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物流・運送業界の2024年問題とは?働き方改革・労働時間の影響や対策を解説

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最終更新日: 2024年11月23日

働き方改革関連法案の施行により、多くの業界で労働環境・勤務態勢の見直しが行われています。一見、良い面ばかりが強調されがちですが、中にはこの法案によって問題が生じている業界もあるのです。そしてその1つに、物流・運送業界が挙げられます。

この記事では、2024年に表面化するこの問題をわかりやすく解説。働き方改革がもたらす影響やその対策を、事例を交えながら紹介します。

物流・運送業界の2024年問題とは

高速道路を走るトラック

2024年問題とは、2024年4月からトラックドライバーに対して時間外労働の規制が適用されることで発生する問題です。

具体的にはドライバーの時間外労働時間が働き方改革関連法により年間960時間に制限されることで、一人当たりの走行距離が短縮され、長距離輸送が困難になり、売上の減少や、トラックドライバーの収入減少が予想されています。また、物流業界だけでなく企業や市民にも影響が及ぶ可能性が高いとされています。

時間外労働が制限される背景には、物流・運送業業界の長時間労働の常態化や若手ドライバー不足や高齢化、EC需要の拡大などがあります。

一般企業には月45時間、年間360時間の上限が適用されてきましたが、事業や業務の特性上の理由で物流業界では年間960時間の特例が2024年4月から施行されます。同様の特例は建設業や医師にも適用されています。

物流・運送業界での働き方改革関連法改正点

作業服を着た物流作業員

物流・運送業界の2024年問題の要因となっているのが、働き方改革関連法による労働環境の是正です。具体的な変更点について紹介します。

時間外労働の上限が年960時間になる

2024年4月から働き方改革関連法案では、時間外労働に上限規制が設けられています。具体的には36協定が合意された場合、自動車運転の時間外業務については、年960時間です(休日出勤を含まない)。

上限時間を超えた場合、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金という刑事罰が科せられてしまいます。ドライバーを雇用する会社は、今までよりも厳密に労働時間を管理し、上限規制を守ったシフトを組まなければならなくなりました。

<時間外労働の上限>

2024年3月31日まで 2024年4月1日以降
なし ・特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間

・時間外労働と休日労働の合計について、「月100時間未満」「2〜6ヶ月平均80時間以内」とする規制は適用されない

・時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されない

参考:建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制|厚生労働省
参考:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説|厚生労働省

拘束時間が短縮される

拘束時間とは始業時刻から終業時刻までの時間を指し、新しい規定では、1日の拘束時間は13時間で変更はありませんが、最大拘束時間が改正前の16時間から15時間に短縮され、14時間超は週2回までに制限されます。ただし、宿泊を伴う長距離輸送では最大16時間が認められますが、これも週2回までです。

1カ月の拘束時間は、改正前の293時間から284時間に短縮され、年間の総拘束時間は3,300時間と定められました。また、改正前は労使協定により年間6カ月間で最大3,516時間、1カ月最大320時間まで延長可能でしたが、改正後は年間3,400時間、1カ月最大310時間までの延長に制限されます。

<拘束時間>

期間 2024年3月31日まで 2024年4月1日以降
1日の拘束時間 13時間以内

※最大16時間/15時間超は週2回まで目安

13時間以内

※最大15時間/14時間超は週2回まで目安
※宿泊を伴う長距離貨物輸送の場合は、16時間まで延長可(週2回まで)

1ヶ月の拘束時間 原則293時間

※労使協定の締結で、1年のうち6ヶ月までは年間3,516時間を超えない範囲内で1ヶ月320時間までに延長が可能

原則284時間以内

※労使協定の締結で、1年のうち6ヶ月までは1ヶ月310時間までに延長が可能

1年の拘束時間 原則3,516時間 原則3,300時間以内
※労使協定の締結で、年間3,400時間までに延長が可能
参考:改善基準告示の見直しについて|厚生労働省

連続運転時間の中断が「非運転時間」から「休憩」になる

トラックドライバーの連続運転時間は原則4時間ですが、働き方改革関連法改正後は4時間を超える場合に30分以上の「休憩」が義務化されました。

改正前は「非運転時間」として荷積みや荷卸し作業も中断時間に含めることが可能でしたが、改正後は休憩時間として認められるには、実際に休息できる時間でなければならなくなりました。

例外として、サービスエリアなどに駐停車できない場合は、連続運転時間を最大4時間30分まで延長することが許可されています。

<連続運転時間>

2024年3月31日まで 2024年4月1日以降
原則4時間

※1回の運転が10分以上かつ、合計30分以上中断せず運転する時間を「連続運転時間」とする

現行と同様

※駐車・停車ができないなどやむを得ない理由で連続運転時間が4時間を超える場合は30分まで延長可能

参考:自動車運転者の労働時間等の改善のための基準|厚生労働省

休息時間が延長される

働き方改革関連法改正により、ドライバーの休息期間が延長されました。改正前は継続8時間の休息が必要でしたが、改正後は基本的に継続11時間、最低でも9時間以上が必要となります。

ただし、長距離輸送では例外として、1週間に2回まで継続8時間以上の休息が認められます。さらに、休息が9時間未満となった場合、運行終了後には継続12時間以上の休息を与えることが義務付けられています。

<休息時間>

2024年3月31日まで  2024年4月1日以降
継続8時間 継続11時間を基本とし、9時間を下回らない

※宿泊を伴う長距離貨物輸送の場合は、1週について2回に限り、継続8時間以上の休息期間を設ける
※休息期間が9時間を下回る場合は運行終了後に継続12時間以上の休息期間を与える必要がある

参考:トラック運転者の改善基準告示(2024年4月1日施行)|厚生労働省

物流・運送業界が受ける2024年問題の影響

2024年問題によって、物流・運送業界の働き方にどのような影響が出るのでしょうか。具体的な影響を解説します。

駐車場に並ぶトラック

労働時間規制による積載量不足と配送遅延のリスク

ドライバーの労働時間制限により、積載量が減少し、必要な人員が確保できなくなるため、引き受けられない荷物が増える可能性があります。十分な積載量を維持するには、人員拡充などの対策が必要です。

また、時間外労働や休日出勤の制限により、短期間での長距離輸送や急な依頼に対応できなくなる恐れがあります。その結果、物流にかかる日数が増加し、輸送効率が低下することが予想されます。

ドライバーの収入減少と離職率の増加

人件費の上昇や引き受ける荷物の減少で収益が悪化すれば、給与に影響が出る可能性があります。

また、時間外労働の削減によりドライバーの残業代が減り、生活水準を維持できなくなる副次的なデメリットも懸念されています。その結果、収入減を理由に転職者が増えたり、求人に応募が集まらない事態が考えられます。

人員流出が進むと、さらに荷物の取扱量が減り、業界全体で悪循環に陥る恐れがあります。

運行ルートや方法の見直し

上限時間の規制やドライバーの離職によって、現在の運行ルートでは運びきれない荷物が出てくる恐れがあります。

そのため運行ルートや運行方法の見直しが、物流・運送業界の企業では急務となります。運送ルートの見直しや拠点配置の変更、あるいは待機時間や仕分けを削減することで予算や時間を確保できるのかなど、各セクションの検討が必要になるでしょう。

また依頼されている荷物の引き受けを、断らざるを得なくなる可能性も出てきます。結果として荷主側も新しい運送会社を探さなければなりません。

荷主が受ける2024年問題の影響

配送サービスをよく利用する企業や一般人の荷主が受ける影響を紹介します。

配送コストが上がる

2024年問題によってドライバー不足が生じ、給与を引き上げて人材確保を図ると、人件費が増加し、その分運送料金に転嫁されます。その影響で物流コストが上昇し、荷主の支出が増え、利益や売上が減少する可能性があります。

荷主は、物流コスト増大に伴い他の費用を削減せざるを得ず、結果として、これまで提供していた送料無料サービスの継続が難しくなることも考えられます。

配送に時間がかかる

トラックドライバーの時間外労働や休日出勤の制限、ドライバー不足により、これまで通りの輸送が難しくなる可能性があります。

特に、短期間での長距離輸送や急な依頼に対応できなくなり、物流にかかる日数が増加することが予想されます。その結果、企業の供給チェーンが遅延し、商品やサービスの提供に影響を与えるリスクが高まるでしょう。

2024年問題への対策方法

トラックのハンドルを握るドライバーの手元

2024年問題に対処するため、企業に求められる主な具体的な取り組みを紹介します。

勤怠管理システム導入によるドライバーの正確な勤務時間の把握

勤怠管理システムは正確な勤務状況の把握や、業務量の削減につながります。

物流・運送業界のこれまで勤怠管理といえば、タイムカードやタイムシートへの記帳が主流でした。このためドライバーの場合、勤怠管理が曖昧になってしまいがちです。遠隔でも打刻が可能な勤怠管理システムを導入すれば、ドライバーの正確な勤務時間の把握が可能です。

関連記事:運送業向け勤怠管理システム8選!【2024年の働き方改革にも対応】|ミツモア

配送管理システムによる業務改善

配送管理システムを使うことで、配車・配送計画を今までよりも綿密に行えるようになるでしょう。配送計画のためのデータ収集もスピーディーに行えるどころか、計画の自動立案まで行ってくれるAIツールもあります。

効率的な配車の手配や配送計画を立案できれば、運送にかかるコストを大きく下げられる可能性があります。計画立案の属人化を防ぎ、サービス向上や事務業務の効率化も同時に行うことができるようになるでしょう。

ドライバーの待ち時間もなくなり、トラックの台数確保などもしやすくなります。長時間労働問題の解消に、大きく寄与できる可能性があります。

関連記事:配送管理システム比較おすすめ7選|ミツモア

中継配送の導入

ドライバーの労働時間を減らしたいとはいえ、輸送先が遠方にある場合は運行にかかる時間を減らすことはどうしても難しいでしょう。

そこで重要になってくるのが「中継配送」の対策です。

荷物を目的地に運ぶために中継地点を作り、そこでドライバーの交代や荷物の入れ替えを行います。1人のドライバーが長期経路を運送するという状況を変えることが可能です。

中継点でドライバーが交代するパターンや、トラクターの交換をするパターンなど、さまざまな取り組みがすでに実践されています。

荷主および一般消費者の理解を深めるために広報活動を強化する

2024年問題では、物流・運送事業者だけでなく、荷主や一般消費者にも影響が及ぶため、問題への共通認識や理解が重要です。

特に人件費の上昇による割増賃金の増加や、労働時間制限が配送量や料金に影響を与える点について、幅広い周知が求められます。
そのため、SNSや自社ホームページ、パンフレットなどを活用して情報を発信し、これらの変化に対する理解を深める取り組みが推奨されています。

2024年問題対策で導入を検討したいシステム

トラックの前に立つドライバー

物流・運送業界における2024年問題への対策として、導入を検討したいシステムを紹介します。

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関連記事:freee(フリー)人事労務の製品情報|ミツモア

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関連記事:KING OF TIME(キングオブタイム)の製品情報|ミツモア

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