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自営業の確定申告バイブル!申告の流れから書類の書き方まで徹底解説

最終更新日: 2023年02月28日

自営業者にとって避けては通れない「確定申告」ですが、複雑で難しいので尻込みする方もいらっしゃるのでは。確定申告に必要な書類にはどのようなものがあり、どう記入すれば良いのでしょうか。また、経費に関してもどのような費用が含まれるのでしょうか。自営業の皆さんが確定申告に関して抑えるべきポイントについてこの記事で説明します。

確定申告の基礎知識

確定申告の基本事項を解説する女性
確定申告の基本事項を確認!

個人事業主や自営業の方にとって、はじめての確定申告は不安でいっぱいかもしれません。一体どのようなことを行うのでしょうか?また、所得がどれくらいあると確定申告をしなければならないのでしょう。

ここでは、そのような疑問の多い確定申告についての基本事項を確認し、所得の区分や「青色申告」「白色申告」という2種類がある、確定申告の方法まで分かりやすく説明します。

そもそも確定申告とは?

自営業になりたての方にとっては、非常に複雑に感じる確定申告ですが仕組みは簡単。確定申告とは、1年間の所得税額を計算(確定)して、税務署へ確定申告書を提出(申告)する手続きなのです。

そして確定申告の結果、所得税の納付が必要な場合(利益がある場合)には所得税を納税します。日本では所得税を1月から12月の期間で計算すること(暦年課税)が税法で決められているので、例年2月16日から3月15日の期間で前年分の確定申告を行います。

ちなみに、源泉所得税などを多く控除されていて所得税が還付となる確定申告書は、2月16日より前でも提出することが可能です。

所得の区分

自営業の方が確定申告を行う際に分からなくなるのが所得の区分です。所得税では、基本的に全ての収入が発生源泉(発生の原因)によって何らかの所得に区分されるので、まずは全ての所得区分について簡単に下の表で確認してみましょう。

所得区分 一覧表
所得区分 一覧表

自営業の方が確定申告をする場合は、基本的に「事業所得」についての申告となります。その他に、土地やマンションなどを貸している場合には「不動産所得」国民年金などを受け取っている場合には「雑所得」の申告が必要です。

所得はいくらから確定申告が必要?

個人事業主の場合、事業所得が基礎控除である38万円を超えたら確定申告をする必要があります。

事業所得とは、事業で得た収入の金額から必要経費の金額を差し引いた金額であり、計算式は以下の通りです。

  • 事業所得=事業で得た収入-必要経費

このように計算した事業所得が38万円を超える場合には確定申告が必要となります。また、事業所得以外の所得がある方は事業所得が38万円以下であっても、その他の所得との合計額が38万円を超える場合には確定申告が必要となることもあるので注意が必要です。

2種類の確定申告「白色申告」「青色申告」とは

自営業の方が行う確定申告には2通りの申告方法が存在します。それは、普段の事務処理が比較的楽な白色申告と、普段の帳簿記入が多少煩雑になるものの節税面でのメリットが大きい青色申告です。それぞれについて簡単にご説明しましょう。

関連記事:青色申告の帳簿のつけ方と必要書類|65万円控除を目指そう
関連記事:【初心者向け】「白色申告の収支内訳書」の書き方を詳しく解説
関連記事:確定申告の「青色申告と白色申告」違いは何?どちらで申告する?~副業、サラリーマンの場合~

白色申告とは

白色申告は簡易な帳簿で行う確定申告です。日常の簡単な収支を帳簿へ記録し、その元となった領収書などを併せて保管するだけで申告を行うことができます。

確定申告の際には、確定申告書と記録した収支をまとめた収支内訳書が必要です。

青色申告とは

白色申告と比べて大きな節税効果を得られるのが「青色申告」です。その適用を受けるには所轄税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を提出しなければならず、普段の記帳も会計ソフトなどを利用した複式簿記で記録する必要があります。

事前の準備や普段の事務処理は手間がかかるので、煩雑に感じられるかもしれませんが、最大で65万円の特別控除を受けられることや、30万円未満の減価償却資産を購入した年度に全額経費算入できるなど、税制面でのメリットがかなり大きくなっているのです。

「経費」はどこまで認められるのか??

領収書
自営業者が認められる経費は?

毎年、自営業や個人事業主の方の確定申告時期になると「これは経費で落とせますか?」という質問が増えます。確かに、経費の計上漏れは税金が増え、適法な節税の機会も失ってしまうものです。ここからは、「何をどこまで経費として落として良いのか?」というポイントを確認しながら、基本的な経費の考え方までしっかり抑えていきましょう。

関連記事:個人事業主の経費はいくらまで?上限や割合を解説!

そもそも「経費」とは?

そもそも「経費」とは何を指しているのでしょうか?

個人事業主としての売上に必要だった支出は全て「経費」になります。例えば、取引先へ向かうために掛かった交通費や事務仕事に必要なボールペンの購入などは全て「経費」です。事務所の家賃や電気代なども「経費」として落とすことはできますが、自宅を事務所と兼ねている場合には注意が必要です。

自宅兼事務所のケースでは、家賃や電気代を支払った金額の中に個人事業主の方の生活するための費用も含まれています。この生活のための費用は売上に必要だった支出ではないので、もちろん「経費」として落とすことは不可能です。このような支出を「家事費」といい、税務調査では「家事費」と事業の「経費」をしっかり区分できているかなどが重点的に確認されます。

それでも、自宅兼事務所の家賃や電気代のようにまとめて2つの費用を支払うことはあるので、実務上は自宅と事務所の面積比や使用時間により按分して計算する家事按分という方法でそれぞれの費用を算出するのです。このように、「家事費」との区別を行う必要はありますが、個人事業の売上に必要だった支出は基本的に全て「経費」と考えることができます。

自営業者の必要経費の種類

自営業者の必要経費には様々な種類があります。基本的には前述の通り、個人事業に要した支出が全て経費となる考えに基づくものです。それでは、代表的な経費となる勘定科目についていくつか確認してみましょう。

  • 通信費   電話代や切手などの郵便代、インターネットのプロバイダー料金など
  • 旅費交通費 移動に要した旅費や宿泊費用など
  • 広告宣伝費 新聞やインターネットの広告掲載費用など
  • 接待交際費 取引先との飲食代や取引先に対する慶弔見舞や贈答など
  • 水道光熱費 水道、電気、ガス料金や暖房に使用する灯油代など

減価償却費について

個人事業主が購入した車や建物などの金額の大きなものは減価償却資産といい、購入したその年で一度に経費計上することができません。

これは、車や建物はある程度長い期間事業で使用することが考えられるので、購入したその年に一度に経費計上するのではなく「見込の使用期間で按分して経費計上する」という考えに基づきます。

これを「減価償却」といい、その見込の使用期間を耐用年数として按分計算を行います。その使用見込み期間のそれぞれの年に必要経費として計上できる金額が減価償却費です。この減価償却費の計算には様々な方法がありますが、個人事業主は耐用年数で均等に按分する定額法という方法で計算することが決められています。それでは、具体的な減価償却費の計算例について確認してみましょう。

100万円で購入した車(耐用年数5年)の減価償却費

具体例をあげて減価償却の概念を詳しく説明します。

個人事業主のAさんは1月に車を100万円で購入しました。この車の法定耐用年数が5年のとき、購入した年度の減価償却費はいくらになるでしょう?計算式は以下の通りです。

100万円×0.2=20万円

初年度の減価償却費は20万円となりますが、それ以降の年度は以下のように計算します。

2年目 100万円×0.2=20万円

3年目 100万円×0.2=20万円

4年目 100万円×0.2=20万円

5年目 20万円-1円=199,999円

減価償却は実務上1円の価格を残した全ての金額を償却できます。5年目は100万円の車を既に80万円(20万円×4年)償却しているので、残った100万円-80万円=20万円から1円を残して償却費を計上します。

家族に支払ってる給料は経費になる?

自営業者が妻や家族に働いてもらっている場合、その給料を経費として落とすことが可能です。これを「専従者給与」といい、家族に支払う給料を経費として落とすことで大きな節税にもなります。ただし、専従者給与として経費で落とすためには働いている家族が以下の条件に該当しなければなりません。

  • その個人事業主と生計を一にする配偶者やその他の親族であること
  • その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
  • その年を通じて6か月超その事業に従事していること

ここでの生計を一にするとは、必ずしも同居をしている必要はありません。個人事業主に養ってもらっている家族と考えると簡単です。また、この専従者給与は青色申告と白色申告では経費とできる金額が異なります。

  • 青色申告 事前に届け出が必要となるが、不相応に高くなければ支払った金額の全額
  • 白色申告 配偶者は86万円まで、その他の家族は一人につき50万円まで

確定申告の必要書類と記入方法

確定申告に強い税理士
確定申告の書類記入方法を徹底解説(画像提供:yoshi0511/Shutterstock.com)

自営業の方が確定申告を行う際には、確定申告書以外にもさまざまな書類が必要です。また、確定申告の青色申告と白色申告のどちらの方法で申告しているかによっても必要な書類は異なります。

ここでは、確定申告の必要書類とその書き方について確認してみましょう。

確定申告の必要書類

自営業の方が確定申告をする際は申告方法によって必要な書類が異なります。青色申告の方は事業所得を申告する「確定申告書B」と「所得税青色申告書決算書」が、白色申告の方は「確定申告書B」と「収支内訳書」が必要です。国税庁ホームページから必要な書式をダウンロードすることができます。

その他に必要な書類は以下のようなものがあります。

  • 生命保険料や地震保険料の控除証明書
  • 取引先から発行される報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
  • 国民健康保険の支払証明書
  • 国民年金保険料の支払証明書
  • 寄付金控除の証明書(ふるさと納税など)

青色申告決算書と収支内訳書の書き方

それでは実際に青色申告決算書と収支内訳書の書き方を確認してみましょう。

青色申告決算書の記入方法

青色申告決算書は下の例のように4枚組の書類で、複式簿記による集計の結果を埋めていくだけでほとんどの項目を埋めることが可能です。もちろん、全ての項目は説明しきれませんので重要なポイントを3点確認してみましょう。

青色申告決算書
青色申告決算書1枚目 出典:国税庁(一部加工)
青色申告決算書
青色申告決算書2枚目 出典:国税庁(一部加工)
青色申告決算書
青色申告決算書3枚目 出典:国税庁(一部加工)
青色申告決算書
青色申告決算書4枚目 出典:国税庁(一部加工)

①売上(収入)金額、仕入金額(製品製造原価)

1枚目の売上(収入)金額、仕入金額には2枚目の月別売上(収入)金額及び仕入金額で集計した合計額を転記します。製品の製造原価がある場合には4枚目の製造原価の計算で集計した製品製造原価を記入します。

②青色申告特別控除額

青色申告特別控除には2枚目の青色申告特別控除額の計算で求められた金額を記載します。

③減価償却費

減価償却費には3枚目の減価償却費の計算で求められた本年分の必要経費算入額の合計額を記載します。それぞれの減価償却費の計算は3枚目の明細通りに計算することで簡単に求めることが可能です。

青色申告決算書の書き方のポイントは以上です。続いて収支内訳書の書き方を確認してみましょう。

収支内訳書の記入方法

収支内訳書は下表のように2枚組の書類です。基本的には日常に集計していた数値を記載すれば完成しますが、2枚目に記載された項目は別途内訳が必要になっています。それでは、書き方を確認してみましょう。

収支内訳書1ページ目 出典:国税庁(一部加工)
収支内訳書2ページ目 出典:国税庁(一部加工)

①2枚目の売上(収入)金額の明細で集計した合計額を1枚目の売上(収入)金額へ転記します。

②2枚目の仕入金額の明細で集計した合計額を1枚目の仕入金額へ転記します。

③2枚目の減価償却費の計算で個々の資産の償却費を手順に従って計算し、本年分の必要経費算入額の合計額を1枚目の減価償却費の欄に転記します。

④地代家賃についても、2枚目の地代家賃の内訳に記載した必要経費算入額の合計額を1枚目の地代家賃の欄に転記します。

⑤金融機関以外へ支払った利息や割引料を2枚目の利子割引料の内訳に記載します。その後、金融機関へ支払った利息と合わせて1枚目の利子割引料の欄を記入します。

⑥上記①~⑤以外の項目は日常に集計した合計額を転記し、最後に専従者控除の欄を記載して計算すると完成です。

確定申告書の書き方

それでは続いて確定申告書の書き方について確認してみましょう。確定申告書は第一表と第二表の2枚組の書類です。第一表と第二表のそれぞれの書き方について確認してみましょう。

自営業の確定申告の書き方
確定申告書第一表 出典:国税庁(一部加工)

①青色申告決算書または収支内訳書の収入金額計を転記します。

②青色申告決算書または収支内訳書の所得金額を転記します。

③社会保険料控除や生命保険料控除などの該当する控除金額を記載します。

④所得金額合計から控除額の合計を差し引いて課税所得金額を求めます。その求めた金額の千円未満を切り捨てて記載します。

⑤④で求めた課税所得金額に税率をかけて所得税額を計算します。

⑥⑤で求めた税額から税額控除があればそれを差し引いて、その金額に2.1%をかけて復興特別所得税を計算します。

⑦源泉徴収票に記載された源泉徴収税額を記載します。

⑧所得税額と復興特別所得税を足した金額から⑦を差し引いて計算します。プラスの数字であればその100円未満を切り捨てて上段の納付税額の欄に記載します。マイナスの数字であれば還付となるので下段にその数字を記載します。

⑨収支内訳書の専従者控除の金額、または青色申告決算書の専従者給与の金額を転記します。

⑩青色申告特別控除の適用を受けている場合は青色申告決算書の青色申告特別控除額を転記します。

自営業の確定申告の書き方
確定申告書第二表 出典:国税庁(一部加工)

①源泉徴収票や支払調書をもとに収入金額と源泉徴収税額の内訳を記載します。

②支払った社会保険料や小規模企業共済の掛け金を記載します。

③生命保険料控除や地震保険料控除に該当する支払った保険料の金額を記載します。

④寄付金(ふるさと納税など)の支払先と金額を記載します。

⑤配偶者控除を受ける配偶者や扶養家族の情報を記載します。

⑥事業専従者の氏名やマイナンバーなどの情報を記載します。

⑦個人事業主の方は自身で住民税の納付を行わなければなりませんので、「自分で納付」に丸印をつけます。

自営業の確定申告の3つの方法

自営業の方が確定申告を行う方法は主に3つのやり方があります。これは確定申告書の提出方法だけではなく、どのように確定申告書を作成するかという手段も選択肢に含まれるものです。ここからは、自営業の方の確定申告のやり方について詳しく確認してみましょう。

税務署へ直接or郵送で提出する

自営業の方がご自身で確定申告書を作成した場合、税務署へ直接持参したり郵送で提出することができます。ただし、上述の通り確定申告書の作成はかなりの労力と時間がかかるものです。そのような作業を少しでも楽にするためには、国税庁ホームページの確定申告書作成コーナーを利用することも1つの選択肢です。

関連記事:確定申告は郵送でできる! 封筒のサイズやマイナンバーについて解説

また、市販の会計ソフトでは日常の記帳をしておけば青色申告決算書などまで出力できるものが殆どです。上記の確定申告書作成コーナーとの併用で申告書作成の手間が少し減らせるようになります。

インターネットを通して提出する(e-Tax)

自営業者の確定申告書はインターネットを通して提出することも可能です。e-Taxと呼ばれる国税電子申告・納税システムを利用してインターネットで申告書の提出が完了します。このe-Taxを利用するためには事前の届け出と、マイナンバーカードも必要です。なお、申告の際に送信するデータは、電子申告に対応した会計ソフトで日々の記帳と電子申告用の事前準備を行うことで簡単に作成できます。

こんな時はどうする?確定申告での悩み

事業主の方が確定申告を行う際、他の所得があると分からなくなることがあります。またサラリーマンなどと同様に、妻などの扶養家族に収入がある場合はその金額によって所得控除の金額が変わるので注意が必要です。こちらでは、「こんな時はどうする?」という確定申告での悩みについてほんの一部分ですが説明します。

パート・アルバイトでの副収入がある場合

自営業の方が他にパートやアルバイトで副収入を得た場合は、それは事業所得ではなく給与所得となるので注意が必要です。給与として得た収入から給与所得控除(最低65万円)を差し引いて給与所得を求め、それを総所得金額に含めて所得税を計算する必要があります。確定申告の際には、給与を支給されている会社などから渡される源泉徴収票が必要となるので、忘れずに準備するようにしてください。

妻のパート収入がある場合

自営業の方の妻にパート収入がある場合でも、妻の所得金額によって配偶者控除または配偶者特別控除を受けることができます。配偶者控除は妻の所得金額が48万円以内の場合に受けられる所得控除で確定申告を行う自営業の方の所得に応じて下表の金額で控除を受けることが可能です。

配偶者控除の金額
配偶者控除の金額 出典:国税庁

妻の所得金額が48万円超123万円以下の場合には妻の所得金額に応じて下表のように配偶者特別控除を受けることができます。

配偶者特別控除
配偶者特別控除の金額 出典:国税庁

ただし、配偶者控除も配偶者特別控除も控除を受ける事業主本人の所得が1,000万円を超えている場合には適用できないので注意してください。

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自営業の方の確定申告は税理士に依頼して代行してもらうことも有効な手段です。税理士に記帳代行から確定申告書の提出まで代行してもらうことで、煩わしい確定申告に関する作業負担が大幅に軽減されます。もちろん、税理士に依頼する費用は発生しますが、確定申告書の作成でミスが起こらないことや、その後の税務調査の可能性などを考えるとプロのバックアップがあることは非常に頼もしいものです。

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