セールスフォースなどの有名企業が取り入れ、本でも有名になった「ザ・モデル」。
ザ・モデルとは従来と異なる、今の時代にマッチした営業プロセスとして名を馳せました。「ザ・モデル」を正しく取り入れ、より効率的な営業方法で成果を上げる企業は続々と増えています。
しかし少し説明を聞いても、なにをしたらいいのか理解できない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、新時代の営業プロセスである「ザ・モデル」を理解するため、具体例を挙げながら全体像を解説します。なぜ効果的なのか・どのようなことを行うのかを理解し、新たな営業プロセスの構築に役立ててください。
ザ・モデルとは?仕組みや全体像を要約!
ザ・モデルとは、営業プロセスを大きく4つに分類した組織体制のこと。従来営業マンが一人で行っていたことを4つの部門に分業したものです。より効率的に営業を行い売り上げを伸ばすために考えられました。
もともとは福田康隆(ふくだやすたか)氏が、アメリカのセールスフォースドットコムで学び日本に持ち込んだ考え方です。同氏が「THE MODEL(ザ・モデル)」という本を書いたことで、より広く知られるようになりました。
それではザ・モデルとは具体的にどのような組織体制で、どのようなことを行うのかを見ていきましょう。
ザ・モデルでは営業プロセスを4つの部門に分類する
営業プロセスには大きく分けて以下のようなものがあります。
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従来はこれらを一人の営業マンが担当するケースが多かったでしょう。
しかしザ・モデルでは、これらのプロセスを4つのパート(部門)に分け、それぞれ別の担当者による分業を行います。
4つのパート(部門) | 役割 |
①マーケティング | 主にリードの獲得を担当する。確度の低いリードに対しては、メールやWebコンテンツを用いたナーチャリング(育成)も行う。 |
②インサイドセールス | ある程度有望なリードとのコミュニケーションを担当する。ナーチャリングを行ったり、クオリフィケーション(そのリードを営業へパスできるかどうかの評価)を行ったりする。基本的に訪問営業は行わず、メールや電話でのコミュニケーションを行う。 |
③フィールドセールス(営業) | 受注確度の高いリードに対して営業を行う。商談を発生させ、受注を狙う。 |
④カスタマーサクセス | 主にサービス開始後のコミュニケーション全般を担当する。 |
例えば4つの部門が連携して、以下のように見込み客から成約を取ります。
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各部門で条件を満たしたリードを、次の部門に引き渡す仕組み
上の例で説明した通りザ・モデルでは、見込み客のステージごとに各部門がコミュニケーションを取ります。そして一定の条件に達したリードを次の部門にパスしていく、という仕組みになっています。
例えば工場の生産現場をイメージすると分かりやすいでしょう。工場では各工程で特定の機械・人がそれぞれのオペレーションを担当します。その工程が済んだら次の工程へ進み、最終的に製品ができあがります。
ザ・モデルも同様に各工程ごとでそれぞれの担当チームがオペレーションを遂行します。具体的な工程は以下の通りです。
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ザ・モデルでは主にリードが取る行動によってスコアリング(点数付け)し、そのリードの受注確度が高くなればなるほど後ろの部門にパスしていきます。
例えば「自社HPの料金を見た後に資料請求をしたリード」は、ある程度自社サービスの導入を検討していると考えられます。そのためこのリードには10点を加算し、最終的に○点に達したら営業にパスする、といったイメージです。
※どんな行動で加点(減点)されるか・何点たまったら次の部門へパスするかは、事前に決めておく必要があります。
このようにして一人一人のリードの行動を評価しながら、より受注確度が高いリードのみを営業に回せるようにする仕組みがザ・モデルなのです。
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ザ・モデルが注目される背景・理由とは
ザ・モデルが近年注目されている理由は、デジタルマーケティングの普及により、従来の数打って当てる方式の営業では通用しなくなったという時代背景があります。
デジタルマーケティングが普及することにより、顧客は「自分自身で・欲しい情報に・好きなタイミングで」アクセスできるようになりました。顧客は営業マンに問い合わせる前に、情報収集や比較検討の大部分を自分自身で行います。そして良さそうだと判断したサービスのみに問い合わせを送るようになってきたのです。
つまり営業マンが顧客と接点を持つタイミングで、顧客は意思決定の大部分をすでに済ませているといえます。そのため問い合わせが来る前の段階で、正しいマーケティングや高品質なコミュニケーションを取ることが求められているのです。
例えばある顧客は今すぐにでも電話をして詳細を聞きたいかもしれませんし、別の顧客は自分のペースで自分の知りたい情報を集めている段階かもしれません。これらの顧客それぞれに、マッチしたコミュニケーションを行う必要があります。
しかし従来の(全て一人で行う)営業プロセスでは、顧客それぞれのニーズに応えるのは厳しいでしょう。
そこでザ・モデルの分業体制を取ることによって、顧客一人一人のステージに合わせたマーケティング・ナーチャリングを行う企業が増えているのです。特にBtoBのSaaSやサブスクリプションモデルのサービスを提供している企業に取り入れられています。
ザ・モデルを取り入れ分業体制を取るメリットや効果
ザ・モデルを取り入れると、以下のようなメリットがあります。
メリット①:各部門がそれぞれの役割に集中できる
今までは営業が新規顧客の開拓から営業までを行っていたため、業務内容が幅広くなり、いわゆるマルチタスクのような状態になってしまっていました。
しかしザ・モデルは各部門ごとにやるべきことが決まっているので、自分の役割に集中できます。
またマルチタスクを防げるだけでなく、パートごとにより深い知識や経験を得ることも可能です。例えばマーケティングとセールスでは必要なスキルや経験が異なります。それを一人の営業マンが全て担当するのは非効率といえるでしょう。
分業化してそれぞれの業務に専念することで、専門知識と高いスキルを持った担当者が増えます。そしてより高いレベルのオペレーションを行えるようになるのです。
その結果前述した「現在は営業との接点前に、高品質なコミュニケーションを取らなければいけない」という点もクリアできるようになるでしょう。
メリット②:ボトルネックを正確に把握し素早く対策を打てる
ザ・モデルでは部門ごとにKPIを設定します。そのためどこかに問題があった場合に、素早くボトルネックを発見し対策を打てるのです。
例えばザ・モデルでは、4つのパートの役割を次のような計算式で表せます。
このように各KPIが密接に関連しています。
実際にはもう少し細かくKPIを設定するでしょうが、各パートでKPIを明確にしておくことで、どの数字に問題があるのかを把握し対策を打てるのです。
メリット③:受注確率の低いリードをフォローできる
今までは失注した案件や商談につながらなかったリードは、放置されていたケースも多いでしょう。
しかしそういったリードも「今はニーズが顕在化していない」だけで、将来的には自社サービスを検討してくれる機会が訪れるかもしれません。そういった失注リードを放置するのは機会損失につながってしまいます。
とはいえ従来の営業体制では失注リードへの対応は優先度が低いため、その後の関係作りがおろそかになっていたでしょう。
それに対しザ・モデルでは一度失注して優先度の低くなったリードを、マーケティングやインサイドセールスに渡し「フォローすべきリード」としてリサイクルできるのです。
これによって
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といったメリットが得られます。
メリット④:顧客ごとに最適なタイミングで営業をかけられる
前述した通り、最近は「自分の好きなタイミングで欲しい情報のみを集めたい」という顧客が増えています。
ザ・モデルでは顧客のステージをスコアリングし、一定のスコアに達したタイミングで次の部門に引き渡します。
そのため
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というように、パーソナライズされたコミュニケーションが取れます。顧客に不快な思いをさせずに自社のサービスや製品に興味を持ってもらえるのです。
ザ・モデルのデメリットや導入する際の注意点
ザ・モデルには、当然注意しなければいけない点やデメリットもあります。順番に見ていきましょう。
注意点①:スコアリングや引き渡し時に使われる単語の意味を明確に
KPIに関する単語の意味を明確にしておきましょう。
例えば「商談」という単語1つをとっても、状況によっていろいろな解釈ができます。「フィールドセールスが訪問営業をしたところ、担当者は積極的に検討したいと考えていた。しかし会社としての検討段階にはないことが分かった」という場合。
これを商談とするのかどうかによって、数字に変化が出てきます。
また部門間でも言葉の意味を共有しておく必要があるでしょう。例えばインサイドセールスとフィールドセールスで「ニーズが顕在化した」という言葉の認識にズレがあった場合。
リードの引き渡しが適切に行われなくなってしまう可能性があります。
注意点②:スコアリングだけに頼らない、正しくリードを評価する仕組みの構築
スコアリングによるホットリード(確度の高いリード)の抽出は、必ずしも役に立つとは限りません。
例えばページの閲覧や資料請求で加点するルールを決めている場合、次のようなリードのスコアが高くなってしまうことがあります。
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仮にスコアが高かったとしても、上記のようなリードの優先度は高くありません。
スコアリングだけに頼っていると、このように本来必要でないリードを抽出してしまうこともあるのです。
この対策として「営業に引き渡す前に、ホットリードが本来必ず見るであろうページを閲覧しているかどうかを確認する」など、本当のホットリードを抽出するためのルールや仕組み作りが必要です。
注意点③:数字の改善を行うときは、全体最適を考える
ザ・モデルは4つのパートに分かれ、それぞれにKPIを設定します。しかし数字を評価する際は部門内だけで完結させてはいけません。
例えばフィールドセールスが引き継いだ案件の商談化率が悪い場合、一見フィールドセールスの営業能力に問題があると考えてしまいがちです。しかし実際には、インサイドセールスがフィールドセールスに渡しているリードの質が低い可能性もあるでしょう。
この場合は以下のような点に問題がないかもチェックする必要があります。
- インサイドセールスが正しくリードのスコアリングを行っているか
- スコアリングの方法自体が適切か
例えば上記1でインサイドセールスのスコアリングが甘いと判明した場合は、本来加点すべきでないリードのスコアが高くなっているのかもしれません。また上記2を確認すると、そもそも「この行動を取ったら加点する」というルールそのものが間違っていたと判明することもあるでしょう。
前述のように、各部門のKPIは他の部門のKPIと密接に関連しています。ただ分業すればいいという認識でザ・モデルを採用してもうまくいかないケースが多いので、注意が必要です。
ときには各部門が協力し合い「こういうリードは商談が進めづらいから、スコアリングを見直してほしい」といったフィードバックを行うのも良いでしょう。
注意点④:体制を整えるためのコストがかかる
ザ・モデルを導入するならば、体制をしっかり整えることは必須事項といえるでしょう。
特に現在インサイドセールスやカスタマーサクセスを設置していない企業は、まずそれらを導入する必要があります。
そして各部門のKPI評価や、リードのスコアリングをするための仕組み作りもしなければいけません。これらを行うには、MAツールやSFAツール・CRMツールというものが必要になります。
できること | |
MAツール
(マーケティングオートメーション) |
マーケティングの自動化・効率化ができる
・リードのスコアリング ・メールの自動配信 ・顧客に合わせたシナリオメールの配信 など |
SFAツール (営業支援システム) |
営業を効率的に行ったり評価したりできる
・商談管理 ・顧客管理 ・営業活動管理 など |
CRMツール (顧客関係管理) |
顧客管理を効率化し、より良いコミュニケーションが取れるようになる
・部署間で顧客情報の共有が簡単になる ・顧客のあらゆる情報を一元管理できる など |
ザ・モデルを導入し成功を収めた事例
ザ・モデルはSaaS/IT業界で注目を集め、さまざまな企業で導入され始めています。
中でも、特に顕著な成功を収めた企業の事例をご紹介いたしましょう。
Sansan株式会社
Sansan株式会社は法人向け及び個人向けの名刺管理サービスを提供する企業です。
営業組織にザ・モデルをいち早く導入したSansan株式会社。顧客取引先のリード先が3倍になるなど数値的にも大成功を収める結果となりました。
のちに大成功のポイントは「それぞれの部門のKPIを可視化し、最大化したこと」と語っています。
ザ・モデルの基本スタイルである分業体制が、各部門の生産性の向上を促し、最終的な成果まで最大化できたザ・モデル理想の成功事例といえるでしょう。
株式会社ミスミグループ本社
カタログ販売の大手ミスミグループ本社では、新事業である「meviy」事業の営業活動にザ・モデルを取り入れました。
ザモデルを踏襲し、営業・マーケのプロセスを「標準化」「一元化」「自動化」に分け、それぞれに対応するチームを作成。顧客へのアクションを定義づけ実行に移したのです。
すると、明確な役割分担のもと、シングルミッション化が進行。担当者1人あたりの顧客獲得数が4倍以上に膨れ上がったのです。
また新たに入ったメンバーも、明確な分担で自身の役割が分かりやすく「即戦力」として活躍できるなど副次的な効果も生まれました。
「THE MODEL(ザ・モデル)」の本ではさらに具体的なことが書かれている
ザ・モデルが広く知られるキッカケとなった書籍「THE MODEL(ザ・モデル)」では、さらに詳しい内容が書かれています。
- 4つの部門でどのような数字を達成すれば良いのか
- 良い組織作りのための、メンバー評価の方法
などマネージャーが知っておかなければならないことや、よくある問題点などが具体的に書かれています。
ザ・モデルについてより深く理解したい方は、ぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。
※この記事は「ザ・モデル」の本を全て読んだ上で作成しています。
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