引越しのときは人間の手続きとは別に、犬も住所変更が必要です。2022年6月1日から国のマイクロチップ登録制度も始まり、手続き内容が今までと少し変わりました。犬の住所変更も含めて、愛犬に必要な引越し手続きを詳しく解説します。
引越し時は犬などのペットも登録住所の変更手続きが必要
ペットの中には、国がさまざまな制限や義務を定めている動物がいます。一般的なペットである犬も、狂犬病予防のために飼い主や住所を登録するのが義務です。住所の変更手続きが必要な動物と、そうでない動物を紹介します。
犬は狂犬病対策で情報登録が義務付けられている
すべての犬種は狂犬病の恐れがあるため、犬の飼い主には役所から毎年、予防注射の案内通知が送られます。犬の飼い主や住所が変わった場合に変更手続きが義務化されているのは、狂犬病を予防し拡散を防ぐためです。
狂犬病はウイルスを持った動物にかまれると、人間にも感染します。現在でも治療法は見つかっておらず、発症すればほぼ100%死に至る恐ろしい病気です。愛犬を守るためにも、登録住所の変更手続きは必ず行いましょう。
犬以外の特定動物・特定外来生物も住所変更を行う
引越しの際に住所変更が義務化されたペットは、犬のほかに『特定動物』と『特定外来生物』がいます。
特定動物とは、万が一逃げ出すと危険とされる、トラ・クマ・ワニ・マムシなどの約650種です。特定外来生物とは、生態系や人の生命・体、農林水産業へ被害を及ぼす恐れのある外来種を指します。
特定動物は2020年6月1日から、特定外来生物は2005年6月1日から、愛玩目的などで新たに飼うことが禁止されました。ただし、規制される前から飼育していたペットは、許可を得れば飼い続けられます。引越しの際にも住所変更の届出が必要なので、注意しましょう。
猫やハムスターなどの住所変更は不要
基本的に、猫・ハムスターなど小型動物は引越しの手続きが必要ありません。ただし一部の自治体では、イリオモテヤマネコの保護などを理由に飼い猫の登録が必要です。
特定外来生物に指定されたアカミミガメ・アメリカザリガニは、例外的に許可を受けなくても飼育・譲渡できますが、野外に放すことは禁止されています。自分で飼育できなくなった場合は、友人や新しい飼い主を見つけてくれる団体に譲りましょう。
同じ市区町村内で引越しする場合の手続き
同じ市区町村内で引っ越す場合、マイクロチップを装着していない飼い犬の手続きは、以下の通りです。
- 手続き場所:市区町村の役所や保健所など(オンラインで変更できる自治体もある)
- 必要書類・持ち物:登録事項変更届・狂犬病予防注射済票・鑑札・印鑑
- 提出期限:引越し日から30日以内(自治体による)
- 提出者:飼い主または代理人
- 手数料:無料
鑑札とは犬を飼い始めたときに行った情報登録で、自治体から交付された金属プレートのことです。紛失した場合は、役所などで早めに再交付してもらう必要があります。一般的な再交付手数料は、1,600円です。
自治体によって必要な持ち物などが異なるので、引越し先の自治体ホームページで確認しましょう。
別の市区町村へ引越しする場合の手続き
今までの住所とは別の市町村に転入する場合も、登録住所の変更手続きが必要です。飼い犬・飼い猫にマイクロチップ装着をしていない人は、まだ多いでしょう。引越し先の役所や保健所などで行う、従来の手続き方法を説明します。
手続き方法と必要な書類
元の住所とは異なる市区町村へ引っ越す場合、マイクロチップを装着していない飼い犬の手続きは、以下の通りです。
- 手続き場所:引越し先の自治体の役所や保健所(オンラインで変更できる自治体もある)
- 必要書類・持ち物:登録事項変更届・旧住所の自治体で発行された鑑札・狂犬病予防注射済証・印鑑
- 提出期限:引越し日から30日以内(自治体による)
- 提出者:飼い主または代理人
- 手数料:無料
旧住所の自治体で必要な手続きはありません。鑑札などを紛失した場合は、再発行に手数料がかかります。自治体により必要な持ち物や提出先が変わるので、公式ホームページでチェックしましょう。
「狂犬病予防注射済証」と「狂犬病予防注射済票」の違い
予防注射済証と予防注射済票は、名前が似ていて紛らわしく感じるかもしれません。『狂犬病予防注射済証』とは、動物病院などで狂犬病の予防接種をしたときに発行される証明書です。登録住所の変更手続きに必要な書類は、この「狂犬病予防注射済証」なので間違えないようにしましょう。
一方で『狂犬病予防注射済票』は金属のプレートです。その年度に予防注射を受けた犬であると示す標識なので、飼い犬の首輪に付けましょう。
似た名前の書類に、『狂犬病予防注射済票交付申請書』もあります。役所から毎年届く狂犬病予防注射の案内通知に入っており、予防注射を受ける際に提示するものです。
マイクロチップ登録済みの犬は引越し手続きが異なる
新しく義務化されたマイクロチップ登録の詳細や、マイクロチップ登録によって変わった、住所の変更手続きについて紹介します。2022年の6月以降にブリーダーやペットショップから犬を購入した人が、新しい制度の対象です。
犬のマイクロチップ装着は2022年より義務化
2019年に『動物の愛護及び管理に関する法律』などの一部改正が行われました。この改正に基づき、2022年6月1日以降にペットショップなどで販売される犬は、マイクロチップの装着が義務化されています。
義務化後にペットショップで購入した場合は、環境省の指定登録機関で、犬のマイクロチップ名義を飼い主に変更する手続きが必要です。
動物保護団体や個人から譲渡された犬猫のマイクロチップ装着は努力義務ですが、もし装着した場合は、やはり飼い主と住所の登録・変更をしなければなりません。
特例適用の自治体ではマイクロチップの住所変更のみでOK
もともと引越しの際は、自治体の役所や保健所などで犬の住所変更手続きが必要でした。2022年に『狂犬病予防法の特例制度』が始まってからは、特例適応の自治体において手続きが変わっています。
自治体が特例を導入した日以降は、マイクロチップの情報変更が住所変更手続きとして認められます。ただし、マイクロチップが国の指定登録機関に未登録の場合や、自治体が特例に不参加の期間は、今まで通りの住所変更手続きが必要です。
引越し先の自治体が特例適応かどうかは、環境省の『犬と猫のマイクロチップ登録』サイトの『狂犬病予防法の特例制度に参加する市区町村一覧』(2023年10月現在)で確かめられます。
マイクロチップの住所変更方法
環境省の指定登録機関で、マイクロチップの住所変更をする方法は以下の通りです。
- 手続き場所:『犬と猫のマイクロチップ情報登録』サイト
- 必要書類・持ち物:登録証明書に記載されたマイクロチップの識別番号・暗証記号
- 提出者:飼い主または代理人
- 手数料:無料
登録証明書の再交付は、『犬と猫のマイクロチップ情報登録』サイトから可能です。サイトで再交付するには、クレジットカード決済かコード決済で、手数料が200円かかります。
引越し時に犬の登録住所を変更するときの注意点
犬の住所変更をきっかけにして、狂犬病の注射済票・鑑札の紛失に気付いたり、必要性を学んだりした人もいるかもしれません。飼い犬を守るために重要な注射済票・鑑札の注意点や、マイクロチップの調べ方をチェックしましょう。
狂犬病の注射済票は速やかに申請する
すでに予防注射済みで『狂犬病予防注射済票』の交付をまだ受けていない場合は、引越し先の自治体窓口や、オンライン窓口などで速やかに申請しましょう。必要な持ち物は以下の通りです。
- 旧住所で発行された『狂犬病予防注射済票交付申請書』
- 予防注射を受けた際に獣医師が発行する『狂犬病予防注射済証』
- 1匹当たり手数料550円(税込)
自治体によって必要な持ち物などが変わります。その年度の予防注射をまだ受けていない場合は、動物病院などに『狂犬病予防注射済票交付申請書』を持参し、予防注射を受けてから注射済票を発行してもらう必要があります。
注射済票・鑑札は犬の首輪に付けておく
狂犬病予防注射済票・鑑札は、狂犬病予防が済んでいることや飼い主を示す大事なもので、犬の首輪に付けるのが基本ルールです。迷子犬が鑑札や注射済票を付けていないと、狂犬病の広がりを防ぐため、保健所に捕獲される恐れがあります。
鑑札・注射済票を付けていれば、保健所や迷子犬を保護してくれた人が、飼い主や連絡先を調べられます。飼い犬がすぐに見つかれば安心でしょう。
ただし国の指定登録機関に登録されたマイクロチップを装着している場合は、鑑札が交付されないことがあります。その場合でも注射済票は交付されるため、マイクロチップ未装着の犬と同様、首輪に付けるようにしましょう。
鑑札・注射済票をなくしたら再交付の申請をする
万が一、狂犬病予防注射済票・鑑札を紛失したら、すぐに再交付の手続きをしましょう。手続き内容は以下の通りです。オンライン申請した場合は送料もかかります。
- 手続き場所:役所や動物保護センターなど(オンラインで変更できる自治体もある)
- 必要なもの:犬の鑑札再交付申請書、または狂犬病注射済票再交付申請書
- 費用:1件当たり鑑札の再交付手数料は1,600円、注射済票再交付手数料は340円
注射済票と鑑札は、飼い犬の安全を守るものです。事務手続きにも必要になるので、しっかり犬の首輪に付けておきましょう。
マイクロチップの有無や番号を調べておく
「保護犬を引き取ったけれど、マイクロチップ登録が済んでいるか分からない」「マイクロチップの証明書を失くして個体識別番号を知りたい」そんな悩みは簡単に解決できます。
マイクロチップの有無や番号は、動物病院で調べればすぐに分かるからです。事前の電話で、病院にマイクロチップリーダーがあるかを確認しましょう。
マイクロチップの証明書が手元にないなら、リーダーで読み取ってもらったときに『識別番号証明書』を発行してもらえば、マイクロチップ登録にも使えます。
引越し手続きは全体像を把握して抜け漏れなく済ませよう
引越し時はペットの手続き以外にもやるべきことが多くあります。以下の記事では全体像をまとめているので、手続き漏れがないようにチェックしておきましょう。
必要な手続きとあわせて引越し業者探しも忘れずに行いましょう。ミツモアには地域密着型を含む中小引越し業者が多く登録しており、大手業者に依頼するときよりもずっと安い料金を提示している業者もあります。
ユーザーからの口コミも充実しており、それぞれの事業者の安さ以外の魅力も分かります。「知らない業者に依頼するのはなんだか不安」と思われる方も、他の利用者からの評判を確かめられるので安心です。