会社都合で転勤の辞令を受けた際、引越しにかかった費用の一部は会社が負担してもらえます。ただし会社の支給規定で限度額を超えた分や、条件によっては自己負担になるケースもあり、引越す前に予算を立てておくことが必要です。
転勤に伴う引越し費用のうち、会社負担になる費用について、自己負担になるケースや会社に引越し費用を負担する際の注意点について解説します。
転勤の引越しで会社と自分で負担する費用はどれくらい?
転勤の引越しにかかる費用は会社負担になるものと、自己負担になるものがあります。これら費用の内訳は、下記のとおりです。
転勤の引越しにかかる費用 | 会社負担 | 自己負担 |
引越し業者の料金 | △(上限あり) | △(上限を超えた分) |
引越し業者のオプション料金(荷造り・荷解き) | ‐ | 〇 |
敷金・礼金・仲介手数料 | 〇 | ‐ |
新居の火災保険料 | 〇 | ‐ |
新居の鍵交換費用 | 〇 | ‐ |
新居のハウスクリーニング費用 | 〇 | ‐ |
新居までの移動費・宿泊費 | △(会社による) | △(会社による) |
退去時の修繕費・クリーニング代 | △(会社による) | △(会社による) |
新居で使う家具・家電の購入費用や処分費用 | △(海外転勤の場合) | △(海外転勤以外) |
グランドピアノなど取扱いに注意が必要なものの輸送費 | ‐ | 〇 |
ペット輸送代 | ‐ | 〇 |
自動車やバイクの運搬料金 | ‐ | 〇 |
転勤に伴う引越し費用の相場
転勤に伴う引越しにかかる費用は、時期や荷物の量、移動距離などによって変わりますが、下記の表のとおりです。
距離 | 単身 | 2人暮らし | 3人家族 | 4人家族 |
~15km未満
同市区町村程度 |
22,554円 | 30,393円 | 35,284円 | 36,210円 |
15~50km未満
同都道府県程度 |
25,090円 | 37,198円 | 43,944円 | 48,088円 |
50~200km未満
同一地方程度 |
36,106円 | 49,832円 | 63,555円 | 65,849円 |
200~500km未満
近隣地方程度 |
64,701円 | 79,599円 | 95,693円 | 96,586円 |
500km以上
遠距離地方 |
107,853円 | 131,352円 | 144,904円 | 176,662円 |
全平均 | 29,144円 | 35,927円 | 40,962円 | 42,036円 |
※ミツモアにおける引越し依頼への応募価格から算出(2023年11月1日~2024年10月31日)
単身世帯で29,144円、2人以上の世帯で35,927円〜で引越す人数が増えるほど、料金が6,800〜13,000円高くなっていることがわかります。
転勤に伴う会社から支給される引越し費用
2023年1月に公表したアート引越センターの「転勤実態アンケート2023」によると、企業の転勤制度の中で引越費用の支給平均額は単身世帯で約114,000円、家族世帯で約173,000円支給されていることがわかりました。
1999年春に実施した「転勤実態アンケート vol.2」で比べると、単身世帯で約55,000円(1999年は約169,000円)、家族世帯で約240,000円(1999年は約413,000円)減少しています。
転勤の引越しで会社負担になる7つの費用
勤務先の会社によって変わりますが、転勤に伴う引越しにかかる費用の負担について、法律では規定されていません。一般的に会社の就業規則や給与規則で引越し費用について定められており、多くの会社では転勤にかかる費用を負担しています。
ただし負担する割合は会社によって変わるため、就業規則などで確認しましょう。会社が負担する具体的な費用は、以下のとおりです。
1.引越し業者の料金
主に荷物の運搬料金や作業スタッフの人件費、トラックのチャーターといった引越し業者に支払う実費です。
引越し費用の全額を負担する会社もあれば、「一部支給」として上限を設けているところがあります。
2.敷金・礼金・仲介手数料
賃貸物件に引越す際、不動産会社に支払う費用です。敷金や礼金、仲介手数料は1〜2か月分の家賃で、エリアや間取りによって変わりますが、10〜20万円以上かかります。
ただし、新居の前家賃や旧居の日割り家賃などは負担してもらえないことが多いので注意しましょう。
3.新居の火災保険料
不動産会社と賃貸借契約を結んで引越す際、契約内容によっては火災保険の加入が必須のところがあります。火災保険加入時にかかる保険料も負担してもらうことができ、間取りによって異なるものの、金額は月1,000〜20,000円ほどです。
4.新居の鍵交換費用
賃貸物件に引越す際、防犯のために鍵やシリンダーを取り替える作業が発生します。その際にかかる20,000〜40,000円の交換費用も負担してもらえます。
5.新居のハウスクリーニング費用
転勤先の賃貸物件に入居するにあたり、害虫や雑菌を駆除することを目的に消毒やハウスクリーニングを実施したときにかかる実費です。相場は10,000〜20,000円です。
6.新居までの移動費・宿泊費
転勤先にある物件までの移動距離が遠いときや、退去手続きが終了しておらず、やむを得ずホテルに宿泊する場合、一定額の交通費や宿泊費を支給するところがあります。
7.退去時にかかる修繕費・クリーニング代
現在住んでいる賃貸物件を退去する際、修繕費やクリーニング代金が発生したとき、借主が負担した金額分を会社から支給してもらえる場合があります。
ただし会社によっては支給してもらえないところもあるため、注意が必要です。
転勤の引越しで自分で負担する費用
会社の転勤で生じた引越し費用のうち、下記5つの費用は自分で負担する必要があります。
1.荷造りや荷ほどきにかかる費用
転勤前、引越し業者に荷造りを依頼したり、新居で荷ほどきを依頼したときにかかる費用は自分で払います。通常の引越し料金よりも高くなるのが理由です。
加えて、ダンボールや梱包資材にかかる費用も負担するため、注意しましょう。
2.新居で使う家具・家電の購入費用や処分費用
引越しで家具や家電を買い替えたときにかかる購入や処分費用も原則として自己負担です。たとえ今まで使っていた洗濯機やタンスなどが新居の間取りに合わないことから買い替えたとしても、会社に費用を負担してもらえません。
ただし海外赴任の場合、家具や家電の購入・設置費用も含めて会社側が全額支払うことが多いので、就業規則などで確認しましょう。最低限必要なものを揃えるだけでも社員に大きな負担がかかると考えられているためです。
3.グランドピアノなど取扱いに注意が必要なものの輸送費
グランドピアノや観葉植物、美術品などの取扱いに特別な注意が必要なものを運ぶときには別途輸送料金が発生し、自己負担となる点に注意しましょう。
同じピアノであっても電子ピアノであれば通常の荷物と同じように運搬することもあるため、どの荷物が別料金になるか事前に引越し業者に確認をしておくことをおすすめします。
4.ペット輸送代
転勤先にペットも連れていく場合、引越し業者によってはペットの輸送代金が発生し、その実費も自己負担となります。自家用車を所有している人は、車にペットを乗せて一緒に転勤先へ引越すようにしましょう。
5.自動車やバイクの運搬料金
遠方に引っ越す場合や自動車などを複数台所有している場合は陸送をすることが一般的です。自動車やバイクに運ぶ際、別途料金がかかり、自己負担になるケースが多いので注意しましょう。
転勤の引越しで会社が費用を負担する際の注意点4選
転勤に伴う引越し費用を会社で負担してもらう際、下記4点に注意が必要です。
1.会社によっては上限額が定められている
会社に転勤に伴う引越し費用を会社に負担してもらうとしても、負担金額に上限が設定されていることがあります。上限額は会社によって異なるため、引越しが決まったら負担額に上限があるのか、就業規則や転勤取扱規定などで条件を確認しましょう。
加えて、上限額には税金や手数料なども含まれるケースもあるため、注意が必要です。
2.引越し業者が選べないことがある
会社によっては特定の引越し業者と一括契約を結んでいるところがあり、会社負担で引越しをする際、自分で業者が選べない点に注意しましょう。
引越し業者を探す手間が省ける一方で、自分の希望や条件に合わない引越し業者と契約する可能性があります。荷物量や日程、時間帯などにも制約があるため、依頼する前にサービス内容や日時などを確認しましょう。
3.見積書と領収書を会社に提出する
会社に引越し費用を負担してもらう際、見積書や領収書の提出を求められるところもあります。特に経費精算を行う際、領収書がないと精算できないので、大切に保管しましょう。
領収書をもらう際、個人名義では経費として認められないところもあるため、なるべく会社名義で書いてもらうことをおすすめします。
4.立て替えた引越し費用の振込まで時間がかかる
転勤に伴う引越し費用を自分で立て替えたとき、費用が振り込まれるまで時間がかかる点も注意が必要です。
引越しが終わってから数週間後に費用を振り込まれる会社がある一方で、数か月かかる場合もあります。振り込まれるのに時間がかかる場合は、自分の資金状況に気をつけましょう。
転勤の引越しで支給される手当
引越し費用のほかに、転勤者に手当を支給する会社もあります。家族構成や転勤者の条件によって変わりますが、転勤が決まったら早めに申請しましょう。
主な手当は、下記のとおりです。
1.単身赴任手当
家族と離れて転勤先で一人暮らしをする人に向けて支給する手当です。会社によっては住宅手当や帰省手当を含めて支給するところもあります。
転勤先までに移動距離をはじめとした支給条件を設定している会社もあるため、条件や金額などを事前に確認しましょう。
2.住宅手当(家賃補助)
家賃をサポートする費用です。会社によって補助の形態は異なりますが、借り上げ社宅として家賃を半額にして入居したり、給与に住宅手当を上乗せしたりします。
3.帰省手当
単身赴任で転勤先に引越した後、定期的に家族がいる住まいへ帰省する際に負担する交通費です。
決まった頻度で一定額支給したり、実費で請求した後に手当に上乗せしたりするなど、会社によって支給条件が異なります。
4.転園・転校手当
転勤に伴って家族で新居へ引越すとき、子どもが転園・転校が必要になった場合に支給される手当です。主に対象となる手当は、幼稚園の入園料や学校の入学金です
転勤の引越し費用を抑えるならミツモアで
転勤が決まって新居へ引越す際、必要な書類を提出するのとあわせて、なるべく早めに引っ越し業者を探し始める必要があります。
ただし時期によっては料金が高くなる可能性もあり、少しでも料金を抑えたい人は、地域密着の引越し業者に依頼するのがおすすめです。
ミツモアなら、簡単な質問に答えるだけで最大5つの業者から見積もりが届きます。料金やサービス内容を比較できるのはもちろん、チャットで作業内容や梱包資材なども相談できるので、安心して依頼できるでしょう。