仕訳入力の手作業に追われ、月末の残業が常態化していませんか。紙の領収書や請求書の処理、部下の入力ミス修正に疲弊し、「この非効率な業務をいつまで続けるのか」と悩む経理担当者・管理職の方は少なくありません。


その課題は貴社特有のものではなく、市場全体が直面する構造的な問題です。本記事では仕訳入力の削減に効果的なシステムの全体像、自社の課題にあった製品の見つけ方、そして導入を成功に導く選び方のポイントまで解説します。

仕訳入力の手作業を削減したいものの、自社に最適なツールが選べず、導入後の運用にも不安がある方へ。
ミツモアの業務支援サービスでは、特定ツールに偏らない中立的な専門家が貴社の課題を診断。「ツールの隙間」を埋めるAI自動化から「業務の丸ごと外部化」まで、最適な解決策をご提案します。
仕訳入力は「4つのシステム」で削減可能!課題別の最適解を紹介

仕訳入力の削減は主に4種類のシステムによって実現可能です。重要なのは、「どの業務の入力を減らしたいか」という課題起点で、選ぶべきシステムが異なる点です。
| 課題 | 最適解 |
| 経費精算が多い | 経費精算システム |
| 請求書の処理が多い | 請求書受領システム(AI-OCR搭載) |
| 銀行取引やEC売上の入力が多い | 会計ソフト(自動連携機能) |
| 複数システム間のデータ転記が常態化 | RPA / システム連携ツール(iPaaS) |
自社が今、どのシステムの導入を優先すべきか。以下の「診断チャート」と「概要比較表」で、現状を整理してください。
【診断チャート】あなたの会社が今、優先すべきシステムは?
- Q1. 経理部門で最も工数がかかっている手入力業務は?
- A: 営業担当者など従業員の経費精算(紙の領収書が多い)
- B: 取引先から届く請求書の処理(紙やPDFが多い)
- C: 銀行の入出金明細や売上データの入力
- D: 販売管理システムから会計ソフトへの転記など
- Q2. 回答別の推奨システム
- Aの場合 → 経費精算システム
- Bの場合 → 請求書受領システム
- Cの場合 → 会計ソフト(の連携機能強化 or リプレイス)
- Dの場合 → RPA / iPaaS
各システムで「何が」「どう」自動化されるのか? 概要比較表
| システム分類 | 自動化される主な業務 | 主な機能 | 導入が適する企業 |
| 経費精算システム | 領収書・交通費の入力、仕訳作成 | スマホOCR、ICカード連携、仕訳自動生成、承認ワークフロー | 従業員の立替経費精算が多い企業 |
| 請求書受領システム | 請求書の受領・スキャン、仕訳作成 | AI-OCRによる読み取り、インボイス要件確認、仕訳・支払データ生成 | 紙やPDFの請求書処理が多い企業 |
| 会計ソフト (クラウド) | 銀行・クレカ明細の入力 | 銀行/クレカ明細の自動取込、AIによる仕訳推測・学習 | 複数の口座やカードの入力を手作業で行っている企業 |
| RPA / iPaaS | システム間のデータ転記・連携 | 定型作業の自動実行(RPA)、APIによるシステム間連携(iPaaS) | 複数のシステムが未連携で、手動のコピペが多い企業 |
なぜ今、仕訳入力の「手作業」がリスクになるのか?
「これまでも手作業で回せてきた」という認識は、もはや通用しません。仕訳入力の手作業を放置することは、深刻な経営リスクに直結します。このリスク認識こそが、上層部を説得する第一歩です。
リスク1:深刻な人手不足と生産性の低下
経理部門の人手不足は深刻です。ある調査では経理担当者の半数以上が人手不足を感じ、そのうち9割弱が「深刻だ」と回答しています(※)。
この状況下で、手作業による仕訳入力という付加価値の低い業務に従業員を拘束し続けることは、採用難を加速させ、既存社員の離職(エンゲージメント低下)を招く直接的な原因となります。
リスク2:属人化とヒューマンエラーによる信頼性低下
手作業は必ずミスを誘発します。ある調査では、経理担当者の83.2%が「属人化している請求書業務がある」と回答。さらに、63.4%が手作業・紙中心の業務に課題を感じ、その最大の理由が「手作業によるミス発生」(50.0%)**です。
手入力ミスによる月次決算の遅延やデータの不整合は、経営陣の誤った意思決定を招くリスクとなります。
リスク3:法改正への対応遅れ(インボイス・電帳法)
最も喫緊のリスクが、法改正への対応です。
- 電子帳簿保存法(電帳法):2024年1月から電子取引データの「電子保存」が完全義務化されました。PDFで受け取った請求書を印刷して保存する運用は、もはや法令違反です。電子データは、「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できるなど、厳格な要件を満たして保存する必要があります。
- インボイス制度:仕入税額控除を受けるには、登録番号などが記載された「適格請求書」の保存が必須です。
経理部門は今、受け取った請求書一枚に対し、「インボイス要件を満たしているか(内容の正当性)」と「電帳法要件を満たして保存できるか(保存の正当性)」という二重のコンプライアンスチェックを迫られています。これを手作業で続けることは非現実的であり、税務リスクを著しく増大させます。
仕訳入力削減システムの詳細と導入成功の鍵
自社の課題が明確になったら、次は具体的な解決策を深掘りします。ここでは「よくある失敗」と、それを回避するための「成功の鍵」をセットで解説します。
課題(1) 営業の「経費精算」の手入力とチェックを撲滅したい
【どう変わるか (Before → After)】
- Before: 営業担当者が紙の領収書を糊付けし、手書きの精算書を提出。経理がそれを一枚ずつ目視でチェックし、会計ソフトに手入力する。
- After: 営業担当者がスマホで領収書を撮影(OCR)し、ICカード(交通費)を連携させて申請。AIが仕訳を自動生成し、経理はPC上で承認するだけ。仕訳データは会計ソフトに自動連携されます。
実際に、従業員295名の製造業である株式会社東陽理化学研究所は、「楽楽精算」の導入で、月200枚以上発生していた紙の精算書を完全にゼロにしました(※)。営業担当者からは「精算のために出社することがなくなった」と喜ばれ、経理担当者も「100枚の紙の精算書から解放された」と精神的負担の軽減を実感しています。
【導入の壁(失敗例)と回避策】
- 失敗例: 「高機能なシステムを入れたが、営業担当者が面倒くさがって使ってくれない」
- 回避策: スマホアプリの「使いやすさ(UI/UX)」を最優先で選定することです。機能の網羅性よりも、現場が直感的に使えるかが成功の分かれ目です。導入時の説明会徹底も不可欠です。
課題(2) 大量の「請求書」処理とインボイス対応を自動化したい
【どう変わるか (Before → After)】
- Before: 郵送やメール(PDF)で届く大量の請求書を印刷。経理が目視でインボイス要件を確認し、会計ソフトに一件ずつ手入力する。
- After: あらゆる形式(紙・PDF・電子インボイス)の請求書をシステムが一括で受領・データ化。AI-OCRが仕訳を自動生成し、インボイス要件も自動判定。経理は承認するだけで、会計ソフトに自動連携されます。
カルビー株式会社は、「Bill One」の導入で、経理関連で扱う紙の量を90%削減しました(※1)。また、ある企業は「バクラク請求書」を導入し、月間30〜40時間かかっていた請求書処理業務を、月3〜4時間に短縮(最大92.5%削減)することに成功(※)しています。
【導入の壁(失敗例)と回避策】
- 失敗例: 「AI-OCRの読み取り精度が低く、結局、修正作業に手間がかかる」「既存の会計ソフトと連携できず、データ出力後に手加工が必要」
- 回避策: 「AI-OCRの読み取り精度」をデモで必ず確認してください。特に、自社に多く届く非定型帳票(フォーマットがバラバラな請求書)が正確に読み取れるかが重要です。また、自社の会計ソフトとの具体的な連携実績(APIかCSVか)の確認も必須です。
課題(3) 「銀行明細」や「売上データ」の入力をなくしたい
- 解決策:クラウド会計ソフトへのリプレイス or 既存システムとのAPI連携
【どう変わるか (Before → After)】
- Before: Web通帳から入出金明細をCSVでダウンロードし、Excelで加工して会計ソフトにインポート。または、販売管理システムの売上データを手入力で転記。
- After: クラウド会計ソフトが銀行口座やクレジットカード明細とAPIで自動連携。取得した明細に対し、AIが仕訳を自動で推測・学習します。販売管理システムともAPIで連携し、売上データも自動で取り込まれます。
【導入の壁(失敗例)と回避策】
- 失敗例: 「自社の古い基幹システム(オンプレミス)が連携の足かせになり、クラウド会計のメリットを活かせない」
- 回避策: 全社的な基幹システムのリプレイスが困難な場合、まずは「銀行連携」だけでもクラウド会計ソフトで実現できないか検討します。それだけでも入金・支払関連の仕訳入力は大幅に削減可能です。システム間の連携は、次項のRPAやiPaaSでの部分的な自動化も視野に入れます。
課題(4) 複数の「システム間」のデータ転記を自動化したい
- 解決策:RPAツールまたはiPaaS(クラウド連携サービス)
【どう変わるか (Before → After)】
- Before: 勤怠システムからデータをExcelにエクスポート → 給与システムにインポート → 給与データを会計ソフトに手入力。
- After: RPAやiPaaSが各システムに自動でログインし、データを取得・加工・転記。人の手を介さず、勤怠データから会計ソフトの仕訳入力までを完了させます。
【導入の壁(失敗例)と回避策】
- 失敗例: 「業務フローが少し変わっただけでロボット(RPA)が停止し、保守に手間がかかる」「各部署が独自にロボットを作り、統制が取れない(野良ロボット化)」
- 回避策: まずは、業務フローが完全に固定化された「定型業務」からスモールスタートすることです。また、経理部単独で進めず、必ず情報システム部と連携し、全社的なガバナンス(統制)を効かせることが失敗を避ける鍵となります。
仕訳入力削減システム6選を比較
市場には多くのシステムが存在しますが、ここでは中堅企業の課題解決に直結する主要な製品をピックアップし、その特徴を比較します。
【経費精算システム】のおすすめ製品
| 製品名 | 特徴・強み |
| 楽楽精算 | 累計導入社数20,000社(※)の信頼性。中堅・大手企業の複雑な社内規定にも柔軟に対応できる機能網羅性と、手厚いサポート体制が強み。ガバナンスと使いやすさを両立しています。 |
| マネーフォワード クラウド経費 | 会計ソフトとのシームレスな連携が最大の強み。バックオフィス全体を「マネーフォワード」で統一できるエコシステムが魅力です。アクティブユーザー課金(利用した分だけ)のため、コストを抑えたい企業にも適しています。 |
| freee経費精算 | 「freee会計」との完全一体型設計が特徴。会計知識がなくても使えるUI/UXに強みがあり、ワークフロー機能も内包しています。同社の法人カード「freeeカードUnlimited」との連携で、経費精算の工数をさらに削減できます。 |
※2025年9月時点
【請求書受領システム(AI-OCR)】のおすすめ製品
| 製品名 | 特徴・強み |
| Bill One | 「99.9%」のデータ化精度。AI-OCRとオペレーターによる人力補正を組み合わせ、読取精度の低さという失敗を完全に払拭します。あらゆる形式の請求書を代行受領でき、インボイス制度にも万全に対応。カルビーなど大手製造業での導入実績も豊富です。 |
| バクラク請求書 | AI-OCRによる読み取りだけでなく、その後の「仕訳自動生成」「承認ワークフロー」「支払処理(FBデータ作成)」まで、請求書処理業務の全体をカバーします。UI/UXの評価も高いです。 |
| TOKIUMインボイス | 請求書の「原本保管サービス」を追加費用なしで提供し、支払業務の完全ペーパーレス化を実現します。新リース会計基準への対応など、経理の実務に寄り添った機能開発に強みがあります。ライオンやニッスイなど、拠点が多い大手製造業での導入実績が豊富です。 |
仕訳入力削減システム導入で失敗しないための選定基準
高額な投資を無駄にしないため、導入「前」の最終チェックと、上層部を説得するための「投資対効果」のロジックを確立します。
チェックリスト:システム導入「前」に確認すべき5つのこと
- 連携性(最重要):既存の会計ソフトや基幹システム(ERP)と確実に連携できるか?(自動連携できるAPIか、手動のCSV連携か)
- 操作性:現場(営業担当者や経理部員)が直感的に使えるか? 必ずデモや無料トライアルを実施し、現場の人間が直接触れること。
- サポート体制:導入時の設定支援や、トラブル発生時のサポート(電話、メール、チャット)は十分か? 運用を丸投げできるレベルか。
- 法令対応:電子帳簿保存法(検索要件など)とインボイス制度(適格請求書の要件確認)の両方に、完全に対応しているか。
- 拡張性:将来、他の業務(例:請求書発行、勤怠管理、契約書管理)にもシステムを拡張できるか?(プラットフォームとしての将来性)
上層部を説得する「費用対効果(ROI)」の試算方法
システム導入を「コスト(費用)」ではなく「未来への投資」として説明することが不可欠です。導入障壁の第1位は「コスト面」であり、ここを論理的に突破する必要があります。
【ROI試算の3ステップ】
- 削減工数の算出(見えるコスト)
- [例] 経費精算と請求書処理の仕訳入力にかかる総時間
- (経理部員A: 20時間/月 + 部員B: 20時間/月 + 営業担当者の申請時間: 60時間/月) = 合計 100時間/月
- 人件費への換算
- [例] 従業員の人件費単価を算出(※給与だけでなく社会保険料なども含めた原価で計算)
- 時給単価 3,000円 × 削減工数 100時間/月 = 月額 300,000円の削減効果
- システム費用との比較
- [例] システム月額費用 100,000円
- ROI(投資対効果): 30万円(削減効果) – 10万円(システム費用) = 月間 20万円の純利益
- (年間 240万円のコスト削減効果)
【定性的な効果(見えざるROI)のアピール】
ROI試算に加え、数字では表せない「定性的な効果」も必ず伝えてください。これこそが、人材が定着する「強い会社」を作るための投資であるという証明です。
- ヒューマンエラーの撲滅による経営データの信頼性向上
- 属人化の解消による業務継続性(BCP)の確保
- 法改正への自動対応によるコンプライアンス体制の強化
- 従業員満足度の向上(単純作業からの解放、残業ゼロ)による離職率の低下と採用力強化
まとめ:仕訳入力の削減は「自社の課題特定」から始まる

仕訳入力削減システムの導入は、単なるツール導入ではなく、経理部門の「業務プロセスそのものを改革」するプロジェクトです。
市場には多種多様な解決策が溢れています。しかし重要なのは、他社が使っているから導入するのではなく、自社の「どの業務」が最もボトルネックになっているかを正確に特定することです。
経費精算の紙が多いのか、請求書の処理に時間がかかっているのか。まずはその課題特定から始めてください。本記事で紹介した「課題別の解決策」が、貴社の経営層を説得し、現場の疲弊を解消するための一助となれば幸いです。
業務効率化でお悩みではないですか?

本記事で貴社の課題(経費精算、請求書処理など)と、導入すべき「システム(点)」の方向性は見えたかと思います。
しかし、システム導入で本当に失敗しないためには、次のような実行の壁を乗り越える必要があります。
- 「結局、どのツールとどのツールを組み合わせるのが最適解なのか?」
- 「導入後、ツール間の”隙間”に残る手作業(データ連携など)はどう自動化する?」
- 「そもそも、導入を推進し、運用・保守する社内リソース(人手)が足りない…」
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