営業事務の業務効率化は、営業部門全体の生産性向上、ひいては企業収益の向上に直結する重要な経営課題です。事実、中小企業の73.2%がDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性を認識し、その効果として「業務の自動化、効率化」(38.6%)を強く期待しています(※)。


しかし、「SFAを導入したがデータ入力が二重化し、逆に現場の負担が増えた」「自動化に興味があるが、自社のどの業務に効くのか判断できない」といった悩みも少なくありません。非効率なプロセスを抱える企業では、事務スタッフに大きな負荷がかかり続けています。
この記事では、営業事務の自動化を実現する主要システム(RPA, SFA, CRM)と、BPO(アウトソーシング)の違いを明確化します。B2Bの専門家視点から、貴社の「課題」に合わせた最適な解決策を選ぶための具体的な判断基準を徹底的に解説します。

営業事務の「非効率」にお悩みですか?
この記事ではRPAやBPOなど様々な解決策を解説しますが、手法を選ぶ前に「AIによる自動化」と「業務プロセスの外部化」を最適に組み合わせる方法があります。
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営業事務の自動化を実現する4つのシステム・手法

営業事務の「定型業務」や「システム間の連携」を自動化・効率化する代表的な手法は、主に4つに分類されます。これらの導入により、「人的ミスの削減」「残業代などのコスト削減」「営業担当者や事務スタッフのコア業務への集中」といった共通のメリットが期待できます。
手法1:RPA (Robotic Process Automation) – 「システム間の作業」を自動化
RPAは人間がPC上で行うルールベースの反復的な操作をソフトウェアロボットが代行する技術です。既存の複数システム(SFA、基幹システム、Excelなど)を横断した作業の自動化を得意とします。SFAから基幹システムへの受注情報転記、請求書データの自動照合、日次レポートの自動作成といった「システム間の隙間」を埋める作業に最適です。
手法2:SFA/CRM (営業支援/顧客管理システム) – 「営業プロセス」を自動化・一元化
近年はAIの搭載が急速に進んでおり、商談議事録の自動要約やメール作成支援など、単なる管理ツールを超えた「営業アシスタント」へと進化。SFA導入の最大の障壁であった「入力負荷」を軽減し、見積書作成の標準化や顧客対応履歴の一元化を実現します。
手法3:iPaaS (Integration Platform as a Service) – 「システム同士」を連携
iPaaSは、社内外に散在する様々なクラウドアプリケーションやシステムを連携させ、データが自動的に流れる仕組みを構築するクラウド基盤です。
RPAが「操作」を自動化するのに対し、iPaaSはAPI(システム間の接続口)ベースで「データ」を確実かつ高速に連携させます。多くはノーコード・ローコード開発に対応しており、専門知識がなくともシステム連携を構築できます。
手法4:BPO (Business Process Outsourcing) – 「業務プロセス」を丸ごと委託
BPOは、営業事務の特定業務(例:受発注管理、請求書発行)を、業務プロセスごと外部の専門企業に委託するサービスです。自社でシステム選定や運用リソースを確保できない場合に有効です。
近年はBPOベンダー自身がRPAやAIを活用する「デジタルBPO」が主流であり、単なる労働力の提供を超え、業務の標準化と高度な効率化を同時に実現します。
どのシステムを選ぶべき?営業事務の悩み別ソリューションマップ【課題別】
4つの手法の概要を理解したところで、貴社の「具体的な課題」に最も適した解決策を見極めましょう。ここでは、営業事務でよくある悩み別に最適なソリューションをマッピングします。
課題(1) 「SFAと基幹システム」など、複数システムへの二重入力が横行している
最適解:RPA または iPaaS
既存システムを変更せずに「間」の転記作業を自動化するにはRPAが最適です。一方、連携するシステムが両方ともクラウドサービス(SaaS)で、確実なデータ同期を求める場合はiPaaSが強力な選択肢となります。
実際に、基幹システムと業務アプリをiPaaSで連携させ、年間約1,380時間の業務工数を削減した事例(※)もあります。
課題(2) 見積書・請求書作成のルールが属人化し、ミスが多い
最適解:SFA/CRMの機能活用 または RPA
まずは導入済みのSFA/CRMに、精度の高い帳票作成機能や標準化の仕組みがないか確認すべきです。機能が不足している、またはSFAとは別のExcelなどで管理している場合は、RPAによる作成・送付プロセス全体の自動化が有効です。
近年のRPAはAIとの連携により、非定型帳票の読み取り精度も向上しています。
課題(3) 営業日報や予実管理レポートの作成に時間がかかりすぎる
最適解:RPA または SFA/CRM (AI・BI機能)
各システムからデータを「集めてくる」作業がボトルネックであれば、RPAが有効です。一方、課題が「データ入力」そのものにある場合、AIが議事録やメールを自動要約する最新のSFA/CRMが解決策となります。
SFA/CRMは、蓄積されたデータを「可視化」し、販売予測などを行う機能(BI機能)も強化されています。
課題(4) 受発注処理やデータ入力など、特定の定型業務量が膨大
最適解:RPA または BPO
業務プロセスが標準化されており、作業量が膨大なのであればRPAでの自動化が高い効果を発揮します。ある製造業では、経理部門や出荷部門のデータ入力業務をRPAで自動化し、年間約1,800時間の工数削減(※)を見込んでいます。
一方、業務の繁閑が激しい、またはプロセス自体を見直したい、社内に運用リソースがない場合は、BPOへの委託が合理的です。
システム導入(RPA/SFA) vs BPO(アウトソーシング) 徹底比較
「自動化」を検討する際、自社でシステムを導入・運用すべきか、業務ごと外部に委託(BPO)すべきかは、中小企業の「コスト負担」や「人材不足」という課題に直結する大きな分岐点です。
比較表:システム導入 vs BPO
| 比較項目 | システム導入 (RPA/SFA) | BPO (アウトソーシング) |
| コスト | 初期導入費+ライセンス料(月額/年額) | 業務量・成果物単位のサービス料(月額) |
| 導入スピード | 中〜高(選定・構築・定着に時間) | 高(即効性あり) |
| 柔軟性 | 高(自社でプロセス変更が容易) | 低(契約・SLAに基づく) |
| 業務標準化 | 自社でのBPR(業務改革)努力が必要 | 専門ノウハウにより標準化を実現 |
| 運用リソース | 自社に運用・管理・開発リソースが必要 | 不要(ベンダー管理のみ) |
| ノウハウ | 社内に自動化ノウハウが蓄積される | 社外(ベンダー)に依存する |
システム導入(RPA・SFA/CRM)が向いているケース
- 業務プロセスが頻繁に変更される、または柔軟性を維持したい
- 内製化により、自動化やデータ活用のノウハウを社内に蓄積したい
- システム間の連携(例:年間1,380時間削減したiPaaSの事例)など、特定の「ボトルネック」が明確
- 社内に「市民開発者」を育成し、全社的な業務改善文化を醸成したい
BPO(アウトソーシング)が向いているケース
- 業務プロセスが定型化・標準化されている
- システム運用のリソースや専門知識を持つ人材が社内にいない(中小企業の31.0%が課題)
- コア業務へのリソース集中を最優先したい(=非コア業務は丸ごと手放したい)
- 月額数万円台からスモールスタートし、即効性のある効率化を試したい
営業事務の自動化4つの導入ステップと注意点
中小企業でDXに着手しているのは全体の42.0%(※)に留まり、「コスト」や「人材」が大きな障壁となっています。この障壁を乗り越えるため、以下の現実的なステップを踏むことが成功の鍵です。
ステップ1:現状業務の「可視化」と「課題の特定」
自動化の第一歩は、ツール選定ではありません。「どの業務」に「どれだけ時間」がかかっているか、どこがボトルネック(二重入力、照合ミス等)になっているかを徹底的に洗い出すことです。この可視化なしに導入を進めると、効果の薄い業務を自動化してしまう恐れがあります。
ステップ2:「自動化する業務」と「廃止・標準化する業務」の仕分け
非効率なプロセスをそのまま自動化しても、効果は限定的です。「そもそも、このレポートは不要ではないか?」「この承認プロセスは簡略化できないか?」といった業務自体の見直し(BPR)が不可欠です。「自動化」の前に「廃止」「簡素化」を検討してください。
ステップ3:スモールスタートとROI(費用対効果)の検証
「コストが負担できない」という懸念を払拭するため、いきなり全部門に導入してはいけません。特定の業務(例:請求書発行)や、月額数万円から可能なBPOサービスなどでスモールスタートし、削減できた工数(例:年間1,800時間)とコスト(例:残業代)を定量的に測定し、ROI(費用対効果)を明確にします。
ステップ4:運用体制の構築と「野良ロボット」の防止
導入後の最重要ポイントが運用体制です。誰がRPAを管理・メンテナンスするのか(情報システム部門か、営業企画課か)を決定する必要があります。特にRPAでは、現場が管理部門の許可なくロボットを作成・改変し、管理不能になる「野良ロボット」問題を防ぐためのガバナンスルール策定が不可欠です。
【よくある失敗】SFA導入済みの企業が陥る「RPA導入」の罠
SFAへの入力が面倒だからと、安易にRPAでSFAへの自動入力を試みるのは危険です。根本的な課題(入力項目の多さ、プロセスの複雑さ)を解決しないままRPAを導入すると、SFAの仕様変更のたびにRPAが停止し、そのメンテナンスコストが増大するだけになります。
まずは、SFAのAI機能(入力補助など)で解決できないか検討し、RPAはSFAと他システム(基幹など)の「連携」に使う、といった切り分けが重要です。
営業事務の自動化で注目すべき主要システム・サービス
営業事務の自動化で活用できるシステムやサービスの中からおすすめのものを紹介します。
【RPA】システム間の「転記・照合」を自動化するツール
UiPath
グローバルシェアが高く、7年連続で国内シェア1位を維持しています。複雑な業務フローにも対応できる高い拡張性が特徴です。「Autopilot」機能により自然言語でプロセスを生成できるなどAI連携も最先端で、本格的な内製化を目指す中堅〜大企業に適しています。
WinActor
純国産RPAとして高いシェアを持ちます。日本語環境での使いやすさやサポート体制に強みがあります。AIが対話形式でシナリオ構築を支援する機能も搭載し、現場主導でのスモールスタートや「市民開発者」の育成に適しています。
【SFA/CRM】営業プロセス自体の「非効率」を改善するツール
Salesforce Sales Cloud
SFA/CRMの圧倒的リーダーです。強力な「Einstein AI」を搭載し、商談の受注確度予測、議事録の自動要約、メール作成支援、リアルタイムコーチングまで行います。このAIによる「入力負荷の劇的削減」は、SFAが使われないという課題の根本解決に繋がります。プラットフォーム型で拡張性も非常に高いです。
【BPO】「業務プロセス」を丸ごとアウトソースするサービス
代表的BPOサービス (パーソル、パソナ、トランスコスモス等)
ツール導入ではなく「業務代行」サービスです。価格は委託範囲により大きく変動しますが、月30時間・7万円台からといったスモールスタートが可能なプランから、月額150万円以上の大規模委託まで幅広く存在します。自社でRPA/AIを運用するリスクを負わずに、専門家による即効性のある業務標準化と効率化を実現できるのが最大のメリットです。
まとめ:営業事務の自動化は「課題の特定」と「最適な手法選び」から

営業事務の自動化は、「ツールやサービスを導入すること」がゴールではありません。経済産業省が「DXは効率化・省力化に留まらず、収益向上にこそ活用するべき」と提言するように、自動化はコスト削減の先にある「企業変革」の第一歩です。
営業企画担当者としてまず行うべきは、自社の課題を解像度高く特定することです。課題は「システム間の二重入力」なのか、「業務プロセスの属人化」なのか、「慢性的なリソース不足」なのか。
この「課題の特定」こそが、数ある選択肢から最適な一手を選び抜き、営業事務の自動化を単なるコスト削減ではなく、営業部門全体の生産性向上、そして全社の収益向上に繋げるための最も重要なステップです。
営業事務の自動化で悩んでいませんか?

この記事で解説した通り、営業事務の自動化は「課題の特定」と「最適な手法選び」が成功の鍵です。
しかし、「自社の課題はRPAとBPOのどちらに当てはまるのか?」「SFAを導入したが、残った“二重入力”はどう解決すべきか?」選択肢の違いは理解できても、自社にとっての「最適解」を判断するのは困難です。
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