働き方改革の推進や感染症対策の必要性に伴い、テレワークの需要が高まっています。出社せずに仕事をする勤務スタイルには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
言葉の定義から対策すべき課題・導入事例まで、テレワークについて解説します。
テレワークとは
テレワークとは、情報通信技術 (ICT)を活用して仕事をする場所と時間にとらわれない働き方のことです。
「テレワーク(Telework)」は日本語で「離れた」という意味を持つ「tele」と、「仕事」や「働く」の意味を持つ「work」を合わせた造語です。
リモートワークとの違い
テレワークを同じ使われ方をするワードに「リモートワーク(Remote work)」があります。
「リモート(remote)」とは日本語に訳すと「遠隔」「遠い」という意味で、「リモートワーク」を直訳すると「遠隔で働く」という意味です。
テレワークもリモートワークも共に、インターネットを活用して遠隔で仕事をする働き方を指します。違いは「定義」が明確になっているかのみのため、同義として使っても問題はないでしょう。
「テレワーク」は1970年にアメリカで誕生したワードですが、リモートワークは発祥が不明です。また各省庁や自治体といった公的な機関では、「テレワーク」の表記が採用されています。
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テレワークに向いている職種・向いていない職種
テレワークの導入には職種ごと向き不向きがあります。職種によってはテレワークの導入によってかえって不利益が生じる恐れがあるので確認していきましょう。
テレワークに向いている職種
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上記のテレワークに向いている仕事には3つの共通点があります。
1人で作業が行える
人と対面する必要がなく、1人で作業を完結できる業務はテレワークに向いています。
数名で分担する場合でも「Zoom」などの「Web会議システム」でコミュニケーションを取って進められる内容であればテレワークが可能です。
特にクリエイティブ職やIT系のエンジニア等はこの傾向にあるためテレワークに向いています。
成果が目に見えて評価しやすい
テレワークは上司が社員の仕事の様子を確認できない環境なので、作業内容や成果を可視化できる業務であることが望ましいです。
処理した仕事量のわかりやすい経理や営業、一部の事務職やシステムエンジニアなどのほかクリエイティブ職も向いています。
セキュリティ面に問題ない業務
テレワークを導入した場合、社員同士のやり取りはインターネットを介して行われます。
そのためメッセージのやり取りやクラウドデータを共有する場合、機密情報や個人情報などが含まれていると、情報漏洩のリスクが高くなります。
インターネットでのやり取りができる情報であるか、しっかりと精査をしましょう。
テレワークに向いていない職種
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テレワークに向いていない仕事には、対面でコミュニケーションを取ることや、実際に目や手を使う必要があるという共通点があります。
他にも紙の書類を多く扱う業務では、印鑑の捺印や紙の書類管理のためテレワークができないこともあります。
しかし紙の書類を多く扱う業務の場合、ワークフローシステムを活用して業務自体を電子化することで、テレワークが可能になる場合が多いです。
企業側のテレワーク導入のメリット・デメリット
テレワークの導入によって働き方は大きく変わります。企業のメリットやデメリットを導入前に把握しておきましょう。
【企業のメリット】
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【企業のデメリット】
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企業のテレワーク導入のメリット
テレワークの導入によって得られる恩恵を人材確保・経費削減・BCP対策の3面から解説します。
人材確保につながる
市場価値の高いスキルや知識があっても働く場所や時間が合わず、企業で働けない人もいます。働く場所や時間が選べる働き方は、埋もれた人材の発掘につながるのも嬉しい効果です。
問題なく出社できる社員にとっても、時間や場所に縛られない働き方の導入はワークライフバランスを向上できる施策です。
プライベートも重視しながら働ける環境では社員満足度も上がり、全社的な離職率の改善や優秀な新入社員の応募にもつながるでしょう。
コストが削減できる
テレワーク導入によってさまざまなコストの削減が見込めます。カットできるコストは主に、オフィス使用にかかる設備費や光熱費・移動にかかる交通費です。
また、テレワークの導入によって社員のライフステージに合わせた環境を提供できるため、物理的距離により出社が難しくなり退職する社員の離職防止にもつながります。
働きやすい環境が評価されることで、採用コストの削減も期待できます。
非常事態に強い体制を実現
本拠地のみで仕事をする体制では、自然災害によってオフィスが機能しなくなったとき業務が継続できなくなります。
テレワークを導入していれば、社員の自宅や地方のサテライトオフィスなど複数の拠点で仕事ができるため、出社のみの体制と比べてリカバリーしやすいのがメリットです。
感染症の流行やパンデミックによって出勤が難しくなると、企業活動が停止してしまうのも出社が必要な体制の課題です。
就業場所を限定しないテレワークでは通勤や勤務時の人の密集を回避できるので、感染リスクを低減しつつ通常通り業務を回せます。
業績のよい企業でも一度業務が停止してしまうと、復旧に時間がかかればダメージを受けるでしょう。安定した組織を目指すためにもBCP(事業継続計画)対策は重要です。
生産性の向上
平成31年度(令和元年度)に国土交通省によって行われた「テレワーク人口実態調査-調査結果の概要」によると、テレワークの実施効果は以下の通りでした。
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さらにこのうち「業務の効率が上がった」と回答した割合は43%でした。
※雇用型テレワーカー5,312人に向けた調査
企業のテレワーク導入のデメリット
テレワークの実情を把握しないまま導入すると、運用が上手くいかない場合があります。起こり得る問題を事前に把握しておくと、対策を取りやすくなるでしょう。
勤怠管理の複雑化
社員それぞれが自身の裁量で働ける自由度の高さは、テレワークのメリットです。しかし上司や経営者が出勤・退勤の様子を直接見られないので、勤怠管理が難しくなる点は問題です。
業務を終わらせるために隠れて深夜まで仕事をしていたり、休憩時間を取らずに働いていたりといった事態が起こりかねません。
自己申告に委ねていると経営側が把握していない長時間労働が発生し、労務上のトラブルにつながる恐れがあります。
セキュリティリスクの増加
テレワークでは会社の外で業務を進めるので、情報が流出するリスクが上がります。社内のパソコンを持ち出す場合だけでなく、テレワーク専用の端末を使って社外で仕事をする場合も同様です。
オフィス内では専用のネットワーク回線を使用しますが、外部では公共の無線LANやWi-Fiなどセキュリティ対策がとられていないネットワークを利用する機会が増えます。
利用者を問わない回線ではデータ通信が暗号化されないため、情報が筒抜けです。作業をするパソコンやタブレット端末ごと紛失したり、盗難に遭ったりする危険も見逃せません。
導入前に業務に関わる機器や情報の扱いに関してルールを定める、テレワーク用の端末にはセキュリティソフトをインストールしてから支給するといった準備が重要です。
不公平感が生まれる可能性
テレワークはすべての仕事にフィットした働き方ではありません。職種によってはテレワークができないため、社内で不公平感が発生する可能性があります。
1日中パソコンに向かって作業をする仕事内容であれば、必要な設備を整えるだけでテレワークに切り替えが可能です。
しかし対面が必要な職種はテレワーク導入が難しいでしょう。待遇に差が出てしまうと社員のモチベーションが低下しやすくなります。
全社員にテレワーク導入が難しい場合は、なぜ一部の人しかテレワークに切り替えができないかの説明を欠かさない配慮が重要です。
不公平感から職場の雰囲気が悪化して、離職者を出さないようフォローしなければなりません。
従業員のテレワーク導入のメリット・デメリット
会社側にメリットがあっても社員が納得しなければテレワークを浸透させることは難しいでしょう。テレワーク導入による社員側のメリット・デメリットを解説します。
【従業員のメリット】
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【従業員のデメリット】
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従業員のテレワーク導入のメリット
テレワークの導入は社員にとって自分らしく働けるというメリットがあります。
育児や介護との両立
これまで働きたくても仕事を離れざるを得なかった育児時や介護時でも、テレワーク導入によって両立して働くことができるようになります。
保育所へのお迎えなどの家庭の用事や、通院などのイレギュラーな事態が発生した場合でも柔軟に対応することができます。
通勤時間の削減
都市部の企業では往復2時間以上かけて通勤している人も珍しくありません。テレワーク導入によって通勤する必要がなくなると、通勤に充てていた時間を趣味や家事など自由な時間に充てることができます。
居住地の自由化
テレワークによって住居がオフィスの場所に左右されなくなります。
そのためパートナーが地方や海外に転勤になった場合でも環境さえ整えることができれば、単身赴任や退職をせずに働き続けることができます。
また地方に住みながら都市部の会社で働くことやその逆もできるようになるため、各々の生活スタイルに合わせて居住地を選べることもメリットです。
従業員のテレワーク導入のデメリット
メリットが多くあるテレワークですが、オフィスでは当たり前に出来ていたことが出来なくなることもあるので、事前にデメリットを把握して置きましょう。
仕事とプライベートの境が曖昧に
テレワークでは自分の仕事を自身で管理し、プライベートと切り替える自己管理能力が重要です。
プライベートが近い分、切り替えがうまく出来れば効率的に働くことができますが、そうでない場合はかえって働きにくさを感じる場合があります。
そういった場合には、在宅勤務ではなくサテライトオフィスやコワーキングスペースを利用して働きやすい環境を構築することが必要です。
コミュニケーションエラーが起きやすくなる
モバイルワークでは、出社時に比べ社員間のコミュニケーションが減少する傾向にあります。
チャットが主なコミュニケーション手段となることで、対面での説明によって防げるコミュニケーションエラーが生じやすくなります。そのため、定期的にMTGを開催しコミュニケーションを取ることが重要です。
円滑なテレワーク運用を目指すには
テレワーク特有の課題を解決するためには、どのような施策が必要なのでしょうか?あらかじめ対策を考えてから導入すれば、予想外のトラブルを回避できます。4つの有効な対策を押さえて円滑な運用に役立てましょう。
コミュニケーションツールを取り入れる
同じオフィス内にいると必要なときにすぐ声をかけられますが、テレワークでは物理的に接触する機会が減ってしまいます。コミュニケーション不足を防止するためにはITツールを活用しましょう。
オンラインで定例会や会議を実施できる会議システムを利用すれば、出社しているときと同じようにリアルタイムでのコミュニケーションをとれます。ビジネスチャットを導入して業務状況を報告し合うのも、こまめな情報共有に有効です。
スケジュール管理などの社内共有ツールを取り入れる
グループで作業を行うとき、円滑に進めるためには情報の共有が重要です。テレワークでは特に情報を共有する手段が限られます。
メールやSNSでも要件は伝えることができますが、個人同士がメインのツールなのでグループの情報共有にはあまり向いていません。
そこで社内の情報共有に役立つのがグループウェアです。グループウェアにはスケジュールやファイルの共有、設備の予約、タスク管理、掲示板などの機能があり、組織単位での情報共有に適しています。
勤怠管理をシステム化する
就業状況の把握が難しくなるテレワークでは、勤怠管理の方法を整備する必要があります。人事など管理する人の負担が少なくなるように、勤怠管理や労務管理のツールを導入するのがおすすめです。
クラウドサービスならインターネット環境があれば場所を問わず使えるため、テレワーク対象者でなくても外出先から勤務状況を報告できるといったメリットもあります。
出退勤だけでなく月の残業時間や出勤日数もまとめて管理でき、勤怠管理の効率化が期待できるでしょう。
次の記事ではおすすめの勤怠管理システムを紹介しています。ぜひ、あわせて参考にしてください。
評価制度や社内制度の格差をなくす
テレワークでの不公平感をなくすには、報酬面での差や不透明性を改善しなければなりません。対象者に支払う手当や経費の基準を明確にしておけば、出社している社員から不満が出にくくなります。
感染症対策でテレワークを導入する場合には、出社が必要な接客・営業といった立場にある従業員に対しての配慮も必要です。
評価の偏りを改善する施策も円滑な運用のために欠かせません。働きぶりが見えにくいテレワークでも公正な評価を下せるように、それぞれの職種に必要な基準を明確な数値として定めておきましょう。
大手企業のテレワーク導入事例
テレワークの導入を成功させるために参考になるのが、先駆者の事例です。大手企業が行って成果を上げた取り組みを参考にし、自社での運用に生かしましょう。3社の導入事例を紹介します。
生産工程以外に適用「日産自動車」
2014年から生産ライン以外の部署で、月40時間(育児・介護が必要な社員は所定労働時間の50%)まで在宅勤務ができる体制を整えています。
在宅勤務でも生産性を担保できるように在宅勤務専用のサイトを立ち上げ、成果を上げた取り組みを共有する仕組みを作っています。
他にも柔軟な働き方を提案し、従業員のワークライフバランスを推進する施策を数多く採用しているのが特徴です。「勤務時間は8時間」という意識づけの徹底や毎月最終金曜日には早い帰宅を推奨するなど、働き方改革に尽力しています。
業務の切り出しが功を奏した「東急リバブル」
不動産業界ではテレワークは難しいとされる概念を打ち破ったのが、「東急リバブル」です。16年に在宅勤務制度の運用を開始しました。
15年6〜8月に実施されたトライアル運用で対象者の70%が「業務効率が上がった」と回答し、ワークライフバランス向上の施策として制度化されたのです。
育児や介護との両立が必要な社員から導入を始め、18年には営業職を含めた全ての社員が在宅勤務を選べるようになっています。
テレワークに適する業務を切り出した上で、月に6回まで集中して自宅での業務に取り組むことで、業務効率のアップを図っているのが特徴です。
申請理由を問わずテレワーク可能「日本航空」
フライトに直接関わる従業員を除いた間接スタッフに対して、14年から在宅制度のトライアル運用を始めました。
16年にはテレワーク制度として確立され、育児や介護の必要がない社員でも申請理由にかかわらず利用できるようになっています。
在宅勤務だけでなく休暇中でもテレワークで仕事ができる「ワーケーション」、出張先でも休暇が取れる「プリージャー」も段階的に取り入れられてきたのが特徴です。
急な会議が入っても休暇の日取りを変更せずに対応しやすいなど、社員の利便性と生産性の両方を重視した体制づくりを実現しています。
課題も理解してテレワークの運用を
テレワークとは場所や時間に縛られず、柔軟な働き方を実現する勤務形態です。経費の削減や優秀な人材の確保など、企業にとって多くのメリットがあります。
しかし事前に対策をとらなければ、セキュリティリスクの増大やコミュニケーション不足・不公平感の原因になるといった弊害も現れるでしょう。
運用前にはルールの策定や効果的なツールの導入など、デメリットを解消できる施策を講じる必要があります。テレワークのメリットを生かすためにも、成功事例の確認や社内制度の見直し・ツールの選定といった準備が重要です。
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