「是正勧告(ぜせいかんこく)って何だろう」「是正勧告を受けないためにはどうしたらいいの」とお悩みではありませんか。
是正勧告とは「労働基準監督署から労働基準法を違反した企業に行われる勧告」のことです。是正勧告を受けると「企業名が公表される」などの罰則があります。
是正勧告を受けた場合の対処法や未然に防ぐ方法を知っておくことで、安心して経営を続けることができるでしょう。
この記事では是正勧告とは何か、その罰則や未然に防ぐポイントについて解説します。
是正勧告とは労働基準監督署から違反企業への勧告
是正勧告とは「労働基準監督署が労働基準法に違反している企業に対して、違反部分を正してもらうために出す勧告」です。法律を違反していることが明白な事案について、厚生労働省が出す警告と捉えるとよいでしょう。たとえば残業代未払い、長時間労働などがあると労働基準法に違反してしまいます。
企業は次の流れで是正勧告を受けることが一般的です。
【是正勧告の流れ】
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是正勧告書とは「違反事項・指導内容・是正期限が書かれた文書」で、企業はこれに従って期限までに指摘事項を改善しなければなりません。この指示に従わなかった場合、企業名の公開や司法処分が実施される可能性があります。
是正勧告に法的な拘束力はない
是正勧告は行政処分ではなく行政指導なので、法的な拘束力はありません。ですので是正勧告を受けたとしても、それを直接的な理由として罰則を受けることはないです。また企業がそれに従って改善するかどうかは、企業の判断に委ねられています。
これらの理由から勧告を受けても、労働基準法に違反している状況を一向に改めようとしない経営者も決して少なくないのが実態のようです。
しかし法令に違反している状況であることは間違いありません。改善の様子がなく悪質だと判断されると、企業名の公開や書類送検などが行われて、取り返しのつかない事態に陥ってしまいます。
是正勧告を受けたら労働者のためにも、速やかに状況を改善する必要があるでしょう。
是正勧告による罰則
是正勧告を受けても法的な拘束力はないので、それを直接的な理由として罰則を受けることはありません。しかし多くの場合、次のような処分が待っています。
【是正勧告による罰則】
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企業名の公開
一定の法令違反が認められると、書類送検を受ける前に企業名が公開されてしまいます。これは企業への制裁を目的としているわけではないので、罰則には該当しないからです。
実際に是正勧告を受けたタイミングで、同時に企業名が公開されるケースがほとんどです。
企業名が公開されると社会的な信用を失ってしまいます。たとえば取引先との関係が断たれてしまったり、売上が低下したりする悪影響が出てしまうでしょう。
こういった事態を避けるためには「あらかじめ是正勧告を受けないように注意する」しか方法がありません。厚生労働省も遵法意識を啓発するために行っているので、法令違反をしないように「普段の労働環境を定期的にチェックする」ようにしましょう。
無視を続けていると書類送検される場合もある
是正勧告を無視し続けていると、労働基準監督署の監督官が書類送検の手続きを取る可能性があります。
監督官は警察と同じ「司法警察権」を有しているため、悪質な法令違反の場合は刑事事件の手続きを取る権限を持っているのです。
書類送検されてしまうと検察によって起訴され、刑事裁判にまで発展する可能性もあります。ここまで発展すると、逮捕や多額の罰金を科せられてしまうでしょう。
ほとんど書類送検に至ることはないようですが、是正勧告を無視していると大きな事態になってしまいます。こういった事態を避けるためにも、是正勧告書に従って早めに改善しましょう。
是正勧告で報告されることが多い違反内容
是正勧告では主に次の4つの項目について違反が報告されています。
【是正勧告で報告されることが多い違反内容】
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これらの違反のくわしい内容を押さえておくことで、どういった部分に気をつければ是正勧告を受けにくいかを確認できるでしょう。
①就業規則に関する違反
就業規則の違反は是正勧告の対象です。
前提として従業員数が10名以上の事務所では、就業規則を設定して労働基準監督署に提出する義務があります。
以下のような項目で違反をしてしまうことが多いです。
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是正勧告を受けないためにも「就業規則を届け出ること」「従業員に周知すること」を意識しましょう。
②労働時間に関する違反
労働時間に関する違反も是正勧告の対象です。
労働基準法における社員の適正労働時間は「1日8時間、1週40時間まで」です。
また企業と社員が36協定を結んでいたとしても「年間で720時間以内」かつ「6カ月の平均残業時間は80時間以内」を満たさなければいけません。
加えてサービス残業についても「残業代未払い」として是正勧告の対象になります。
是正勧告を受けないためにも「決められた時間の中で働かせること」「残業代はしっかりと払うこと」を意識しましょう。
③有給休暇に関する違反
有給休暇に関する違反も是正勧告の対象となります。
労働基準法では雇用日から6カ月以上継続勤務しており、全労働日の8割以上出勤している社員に対して、有給休暇を付与しなければいけません。
次のような内容で違反することが多いです。
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1と2については「企業が意図的に有給休暇を認めていない」とみなされるので、確実に是正勧告が来てしまいます。すぐに社内制度を改善するようにしましょう。
3と4については悪質性は低いものの、是正勧告を受けてしまう可能性があります。有給休暇が与えられる条件について再確認しましょう。
有休休暇に関する違反が最も報告されているので、これらの点をよく意識してください。
④労働契約に関する違反
是正勧告は労働契約に関する違反にも行われます。
社員を雇い入れる際には、労働条件を書面にて通知しなければいけません。しかし、労働契約書の作成自体をしていない場合や、契約内容で労働条件が明示されていない場合は勧告の対象となります。
労働契約書では次の内容を明示しなければなりません。
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記載事項は細かく規定されているので、厚生労働省の資料などを参考に勧告を受けないようしっかりと明示しましょう。
是正勧告を未然に防ぐ方法
是正勧告を受けないために、未然に防ぐ方法を押さえておきましょう。
【是正勧告を受けないための方法】
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労働基準自主点検票を活用する上で、意識すべきポイントがあります。
自主的に労働条件・労働環境を整える
日ごろから自主的に労働条件・労働環境を整えることで、是正勧告を予防することができます。具体的には労働基準法を始めとした規則に沿って、これらをチェックしていきます。
【チェックすべき項目の具体例】
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実際の状況と照らし合わせながら、自社の規則や取り組み状況を細かく確認しましょう。
労働条件自主点検表を活用する
労働基準監督署では自主的な労働条件の改善を促すために「労働条件自主点検表」を中小企業に向けて公表しています。
労働基準監督署の調査で確認するポイントと同じなので、労働条件自主点検表に記載されている内容を遵守することが大切です。
労働条件自主点検表で意識すべきポイント
労働基準監督署の調査でよく指摘される項目について、重点的に確認しましょう。そうすることで是正勧告を未然に防ぐことができるはずです。
【労働条件自主点検表で注意すべき項目】
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管理職でも深夜の割増賃金の支払いは必要ですし、働いた時間に対して割増賃金をきっちりと支払うことが重要です。また健康診断は定期的に行うことが必要なので、忘れないように実施しましょう。
是正勧告や立ち入り調査を受ける際の対処方法
是正勧告や立ち入り調査の受ける際の対処法を押さえておくことで、焦らずに適切な対応をすることができるでしょう。迅速に対応できれば、被害も少なく済むはずです。
【是正勧告や立ち入り調査の受ける際の対処法】
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立ち入り調査では弁護士を雇って、あらかじめ書類を用意しておく
労働基準監督署の立ち入り調査には「突然企業に来訪してくる場合」と「電話で事前に伝えられる場合」の2通りがあります。
電話で事前に立ち入り調査の連絡が来た場合にはまず弁護士に立ち合いをお願いしましょう。その後に必要な書類を用意しておきます。
弁護士に立ち合いを依頼する
法律の専門家である弁護士に立ち合いを依頼することで、調査員からの質問に対して、自社の状況と法律知識を踏まえた適切な回答をすることができます。
さらに是正勧告で指摘された項目の解決が自社のみでは難しい場合、弁護士や社会保険労務士など専門家のサポートを受けるのも有効です。具体的にどのような状況を改善すれば法令違反にならないのか、具体的にアドバイスをもらえるでしょう。
あらかじめ必要な書類を準備しておく
あらかじめ必要な書類を準備しておけば、調査をすばやく終わらせられます。また協力的な姿勢を示すことで、悪質だと判断されるリスクを抑えられるでしょう。
確認対象として準備を指示されることが多い基本的な書類は7種類です。
【基本的に用意すべき書類】
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また従業員50名以上の事業所には追加で3種類の書類確認が実施されます。
【従業員50名以上の事業所の場合に必要な書類】
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その他にも更に事前調査を命じられる場合があります。
【労働監督基準所から命令される可能性のある書類】
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是正勧告を受けたら是正勧告書の内容に従って、期日までに改善する
是正勧告を受けた場合は是正勧告書の内容に従って、期日までに確実に改善することが必要です。
まずは是正勧告書に記載された違反項目を確認し、問題点をしっかり理解しましょう。その後改善するために必要な具体的な施策を検討します。
是正勧告書の指示に従って適切な改善を行い、是正報告書を提出できれば、そこで是正勧告は終了です。
改善が不十分な場合には後日再監督が実施されます。再監督が実施された場合より厳しい調査が行われる可能性が高いです。ですので期日内に改善できるようにすばやく取り組むことが大切です。
具体的な改善案がわからない場合は企業法務に精通した弁護士に相談しながら、具体的な対策について検討するとよいでしょう。
是正報告書の書き方
是正報告書の書き方には厳格なルールがありません。是正したという事実を監督官に伝えるためには、労働者と協議した記録や指摘事項を改善したと証明できる資料をきちんと用意することが重要です。
是正報告書の書き方の一例は、労働基準監督署対策相談室のホームページで挙げられています。
また改善が完了していなくても、是正報告書は途中経過報告として提出することもできます。
是正勧告が期限までに間に合わない時は早めに報告
是正勧告書で指定された期限までに是正報告書の提出が間に合わない場合でも、必ず労働基準監督署へ連絡して期限の延長を申し入れましょう。
提出を延長する際は代わりに中間報告書の提出が求められる場合もあります。
報告せずに期日までに間に合わなかった場合、再調査が実施されたり、悪質だと判断される恐れがあります。改善しようとしている姿勢を示すことが最も重要です。
是正勧告に対して不服申し立てはできない
是正勧告に対して不服申立てを行うことはできません。
なぜなら是正勧告は行政指導にあたるので、行政不服審査法や行政事件訴訟法における手続きが利用できないからです。
是正勧告を受けた場合は、素直に改善するしか方法はありません。
是正勧告書と指導票の違い
是正勧告と指導票の違いは「明らかに法令違反をしているかどうか」です。
どちらも行政指導で強制力はありません。
是正勧告は労働基準法や労働安全衛生法を明らかに違反した際に行われます。
一方で指導書は法令違反の可能性があったり、望ましくない点があったりする場合に発行されるものです。
是正勧告を受けないように日頃から労働環境を整えよう
是正勧告には法的な強制力はないものの、悪質だと判断された場合、企業名の公開や書類送検が行われてしまいます。
万が一是正勧告を受けてしまった場合、まずは弁護士などを雇ってください。その後指摘された点を速やかに改善し、是正報告書を提出しましょう。
また是正勧告のリスクをなるべく避けるために「普段から労働環境をチェックする」などの姿勢が非常に大切です。
労働環境を日頃から整えて、従業員にとって働きやすい職場を維持していきましょう。
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