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損益通算とは 株や不動産で損失が出た場合の手続きについて解説

最終更新日: 2021年02月09日

株や仮想通貨、不動産の譲渡等で譲渡損失が生じた場合、その損失を上場株式等の利子や配当金等によって得られた利益と合算可能です。これを損益通算と言いますが、損益通算は利益から税金や各種控除を差し引いた所得の間で行われ、所得の種類によっては損益通算ができない場合もあります。今回は損益通算の順序や、不動産と株式それぞれの損益通算の手続きについて詳しく解説します。専門的でわかりにくい損益通算を、わかりやすく解説しているのでぜひご一読ください。

この記事を監修した税理士

京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区たちばな台

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損益通算とは

損益通算とは
損益通算とは

株や不動産取引で損失が発生したら誰もが落ち込み「損したな」と感じるでしょう。しかし損益通算を行えば、課税対象となる所得額が減るため所得税や住民税を減らせます。まずは損益通算の概要や具体例を紹介し、損益通算とセットで押さえておくべき「損失の繰越控除」についても説明します。

損益通算とは

損益通算とは一定期間内に生じた利益と損失を合算し、利益を減らす行為です。利益が減れば課税対象となる所得の金額も減るため、税金を減らす効果があります。株取引であれば、同じ口座内で発生した利益と損失だけでなく、複数の口座間でも損益通算は可能です。ただし上場株式等の取引で生じた譲渡損失でなければ損益通算はできないので注意してください。また損失と合算できるのは上場株式等の利子や配当金等(2016年以降の公社債等の利子・分配金、公募株式投資信託の収益分配金を含む)に限定されます。

損益通算の例

複数の口座で株取引をしており、一定期間内に口座Aで100万円の譲渡利益が、口座Bで50万円の譲渡損失が生じていた場合、損益通算を行わなければ100万円の譲渡利益に対して税金がかかります。対して損益通算を行うと50万円の損失を利益から差し引けるので、課税対象の譲渡利益が減少し、その金額は100-50=50万円です。

株の譲渡所得に対してかかる所得税の税率は20.315%なので、譲渡所得が100万円のときは所得税額が20万3,150円なのに対し、譲渡所得が50万円に減ると所得税額は10万1,575円となります。したがって、この事例では約10万円分の節税効果があります。株の譲渡所得に対する税率が高いので、損益通算による節税効果は低くありません。

損失の繰越控除とは

損益通算を行ってもなお譲渡損失が残る場合、損失は翌年以降に繰り越せます。これを損失の繰越控除と呼び、譲渡損失が生じた年の翌年以降、最大3年間にわたって利益からの控除が可能です。例えばある年に損益通算を行った後に50万円の譲渡損失が確定し、翌年100万円の譲渡利益が出た場合、翌年の利益100万円から昨年の損失50万円を差し引くことができます。

損益通算と繰越控除を利用するには確定申告が必要

損益通算と損失の繰越控除を利用するには、どちらも確定申告が必要です。源泉徴収ありの特定口座を利用して取引していると確定申告の必要がないと思い込み、損益通算をすべきケースでも確定申告を忘れがちなので注意してください(ただし同じ口座内で受け入れた配当金等であれば確定申告をせずとも損益通算可能です)

また損失の繰越控除は最大3年間にわたり損失を繰り越すことが可能ですが、その期間中は毎年確定申告をする必要があります。つまり損失の繰越控除を利用するのであれば、「損失が生じた年」「損失が生じた年の翌年」「損失が生じた年の翌々年」「損失が生じた年の翌々年のさらに翌年」の4年間継続して確定申告を行わなければなりません。

損益通算の対象となる所得とならない所得

損益通算の対象となる所得とならない所得
損益通算の対象となる所得とならない所得

損益通算は全ての所得においてできるわけではありません。ここでは損益通算の対象となる所得及びならない所得を紹介します。

損益通算の対象となる所得

損益通算の対象となる所得は不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4つです。

不動産所得 主に土地や建物等、不動産の貸付けによって生じた所得
事業所得 事業を営んでいる人がその事業から生じた所得
譲渡所得 土地や建物、株式、ゴルフ会員権等などの資産を譲渡することで生じる所得
山林所得 山林を伐採したり立木のまま譲渡した際に得られる所得。ただし山林を取得してから5年以内に譲渡もしくは伐採した場合、事業所得か雑所得になる

損益通算が認められる上記4つの所得においても、内容によっては損益通算の対象外となる場合があります。例えば競走馬の譲渡にかかるもので一定の場合を除き、生活に通常必要ではない資産について生じた損失は他の所得と損益通算できません。生活に通常必要でない資産とは、主に趣味や娯楽、保養、鑑賞の目的で所有する不動産等です。つまり、所有する別荘やリゾート地の土地等(事業に要しない資産)を他者に貸付けても、その貸付けによって生じた損失は損益通算の対象外となります。

また不動産所得では、土地や土地上の権利を取得するために支払った負債の利子に相当する金額についても損益通算の対象外です。つまり土地の購入のためにカードローンや消費者金融等を通じて借金した場合の利子は損益通算の対象とはなりません。さらに不動産所得では、一定の組合契約に基づき営まれる事業で生じた損失のうち、特定組合員にかかる部分についても損益通算の対象外です。

損益通算の対象とならない所得

所得の性質上、損益通算に馴染まないため、以下の所得については損益通算の対象外です。

利子所得 預貯金や公社債等の利子や投資信託の収益の分配等にかかる所得
退職所得 退職によって勤務先から受け取る退職手当等の所得。解雇予告手当や未払賃金等も退職所得に含まれる
配当所得 株主や出資者が法人から受け取る利益の配当や剰余金の分配、投資法人からの金銭の分配等にかかる所得
給与所得 勤務先から受け取る給料や賞与等の所得
一時所得 営利を目的とした継続的行為から発生した所得以外の所得で、労務や役務、資産の譲渡による対価としての性質を有しない所得

例)生命保険の一時金、損害保険の満期返戻金

雑所得 他のいずれかにも当たらない所得

例)副業に係る所得、公的年金

利子所得や退職所得は計算上、損失は発生しません。配当所得と給与所得、一時所得及び雑所得内では損失が生じる可能性はあるのですが損益通算では対象外です。

損益通算の順序

損益通算の順序
損益通算の順序

損益通算には守るべき順序があります。ルールを知らずに適当に算定してしまうと誤った金額が出てくるので、確実に損益通算の順序は押さえておきましょう。損益通算の順序は以下の通りです。

①:所得を2つのグループに分ける

まずは各所得を下記の2つのグループに分けます。

Aグループ:利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・雑所得
Bグループ:譲渡所得・一時所得

②:それぞれのグループ内で損益通算を行う

Aグループ内とBグループ内のそれぞれで損益通算を行います。Aグループ内で損益通算が可能な所得は不動産所得と事業所得です。従ってこの2つの所得で生じた損失を、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得で生じた利益の額から控除します。

次にBグループ内で損益通算が可能な所得は譲渡所得です。従って譲渡所得から生じた損失を一時所得の利益から控除します。一時所得で損失が生じていた場合、その損失は損益通算できないので、譲渡所得の損失がそのまま残る形です。

③:どちらかのグループに損失が残っている場合はグループ間で損益通算を行う

どちらかのグループで損失が残っている場合、グループ間で損益通算を行います。つまりAグループ内の通算を行ってもなお損失があるならば、Bグループ内の損益通算後の金額から差し引きます。逆の場合も同様です。

④:それでも損失が残っている場合は山林所得から差し引く

グループ間で損益通算を行っても損失が残っているなら、山林所得の金額から差し引きます。

⑤:それでも損失が残っている場合は退職所得から差し引く

山林所得の金額から控除してもなお損失が残っている場合、退職所得から差し引きます。退職所得と損益通算を行っても残った損失は、その年の純損失です。ちなみに山林所得で損失が生じた場合、まずAグループから差し引き、次にBグループから差し引き、最後に退職所得から差し引きます。

不動産を売却したときの損益通算

不動産を売却したときの損益通算
不動産を売却したときの損益通算

地価の値下がり等で不動産を売却したときに損失が発生してしまう可能性は低くありません。不動産を売却したときの損益通算では、対象外となる場合や特例が適用されるケースもあるので注意が必要です。不動産を売却した際の損益通算で押さえておくべき事項を紹介します。

土地や建物などの譲渡損失は損益通算の対象外

個人が土地や建物等を譲渡して譲渡損失が発生した場合、他の土地や建物の取引で生じた譲渡所得との合算は可能です。しかしそれでもなお控除しきれない損失については、他の所得と損益通算はできません。ただし長期譲渡所得に該当する場合に限り、住んでいた土地や建物を譲渡したときに生じた損失は、給与所得や事業所得といった他の所得と損益通算可能です。長期譲渡所得とは譲渡があった年の1月1日時点において、譲渡対象の土地や建物の所有期間が5年を越える場合の所得となります。原則として、土地や建物の譲渡損失は損益通算の対象外ですが、5年以上居住する土地や建物の譲渡損失は損益通算が可能になるのです。またこの場合、損益通算を行ってもなお控除しきれない金額があるならば、翌年以降3年間にわたる繰越控除も利用できます。

マイホームを売却して損失が出た場合の特例

先に紹介した通り居住期間が5年未満では売却しても損益通算できませんが、特例の適用を受ければ損益通算の対象となります。

特例には2つのパターンがあり、1つ目が住宅ローンが残っているマイホームを売却したときに譲渡損失が出たケースです。住宅ローンの残高を下回る金額でマイホームを売却して生じた譲渡損失は、一定の要件を満たせば、その譲渡損失を他の所得から損益通算できます。

2つ目がマイホームを買い替えたために譲渡損失が生じたときです。マイホームを売却して得た金額で新たにマイホームを購入した場合、譲渡損失が生じたときは一定の条件に当てはまれば損益通算が可能になります。どちらの特例も特例適用の期限が設けられており、マイホームの売却を令和3年12月31日までに行わなければ特例は適用されません。各特例の具体的な適用要件については、国税庁のホームページをご覧ください。

株やFXの損益通算

株やFXの損益通算
株やFXの損益通算

株やFXで生じた譲渡損失の損益通算における注意点などを紹介します。株の譲渡利益を確定申告する場合、全ての所得を合算して所得税を算出する総合課税方式と、その他の所得と分けて考える申告分離課税の2つがあるので注意しましょう。

申告分離課税の損益通算や繰越控除

上場株式の配当金を確定申告する場合、申告分離課税または総合課税のどちらかを選択します。総合課税を選択してしまうと上場株式の損失と損益通算はできないため、損益通算をするなら申告分離課税を選択しなければなりません。

またFXで生じた利益は、選択の余地なく申告分離課税の対象となります。株とFXどちらの場合も損益通算した結果、損失が残ったときは翌年以降3年間にわたって繰越控除が可能です。申告分離課税における株とFXそれぞれの所得計算方法は以下の通りになります。

株:譲渡所得-取得費-譲渡費用=譲渡所得
FX:粗利益-必要経費-損失繰越額=FX所得金額(雑所得)

申告分離課税による株式譲渡等の確定申告では、通常使用する申告書B第一表・第二表のほかに申告書第三表(分離課税用)の提出も必要なので注意してください。さらに譲渡所得の金額計算のために課税所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)も必要です。

上場株式等に係る譲渡損失の損益通算の特例

先述した通り、上場株式等を譲渡して生じた譲渡損失については、確定申告により同年中に生じた上場株式等の利子所得や配当所得と損益通算が可能です。上場株式等の譲渡によって生じた損失を繰越控除する場合、上場株式等にかかる譲渡所得や配当所得等の金額からは控除できますが、一般株式等にかかる譲渡所得等からは控除できないので注意してください。まず上場株式等にかかる譲渡所得から控除し、なお差し引きしきれない金額がある場合、上場株式等にかかる配当所得等から控除します。

まとめ

まとめ
まとめ

損益通算は損失と利益を相殺でき、節税効果を受けられる制度です。損益通算を行うときは、損益通算ができる所得なのかきちんと確認してください。また損益通算には手順があるので定められた順序に従って計算しましょう。マイホームの売却や株・FXの譲渡損失は損益通算の特例があるので、こちらも忘れずに内容を確認してください。

監修税理士からのコメント

京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区たちばな台

上場株式等の売却により損失が出たときは、確定申告をすることで損失を最長3年間繰り越すことができます。ただし、繰越期間中は毎年連続して確定申告書を提出する必要があります。また、申告により合計所得が増加すると、一部の所得控除が受けられなくなる等、税金計算において不利になる場合があるので注意が必要です。損益通算の制度は複雑で分かりにくいため、税務の専門家である税理士に相談するとよいでしょう。
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この記事を監修した税理士

京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区たちばな台

宮澤明宏(みやざわあきひろ)公認会計士・税理士・相続診断士 1976年 愛知県丹羽郡出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。 2018年11月税理士登録。 税理士登録後、ミツモアを通じて半年間で20件以上の確定申告業務を受託。デザイナー、一人親方、小売、ITエンジニア、不動産業等、多様な業種のお客様に対して丁寧なサービスを提供している。また、相続診断士として活動しており、エンディングノートの書き方セミナーを通じて「生前から相続へ備えることの大切さ」を多くの人に広める活動を行っている。
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