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労働基準法違反となる9つのケース|違反事例や労働者ができる対応も紹介

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最終更新日: 2024年06月28日

働き方改革が進んだ近年でも、未払い賃金や長時間労働の問題は生じています。勤め先の風土に違和感を覚えている方も居るのではないでしょうか。

労働基準法に違反すると、企業は社名が公表されたり罰金や刑事罰を科されたりします。しかしそもそも法律や違反ケースを知らないために、そうした違反を見逃してしまっている場合が多く存在します。

実際に労働基準法違反になるケースや具体事例、違反を告発した際の流れ、違反に直面した労働者ができることを知って身を守りましょう。

労働基準法違反となる9つのケースと罰則

労働

労働基準法違反として発覚するケースは労働時間、残業代、休日や有休に関するものなどがあります。

労働基準法の違反が発覚した場合、企業は罰則を課される可能性もあるので注意が必要です。違反にあたる行為は内容によって次のような罰則が設けられています。

  • 1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金
    • 労働基準法違反における最も重い罰則であり、強制労働をさせた場合が該当する
  • 1年以下の懲役または50万円以下の罰金
    • 労働者からの中間搾取や、労働最低年齢に満たない児童を労働させた場合などが該当する
  • 6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金
    • 労働者を国籍や社会的身分などを理由に差別的な労働条件を課した場合や、解雇予告義務違反、違法な時間外労働を科した場合などが該当する
  • 30万円以下の罰金
    • 労働者に労働条件を示さなかった場合や、休業手当を支給しなかった場合などが該当する

このように労働基準法に違反すると罰金が課せられるだけでなく、場合によっては逮捕されて実刑判決を受けてしまう可能性があります。

違反となるケースと科せられる可能性のある罰則をセットで見ていきましょう。

①労働時間に関する違反

36協定を締結しないまま1日8時間・週40時間を超えて社員に労働を課している雇用主は、労働基準法違反となります。

36協定は残業を命じるために、雇用主が労働者と結ばなければならない協定です。しかし協定を締結していても、原則として月に45時間(1年間に360時間)を超える時間外労働は認められません。

特別条項付きの36協定を届け出ていた場合でも、労働者の時間外労働が月に45時間を超える回数は6回までと決められています。

また36協定を結ばないまま、労働者に週7日間出勤させることも違法です。

科せられる可能性のある罰則

  • 6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金
  • 1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金

36協定については詳しくは以下をご参照ください。

関連記事:36協定とは?時間的な要件や罰則、対策方法をわかりやすく解説

②残業代に関する違反

労使間の合意がない限り、法定労働時間を超えて労働させることはできません。

そのため時間外労働や午後10時から午前5時の深夜時間帯の労働を行わなければならない場合は、割増賃金を支払うと定められています。

時間外労働の場合は通常の1.25倍、深夜手当の場合は0.25倍、そして休日手当は1.35倍の割増賃金の支払いが必要です。

科せられる可能性のある罰則

  • 6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金

③休憩・休日・有給休暇に関する違反

1日の労働時間に対しての休憩時間は、6時間超え~8時間以下の場合は45分以上、8時間越えの場合は1時間以上の休憩が必要であると定められています。

また使用者は労働者に対し、原則として週に1回以上の休日(法定休日)を与えなければなりません。

労働者の希望する時季に有給休暇を与えない場合も労働基準法違反です。たとえ与えたとしても、有給ではなく通常の休暇とみなして賃金を払わない場合も違反となります。

科せられる可能性のある罰則

  • 6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金
関連記事:労働基準法が定める年間休日の考え方 最低ラインは105日|ミツモア

④賃金に関する違反

賃金は通貨で・直接・全額・毎月1回以上・一定期日という5原則に従って支払われなければならず、未払いの場合は労働基準法違反となります。

金額においては、産業別に定められた特定最低賃金に満たない場合は違反となります。

また他人の就業に介入して利益を得る賃金の中間搾取も違反です。

科せられる可能性のある罰則

  • 6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金
  • 1年以下の懲役または50万円以下の罰金

⑤差別に関する違反

労働者が女性であることや国籍や信条、社会的身分を理由に賃金に差をつける行為は労働基準法違反です。

科せられる可能性のある罰則

  • 6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金

⑥妊娠・出産に関する違反

赤ちゃんを抱く女性

出産前後の休暇を認めない場合や、妊娠中や出産後1年以内の女性に残業を強いる労働をさせた場合などは労働基準法違反となります。

科せられる可能性のある罰則

  • 6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金
  • 1年以下の懲役または50万円以下の罰金

⑦就業規則や解雇に関する違反

労働者と雇用契約を結ぶ場合、雇用主は労働条件を書面で提示する義務があります。

また労働者を解雇する際には、少なくとも30日前までに予告する必要があり、予告できなかった場合には30日分以上の平均賃金を支払わなければいけません。

科せられる可能性のある罰則

  • 30万円以下の罰金
  • 6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金

⑧労働災害に関する違反

労働者が怪我・病気になった際の療養補償や、労働災害によって家族が死亡した際の遺族補償や葬祭料を支払わない場合などは労働基準法違反となります。

労働災害の違反は大問題として取り沙汰されるケースも多いため注意が必要です。

科せられる可能性のある罰則

  • 6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金

⑨労働条件が明示されていない場合

労働契約を締結する際、労働者に賃金や労働時間などの労働条件を提示しない行為は労働基準法違反となります。

提示された労働条件とは異なる労働環境であった場合は、すぐに労働契約を解除することが可能です。

科せられる可能性のある罰則

  • 30万円以下の罰金
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労働基準法違反で企業名が公表された事例

パソコンの画面を指差す男性

厚生労働省が公表している2021年度の労働基準法の違反事例を一部ご紹介します。労働時間や賃金に関する事例が多いです。

労働時間に関する違反事例

労働時間に関する違反事例では、36協定を超えた時間外労働を従業員に行わせるケースが多く摘発されています。

  • 有効な36協定の締結・届出なく時間外労働を行わせたもの(栃木県)
  • 労働者1名に違法な時間外労働を行わせたもの(東京都)
  • 労働者1名に、36協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせたもの(神奈川県)
  • 労働者1名に、36協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせ、労働者2名に、36協定の締結・届出を行わず違法な時間外労働を行わせたもの(新潟県)
  • 労働者1名に、36協定の延長時間を超える違法な時間外労働を行わせたもの(新潟県)
  • 労働者1名に、月100時間以上の違法な時間外・休日労働を行わせたもの(愛知県)

残業代に関する違反事例

残業代は割増賃金の規定に従わなかった違反ケースが多いです。

  • 労働者1名に対し、1か月間の時間外労働の割増賃金の一部である合計約11万円を支払わなかったもの(埼玉県)
  • 労働者1名に、1か月間の時間外・深夜労働の割増賃金合計約9万円を支払わなかったもの(愛知県)

休憩・休日・有休に関する違反事例

2021年度は有休代を支払わなかったり、労働時間について虚偽の報告をしたりした場合が摘発されました。

  • 労働者1名に、同人が指定し取得した年次有給休暇の賃金を、支払わなかったもの(神奈川県)
  • 実際には違法な時間外・休日労働を行わせたにもかかわらず、労働基準監督官に対し虚偽の帳簿書類を提出したもの(長野県)

賃金に関する違反事例

賃金に関する違反事例は最も多く、支払われなかった期間は1ヶ月のものから1年以上という悪質なケースもあります。

  • 労働者3名に対し、違法な減給制裁を行い賃金の一部(計約21万円)を支払わなかったもの(北海道)
  • 労働者7名に1年8か月間の定期賃金合計約1,028万円を支払わなかったもの(茨城県)
  • 労働者13名に、1か月分の定期賃金約165万円を支払わなかったもの(栃木県)
  • 労働者6名に1か月間から2か月間の定期賃金合計約90万円を支払わなかったもの(神奈川県)
  • 労働者8名に、法定の割増率で計算した割増賃金を支払わなかったもの(大阪府)

労働条件に関する違反事例

労働条件をきちんと明示せずに労働者を働かせたケースが昨年度はいくつか生じました。

  • 労働者2名に対し、労働条件について、書面を交付する等により明示しなかったもの(北海道)
  • 労働契約を結ぶ際に、労働条件について書面を交付すること等の方法で明示しなかったもの(神奈川県)
  • 労働契約を締結した労働者に対して、賃金、労働時間等の労働条件を書面等の方法で明示しなかったもの(兵庫県)
参考:労働基準関係法令違反に係る公表事案(令和3年6月1日~令和4年5月31日公表分) | 厚生労働省労働基準局監督課

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会社の労働基準法違反を告発した際の流れ

労働基準監督署

労働基準法違反が告発されると、労働基準監督署が企業へ調査に入ります。調査の中で違反事項が発見された場合は是正勧告が行われるので、すみやかに改善し是正報告書を提出しましょう。

1.労働基準監督署による調査

労働基準法違反が疑われる場合、まずは労働基準監督署による企業への調査が行われます。

例えば長時間労働の疑いがかかっている時は、調査で従業員のタイムカードや出勤簿といった労働時間の手がかりとなる記録や資料を確認されるでしょう。

このとき労働基準監督署の調査を拒否すると、30万円以下の罰金が科せられる場合があります

2.違反が認められた場合は是正勧告

労働基準監督署による調査の結果、労働基準法に違反しているとみなされた場合、当該企業に対し労働基準監督署から是正勧告が行われます。

是正勧告を受けた時は違反事項を是正し、是正報告書を労働基準監督署へ提出します。

是正勧告について詳しく知りたい方は以下もご参照ください。

関連記事:是正勧告とは?罰則や未然に防ぐポイント、対処法をわかりやすく解説

3.是正されない場合は使用者の逮捕・在宅捜査・起訴の可能性あり

労働基準法違反を是正しなければ、刑事手続に移行し捜査の対象になる可能性があります。

もし違反事項を是正しなくても、是正勧告時点での罰則はありません。しかし刑事手続きに移行した場合、企業に加えて役員などの使用者個人も送検され起訴が行われる可能性があります。

事業に支障が出るだけでなく、会社のイメージが下がってしまうといったリスクを避けるためにもきちんと違反事項を改善しましょう。

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労働基準法違反だった場合に労働者ができること

相談窓口

労働基準法の違反があった場合は社内の通報窓口や組合労働相談コーナーに相談しましょう。まずは社内の窓口に相談し、それでも改善が見込めないようであれば外部機関の活用を検討します。

勤務先の通報窓口に相談する

労働組合など勤務先の社内通報窓口があれば相談しましょう。団体交渉に向けた動きを取ってくれたり、アドバイスを受けられたりする可能性があります。

「相談しても窓口が対応してくれない」「事態の改善が見込めない」といった場合は、外部機関への相談を検討してください。

労働基準監督署へ通報する

労働基準監督署は企業が労働基準法を守っていない場合に、指導勧告や調査、送検などを行う権限を持っています。社内で相談しても改善がみられない場合は、労働基準監督署へ通報しましょう。

  • 直接訪問:勤務先所在地管轄の労働基準監督署へ出向いて相談する
  • 電話通報:勤務先所在地管轄の労働基準監督署に電話する
  • Web:厚生労働省の労働基準関係情報メール窓口にメールする

労働者基準監督署の指導勧告や調査が行なわれれば、会社は是正に向けて動かざるをえません。また企業が悪質な場合には送検によって罰則が適用されるケースもあります。

参考:全国労働基準監督署の所在案内|厚生労働省
参考:労働基準関係情報メール窓口|厚生労働省

組合労働相談コーナーに相談する

厚生労働省が全国に設置している組合労働相談コーナーに相談するのもひとつの方法です。各都道府県の労働局や労働基準監督署内に設置されているので、最寄りの施設に問い合わせてみましょう。

職場のトラブルや解決方法など、労働基準監督署よりも広い範囲で相談が可能です。

参考:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

弁護士に相談する

労働トラブルの解決に強い弁護士に相談する方法もあります。

総合労働相談コーナーや労働基準監督署は解決に向けて動いてくれるものの、企業と労働者の中立的な立場です。そのため不当解雇や残業代未払いなど労働者目線のトラブルが解決しない場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。

転職するのも有効

労働基準法違反をしている会社なら、それ以上働いていても改善の見込みがない可能性もあります。そうした場合は他の会社に転職することも検討しましょう。

退職しても弁護士に依頼するなどして未払いの賃金や残業代・退職金を請求できます。無理して働き続けて健康を損ねることのないようにしてください。

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未払い賃金請求の時効は5年

砂時計と時計

労働基準法は2020年4月に改正され、労働者保護の観点から賃金請求権の消滅時効期間が5年に延長されました。

2020年3月31日までに支払われた賃金の時効期間は2年間ですが、2020年4月1日以降に支払われた分の賃金は5年の時効期間があります。

その他、有休や退職金等の正確な消滅時効期間は以下の通りです。

【改正労働基準法の消滅時効期間】

~2020年3月31日(改正前) 2020年4月1日~(改正後)
賃金 2年 5年
有休 2年 2年
退職金 5年 5年
災害補償請求権 2年 2年

万一未払い賃金や有休、退職金等がある場合は、それらが支払われるべき時期を確認し、消滅時効期間内に請求しましょう。

参考:民法の消滅時効規定 – 労働・賃金・雇用 | 日本労働組合総連合会

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