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物流・運送業界の2024年問題とは?働き方改革の影響や対策を解説

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最終更新日: 2024年03月09日

働き方改革関連法案の施行により、多くの業界で労働環境・勤務態勢の見直しが行われています。一見、良い面ばかりが強調されがちですが、中にはこの法案によって問題が生じている業界もあるのです。そしてその1つに、物流・運送業界が挙げられます。

この記事では、2024年に表面化するこの問題をわかりやすく解説。働き方改革がもたらす影響やその対策を、事例を交えながら紹介します。

物流・運送業界の2024年問題とは

高速道路を走るトラック

「物流・運送業界の2024年問題」とは、2024年4月1日以降に制定される「運送ドライバーの時間外労働の上限規制」により発生する諸問題のことです。

時間外労働の上限規制により、運送・物流業者の売上・利益の減少や、ドライバーの収入減少といった問題が生じる可能性が考えられています。

2024年問題と働き方改革関連法の関係性

作業服を着た物流作業員

物流・運送業界の2024年問題の要因となっているのが、働き方改革関連法による労働環境の是正です。具体的な変更点と関連性を紹介します。

自動車運転業務における時間外労働の上限規制適用

働き方改革関連法案では、時間外労働に上限規制が設けられています。具体的には36協定が合意された場合、自動車運転の時間外業務については、年960時間です(休日出勤を含まない)。

上限時間を超えた場合、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金という刑事罰が科せられてしまいます。

これによりドライバーを雇用する会社は、今までよりも厳密に労働時間を管理し、上限規制を守ったシフトを組まなければならなくなりました。

時間外労働の割増賃金引上げによる人件費の増加

働き方改革関連法により、2023年4月以降、大企業に限らず中小企業においても月60時間を超える残業への割増賃金率が25%以上から50%以上に引き上げられました。

深夜時間帯(夜10時~朝5時)の労働の場合は、さらに深夜手当として25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。結果として、最大75%の割増賃金を企業は労働者に対して支払わなければならないのです。

運送会社にとって、この人件費は大きな負担となる可能性があります。

同一労働・同一賃金への対応

働き方改革の項目の1つに「同一労働・同一賃金」があります。同一労働同一賃金では、正規・非正規雇用の不合理な格差をなくし、業務内容が同じであれば待遇の均衡を確保する必要があります。

運送業界では、ドライバーを非正規雇用で雇っている企業が多いのが現状です。これまでは、非正規雇用であれば給与形態や評価基準、福利厚生について、正規雇用ほど手厚くする必要はありませんでした。しかし今後は正規雇用と同様に扱わなければならなくなってきます。

もちろんドライバーにとっては良いことではあるものの、企業にとっては管理体制の複雑化やコスト増は免れません。

2024年問題の具体的な影響

駐車場に並ぶトラック

2024年問題によって、物流・運送業界の働き方にどのような影響が出るのでしょうか。具体的な影響を解説します。

運送・物流業者の売上・利益の減少

時間外労働の上限規制によって1日に運べる荷物の量が減ることで、収入が減少してしまう問題です。この問題を直接的に解消するには運賃を上げる必要がありますが、それは簡単なことではありません。

いまや全国で6万社を超える運送業者がひしめく中、荷主企業は運賃がより安い運送・物流業者へと依頼する傾向にあります。そのため運送・物流業者から荷主に価格交渉をすることは、なかなか現実的ではありません。

ドライバーの収入減少

ドライバーの収入減少も2024年問題で考えられるひとつの問題です。

ドライバーはトラックの走行距離に応じて運転手当が支給されます。時間あたりで走行できる距離は限度があるので、走行距離の限界が収入の減少に直結します。

収入の減少によって離職につながる可能性も考えられており、労働力不足が加速する恐れもあります。

ドライバーの離職

割増賃金による人件費の高騰を抑えるために、ドライバーの基本給を下げる等の対策を行うことも考えられます。あるいは上限規制を守らせるために、ドライバーの労働時間を抑制する動きが出てくるでしょう。

その場合ドライバーの収入は減少し、結果として離職してしまう人が増えることが考えられます。

運送業界はただでさえ若い働き手が少なく、ドライバーの高齢化が問題視されています。働き手不足は、物流・運送業界全体にとって深刻な問題です。

運送コストの増加

割増賃金の支払いやドライバーを正規雇用と同列に扱うことで起こる懸念として、運送コストの増加が挙げられます。

2023年の法施行により、月60時間以上の残業が発生した際の割増賃金率が25%から50%へと引き上げられます。

運送業界はドライバーの賃金が、運送コストの中でも大きな割合を占めています。そのため人件費の増加は、運送コストの増加にそのままつながるのです。

運行ルートや方法の見直し

上限時間の規制やドライバーの離職によって、現在の運行ルートでは運びきれない荷物が出てくる恐れがあります。

そのため運行ルートや運行方法の見直しが、物流・運送業界の企業では急務となります。運送ルートの見直しや拠点配置の変更、あるいは待機時間や仕分けを削減することで予算や時間を確保できるのかなど、各セクションの検討が必要になるでしょう。

また依頼されている荷物の引き受けを、断らざるを得なくなる可能性も出てきます。結果として荷主側も新しい運送会社を探さなければなりません。

2024年問題の解決策

トラックのハンドルを握るドライバーの手元

こうした物流・運送業界における2024年問題に向けて、運送会社は今のうちから対策を練らなければなりません。取っておくべき対策の具体例を紹介します。

人材の確保

割増賃金増加への対策として、ドライバーを確保して1人あたりの労働時間を下げることが有効になります。また業界離れと高齢化が進んでいる中で、人材の確保は重要な施策といえるでしょう。

ただし流通・運送業界はブラックなイメージも根強く、若手がなかなか入ってこないという現状もあります。若手を中心に採用活動を進めていくためには、このブラックなイメージをどのように払拭して、アプローチするかが重要な施策になるでしょう。

中継配送の導入

ドライバーの労働時間を減らしたいとはいえ、輸送先が遠方にある場合は運行にかかる時間を減らすことはどうしても難しいでしょう。

そこで重要になってくるのが「中継配送」の対策です。

荷物を目的地に運ぶために中継地点を作り、そこでドライバーの交代や荷物の入れ替えを行います。1人のドライバーが長期経路を運送するという状況を変えることが可能です。

中継点でドライバーが交代するパターンや、トラクターの交換をするパターンなど、さまざまな取り組みがすでに実践されています。

労働環境・条件の見直し

ドライバー確保の対策としても、労働環境・条件面の見直しは急務といえます。運送業のドライバーの賃金は他業種と比べて低い傾向にあります。

労働時間に上限規制を敷かれてしまえば、収入不足によるドライバーの離職が増えてしまう可能性は決して低くありません。

この問題を解消するためには、週休2日制の導入有給休暇消化の促進基本給の見直しなどを行う必要があるでしょう。

また女性や高齢者でも働きやすい環境を整えて採用できる人材の幅を広げることも、人材確保のために行わなければなりません。

デジタル化の推進も解決の鍵

交通・物流のデジタル化イメージ

昨今はIT業界を中心に、急速なデジタル化が進んでいます。物流・運送業界も例外ではありません。

デジタル化が課題解決にどのように役立つのか、事例を交えながら解説します。

勤怠管理システム導入によるドライバーの正確な勤務時間の把握

勤怠管理システムは正確な勤務状況の把握や、業務量の削減につながります。

物流・運送業界のこれまで勤怠管理といえば、タイムカードやタイムシートへの記帳が主流でした。このためドライバーの場合、勤怠管理が曖昧になってしまいがちです。遠隔でも打刻が可能な勤怠管理システムを導入すれば、ドライバーの正確な勤務時間の把握に期待が持てるでしょう。

次の記事ではおすすめの勤怠管理システムを紹介しています。ぜひ、あわせて参考にしてください。

関連記事:運送業向け勤怠管理システム8選!【2024年の働き方改革にも対応】|ミツモア

受け渡しデータのデジタル化

物流・運送における業務では、伝票や検品表などの受け渡しを日常的に行います。

従来このデータは紙で行われていましたが、近年ではデジタル化されて電子データでの受け渡しが多くなってきています。

データのデジタル化の良いところは、紛失がないという点です。またデータはすぐに共有されるので、配送状況が本社や荷主側でも明確化されます。

デジタルデータはかさばることがなく、保管の面からみても伝票保管のためのスペースが不要になります。検索にかかる時間も大幅に減らすことが期待できます。

トラックの予約システム

運送業で大きな問題となっているのが、ドライバーの待機時間問題です。

これまでは長距離配送や荷物の積み込みによりドライバーが長時間待機せざるをえず、結果として人件費が上がってしまう問題が発生していました。トラック台数の確保不足による、トラック待ちの状況も少なくありません。

しかしデジタル化を推進してドライバーの確保やトラックを事前に予約できるようになれば、これらの問題は解消されるでしょう。

ドライバーの待ち時間もなくなりますし、トラックの台数確保などもしやすくなります。そうすれば長時間労働問題の解消に、大きく寄与できる可能性があります。

配車・配送計画の業務改善

デジタルツールを使うことで、配車・配送計画を今までよりも綿密に行えるようになるでしょう。計画のためのデータ収集もスピーディーに行えるどころか、計画の自動立案まで行ってくれるAIツールもあります。

効率的な配車の手配や配送計画を立案できれば、運送にかかるコストを大きく下げられる可能性があります。計画立案の属人化を防ぎ、サービス向上や事務業務の効率化も同時に行うことができるようになるでしょう。

2024年問題への対策事例を紹介

配送中のトラック運転手

2024年問題への対策をすでに始めている企業が出てきています。企業が実際に行っている取り組みを紹介しましょう。

ドローン配送・自動配送ロボットの導入

日本郵便ではドローンを使った配送の取り組みを進めています。また楽天でもドローン流通サービス「そら楽」の実施に向けて取り組みを進めているなど、ドローンをビジネスに組み込む施策を進めている企業は少なくありません。

ドローンを本格活用できるようになれば、陸路にこだわる必要がなくなるので、渋滞に巻き込まれる心配もなくなります。配送時間の大幅短縮につながるでしょう。

さらにドローンならば労働時間を気にする必要もないので、ドライバー数の不足にも対応が可能になります。

参考:ドローン物流サービスの実例と今後の展望|経済産業省

福利厚生の展開

茨城県にある運送会社では、マイホームを建てた場合のご祝儀や、バカンス休暇の導入など、ユニークな福利厚生を打ち出しています。

また副業を認めるなどして、働き方の多様化にも対応できるようにした結果、従業員数は増加したとのことです。

福利厚生は企業側からすると、コスト増につながると思われるかもしれません。しかし人材確保やクリーンなイメージを打ち出すことにつながります。そのため実際にかかったコスト以上の成果に、期待が持てるでしょう。

2024年問題対策で導入を検討したいシステム

トラックの前に立つドライバー

物流・運送業界における2024年問題への対策として、導入を検討したいシステムを紹介します。

freee人事労務

freee人事労務
出典:「freee人事労務」公式Webサイト

「freee人事労務」は日々の勤怠管理や従業員情報の管理、給与計算など豊富な機能を備えた人事労務ソフトです。

日々の出退勤の管理や休暇の管理、データの活用までをひとつのソフトでまるっと効率化が可能に。勤怠情報の一覧はリアルタイムで反映されるため、ドライバーの勤怠状況もひと目で把握できます。

さらに給与計算や給与明細の発行もワンクリックで完結。労務管理にかかる時間を大きく削減できます。

KING OF TIME

KING OF TIME
出典:「KING OF TIME」公式Webサイト

「KING OF TIME」は豊富な打刻方法が魅力の勤怠管理システムです。

アプリを活用したスマホ打刻はもちろん、ICカードや指静脈認証などの生体認証にも対応。配送事務所の稼働状況に左右されない柔軟な出退勤が可能になります。

勤怠時間の柔軟性向上によって勤怠管理の正確性を担保しつつ、事務員のコスト削減などの効果も見込めます。

事前の対策で2024年問題の課題解決を

高速道路のジャンクション

物流・運送業界では2024年から働き方改革に適応することが求められており、中小企業を中心に対策を練る必要が生じています。

福利厚生の充実や労働環境の見直しはもとより、デジタル化の促進や正社員以外の雇用にも目を向けることが重要です。また配送経路や労働体制についても、見直さなければなりません。

これらの取り組みは早期に解決が見込めるものではなく、段階的な改善が必要になります。取り組みは早いほど成果が見込めるため、今のうちから2024年問題に向けた準備に取りかかってみてはいかがでしょうか。

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