出納帳(すいとうちょう)は業務上のお金を管理するうえで基本的な帳簿です。
現金や預金などの管理が雑になると、法人税や所得税の申告書を正確に作成できないケースが起こり得ます。そのため日頃から出納帳で管理する習慣をつける必要があります。また種類ごとに出納帳を使い分けることも大切です。
本記事ではお金の入出金管理を行なう出納帳について、種類や書き方などを詳しく解説します。
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
出納帳とは?現金出納帳など3種類ある
出納帳(すいとうちょう)は「いつ・誰に・何の目的で・いくら支払った(受け取った)」などの取引をすべて記録する基本的な帳簿です。法人・個人にかかわらず、事業を営むうえで欠かせません。
出納帳を正しく作成すれば、お金の流れを可視化できるようになります。お金の流れを正確に把握することは、適切な事業展開・経営判断において重要です。そのため日頃から出納帳を作成し、入出金を正しく記録する必要があります。
出納帳の種類は「現金出納帳」「預金出納帳」「小口現金出納帳」の3種類です。それぞれの特徴や使い分け方について解説します。
現金出納帳
現金出納帳は、現金の入出金を記録した帳簿です。金銭出納帳と呼ばれるケースもあります。
現金取引を出納帳に記録すると、現金の流れが明確になります。また実際の現金残高と帳簿の残高が一致していれば、不明な入出金がないことも確認可能です。
また、確定申告時に作成する貸借対照表や勘定科目明細書には、現金の期末残高が記載されます。これらの残高と現金出納帳の残高が一致していれば、書類の裏付けにもなります。
預金出納帳
預金出納帳は銀行口座のお金の流れを記録する帳簿です。記入する内容は現金出納帳と同じで、取引について「いつ・誰に・何の目的で・いくら支払った(受け取った)」を記録します。預金口座における入出金を明確化するうえで便利です。
なお、銀行口座を複数持っている場合には、口座ごとに預金出納帳を作る必要があります。すべての取引をひとつの帳簿に記載してしまうと、口座ごとの残高やお金の流れが不明瞭になってしまい、帳簿の効果を活かせません。適切な管理のために、口座ごとに分けて預金出納帳をつけましょう。
小口現金出納帳
小口現金出納帳は、小口現金の入出金を記録する帳簿です。
事業を営んでいると、仕入など金額の大きな支払いとは別に、消耗品の購入や旅費精算などで少額の現金が必要になります。このような少額の支払いに備えて用意する現金を、小口現金と呼びます。現金出納帳で管理する現金とは分け、小口現金出納帳で管理する方法が一般的です。
小口現金は事業所が複数ある場合などに、現地で少額の精算を行なう目的で用意される場合が多いです。一方で現金を扱う人や部署が限られている場合や、現金の支払いが少ない事業者の方は、現金出納帳だけで管理する方が手間が小さくて済みます。
出納帳はなぜ必要?メリットは?
現金出納帳や預金出納帳などを作ることで、お金の流れを可視化し、不正やミスを防げます。
お金の流れを可視化できる
出納帳は全てのお金の出入りを「どこに何の目的でいくら払った(受け取った)」という情報として目に見える形で残せます。
とくに個人事業主はプライベートと仕事のお金が混同しがちです。目に見える形で記録しておけば、不明な入出金が発生する可能性を減らせます。
不正やミス防止に役立つ
現金出納帳に記録しておけば、誰が、いつ、どこに支払ったのかを可視化で残るため、不正やミスの抑止力となります。
従業員と業務を分担する場合、不正やミスが起きる可能性もゼロではありません。万が一不正があったときでも、出納帳の記録を確認すれば原因を見抜けます。お金の流れについてきちんと把握できるのが出納帳のメリットです。
出納帳の基本的な書き方
出納帳はいくつかの種類がありますが、記載する内容は基本的に同じです。入出金ごとに「いつ・誰に・何の目的で・いくら支払った(受け取った)」を記録しましょう。
出納帳に書く内容
出納帳では入出金ごとに以下の5つの項目を記入します。
記載項目 | 内容 |
---|---|
①日付 | 取引が発生した日付 |
②勘定科目 | 入出金の用途を勘定科目で記載
文房具を購入した場合には「消耗品費」口座から引き出した場合には「普通預金」などを記載 |
③摘要 | 相手先や目的など、入出金に関する詳細を記載する項目
例:文房具店でボールペン5本を購入した場合→「○○文具店 ボールペン 5●本」 |
④収入金額または支出金額 | 現金を受け取った場合は収入金額、支払った場合は支出金額の欄に金額を記載 |
⑤残高 | 「前日の残高+当日の収入金額-当日の支出金額」を記載 |
摘要には書き方に明確なルールはありませんが、後から見たときにわかりやすいように書くと良いでしょう。
月の最後には、その月に記載された収入金額と支出金額の合計額を記載します。翌月へ繰り越される現金残高は、一番下の行に「次月へ繰越」として記入します。
出納帳に書く勘定科目一覧
出納帳の科目には、仕訳帳など他の帳簿に使用する勘定科目と共通のものを使用します。
ただし、使用する勘定科目は、集計する事業者の判断によって異なる場合が多いです。たとえば同じコピー用紙を買ったとしても、消耗品費として処理する場合もあれば、事務用品費として処理する場合もあります。
そのためそれぞれの取引に対してどのような勘定科目を使用するか、事前に決めておく必要があります。以下は現金出納帳で使用する勘定科目の例です。
勘定科目 | 内容 |
---|---|
消耗品費 | 業務に必要な備品や消耗材で、使用可能期間が1年未満のものや金額が10万円未満のものに要した費用 |
事務用品費 | ボールペンやホッチキスなどの事務に使用する備品の費用 |
旅費交通費 | タクシー代や電車代など、業務のために勤務先以外の場所に移動する費用 宿泊費や日当を含む |
通信費 | 電話代や切手代、インターネットのプロバイダー料金などの費用 |
新聞図書費 | 新聞購読料や書籍代などの費用 |
租税公課 | 固定資産税や自動車税、収入印紙などの費用 |
接待交際費 | 取引先の接待や慶弔などに関する費用 |
雑費 | 少額の支出で他に勘定科目を設定するほど重要性の高くないもの |
仮払金 | 内容や金額が確定しないまま支出したお金 |
仮受金 | 内容や金額が確定しないまま受け取ったお金 |
出納帳を書く流れ
記載手順も出納帳ごとの違いはありません。以下の手順で記載していきましょう。
【出納帳の記載手順】
- 前月繰越残高を先頭行に転記
- 日々の取引を漏れなく記載
- その月の最後の記帳が終わったら仕切り線(二重線)を引いてその月の現金出納帳を締める
- 仕切り線の下の行に収入金額と支出金額のそれぞれの合計金額を記入
- 合計金額の下の行に次月への繰越残高を記入
出納帳はそれぞれのページの最終行にその月の残高が表示されていると見やすくなります。月ごとに改ページして使用するとよいでしょう。
出納帳の作成が簡単にできるソフト・テンプレート
出納帳の書き方にはいくつかの方法があります。それぞれに特徴と適したケースがあるため、自身にあった方法の選択が大切です。
書き方 | おすすめできるケース |
---|---|
エクセルテンプレート |
|
会計ソフト |
|
アプリ |
|
ノート |
|
エクセル・テンプレートを使う
エクセルを使って出納帳を作れば、表や関数の組み合わせで自身にあった様式にカスタマイズできます。そのため出納帳の管理を自己流で進めたい人におすすめです。
ただし、エクセルを利用する場合は、単式簿記の様式など基本的な知識が求められます。また高度なカスタマイズにはエクセルの関数をうまく活用するスキルが必要です。
出納帳の作成・管理をエクセルで実施するなら、無料テンプレートが便利です。自分でシートを作る手間が省けます。
おすすめはMicrosoftの公式サイトで公開されている現金出納帳テンプレートです。自動計算機能がついているため、必要項目と金額さえ入力すれば簡単に出納帳を作れます。必要に応じてカスタマイズも可能です。
現金出納帳のテンプレート
マネーフォワードクラウドには多数のテンプレートがありますが、ダウンロードにはメールアドレスなどの登録が必要です。
預金出納帳のテンプレート
小口現金出納帳のテンプレート
会計ソフトを使う
出納帳作成・管理の手間を減らすなら、会計ソフトが便利です。会計ソフトはあらかじめ記入欄と計算システムが組み込まれており、項目の選択や金額の入力などをするだけで、容易に帳簿を作成できます。
会計ソフトは入力すべき項目が少ないので、出納帳を書くうえでのミスが起こりにくいです。誤記入と考えられる入力があった場合に、アラートを発する機能がついている会計ソフトもあります。製品によっては確定申告書や収支申告書も作成可能です。
ただし、会計ソフトの多くは年単位で間費用が発生するため、ランニングコストがかかる点に注意しましょう。また多くの作業を自動で行なうので、単式簿記の仕組みや概念を学習できない側面もあります。
以下の記事では、現金出納帳作成におすすめな会計ソフトの機能や特徴を比較しています。会計ソフト選びに迷った際は参考にしてみてください。
ぴったりな会計ソフトをお探しなら、以下の記事もご覧ください。ミツモアでは、複数の会計ソフトを比較してあなたにぴったりの製品を探せます。
アプリを使う
スマートフォンアプリを使って出納帳を作成する方法もあります。会計ソフトと似ていますが、申告書出力などの機能がなく、入出金管理に特化しているケースが多いです。
スマートフォンは時間・場所を問わず使いやすいため、サクッと出納帳を書きたいときに便利です。日頃からスマートフォンを使う機会が多い方や、パソコンを持っていない方なら、アプリの活用がおすすめです。
ただしアプリは製品の種類が多いため、自身に合ったものを選ぶのに時間がかかりがちです。また取引数が多い事業の場合、かえって入力の手間が大きくなる恐れがあります。
おすすめのアプリは会計王や給料王などで有名なソリマチのタブレット会計です。
タブレットだけで現金出納帳の記録ができるアプリで「App Store」から無料でダウンロードできます。あまり会計の知識がない方でも使いやすいように工夫されているので初心者の方でも使用しやすいアプリです。
ノートに手書きする
出納帳はノートなどに手書きで作ることも可能です。パソコンに不慣れな人や持っていない人、電子的なデータの保存に抵抗がある場合などに適しています。
手書きの場合、ノートと筆記用具さえあれば手軽に出納帳を記録できます。パソコンやスマートフォンなど、機器の不具合でデータを失ってしまう恐れがない点も強みです。
ただし手書きでの出納帳作成・管理は、物理的な手間が大きくなります。取引回数が多い場合は負担が重くなってしまうため注意しましょう。
ノートの出納帳は文具店や、通販で購入可能です。ノートの出納帳でおすすめの商品を紹介します。
コクヨ 金銭出納帳 上質紙 20行 B6 44枚 スイ-11
アピカ 簡易帳簿 現金出納帳 B5横型 AO1
現金出納帳の作成に迷ったら税理士への相談もおすすめ
ここまで現金出納帳の基本から書き方まで解説してきました。現金出納帳は重要な会計帳簿の1つであり、事業を行なう上で必ず作成しなければならない帳簿です。分からないことは税理士などの専門家に相談して解決しましょう。
税理士に相談するメリット
会計帳簿は法人税や所得税を計算する確定申告に欠かせない資料です。中でも、現金出納帳は日々の現金の動きを記録する帳簿のため、小さな作業を毎日積み重ねて作成できます。しかし「どの勘定科目を使ったらいいのだろう?」などの疑問が出てきたときにご自身で解決するのは時間も手間もかかるでしょう。こうしたとき、専門家である税理士に相談できることは大きなメリットになります。
信頼できる税理士の選び方
税理士の選び方で重要なポイントは、ご自身に合った税理士を選ぶことです。たとえば、会計ソフトを利用して現金出納帳を作成しようとするとき、多くの方はどの会計ソフトを使用したらいいのか質問します。このとき、親切に会計ソフトの使い方まで説明してくれる税理士もいれば、事務所で使用しているソフトを詳しい説明もなく薦める税理士もいます。
どちらの税理士に依頼したいかは個人の判断によりますが、まずは質問の対応などでご自身に合った税理士かどうかを見極めることが重要です。
監修税理士からのコメント
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
ミツモアで税理士を探そう!
税理士とのお付き合いは、そのときだけのものではなく、長期間に渡るものです。だからこそ、費用だけでなく、相性や対応の誠実さも、事前に十分に確認しておきたいですね。
そんな税理士選びにおすすめなのが、全国の税理士が登録している「ミツモア」です。地域と依頼したい内容に応じて、まずは見積もりが確認できます。その後、メッセージでのやりとりで担当業務の範囲やオプションなどを確認できるので、面談するのと同じように、税理士の人柄が見えてきます。
簡単!2分で税理士を探せる!
ミツモアなら簡単な質問に答えていただくだけで2分で見積もり依頼が完了です。
パソコンやスマートフォンからお手軽に行うことが出来ます。
最大5件の見積りが届く
見積もり依頼をすると、税理士より最大5件の見積もりが届きます。その見積もりから、条件にあった税理士を探してみましょう。税理士によって料金や条件など異なるので、比較できるのもメリットです。
チャットで相談ができる
依頼内容に合う税理士がみつかったら、依頼の詳細や見積もり内容などチャットで相談ができます。チャットだからやり取りも簡単で、自分の要望もより伝えやすいでしょう。
税理士に依頼するならミツモアで見積もり依頼をしてみてはいかがでしょうか?