属人化とは、業務の担当者しか作業を進められない状態のことです。担当者不在時は業務が滞ってしまったり、違う人が担当すると品質が変わってしまったりなどのリスクがあります。
一方、属人化にもメリットはあります。大きな裁量権やスペシャリストになりやすい点がメリットですが、それより多くのリスクがあるので問題視されているのです。
本記事では、属人化によって発生する問題点や脱却する方法を解説します。同時にメリットや発生する背景も知り、属人化解消のためにアプローチする際の参考にしましょう。
業務の属人化とは「特定の人しか仕事を進められない」こと
ある業務の内容や進め方を特定の担当者しか知らない状態のことを「属人化」と呼びます。
担当者が急に欠勤したり退職したりするとその業務がストップしてしまうことから、マイナスの意味で使用されるケースが一般的です。
属人化の対義語として「標準化」があります。属人化とは反対に、特定の人物だけでなく誰もがその業務をこなせる状態のことをいいます。
転職が当たり前になり人材の流動が活発になった現代社会では、業務の属人化をいかに抑えるかという点が注目されているのです。
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属人化はなぜ悪い?考えられるリスクとデメリット
業務が属人化するとどんな悪いことがあるのでしょうか。属人化のデメリットとして考えられるものは次の通りです。
- 業務効率が低下する
- 品質維持が困難になる
- トラブル対応が遅れやすい
- 退職時の引継ぎが難しくなる
- 社内風通しが悪化する
- 長時間労働が発生する
上のようなデメリットから、属人化は企業における大きな課題となっています。
業務効率が低下する
業務が属人化すると、長期的には業務効率が低下してしまいます。
担当者が欠勤した場合、代わりに仕事できる社員がいないため業務はストップしてしまうでしょう。急ぎの問い合わせがあっても対応できず、顧客にも大きく影響します。
また、急に退職してしまった際には、またゼロからノウハウを構築しなければなりません。
属人化した業務は担当者がいないと停滞してしまい、その業務を待ってから作業する社員の仕事も停滞してしまいます。
会社全体の業務プロセスにマイナスの影響を及ぼし、結果として業務効率が下がってしまうのです。
品質維持が困難になる
ある業務を特定の担当者のみで行っていると、その人が不在の場合に同品質のものを提供できなくなります。品質管理が難しくなってしまうのです。
業務によっては他の人が代わりに行うことができず、その仕事自体がストップしてしまう可能性もあります。
また、属人化された仕事だと他の人がその仕事について理解できず、良し悪しを判断することも難しくなってしまいます。
客観的な評価が困難になり、間違いに気付けなかったり改善点を見出せなかったりするリスクがあるのです。
トラブル対応が遅れやすい
業務プロセスについて当人以外が把握していない状況では、途中で何が起こったかほかの社員からは見えません。
トラブルが起きてもそれを認知できず、解決のための迅速な対応ができなくなってしまうのです。
自分にしかできない業務だからと、本人が情報共有を怠る可能性もあるでしょう。
そのようになるとトラブルが発生した際も、担当者が不在の間は誰も対応できません。その結果、相手を待たせることになり、顧客満足度の低下や信用失墜につながることもあります。
退職時の引き継ぎが難しくなる
属人化した業務は効率が低下するとともに、マニュアルがあったとしても引き継ぎのやり方自体も属人化している場合があります。
0から仕事を引き継ぐことになり、効率的に引き継ぎ作業が進まず、残業が長引いたり休日を取りづらくなったりするのです。
こうした問題は担当者がいなくなって初めて、明るみに出ることも少なくありません。
社内風通しが悪化する
属人化した業務は担当者以外の人からすると詳細がわからず、意見交換やアドバイスといったコミュニケーションが取りづらくなります。
その業務が非効率的に進んでいても周りが認知できず、ミスが生じても発覚が遅れてしまうかもしれません。
コミュニケーション不足によって、結果的に社内の雰囲気が悪くなってしまうのです。
長時間労働が発生する
属人化が進むと担当者のみでタスクをこなさなければならなくなり、時間外労働が余儀なくされ長時間の労働につながります。
長時間労働が常態化するち、いずれは担当者にとって仕事が心身ともにストレスになり、会社への不満も多くなるでしょう。
最悪の場合は担当者が休職・退職し、他の誰も仕事を引き継げない事態が発生してしまい会社全体にも大きなダメージとなります。
属人化にもメリットはある【リスクの方が大きいので注意が必要!】
悪いものとして語られる属人化にも、次のようなメリットがあります。しかし一般的に悪いと言われる理由は、メリットよりもリスクが大きいところにあります。
- 裁量権ができる
- 個人の専門性が高まる
裁量権ができる
属人化とはいわば「その人にしか業務ができない」状態なので、担当者は裁量権を持ってタスクにあたれます。
裁量権があれば業務内容や仕事のペースを、ある程度自分でコントロール可能です。
「裁量を与えられている」という意識が、社員のモチベーションアップにつながる可能性もあるでしょう。
例えば接客業のように、臨機応変な対応が求められる場合は属人化している方がかえってうまく進むこともあります。
マニュアル外のイレギュラーな事態が起きたときに、上手に対処できる熟練社員がいれば、トラブル防止にもつながるのです。
しかし、その熟練社員が不在の場合は、柔軟な対応が不可能になるので注意が必要です。
個人の専門性が高まる
属人化が進むと個人が創意工夫をするようになり、仕事の効率が上がることも期待できます。
社員個人の専門性が高まることで業務のスペシャリストとなり、売上アップを実現できるほか、社内外での信用アップにもつながるでしょう。
また担当者個人の市場価値が高まるため、転職で有利になる効果も考えられます。
属人化が起きる要因は?【専門性の高い業務・地位の維持など】
属人化が起きる要因として、次の5つが代表的なものとして挙げられます。
- 業務が多忙
- 業務の専門性が高い
- 人的リソースが少ない
- 自分の地位を守りたい社員が多い
- 個人成果主義が根付いている
業務が多忙
社員それぞれが別のタスクに追われていて、マニュアル作成や教育の時間を設けるのが難しくなり、属人化が進むケースが多くあります。
目の前の仕事で忙しいと、業務の詳細やノウハウ等を共有する時間を確保できないでしょう。
自身の担当業務に関する情報共有の時間が持てないため、結局「自分でやった方がよい」と判断し属人化を加速させてしまうのです。
業務の専門性が高い
専門的な知識やスキルが無いとできない業務は属人化しやすい傾向にあります。
画一的なマニュアルが作成できなかったり、教育に時間がかかったりなどで対応が後回しになってしまい、引継ぎがスムーズにできないことがあります。
ノウハウを共有する余裕がなく、現在担当している社員だけで業務を行ってしまうことから属人化が発生するのです。
人的リソースが少ない
他の社員に仕事を任せようと思っても人手が足りず、結局はそのままの体制で属人化が解消されないまま仕事を続ける場合もあるでしょう。
業務内容を共有するにしても、そもそも共有される側の人がいなくては意味がありません。
企業の人手不足も属人化に大きく影響しているのです。
自分の地位を守りたい社員が多い
会社内での自分の立場や存在意義を守るため、業務を標準化することにためらう社員が多いのも属人化の原因の1つです。
「社内で担当業務のプロフェッショナルになりたい」「自分でなければ誰もできない」という考えから、標準化を嫌がる人がいるかもしれません。
このようなプライドによって自分の地位を確立し、他の人にはさせたくないと思う社員がいるとなかなか属人化は解消されないでしょう。
個人成果主義が根付いている
成果主義を採用していて仕事による実績のみを評価していると、自身のスキルを共有しようとしないので属人化につながります。
個人成果主義の職場では自身の経験やノウハウが武器となります。他の人に取られてしまうと社内での競争に勝てないので、情報を共有したがりません。
自分の仕事を分担するのではなく、1つでも多くの仕事を自分でこなしたい気持ちが芽生えやすくなります。
共有しようとする文化が根付かず、標準化が浸透しにくいのです。
属人化を解消するには|仕事を標準化するための対策
業務が属人化している現状に対して危機感を覚え、改善したいと考えている人もいるはずです。抜け出す方法を6つ紹介するので、会社で実践できるものから試してみましょう。
- 業務フローを可視化して簡潔にする
- マニュアルを作成する
- PDCAを回す
- 責任・権限を分散する
- ナレッジマネジメントを活用する
- 誰にでもできる作業はデジタル化を進める
業務フローを可視化して簡潔にする
まずは属人化している業務フロー(流れ)を明確にしましょう。フローを把握する際は、業務担当者にヒアリングしたい項目をあらかじめピックアップしておくのがポイントです。
事前に聞くべきことをまとめておけば、抜け漏れなくヒアリングができます。ヒアリング後はフローチャートを作成して、業務フローを可視化しましょう。
誰もが業務の流れを把握でき、何かしら改善すべき点があれば指摘しやすくもなります。
業務フローの可視化は業務の効率化のきっかけにもなるので、ぜひ時間を作って行いたいものです。
マニュアルを作成する
業務の手順やルーティン作業、注意事項を記載したマニュアルを作成し、短期間で仕事を習得できるようにします。
【マニュアルに記載すべき内容】
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文字だけでなく表や画像を入れるなどして、誰にでも理解しやすいマニュアルにするのがポイントです。
マニュアルを作成したら、その保存場所やデータを共有しておきましょう。業務ごとにマニュアルを作成しておけば、担当者が不在のときでも作業が進められます。
PDCAを回す
マニュアルを作成して終わりではありません。実際にマニュアルを用いてみて反省点や改善点があれば、その都度アップデートしていく必要があります。
社内の状況や外部環境が変われば業務フローも変わります。一度マニュアルを作ったからといって、そのやり方がずっと合っているとは限りません。
半年~1年に1回の頻度で現場社員に確認してもらい、常に最新の状態に保つことが属人化解消につながります。
責任・権限を分散する
特定の社員に権限が集中している状態なら、責任を分散させるのが有効です。
特定の人だけが権限を持っていると不正が生じやすくなり、効率性よりも「責任者のやり方」重視で仕事が進んでしまうこともあります。
特定の人が大きな権限を持っていると、ほかの人が介入できず属人化につながりかねません。
責任を分散させるには業務を分割して簡素化しましょう。業務がシンプルになれば誰でもできるようになり、責任もって仕事ができます。
また定期的に社員の担当業務を変える「ジョブローテーション」も、効果を期待できます。
別の業務に回る際は引き継ぎが必要なため、特定の人のみがその業務を遂行できるといった状態が生まれにくくなるのです。
ナレッジマネジメントを活用する
ナレッジマネジメントとは個人が有する「暗黙知」を会社内で共有することで、生産性を高めるための活動のことです。
暗黙知とはまだ言語化されていない知識のことで、主にベテラン社員が持っている固有のスキルや知識を指します。
そうした知識やスキルを「形式知」としてデータ化することで、優秀な社員が持つスキルをほかの社員も参照できるようになるでしょう。その結果として属人化を抑制できるのです。
ナレッジマネジメントを導入するメリットは、部署をまたいだコミュニケーションの改善や、顧客満足度の向上なども挙げられます。
ナレッジマネジメントに役立つ専用のITツールも数々リリースされています。
誰にでもできる作業はデジタル化を進める
単純でありながらも仕事量が多く属人化しやすい作業はデジタル化を進め、責任を伴う業務に人を回すのも標準化への一歩です。
特に事務処理はデータ入力等の作業が多く、慣れによって仕事のスピードが異なるので属人化しやすいです。
データ入力にはOCRツールを使うなど、システムを導入して属人化が解消できるでしょう。
その分、責任を伴う判断が必要な業務に人員を割くことができるので、仕事がなくなる心配はありません。
かえって企業の重要業務に携わる人が増えるので、生産性向上も期待できます。
属人化を避けるべき4つの業務
次の4つの業務は、特に属人化を避けなければなりません。
- バックオフィス
- 顧客への対応フロー
- 自社製品・サービスの説明業務
- トラブルへの対応
上記4つの業務では、どの社員が担当しても同質のものを生み出せないと、会社全体に大きく影響を及ぼすことになります。
バックオフィス
契約書や請求書等の処理作業、在庫管理・発注などのバックオフィス業務は、人によって対応が変わると企業全体に支障をきたします。
バックオフィス業務は自分の担当業務だけでなく、他の業務にまで影響を及ぼす仕事なので属人化は避けたいところです。
誰が担当しても同じ対応ができるよう、設定したルールに沿って処理できるようにしましょう。
顧客への対応フロー
顧客からの問い合わせを直接受ける窓口は、企業の顔とも言えます。そこで社員によって対応が違っては、企業のイメージダウンにつながりかねません。
属人化してしまうと担当者が不在の際、どのような対応をしてきたかの進捗が把握できず適切な対応が取れなくなります。
結果的に顧客から信用を失うなど、企業にとっても大きなダメージとなるでしょう。
自社製品・サービスの説明業務
自社製品・サービスやサポート内容に関する説明業務が社員によって異なると、顧客の混乱を招くので属人化しないよう注意しましょう。
誰か1人が知っておけばよいのではなく、社内で共有して顧客との個別対応でも同一の対応ができるようにしておくことが大切です。
トラブルへの対応
予期せぬトラブルや非常事態の対応についてルールを決めておかないと、その後の影響範囲が変わってきます。
万が一のことがあっても被害を最小限にできるよう、スピーディーな対応のため標準化が必要なのです。
企業経営にも関わる重大な業務なので、どのようなフローで解決すべきかを全社員が頭に入れておくようにしましょう。
業務を標準化することのメリット【品質向上・柔軟な対応】
属人化を解消し、担当以外でも仕事が進められる状態にあると次のようなメリットがあります。
- 品質の維持・向上につながる
- 自社のリソースを有効活用できる
- 担当者がいなくても適切な対応が可能になる
- 社内にノウハウが蓄積される
業務効率の向上だけでなくトラブルの被害範囲を少なくできるなど、標準化は企業全体にとっても大きくプラスになるのです。
品質の維持・向上につながる
業務が標準化されると、担当者でもそうでない社員でも同一の成果物を生み出すことが可能になります。
また、同一の業務フローを行う中で改善点が見つかれば、指摘できる社員も増えるので品質向上のきっかけにもなります。
一定の品質が確保されるだけでなく、業務効率を見直すきかっけが増えて品質向上にもつながるのです。
自社のリソースを有効活用できる
マニュアル作成などで業務の標準化が進めば、業務習得のための人員や時間を削減できます。
削減できたリソースを重要業務に充てることができ、会社全体のリソースを有効活用できるのです。
マニュアル化されていれば1人でも仕事を進めることができ、わからない部分だけ担当者に聞くなど効率的な時間配分が可能になります。
業務習得に関わる複数の社員の時間や思考力を最小限に使いながら、最大限の成果が出せるでしょう。
担当者がいなくても適切な対応が可能になる
ライフイベントに応じた休職や転職が多い中、業務を標準化していれば担当者がいなくなっても仕事がストップしてしまうことはありません。
周りの社員が業務を理解していれば、引継ぎを行うにしても多くの時間をとらなくてすむでしょう。
急な休みや早退で担当者が不在になっても、標準化された業務であれば柔軟に対応できるので、顧客を混乱させる事態も防げます。
社内にノウハウが蓄積される
業務を標準化しておけば、担当者個人のノウハウが社内に共有されるため、その人が退職してもノウハウが蓄積されたままになります。
一方で、業務が属人化していると担当者が仕事を辞めた場合、その人が持っていたノウハウも一緒になくなってしまうでしょう。
社内にノウハウや業務での成功事例が残ったままになるので、仕事の引継ぎもラクになります。
属人化を解消して業務効率をアップさせよう
属人化とは限られた人間しかその業務をこなせない状況を指します。
属人化には裁量権が大きくなったり、スペシャリストが生まれやすかったりのメリットがあります。
しかし、長期的な業務効率の低下や長時間労働の発生、トラブル対応や引き継ぎが困難になるなどメリットより多くのリスクが伴います。
さらに担当者の不在時は業務が停滞することも考えられるので、できるだけ属人化は避けたいところです。
マニュアル作成やナレッジマネジメントの活用、PDCAを回すなどして属人化を解消しましょう。
全体的な業務フローの効率化だけでなく、残業が減るなど社員にとっても嬉しい結果をもたします。
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