「渉外担当者が異動するたびに顧客情報が消え、引継ぎに数カ月かかる」
「顧客情報が担当者の頭の中にあり、組織として活用できていない」
「CRMツールを導入したいが、金融庁のセキュリティ基準を満たす製品がどれかわからない」
銀行の営業推進部門やDX推進室では、こうした悩みが長年の懸案事項です。
CRM(顧客管理システム)を導入すれば、渉外担当者に属人化した顧客管理を脱却し、異動時の引継ぎを標準化できます。
法人営業の案件や商談情報を組織で一元管理することで、取引先への提案精度もあがります。窓口やコールセンターなどリテール営業の顧客対応を効率化する手段としても、CRMツールは有効です。
IDC Japanの予測によると、2026年の国内金融IT市場規模は前年比5.7%増の約3.6兆円に拡大する見通しです。メガバンクから地銀まで、CRMツール刷新の動きが加速しています。この記事では、銀行・金融業界におすすめのCRMツール11製品を比較し、選び方のポイントと導入事例を紹介します。

CRMツール選びなら、ぜひミツモアをご利用ください。欲しい機能などの各項目を画面上で選択するだけで、ぴったりの製品を最短1分で自動診断。理想のCRMツールが見つかります。
銀行・金融業界にCRMが必要な理由
銀行・金融業界では、顧客との接点が店頭から非対面チャネルまで広がり、マネーロンダリング対策や顧客本人確認といった金融機関固有の規制対応も求められています。地方銀行を中心に低金利環境の長期化と人口減少が同時に進むなかで、限られた行員数で顧客との関係を組織的に管理する仕組みが必要とされています。
ここでは、顧客接点の多様化、AML・KYC対応、地域金融機関の収益環境変化、渉外活動の標準化、金融当局のAIガバナンス整備の5つの観点から、銀行・金融業界でCRMが求められる理由を整理します。
顧客接点の多様化
店頭・電話・コールセンター・自行Webサイト・モバイルバンキングアプリと、銀行と顧客の接点はチャネルを横断する形に広がっています。チャネルごとに顧客情報が分断されたままだと、店頭で相談した内容がコールセンターでは把握されておらず、同じ説明を繰り返すといった事態が起こります。チャネルをまたいだ顧客像をひとつに統合し、組織で共有する仕組みが求められています。
AML・KYC対応に伴う顧客データ管理
マネーロンダリング・テロ資金供与対策に関する金融庁のガイドラインや、顧客本人確認の継続的な確認義務に対応するうえで、顧客の基本情報・取引履歴・本人確認資料を一元的に保持し、リスク評価とモニタリングを継続する仕組みが金融機関には求められます。顧客データが各システムに分散したままでは、リスク検知や監査対応に余分な工数がかかります。
地域金融機関の収益環境変化
低金利環境の長期化、地域人口の減少、フィンテック企業との競争という3つの圧力により、地方銀行・信用金庫では預貸金利ザヤだけに依存しない収益構造への転換が課題です。投資信託・住宅ローン・保険・事業承継支援など、非金利収益を伸ばす提案を組織的に進めるためには、顧客のライフイベントや取引履歴をもとにした提案精度の向上が欠かせません。提案の質を支えるのが、顧客データを横断的に分析できる基盤です。
渉外(外回り営業)の標準化
渉外担当者の活動が個人のノートや手帳に閉じている状態では、担当者の異動や退職時に顧客情報が散逸し、後任への引継ぎに時間がかかります。営業店ごとの活動レベルにばらつきが生じやすく、本部が支店の渉外状況をリアルタイムに把握することも難しくなります。渉外活動を組織知化し、本部と支店が同じ顧客像を共有できる環境を整える流れが、銀行業界全体で進んでいます。
金融当局のAIガバナンス整備とセキュリティ基準改訂
2025年から2026年にかけて、金融当局のAIガバナンス整備とサイバーセキュリティ基準の改訂が同時に進みました。金融庁は2026年3月にAIディスカッションペーパー1.1版を公表し、生成AI活用が顧客向けサービスの実装フェーズへ進んだ段階を整理しています。FISCも2026年3月に安全対策基準第14版を公表し、AI、サイバーセキュリティ、耐量子計算機暗号の3軸で改訂をおこないました。
生成AI活用の前提となるガバナンスと安全対策の枠組みが整いつつあるなかで、銀行のCRM選定にも新しい論点が加わりました。AIエージェントが解釈できる形で顧客データを統一的に保持できるかが、銀行・金融業界のCRM選定における新しい判断軸として浮上しています。
銀行・金融業界におすすめのCRMツール11選を比較
銀行・金融業界に適したCRMツール11製品を、料金・金融業界導入実績・セキュリティ認証・FISC安全対策基準への対応・オンプレミス対応・勘定系連携可否・無料トライアルの7軸で整理しました。稟議資料に転用しやすい形でまとめています。
| 製品名 | 月額料金(税込) | 金融業界 導入実績 |
セキュリティ認証 | FISC安全対策 基準準拠 |
オンプレミス 対応 |
勘定系 連携 |
無料 トライアル |
| Salesforce Financial Services Cloud | 3万9,000円〜 | ○ | ISO27001/27017/27018 SOC1/2/3 |
○ | × | ○ | ○ |
| fcube CRMサービス | 要問い合わせ | ○ | ISO27001 金融業界向け対応 |
○ | ○ | ○ | ― |
| BankNeo for CRM / SFA | 要問い合わせ | ○ | ISO27001 金融業界向け対応 |
○ | ○ | ○ | ― |
| Microsoft Dynamics 365 Sales | 1万505円〜 | ○ | ISO27001/27017/27018 SOC1/2/3 |
○ | ○ | ○ | ○ |
| Zoho CRM | 2,400円〜 | ― | ISO27001/27017/27018 SOC2 |
― | × | ― | ○ |
| esm(eセールスマネージャー) | 要問い合わせ | ○ | ISO27001 プライバシーマーク |
○ | ○ | ○ | ○ |
| Sansan | 要問い合わせ | ○ | ISO27001 SOC2 |
○ | × | ― | ○ |
| Synergy! | 2万2,000円〜 (初期費用11万8,000円) |
○ | ISO27001/27017 プライバシーマーク |
― | × | ― | ○ |
| SKYPCE | 要問い合わせ | ○ | ISO27001 プライバシーマーク |
○ | ○ | ― | ○ |
| kintone | 1,500円〜 | ○ | ISO27001/27017/27018 SOC1/2/3 |
― | × | ― | ○ |
| GENIEE SFA/CRM | 1,480円〜 | ― | ISO27001 プライバシーマーク |
― | × | ― | ○ |
※「―」:公式Webサイトに記載なし
※2026年6月時点の各社公式サイト・公表情報にもとづいています。導入時には最新の対応状況を各社へご確認ください。
※FISC安全対策基準への準拠は、システム構成・運用設計によって変動する場合があります。
リテール特化のメール/LINE配信型CRMとしてはSynergy!、法人渉外の活動管理ならesm(eセールスマネージャー)やSalesforce Financial Services Cloud、地方銀行向けの勘定系連携を含めた業務統合まで踏み込むならfcube CRMサービスやBankNeo for CRM / SFA、というように、製品ごとに得意領域が分かれます。
銀行・金融業界向けCRMツール11選
Salesforce Financial Services Cloud(株式会社セールスフォース・ジャパン)
Salesforce Financial Services Cloudは、金融業界に特化したデータモデルとAIエージェント機能を搭載したCRMツールです。リテールバンキングからコマーシャルバンキングまで、銀行業務の各領域にあわせた画面構成が標準で用意されています。
渉外担当者は顧客の資産状況や取引履歴を一画面で把握しながら、AIの示唆をもとに提案内容を判断できます。コンプライアンスチェックを業務フローに組み込むProcess Compliance Navigator機能も、金融機関の監査要件に適合する設計です。富裕層向けのウェルスマネジメント機能を備えており、個人顧客への資産運用提案にも対応しています。
無料トライアルが用意されているため、導入前に操作感を確認できます。MuleSoftやData Cloudを活用した勘定系システムとの連携も可能です。
fcube CRMサービス(株式会社インテック)
fcube CRMサービスは、地方銀行・地域金融機関向けに特化したCRMツールです。常陽銀行・山口フィナンシャルグループ・北日本銀行・横浜銀行・鹿児島銀行など、地方銀行を中心に幅広い導入実績を持っています。
シングルインプット・マルチアウトプット設計により1回の入力で報告書や管理帳票が完成し、タブレット最適化モバイルアプリ「F³ Mobile First」で訪問先での顧客情報参照や活動記録にも対応します。FISC安全対策基準にもとづくクラウド環境で運用され、料金は個別見積もりです。
無料トライアルの提供はなく、導入検討は個別相談から進めます。
BankNeo for CRM / SFA(日本システム技術株式会社)
BankNeo for CRM / SFAは、銀行の渉外営業に特化した営業支援型CRMツールです。三菱UFJ銀行・京都銀行・興能信用金庫など、メガバンクから信用金庫まで幅広い金融機関で導入されています。
勘定系・投資信託・預り資産販売など銀行特有の基幹システムとの連携を前提とした設計で、顧客情報の体系的な一元管理に対応します。FISC安全対策基準に準拠した運用設計のもとでAML・KYCの継続的モニタリングや、リスク商品販売時の適合性確認をシステム化する機能を備えています。
料金は個別見積もりで、導入検討は個別相談ベースで進めます。
Microsoft Dynamics 365 Sales(日本マイクロソフト株式会社)
Microsoft Dynamics 365 Salesは、Copilot AIによる営業支援機能を搭載したCRMツールです。ExcelやOutlookなどMicrosoft製品群との統合が強みで、既存のOffice環境をそのまま活かせます。
AIが商談の優先度を自動評価し、メールの下書きや会議準備メモを生成するため、渉外担当者の事務負荷を軽減できます。Power Platformとの連携により、銀行独自の承認フローや帳票をノーコードで構築することも可能です。オンプレミス版が存在する点は、クラウド移行の段階的な判断が求められる金融機関にとって選択肢のひとつになります。
無料トライアルが用意されており、導入前に操作感を試せます。利用範囲にあわせて複数の料金プランから選択が可能です。
Zoho CRM(ゾーホージャパン株式会社)
Zoho CRMは、初期費用ゼロで導入できる低価格帯のCRMツールです。追加やオプションの費用がかからない料金体系のため、IT投資に慎重な中小規模の金融機関でも手ごろに始められます。
ブループリント機能により、融資審査や口座開設などの業務プロセスを標準化でき、担当者による対応のばらつきを抑える効果が期待できます。エンタープライズプラン以上ではAIアシスタント「Zia」を利用でき、商談の見込み評価や異常値検知の自動化に対応しています。Webhook連携やカスタム関数もそなえており、既存システムとの接続は柔軟です。
無料トライアルが用意されているほか、3ユーザーまで永久無料のプランもあります。小規模チームでの検証に適した構成です。
esm(eセールスマネージャー)(ソフトブレーン株式会社)
esm(eセールスマネージャー)は、CRMとSFAを起点にMAやワークフローまでワンプラットフォームで提供するCRMツールです。シングルインプット・マルチアウトプットの設計思想により、少ない入力で多様な帳票やレポートを自動生成できます。
スマホからの活動登録に対応しており、渉外担当者が外出先から商談結果や訪問記録をリアルタイムに共有できます。専任の活用アドバイザーが導入から定着まで伴走するサポート体制も、CRMツールの運用に不安を持つ銀行にとって心強い要素です。ノーコードツール「esm appli」との連携で、自行固有の業務アプリを追加構築することも可能です。
無料トライアルが用意されており、製品版と同様の機能を試せます。ベーシックプランからエンタープライズプランまで、利用規模にあわせて選択できます。
Sansan(Sansan株式会社)
Sansanは、名刺管理を起点に企業の人脈情報を全社で共有できる営業DXサービスです。名刺やメールなどの接点情報をデータ化し、誰が誰とつながっているかを組織全体で可視化できます。
銀行では渉外担当者の異動時に人脈情報が引き継がれず散逸する課題があります。Sansanを活用すれば、担当者個人に蓄積された名刺情報を組織の資産として一元管理し、異動後もスムーズな顧客対応が可能です。Sansan Data Hubを通じたSFAツールやMAツールなど他の業務システムとのデータ連携にも対応しています。
料金は個別見積もりの体系です。ISMAP-LIU登録済みのクラウドサービスであり、政府機関のセキュリティ基準を満たしている点は金融機関にとっても安心材料になります。
Synergy!(シナジーマーケティング株式会社)
Synergy!は、必要な機能だけを選んで契約できるモジュール型のCRMツールです。データベースとフォーム作成を基本機能とし、メール配信やWebトラッキングなどを必要に応じて追加する仕組みのため、無駄な費用をかけずに運用できます。
メール配信機能と顧客セグメント機能を標準で備えており、属性や行動履歴にもとづくターゲティング配信ができます。リテール向けの金融商品マーケティングにも展開しやすい設計で、MAツールやSFAツールとの外部連携にも対応しています。
無料トライアルが用意されています。初期費用が発生するため、導入前に全体の費用構成を確認することが大切です。
SKYPCE(Sky株式会社)
SKYPCEは、名刺管理と営業支援を一体化した名刺管理サービスです。自社開発のセキュリティ製品SKYSEA Client Viewとの連携により、操作ログの記録や画面キャプチャーの制御、大量ダウンロードの検知といった情報管理機能を強化できます。
スマートフォンで名刺をスキャンするだけでデータが登録され、渉外担当者の名刺整理にかかる手間を削減できます。AIアドバイザー機能や企業データベースとの連携により、名刺情報をもとにした営業活動の提案も受けられる仕組みです。SFAツールやMAツールとのデータ連携にも対応しており、既存の営業支援環境に名刺情報を統合できます。
オンプレミス版は2025年7月末で新規販売を終了しており、現在はCloud Editionのみの提供です。無料トライアルが用意されているため、導入前に機能を確認できます。
kintone(サイボウズ株式会社)
kintoneは、ノーコードで業務アプリを構築できる業務改善プラットフォームです。顧客管理や案件管理、承認フローなど、銀行固有の業務にあわせたアプリをプログラミング不要で作成できます。
スタンダードコース以上ではAPI連携や外部サービス接続が利用でき、既存の行内システムとの連携も視野に入ります。スマホアプリからのデータ入力やプッシュ通知にも対応しているため、渉外担当者が外出先から活動報告をおこなう運用にも適しています。データセンターはFISC安全対策設備基準に準拠しており、金融機関が求めるインフラ要件を満たす構成です。
無料トライアルが用意されています。10ユーザーからのスモールスタートが可能で、段階的に利用範囲を拡大できます。
GENIEE SFA/CRM(株式会社ジーニー)
GENIEE SFA/CRMは、直感的な画面設計と手厚いサポート体制を強みとするCRMツールです。ドラッグ&ドロップや音声入力など、ITツールに不慣れな担当者でも操作しやすい設計になっています。
AIプロセスビルダーにより、営業プロセスの自動化や商談の優先度判定をノーコードで設定できます。IPアドレス制限は全プランに搭載されており、上位プランではSSOや二段階認証にも対応するため、セキュリティ要件を段階的に強化できます。自社提供のGENIEE MAやGENIEE BIとの連携により、マーケティングからデータ分析まで一貫した運用が可能です。
無料トライアルが用意されています。10IDを含む月額制の料金体系で、個別開発にも対応しているため、自行の業務フローにあわせたカスタマイズも相談できます。
銀行・金融業界のCRMツールの選び方
銀行がCRMツールを選定する際は、一般企業とは異なる金融固有の基準が求められます。セキュリティ要件や規制対応、既存システムとの連携など、銀行ならではの5つのポイントをまとめました。
セキュリティ認証とコンプライアンス対応を確認する
銀行がCRMツールを導入するうえで、セキュリティ認証の取得状況は必須のチェック項目です。ISO 27001やSOC 2にくわえ、金融庁のサイバーセキュリティガイドラインへの準拠を見極めてください。今回の11製品ではSalesforce Financial Services CloudやSansan、Zoho CRMが複数の国際認証を取得済みです。kintoneはISMAP登録かつFISC安全対策設備基準に準拠したデータセンターで運用されており、金融機関にとって安心材料です。現在はクラウド型が主流で、オンプレミス対応はMicrosoft Dynamics 365 Salesに限られます。自行のポリシー上オンプレミスが必須かどうか、早めに調べておくことをおすすめします。
勘定系システムとの連携性を重視する
今回紹介する11製品はいずれもAPI連携に対応していますが、勘定系や融資系との直接連携は個別相談が基本です。BankNeo for CRM / SFAは公式に勘定系連携が相談可能と明記しており、fcube CRMサービスも導入事例でAPI連携による情報の一元化を実現しています。勘定系連携の実績があるかどうかは、選定時に必ずチェックしてください。窓口チャネルやコールセンターシステムとの連携も調べ、対面・非対面を問わず顧客情報を一元管理できる環境を整えましょう。連携にかかる追加の開発費用や導入工数も、あわせて見積もっておくと安心です。
渉外担当者の入力負荷が低い製品を選ぶ
渉外担当者が外出先からスマホやタブレットで入力できるかは、導入定着を左右するポイントです。fcube CRMサービスはタブレットに最適化した「F³ Mobile First」を提供し、1回の入力で複数項目に反映される仕組みを備えています。BankNeo for CRM / SFAもタブレット画面でPC同等の操作が可能で、渉外先での情報登録に対応。esm(eセールスマネージャー)はスマホからの活動登録を前提に設計されており、現場定着を重視する銀行に向いています。訪問件数や商談進捗をダッシュボードで可視化できれば、支店と本部が一体となった営業体制をつくれます。
金融業界の導入実績とベンダーの理解度を確認する
金融特有の業務フローや規制を理解しているベンダーかどうかは、CRMツール導入の成否を左右します。Salesforce Financial Services Cloudやfcube CRMサービス、BankNeo for CRM / SFAは金融業界に特化しており、渉外やコンプライアンス対応の業務設計に強みがあります。汎用型のCRMツールを選ぶ場合でも、導入コンサルティングや行員向け操作研修、運用サポートの充実度を確認してください。とくに地銀では情報システム部門の人員が限られるケースが多く、ベンダーの伴走支援の手厚さが定着の鍵です。
将来の拡張性とAI活用の可能性を見据える
CRMツールは一度導入すると長期間使い続けるシステムです。ユーザー数の増加や新機能の追加に柔軟に対応できるか、将来の拡張性を見極めましょう。Salesforce Financial Services Cloudは三菱UFJ銀行でAIエージェントを本稼働させた実績があり、Microsoft Dynamics 365 SalesはCopilot AIによる営業支援を標準搭載しています。Zoho CRMもエンタープライズプラン以上でAIアシスタント「Zia」を利用可能です。AI機能のロードマップがあるかも、選定時の判断材料になります。
銀行・金融機関のCRMツール導入事例3選

銀行・金融機関でのCRMツール導入事例を3社紹介します。法人渉外からリテール顧客対応まで、課題と成果の流れで見ていきます。
イオン銀行(Salesforce Service Cloud)
イオン銀行では、コールセンターの既存システムが独自開発で拡張性に䭏しく、オペレーターが複数の画面を切り替えて顧客対応をおこなう必要がありました。ワンストップでの対応が難しく、顧客の待ち時間や折り返し電話が課題でした。
2022年にSalesforce Service Cloudを国内3拠点のコールセンターへ導入し、分散していたデータを一元管理できる体制を構築。オペレーターが1つの画面で顧客情報を確認できるようになり、業務効率が向上しています。営業部門で先行導入していたSales Cloudとのナレッジ共有も進み、店舗とコールセンター双方のサービスレベル均一化を図っています。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券(Salesforce Financial Services Cloud)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券では、アドバイザリー型ビジネスへの転換に向け、顧客のプロファイリング情報を網羅的に管理する仕組みが求められていました。現行CRMのサポート終了を機にシステム刷新を決断しています。
国内証券会社としてはじめてSalesforce Financial Services Cloudを採用しました。FA(ファイナンシャルアドバイザー)と本部サポート部門が単一プラットフォームで情報を共有できる仕組みを構築し、資産状況のグラフ可視化やレポートの統一管理によって伝達スピードの向上と作業負荷の軽減を実現しました。
北日本銀行(fcube CRMサービス)
北日本銀行では、自行開発の行動管理システムを運用していましたが、改修を重ねるうちに操作性や柔軟性が低下し、運用負担も増大していました。
平成25年にインテックのfcube CRMサービスを採用。業界スタンダードの業務機能に銀行が行動様式を適合させるほうが効率的と判断し、約半年で導入を完了しました。交渉履歴の登録が標準化され、営業店の情報を本部がリアルタイムに確認できるようになっています。日常活動から情報が蓄積されるため引継ぎ書の作成が不要になり、FISC安全対策基準に基づくクラウド運用体制も採用の決め手でした。
銀行・金融業におけるCRMツール動向【2026年】
2026年、銀行業界では生成AIとAIエージェントの活用が実用フェーズに入りました。AIエージェントとの連携を見据えたCRM選定の動きが、大手金融グループ・地銀ともに広がっています。
大手金融グループ3社がAIエージェント実装フェーズへ移行
大手金融グループ3社で、AIエージェントを業務基盤に組み込む取り組みが2025年後半から2026年前半にかけて相次いで動き出しています。これら3社の実装は、地銀・信金が後追いする基準を形作っています。
三菱UFJ銀行は2026年3月、Salesforceの金融業界向けAIエージェント「Agentforce 360 for Financial Services」を日本ではじめて本稼働させました。約6カ月の構築期間を経て、法人渉外とリテール双方の現場で運用が始まっています。AIエージェントは行員に代わって顧客の取引履歴や直近の接触履歴を読み込み、提案の優先順位や次のアクションを行員に示唆する役割を担っています。
みずほフィナンシャルグループは2025年12月、AWS上で複数のLLMを業務にあわせて使い分けられる金融AI基盤「Wiz Base」を稼働させました。Claude、GPT、Geminiといった主要LLMを統一されたインターフェース経由で利用でき、商談準備支援アプリ・AI検索・議事録自動作成といったアプリケーションを段階展開しています。提案準備にかかる時間が短縮された結果、顧客との対話機会が増えました。
SBIホールディングスは2026年6月、Anthropicと日本の金融グループとしてはじめての全社AX展開で合意したことを公表しました。Anthropicの大規模言語モデル「Claude」を軸にしたAI活用を、銀行・証券・保険・住宅ローンといったグループ各社の業務に展開する方針です。Anthropicは2026年5月、金融サービス向けに10種類の専用AIエージェント(ピッチブック作成・決算業務・KYCスクリーニングなど)を公開しており、複数の金融グループでの活用が見込まれています。
ただしAnthropicは2026年2月に米連邦機関でのClaude使用を停止する大統領令を受け、6月12日には米商務省の輸出管理命令により最上位モデル『Claude Fable 5』『Claude Mythos 5』を全世界で提供停止する事態となりました(其他モデルは継続)。日本の金融機関がAnthropic製AIを業務基盤に組み込む際は、特定ベンダーへの依存度合いと米政府の輸出管理動向を継続的に確認する経済安全保障の観点が、新たなCRM・AI基盤選定軸として浮上しています。
金融当局のガバナンス整備と業界全体への浸透
大手金融グループの実装が先行する一方で、金融当局のAIガバナンス整備と業界全体の浸透度合いも、CRM選定の前提となる土台を形作っています。
金融庁は2026年3月、AIディスカッションペーパー1.1版(AIDP 1.1)を公表しました。1.0版から1年あまりを経て、金融機関の生成AI活用が業務効率化のフェーズから顧客向けサービスへの実装のフェーズへ進みつつある状況を整理しています。経営レベルでの議論と意思決定の必要性を示すとともに、CRMにAIを組み込む金融機関にガバナンス体制の整備を求めています。
FISC(金融情報システムセンター)は2026年3月、安全対策基準第14版を公表しました。AI・サイバーセキュリティ・耐量子計算機暗号(PQC)の3軸で改訂をおこなっています。AIシステムの開発・運用・モニタリングに関する考え方が新たに加わり、CRMにAI機能を搭載する場合は第14版に沿った安全対策設計が前提となります。クラウド型CRMを採用する銀行・金融機関にとって、提供元が第14版に対応した運用設計を整えているかは、選定時のチェック項目です。
日本銀行が2025年9月に公表した金融機関向けアンケート調査では、生成AIを「利用している」と回答した先が50.3%、「試行中」が23.5%でした。両者をあわせると7割強の金融機関が生成AIの利用・試行段階に入っており、検討中までを含めると9割超に達しています。中小金融機関では人員不足や業務効率化が活用動機の主因に挙がっており、メガバンク中心の動きが地銀・信金にも広がりつつあります。
地銀でCRMツール刷新が加速
大手金融グループの動きと並行して、地方銀行でもAIを業務システムに組み込む実用フェーズへの移行が始まっています。個別行が業界特化型CRMツールを刷新する事例と、複数行が共通基盤を構築する事例の両方で動きが広がっています。
西日本シティ銀行は2026年1月、NTTデータが構築した新営業支援システム「CRM Micata(ミカタ)」の運用を開始しました。Salesforceの「Agentforce Financial Services(旧Financial Services Cloud)」を基盤に構築されており、対面・非対面チャネルで得られる渉外活動・窓口対応・コールセンター応対のデータを統合する仕組みです。本部と支店が同一の顧客像を共有できる体制を整えました。
鹿児島銀行は2026年2月、地銀向けCRM「fcube CRMサービス」とXpotentialのセールスイネーブルメント機能を組みあわせた構成で2027年7月ころの稼働を予定しています。千葉銀行を中心とするTSUBASAアライアンス(地方銀行10行が参画する広域業務連携)は2025年11月、複数銀行のバックオフィス業務をクラウド共通基盤上で共同化する『TSUBASA共同事務センター構想』の検討開始を公表しており、地銀の共同基盤化が加速しています。
2025年から2026年にかけて、銀行業界のCRMは顧客情報を蓄積する基盤からAIエージェント時代の推論基盤へと位置づけを変えつつあります。自行のCRM刷新を検討する際は、AIエージェントとの連携可能性・FISC第14版への対応・地銀向け業務フローへの適合度を選定の判断軸に据えることが、長期的なROIを左右します。
「三菱UFJ銀行、『Agentforce 360 for Financial Services』を日本で初本稼働」|Salesforce
「金融AI基盤『Wiz Base』のリリースと営業支援領域における大規模PoCの本格推進」|みずほフィナンシャルグループ
「アンソロピック、Claudeに金融機関向け新機能 市場調査・月次決算など」|Impress Watch
「AIディスカッションペーパー第1.1版」|金融庁
「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書第14版公表」|FISC
「2025年度金融機関における生成AIの利用状況に関するアンケート調査結果」|日本銀行
「西日本シティ銀行向け新営業支援システム『CRM Micata』の提供を開始」|NTTデータ
「インテック、鹿児島銀行に営業DXを支援する『CRMサービス』を導入」|インテック
「新CRMシステム導入とセールスイネーブルメントの取り組みについて」|鹿児島銀行
「『TSUBASA共同事務センター構想』の検討開始について」|千葉銀行
「Statement on the US government directive to suspend access to Fable 5 and Mythos 5」|Anthropic
「3日で消えたAnthropicの最新AI、政府の通告でサービス停止の新たなリスク、日本企業に突きつけられたAI依存の難題」|JBpress
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