがつく

など

また、ここで言う時間管理には、1週間および1ヶ月単位でのスケジュール管理という意味も含まれています。

時間管理を徹底することで、さまざまな相乗効果を生み出し、クライアントワークや自己管理に役立つスキルも身に付いていくといえるでしょう。

2.必ず契約書を結ぶ

個人事業主として成功するために、契約書の締結というのは非常に重要です。

仕事というのは、A対Bの間で結ばれた契約書に基づいて進められているため、この点をおろそかにしてしまうと「以前と話が違う」や「報酬が支払われない」などといった問題が起こりかねません。

「会社じゃないし面倒だからいいか」と考えている方は要注意です。

3.デジタルツールを活用する

デジタルツールを活用すると、業務の効率化が図れるため、結果的に“時給を上げられる”といえます。

今では生成系AIが数多く登場しており、仕事効率化ツールに組み込まれるようになりました。

このようなデジタルツールを上手く使いこなし、円滑に仕事を進められれば、個人事業主として成功する可能性が広がるといえるでしょう。

しかし、デジタルツールに頼り過ぎると独自性がなくなり、盗作やコピーコンテンツとみなされ、事業失敗の原因になりかねない点には注意しておきましょう。

個人事業主の副業に関する3つの質問Q&A

個人事業主の副業に関するよくある質問は以下の3つです。

  • いくらから確定申告が必要?
  • 社会保険や税金はどうなる?
  • 収入が減ったらどうしたらいい?

本章でそれぞれの質問に回答していきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

1.いくらから確定申告が必要?

確定申告が必要になる収入は「20万円〜」です。

また、確定申告は自ら税額を算出し、税務署に届け出る義務があります。加えて、複雑な計算方式や税務知識を身に付ける必要もあります。

以下の記事では、確定申告に関する詳しい情報を記載していますので、そちらもぜひご覧ください。

2.社会保険や税金はどうなる?

社会保険に関しては本業が被雇用者である限り、個人事業主としての手続き、および社会保険料の支払いは必要ありません

しかし、税金に関しては、個人事業主としての「所得税」と「住民税」が課税されます。

3.収入が減ったらどうしたらいい?

収入が減った場合は「廃業する」という手段があります。

聞こえはあまりよくありませんが、副業の個人事業主であれば致し方ない点でもあります。現状、本業の収入があり、生活費がまかなえている状況であれば、問題なく廃業手続きを進められるといえますので安心しておきましょう。

しかし、本業を「3ヶ月後に辞める」という計画の元、個人事業主として副業している方は例外ですので、廃業以外の手段を考える必要があります。

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監修税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

副業でも事業所得での申告は可能です。青色申告を行なうことで節税にもなります。 届出書や申請書の手続きが分からない場合は税理士に確認しましょう。