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業務改善による人件費削減のロードマップ。失敗しない5つの手順とIT・BPO活用法

最終更新日: 2025年10月23日

日本企業は今、労働生産性の停滞という深刻な課題に直面しています。OECD加盟国中23位という低迷に加え、労働投入量は増えど実質的な付加価値が伸びない「生産性のパラドックス」は、多くの企業の経営を圧迫しています。

この状況下で「人件費の削減」は経営の重要課題ですが、安易な給与カットやリストラは現場の士気を下げ、優秀な人材の流出を招くだけです。真の解決策は、「人件費 削減」と「業務改善」をイコールで結び、生産性そのものを高めることにあります。

本記事では経営企画や管理部門の担当者向けに、現場の抵抗を乗り越え「人件費の最適化」と「生産性の向上」を両立させる、実践的な業務改善プロジェクトのロードマップを5つのステップで徹底解説します。

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業務改善による人件費削減の全手順と成功の3大原則

業務改善による人件費削減とは、単に人を減らすことではありません。それは、ムダな業務を徹底的に排除し、創出されたリソース(人的資本)をより付加価値の高い業務へ再配置する「リソースの最適化」です。

成功には、明確なロードマップと、実行を支える鉄則が不可欠です。まずは本記事の結論として、アプローチの本質、全5ステップの概要、そして成功の鍵となる3つの鉄則を提示します。

人件費削減の「正しい」アプローチ:コストカットではなく「生産性向上」

「人件費削減」と聞くと、現場は「自分の仕事が奪われるのではないか」という不安を抱きます。これが変革に対する最大の抵抗力となります。

だからこそ、プロジェクトの目的を明確に定義しなくてはなりません。目的はコストカットではなく、日本企業が構造的に抱える低い労働生産性の根本改善です。

安易な削減は、従業員のモチベーション低下や雇用不安を招きます。正しいアプローチは、RPABPOの活用によって従業員を単純作業から解放し、人間にしかできない創造的な業務、すなわち「コア業務」へシフトさせることです。これは「守り」のコスト削減であると同時に、「攻め」の生産性向上策なのです。

実践ロードマップ:業務改善で人件費を最適化する「5つのステップ」

この「リソースの最適化」は、以下の5つのステップで体系的に進めます。本記事では、この5つのステップをそれぞれ実行手順と注意点を詳細に解説していきます。

  1. Step 1. 【可視化】 全業務の洗い出しと棚卸し
  2. Step 2. 【分析】 業務の優先順位付け
  3. Step 3. 【実行】 3大改善アプローチの選択
  4. Step 4. 【再配置】 創出リソースの最適化
  5. Step 5. 【定着】 効果測定と継続的改善

成功の鍵を握る「3つの鉄則」

このロードマップを実行する上で、失敗するプロジェクトに共通する「落とし穴」を避けるため、以下の3つの鉄則を遵守してください。

鉄則1:経営トップのコミットメントを得る

業務改善は、現場の一部門や情報システム部門のタスクではありません。経済産業省の「DX推進ガイドライン」が示す通り、経営トップ自らが強いリーダーシップを発揮し、全社的な経営戦略として推進する必要があります。

鉄則2:従業員への丁寧な説明を徹底する

変革の目的が「リストラ」ではなく、「会社の持続的成長」と「従業員の負担軽減(単純作業や残業の削減)」にあることを、繰り返し説明します。従業員視点のメリットを明確に語ることが、不安を払拭し協力を得る鍵です。

鉄則3:短期的なコスト削減だけを追わない

DXや業務改善は、短期的なROI(投資対効果)だけでなく、「投資しなかった場合に市場から取り残されるリスク」という長期的視点で判断すべきです。これはコストではなく、未来への「投資」です。

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Step 1:【可視化】全業務の洗い出しと棚卸し

ロードマップの第一歩は、現状を客観的に把握することから始まります。「感覚」や「思い込み」を排除し、事実(ファクト)ベースで業務の実態を明らかにします。

【やるべきこと(ToDo)】

  • 「誰が」「何を」「どれだけの時間」やっているかを客観的に洗い出します。
  • 現場担当者へのヒアリング、業務フロー図の作成、タスク管理ツールなどを用いて、全ての業務をリストアップします。
  • 「名前のない業務」や「担当者しか知らない属人化された業務」も全て掘り起こします。

【Point】なぜ可視化は失敗するのか? 現場の抵抗を乗り越える「巻き込み術」

可視化は、プロジェクトで最初にぶつかる「壁」です。 現場から「忙しい」と後回しにされたり、正確な情報が出てこなかったりする失敗は後を絶ちません。この原因は、現場の怠慢ではなく、人間が変化に対して抱く本能的な不安や懸念(心理的抵抗)にあります。

  • 現状維持バイアス: 「これまでのやり方で問題なかったのに、なぜ変える必要があるのか」という自然な感情。
  • 能力への不安: 「新しいツールを覚えるのが面倒だ」「使いこなせないと評価が下がるのではないか」という不安。
  • 過去の失敗体験: 「どうせ今回も掛け声だけで、結局何も変わらないだろう」という冷笑的な見方。

この抵抗を乗り越えるには、トップダウンでの強制ではなく、現場を「巻き込む」プロセスが不可欠です。

  • 対策1:パイロット導入(スモールスタート) 全社一斉ではなく、まずは経理部や総務部など、定型業務が多く効果が出やすい特定の部署・業務に絞って試験的に導入します。
  • 対策2:現場のキーマンを味方につける 計画の初期段階から、現場の業務を熟知し、かつ現状の非効率に問題意識を持っている担当者をプロジェクトに参加させます。彼らの意見や不安に真摯に耳を傾け、「自分たちのための改革」という当事者意識を醸成します。

Step 2:【分析】業務の優先順位付け

業務を洗い出したら、次に「どの業務から改善すべきか」を分析し、ターゲットを絞り込みます。リソースは有限であり、全てに同時に着手することはできないため、この優先順位付けが戦略の核となります。

【やるべきこと(ToDo)】

  • 業務の分類: Step 1で洗い出した業務を、「コア業務」と「ノンコア業務」に分類します。
    • コア業務: 売上や競争力に直結する、企業の核となる付加価値の高い業務。(例:製品開発、営業戦略、財務分析)
    • ノンコア業務: 企業活動の維持に必要だが、それ自体が付加価値を生まない間接業務や定型業務。(例:データ入力、請求書発行、給与計算)
  • ターゲットの特定: 業務改善による人件費削減のメインターゲットは、この「ノンコア業務」です。
  • 優先順位付け: ノンコア業務を「(1)改善インパクト(時間削減効果)」と「(2)実行の難易度(コスト・現場の抵抗度)」のマトリクスで評価し、「インパクトが大きく、かつ難易度が低い」領域から着手します。

【Point】なぜ「ノンコア業務」に着目するのか?

多くの業務改善がECRS(排除・結合・交換・簡素化)の原則に留まりがちですが、それでは不十分です。

ノンコア業務は、企業が存続するために不可欠ですが、いくら時間をかけても企業の競争力には直結しません。この領域に社員の貴重なリソース(人件費)が縛り付けられていることこそが、日本企業の生産性を押し下げる最大の要因の一つです。

ノンコア業務を徹底的に自動化・外部化し、そこで創出された社員リソースを、人間にしかできない「コア業務」に集中させる。これこそが、業務改善による人件費削減の戦略的本質です。

Step 3:【実行】3大改善アプローチの選択

ターゲット業務が定まったら、いよいよ「実行」フェーズです。Step 2で特定したノンコア業務に対し、最も効果的な改善アプローチを選択・実行します。

【やるべきこと(ToDo)】

  • ターゲット業務の特性に基づき、「自動化」「外部委託」「標準化」の3つのアプローチから最適な手段を選択します。
  • 多くの場合、まず「標準化」を行い、その上で「自動化」または「外部委託」を適用します。

アプローチ1:ITツール・RPAによる「業務の自動化」

RPA(Robotic Process Automation)に代表される自動化ツールは、人間がPC上で行う定型的な繰り返し作業を代行させます。 その効果は絶大で、ある建設資材メーカー(日野興業)では、システム間のデータ連携や転記作業の自動化により、会社全体で月間170時間もの工数削減を達成(※)しています。

  • RPA (Robotic Process Automation): 既存のPC操作をそのまま自動化でき、スモールスタートに適しています。プログラミング知識不要なツール(月額5万円〜)も多く、中小企業のバックオフィス業務と好相性です。
  • SaaS(クラウド型業務システム): 特定業務に特化したクラウドサービスです。
    • 勤怠管理システム (例: KING OF TIME): 2025年4月からさらに厳格化される働き方改革関連法(育児・介護休業法など)へのコンプライアンス対応に必須です。
    • 経費精算システム (例: 楽楽精算): 交通系ICカード連携や領収書読み取りで経費精算プロセスを劇的に効率化します。
  • ERP(統合基幹業務システム): 会計、人事、生産などの基幹情報を統合するシステムです。「クラウドERP」(例: SAP S/4HANA Cloud, GLOVIA)の登場により、初期費用を抑えて中堅・中小企業でも導入が可能になりました。

アプローチ2:アウトソーシング(BPO)による「業務の変動費化」

BPO(Business Process Outsourcing)は、給与計算、経理、ITヘルプデスクといったノンコア業務を、プロセスごと外部の専門企業に委託する経営戦略です。

国内BPO市場は年4.8兆円規模で成長しており、その背景には深刻な人手不足があります。自社で専門人材を採用・維持するよりも、BPOを活用してノンコア業務を切り離し、固定費であった人件費を業務量に応じた「変動費」に変えることができます。

  • 総合BPOサービス (例: パソナ, トランスコスモス): 人事・経理・総務など幅広い業務を一括で委託可能。全社的なコスト構造の見直しに適しています。
  • 専門特化型BPOサービス: 給与計算採用代行、ITヘルプデスクなど、特定の専門業務に特化。自社にノウハウがない領域や、特定部門の負荷が極端に高い場合に即効性があります。

アプローチ3:業務フロー・ルールの「標準化・簡素化」

「自動化(IT)」や「外部委託(BPO)」は強力な手段ですが、その「前段階」として業務の標準化・簡素化が重要です。

標準化されていないカオスな業務プロセスを、そのまま自動化(RPA)したり、外部に委託(BPO)したりしても、絶対にうまくいきません。承認フローが属人化していたり、マニュアルが整備されていなかったりする状態では、RPAはすぐに停止し、BPOベンダーは業務を遂行できません。

まず業務フローを見直し、ムダを削ぎ落とし、誰でも同じ品質で実行できるよう「標準化」する。この地道なステップを飛ばしたプロジェクトは、ほぼ確実に失敗します。

Step 4:【再配置】創出リソースの最適化

パソコンを打つ若い女性の手元

業務改善は、ノンコア業務を効率化して終わりではありません。むしろ、そこからが「攻め」の体制構築のスタートです。Step 3によって創出された「時間(工数)」をどう活用するかが、企業の未来を分けます。

【やるべきこと(ToDo)】

  • Step 3によって創出された「時間(工数)」、すなわち「余剰リソース」を、より付加価値の高い業務へ再配置します。
  • 例:RPAでデータ入力作業から解放された経理担当者を、財務分析や予実管理といった「コア業務」に従事させます。
  • 例:BPOで給与計算業務を外部化した人事担当者を、採用戦略の立案や組織開発といった「コア業務」にシフトさせます。

【Point】人件費削減のゴールは「リストラ」ではない

ここでの最大のポイントは、人件費削減の真のゴールは「余剰人員のリストラ」ではないと明確に定義することです。

創出されたリソースを「コスト」として切り捨てるのではなく、企業の競争力向上に直結する「攻め」の領域へ再投資する。このポジティブなメッセージこそが、従業員の雇用不安を払拭し、変革への協力を得る鍵となります。

【Point】「攻め」の体制構築を阻むスキルギャップ

ただし、「今日から単純作業ではなく、分析業務をしてください」と命じるだけでは、従業員は混乱します。多くの場合、新しいコア業務を遂行するためのスキルが不足しているからです。

ここで「リスキリング(従業員教育)」の必要性が生じます。導入したITツールを使いこなすための教育はもちろん、財務分析やデータ活用といった、新しいコア業務のためのスキルアップ支援をセットで提供しなくてはなりません。この教育投資を怠ると、再配置は機能不全に陥ります。

Step 5:【定着】効果測定と継続的改善

業務改善は、一度実行したら終わりの「プロジェクト」ではありません。継続的に効果を測定し、改善を続ける「プロセス(組織文化)」として定着させることが最終ゴールです。

【やるべきこと(ToDo)】

  • 施策実行後の効果を測定するKPI(重要業績評価指標)を設定し、定期的にモニタリングします。
  • KPIの例:
    • 一人当たり実質労働生産性: 「付加価値額 ÷ (労働者数 × 労働時間)」。日本の2023年度の実質成長率は+0.5%と鈍化しており、この実質的な付加価値向上が本質的な指標です。
    • 労働分配率: 「人件費 ÷ 付加価値額」。この数値が適正な範囲に収まっているかを継続監視します。
  • PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回し、継続的な改善文化を醸成します。

【Point】「導入して終わり」が最大の失敗

多くの企業が、ITツールを「導入して終わり」になってしまいます。導入直後は一時的に工数が削減されても、業務内容の変化や組織変更に対応できず、数ヶ月後には元の非効率な状態に戻ってしまうケースは少なくありません。

Step 5で設定したKPIを経営指標としてウォッチし続け、生産性の向上を「一過性のお祭り」ではなく「継続的な企業文化」へと昇華させることが重要です。

【Point】ガバナンス欠如が招く「ブラックボックス化」と「改善の形骸化」

RPA導入後に管理ルールがないまま放置された「野良ロボット」が問題化するケースは有名ですが、これはガバナンス欠如の一例に過ぎません。この問題は、SaaS導入、BPO活用、業務フロー標準化といったあらゆる改善アプローチで発生し得ます。

  • SaaS導入の場合: 全社的な管理ルールがないと、各部署が個別に類似のSaaSツールを契約し始めます(部門最適の罠)。結果、部署間でデータが連携できずサイロ化し、余計なコストが発生するなど、全社最適の効率化が阻害されます。
  • BPO活用の場合: 委託先ベンダーの業務品質やプロセスを管理・評価するルール(SLAなど)が曖昧な場合、委託先の業務がブラックボックス化します。業務変更への対応が遅れたり、品質が低下したりしても検知できず、結局社内担当者がフォローアップに追われて工数が減らない、という形骸化を招きます。
  • 業務フロー標準化の場合: 一度作成した標準マニュアルを「誰が」「いつ」見直すかというルールがなければ、マニュアルはすぐに陳腐化します。現場は実態に合わないマニュアルを使わなくなり、結局、昔の属人的なやり方に戻ってしまいます。

どのような改善策であれ、導入して終わりではありません。「誰が」「いつ」「どのように」そのプロセスやシステムを維持・管理・更新するのか。その全社的なガバナンス(ルール)を確立することこそが、改善効果を持続させるために不可欠なのです。

まとめ:人件費削減は「守り」と「攻め」の両立。まずは業務の可視化から

電卓で計算

日本企業は今、生産性向上という歴史的な岐路に立たされています。旧来のやり方に固執して緩やかな衰退の道を歩むか、変革の痛みを乗り越えて新たな成長軌道を描くか、その選択は経営判断にかかっています。

人件費 削減」は、単なる「守り」のコストカットではありません。それは「業務改善」による生産性向上、すなわち「攻め」の経営戦略と表裏一体です。

本記事で示したロードマップの第一歩は、高価なITツールを導入することではありません。まずは自社の業務プロセスを客観的に見つめ直し、「どこにノンコア業務が隠れているか」を徹底的に可視化することから始めてください。それが、持続的な成長への最も確実な一歩となります。

業務改善による「人件費削減」、次の一歩をプロに相談しませんか?

ガッツポーズを挙げるビジネスマンのイラスト

この記事で解説した通り、業務改善による人件費削減の鍵は「ノンコア業務のアウトソース(BPO)」にあります。

しかし、 「何から業務を可視化すればいいか分からない」 「複数のシステムにまたがる『手入力』や『コピペ』が多くて、自動化は無理だ」 「BPOを導入しても、結局は自社の確認作業が残りそう」 といった不安から、第一歩を踏み出せずにいませんか?

その課題の根源は、既存システム間に存在する「ツール間のすきま作業」と、「人による手作業」を前提とした業務プロセスそのものにあるかもしれません。

ミツモアの「業務支援サービス」は、AIエージェントと専門家チーム(BPaaS)を組み合わせ、その両方を一気に解決します。

  1. AIが「すきま作業」を自動化:既存のシステムやExcelはそのままに、AIアシスタントが面倒なデータ入力や転記、ダウンロード作業を代行します。
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「単純作業」から解放され、社員が本来の「コア業務」に集中できる環境を、まずは無料相談でシミュレーションしてみませんか? 御社の状況をお伺いし、どこから効率化できるかご提案します。

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