運送業向け勤怠管理システムおすすめ12選！選び方のポイントも解説

2024年4月から運送業にも「時間外労働の上限規制」と「改善基準告示」の改正が適用され、勤怠管理は待ったなしの経営課題となりました。実際、業界の53.3%が未だにタイムカードやExcelで管理しており、その約8割が労働時間把握の正確性に不安を感じているという調査結果もあります（※）。

法令違反のリスクを回避するには、従来の紙やExcelによる手動管理では限界があります。特に、複雑化した「拘束時間」や「勤務間インターバル」の管理は、システムによるリアルタイムな自動計算とアラートなしには困難です。

この記事では、運送業の勤怠管理システム導入を検討する方へ、2024年問題に対応するための選び方のポイントと、自社の規模や運用に合わせたおすすめ製品を徹底解説します。

運送業の勤怠管理システム選び：2024年問題対応の「機能」と「タイプ」が鍵

運送業の勤怠管理システム選びは、改善基準告示への対応機能（拘束時間・インターバル管理）やデジタコ連携など現場運用が鍵です。

勤怠管理システムは「業界特化型」と「汎用型」の2種類があり、自社の規模と既存の運用によって選ぶべきタイプが異なります。まずは、運送業で実績の多い以下の主要システム12選を比較検討することが成功への近道です。

運送業向け勤怠管理システムおすすめ12製品の比較表

※「◎」は運送業の改善基準告示に特化・最適化、「◯」は対応可能、「△」は汎用機能での代替または詳細要確認、「－」は非対応または要確認。

なぜ今、運送業で勤怠管理システムが必要なのか？「2024年問題」を徹底解説

2024年問題への対応は、運送業の喫緊の課題です。具体的には「時間外労働の上限規制」と「改善基準告示の改正」という2つの大きな変更があり、従来の紙やExcelでの管理体制では法令違反のリスクが非常に高まっています。

「時間外労働の上限規制」：年間960時間への対応

2024年4月1日より、トラックドライバーの時間外労働の上限が「年間960時間」に規制されました。これは一般企業の「年360時間」とは異なる特例的な上限値ですが、規制が設けられたこと自体が大きな変化です。

この「年間960時間」を遵守しているかを行政から問われた際、Excelや手書きの日報では、客観的な証拠として不十分とみなされるリスクがあります。月末に慌てて集計するのではなく、日々の労働時間をシステムで正確に記録し、上限に近づいたドライバーにはアラートを出す体制構築が不可欠です。

「改善基準告示」の改正内容とシステムでできること

多くの管理者が最も頭を悩ませているのが、この「改善基準告示」の改正です。これは残業時間（労働時間）だけでなく、休憩を含む「拘束時間」と、勤務終了から次の勤務開始までの「休息期間（インターバル）」を定めるルールです。

特に「休息期間」の管理が、Excelでは限界を迎えています。

最大の課題は、休息期間が「8時間」から「原則11時間（最低9時間）」へと複雑化した点です。例えば、前日の退勤が23時で翌日の始業が朝7時の場合、インターバルは8時間。旧基準では合法でしたが、新基準では「最低9時間」を下回り違法となります。

この「前日の退勤時刻」と「翌日の出勤時刻」を日またぎで自動計算し、違反の可能性があるシフトにはアラートを出すことこそ、勤怠管理システム導入の最大の目的となります。

従来の紙・Excel管理の限界とリスク

業界の実態調査でも、運送業の53.3%が依然としてタイムカードやExcel、手書きの日報で勤怠管理を行っています。そして、そのうちの約8割が、自社の労働時間把握の正確性に「不安を感じている」と回答しています（※）。

法令が複雑化した今、手動管理には以下の深刻なリスクが伴います。

リアルタイムな把握が不可能

調査で「正確な把握ができない」最大の理由（47.1%）（※）とされたのが、「リアルタイムでの管理ができない」ことです。違反は月末の集計時ではなく、日々の運行の中で起きています。

人為的なミスと集計の膨大な工数

複雑な拘束時間やインターバルの計算を手作業で行えば、ミスは必ず発生します。また、月末の集計作業は、管理者の膨大なリソースを浪費します。

法令違反のリスク

意図せずとも「休息期間9時間未満」の勤務をさせてしまうと、それは明確な法令違反となります。行政処分や、未払い残業代請求の訴訟リスクに直結します。

運送業向け勤怠管理システムの「選び方」：失敗しない3つのステップ

自社に最適なシステムを選ぶには、まず「特化型」か「汎用型」かのタイプを決め、次に「必須機能」を確認し、最後に「現場での使いやすさ」を検証する、3つのステップが重要です。

ステップ1：「業界特化型」と「汎用型」どちらを選ぶか？

システムは大きく2つのタイプに分かれます。自社のデジタコ導入状況や、コスト感を基に判断します。

業界特化型

運送業の業務プロセスや改善基準告示に特化して開発されたシステムです。

汎用型（準対応型）

全業種向けに提供されているシステムですが、運送業の勤怠管理にも応用可能なものです。

ただし、近年は汎用型システムの中にも「勤務間インターバル」のチェック機能を搭載する製品が登場しています。これらを活用すれば、コストを抑えつつ最低限の法令対応（最低9時間のチェック）を実現できるケースもあります。

ステップ2：運送業に必要な「6つの必須機能」をチェック

タイプを選んだら、次は具体的な機能が自社の運用に合っているかを確認します。

改善基準告示対応（アラート機能）

これが最重要です。拘束時間や休息インターバルを自動計算し、違反しそうなドライバーや管理者にアラート（警告）を出す機能があるかを確認してください。

デジタコ連携

既にデジタコを導入している場合、必須の連携です。デジタコの走行データを勤怠データとして自動取り込みできれば、日報作成の自動化や、連続運転時間（430休憩）の管理も可能になります。

アルコールチェッカー連携

点呼時のアルコールチェック記録と、出退勤の打刻記録を一元管理できると、管理者の負担が大幅に軽減されます。

GPS搭載のモバイル打刻

直行直帰や車庫と事務所が離れている場合に必須です。スマートフォンやタブレットからGPS情報付きで打刻できれば、正確な勤務時間を記録でき、不正打刻も防止できます。

複雑なシフトパターンの管理

日またぎ勤務、24時間稼働、長距離運行など、運送業特有の複雑なシフトパターンにシステムが対応できるかを確認します。

運転日報の作成・連携機能

勤怠データやデジタコデータと連携し、運転日報を自動作成、または簡単に入力できる機能があると、ドライバーの負担も軽減できます。

ステップ3：現場・ドライバーが使えるか？サポート体制の確認

どんなに高機能なシステムも、現場のドライバーが使えなければ意味がありません。

PC操作に不慣れなドライバーや、高齢のドライバーでも直感的に使えるかが重要です。打刻方法が「スマートフォンのアプリ」「ICカード」「免許証認証」など、自社の運用に合った多様な選択肢があるかを確認しましょう。

また、導入後のサポート体制も重要です。「運送業の改善基準告示に詳しい」サポート担当者がいるか、法改正時にシステムのアップデートが迅速に行われるかは、長期的にシステムを使いこなす上で重要な選定ポイントとなります。

運送業向け勤怠管理システムおすすめ5選【業界特化型】

ここでは、運送業特有の改善基準告示やデジタコ連携に完全対応する「業界特化型」の勤怠管理システムを5つ紹介します。法令遵守を最優先し、運送業の業務全体を効率化したい場合に適しています。

勤怠ドライバー

デジタコデータから拘束時間や残業時間を自動計算し、改善基準告示に抵触するリスクがある乗務員を自動でピックアップする「警告機能」が強みです。トラックメイトProや配車Proとも連携し、デジタコ連携による自動集計で、管理者の負担と法令違反リスクを大幅に削減します。視覚的にわかりやすい帳票で、労務管理の課題を可視化します。

※ 月額アカウント料金はアカウント数によって変動。1アカウント100円～700円まで

勤怠管理パック（運輸業編）

リコーが提供するシステムで、「免許証」による打刻というユニークな本人確認手段が特徴です。これにより、なりすまし防止に有効で、PC操作に不慣れなドライバーでも確実に本人確認が可能です。デジタコ連携に加え「車両管理機能」も備えており、勤怠管理だけでなく安全管理全体を一元化したい企業に適しています。

ロジポケ

「遠隔点呼時打刻」や「430休憩の打刻」など、ドライバーの実際の動きに即した打刻機能が充実しています。拘束時間超過や休息不足に対するリアルタイムのアラート機能が強く、管理者が法令違反を未然に防ぐ「予防的な労務管理」を実現します。「勤怠管理プラン」単体での導入も可能で、必要な機能からスモールスタートできる点も魅力です。

JICONAX

勤怠管理だけでなく、「事故・ヒヤリハット報告書」やドラレコ画像管理など、安全管理機能が充実しているシステムです。デジタコ連携なしでも単体で利用可能で、Excelなどで分散管理している労働時間、車両、顧客台帳などを一元管理したいニーズに応えます。価格は月額7,000円からとなっています。

Navisia 乗務員時計

富士通製デジタコとの連携に強みを持つほか、他社製デジタコとの連携にも対応しています。改正後の改善基準告示に対応した「シミュレーション機能」を搭載し、法令遵守だけでなく、新しい基準下での最適な勤務シフトを予測できる点が特徴です。

特に注目すべきはスマートフォン単体版です。デジタコ未導入の企業でも、運行中のドライバーの拘束時間や連続運転の残余時間をリアルタイムで管理・警告できます。これにより、特化型システムと同等以上のコンプライアンス体制を低コストで構築できる可能性があります。

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運送業でも使いやすい勤怠管理システムおすすめ7選【汎用型】

コストを抑えつつ、法令対応の基盤を整えたい場合、「汎用型」システムも選択肢となります。GPS打刻や複雑なシフトなど運送業の課題に対応し、一部は「勤務間インターバル」管理機能も備えた7製品を紹介します。

KING OF TIME

利用ID数420万人以上を誇る業界トップクラスのシステムです。月額300円/人という低コストと、豊富な打刻方法が魅力です。

運送業の観点では、「勤務間インターバル不足カウント機能」を標準搭載している点が重要です。これは運送業専用ではありませんが、管理者が「11時間」など任意の時間を設定し、前日の退勤から当日の出勤までの時間が不足している場合にアラートを出すことが可能です。

コストを抑えながら改善基準告示の最低限のチェック（最低9時間の確保）を自動化できます。

ジンジャー勤怠

スマートフォンアプリの操作性が高く、PCに不慣れなドライバーでも使いやすい点が特徴です。GPS打刻や顔認証による不正防止にも対応しています。

「勤務間インターバル不足回数を設定する」機能を搭載しており、管理者が設定した時間を下回るとアラート通知が可能です。現場のドライバーの使いやすさを重視する場合に適しています。

ジョブカン勤怠管理

月額200円/人からという低コストと、機能の豊富さが魅力です。GPS打刻やLINE打刻など、ドライバーが日常的に使いやすい多様な打刻方法を提供しています。

複雑なシフト設定にも対応可能ですが、改善基準告示特有の複雑な集計については、別途運用の工夫や詳細な設定確認が必要です。

freee人事労務 勤怠管理

freee人事労務シリーズ製品との連携が最大の強みです。GPS打刻に対応しており、勤怠データをそのまま給与計算まで一気通貫で効率化したい小規模な事業者や、既にfreeeを導入している企業に適しています。

MINAGINE勤怠管理

PCログの取得など、客観的な記録の担保に強いシステムです。初期設定の代行も可能で、管理部門の導入負担を軽減できます。

厚生労働省のガイドラインに準拠した管理が可能ですが、ドライバーのモバイル打刻の適性については、自社の運用に合うか確認が必要です。

TimePro-VG

アマノが提供するシステムで、9,999種までの複雑なシフト登録に対応可能です。Excelライクな操作画面や、規定時間を超過した従業員へのアラート機能も搭載しており、コンプライアンス管理に強みがあります。

ただし、運送業の改善基準告示特有の集計（拘束時間やインターバル管理）への具体的な対応レベルについては、詳細な問合せが必要です。

キンタイミライ

カスタマイズ性が非常に高く、「勤務間インターバルの管理」など、改善基準告示への高度な対応も可能です。

ただし、メインターゲットは「従業員数1000名以上」の大企業であり、中堅規模の企業にとっては機能・コストともにオーバースペックとなる可能性があります。自社の規模と必要な機能を見極めた上での選定が必要です。

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運送業に勤怠管理システムを導入する3つのメリット

システム導入のメリットは、単なる業務効率化に留まりません。最大の目的である「法令遵守」に加え、「管理業務の自動化」、そして「労働時間の可視化による生産性向上」の3点です。

メリット1：法令遵守（2024年問題）の徹底とリスク回避

最大のメリットは、2024年問題、特に「改善基準告示」の複雑なルールをシステムによって自動でチェックできることです。「休息期間（インターバル）が9時間を下回っていないか」を日次で監視し、違反を未然に防ぐアラート機能は、法令違反による行政処分や、未払い残業代請求といった深刻な経営リスクを回避するための強力な盾となります。

メリット2：管理業務の自動化とドライバーの負担軽減

未だに業界の半数以上がExcelや手書きの日報で管理している現状は、膨大な管理コストを生んでいます。システム導入により、これらの手作業による集計、給与計算ソフトへの転記作業がすべて自動化されます。

管理者は「集計作業」から解放され、「違反アラートへの対応」という本来の管理業務に集中できます。また、デジタコ連携による日報作成の簡素化は、ドライバーの負担軽減にも直結します。

メリット3：労働時間の「見える化」による生産性向上

法令遵守は「守り」の管理ですが、システム導入は「攻め」の経営にも繋がります。ドライバーごとの正確な労働時間や拘束時間、待機時間などがデータとして「見える化」されるためです。

この客観的なデータに基づき、「どのルートが非効率か」「待機時間が長い荷主はどこか」を分析し、配車計画の見直しや運賃交渉の材料とするなど、事業の生産性向上やドライバーの適正な評価に活用できます。

導入前に確認すべき注意点とよくある疑問（Q&A）

最後に、導入の失敗を防ぐための確認事項をQ&A形式でまとめます。

Q1. PCが苦手なドライバーが多いのですが、使えますか？

A: 非常に重要なポイントです。そのため、打刻方法の選択肢が重要になります。スマートフォンアプリでのGPS打刻、ICカードをかざすだけの打刻など、現場のドライバーが最も抵抗なく使える方法を選べるシステムを選定してください。無料トライアル期間を活用し、必ずドライバー数名に実際に触ってもらうことを強く推奨します。

Q2. 導入費用（コスト）の相場はどれくらいですか？

A: タイプによって大きく異なります。「汎用型」であれば初期費用0円、月額数百円/人から利用できるものが多いです。一方、「業界特化型」は初期費用や設定費用がかかる場合や、月額料金が汎用型より高額になる傾向がありますが、その分、運送業の法令に完全対応できます。デジタコ連携などがオプション料金になっていないかも確認しましょう。

Q3. 既存のデジタコや給与計算ソフトと連携できますか？

A: システムによって連携できるメーカーやソフトが異なります。特にデジタコは、自社が使用しているメーカー（富士通、矢崎、HINOなど）に対応しているか、導入前に必ず確認が必要です。給与計算ソフトとの連携も、CSV出力なのかAPI連携なのかによって、業務効率が大きく変わるため確認してください。

Q4. 導入までどれくらいの期間がかかりますか？

A: クラウド型（汎用）であれば、契約後、即日～数週間で利用開始できる場合が多いです。ただし、「業界特化型」やカスタマイズが必要な場合は、数ヶ月単位の期間が必要になることもあります。また、単にシステムを導入するだけでなく、自社の就業規則（特に改善基準告示のルール）をシステムに正しく設定する期間も考慮しておきましょう。

まとめ：自社に最適な勤怠管理システムで「2024年問題」を乗り越える

運送業における勤怠管理システムの導入は、もはや「業務効率化」のためではなく、法令を遵守し事業を継続するための「必須の経営判断」となっています。

最優先事項は改正された「改善基準告示」に自社の体制が対応できるか、そしてその証拠を客観的に残せるかです。

まずは自社の運用を整理し、「業界特化型」で万全の体制を築くのか、「汎用型」のインターバル管理機能でコストと法令対応のバランスを取るのか、方向性を定めることが重要です。

この記事で紹介した比較表や選び方を参考に、無料トライアルや資料請求を活用して、自社の課題を解決できる最適なパートナーを見つけてください。

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