「雑費に何を計上すればよいのかわからない」「いくらまで計上していいの?」などの疑問をお持ちではないでしょうか。
雑費とは「ほかの経費にあてはまらないもの」に使う勘定科目のことです。計上できる金額に上限はありませんが、決算書の信頼性を担保するためにも適切な仕訳は欠かせません。
雑費の定義や意味、具体例や多すぎる場合の対処法など、適切な経費計上のポイントをわかりやすく解説します。
この記事の監修税理士
京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台
雑費とは「他の経費にあてはまらないもの」に使う勘定科目
雑費とは「ほかにあてはまる勘定科目がない経費」に使われる勘定科目です。事業上の少額の費用で、ほかの経費にあてはまらない経費は雑費として処理できます。例えば、ごみ処理代や引っ越し代、クリーニング費用などが該当します。
雑費で処理するべき費用は計上回数が多くなく、一時的に計上する必要のあるものです。雑費が多くなりすぎる場合は勘定科目を新しく作成するなどして、内訳がはっきりとわかるようにするのが大切です。
雑費に仕訳される経費の例
雑費に計上される経費には次のようなものがあります。
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上記以外のものでも、ほかの勘定科目にあてはまるものがないと判断される経費は雑費として計上が可能です。
雑費と消耗品費の違いは「使ってなくなるものかどうか」
必要経費の中で、特に雑費と混同してしまいがちなのは消耗品費です。雑費と消耗品費の違いは「使ってなくなるものかどうか」が大きなポイントとなります。
雑費ではなく消耗品費にあてはまる経費には、プリント用紙や文房具などの購入費用などが該当します。
使用してなくなるものは消耗品費で計上
使用してなくなるものは、雑費ではなく消耗品費の勘定科目を使用するのがベターです。
消耗品費とは、帳簿や文房具、用紙や包装紙などの短期間で消耗する物品購入費のことを指します。また使用可能期間が1年未満、もしくは取得価額が10万円未満の什器備品の購入費も消耗品費に該当します。
雑費は物品を使用することで発生する費用ではありません。使用により消耗するものは、消耗品費として処理しましょう。
取得価額が10万円以上のものは固定資産に該当
「取得価額が10万円未満の什器備品の購入費」とあるように、什器備品の購入費で消耗品費に計上できるのは取得価額が10万円未満までのものです。
取得価額が10万円以上になると、基本的には固定資産に該当します。その購入費は減価償却を行い、年々減価償却費として費用化するものです。そのため消耗品費には該当しない点に注意してください。
消耗品費にあてはまる経費
消耗品費の具体例として下記の物品の購入費用があります。
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これらは「帳簿、文房具、用紙、包装紙などの消耗品購入費」に該当します。また、次のような物品の購入費用も消耗品費となります。
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これらは「使用可能期間が1年未満か取得価額が10万円未満の什器備品の購入費」に該当します。
なおパソコンなどの家電については、購入金額が10万円未満(特例を適用する場合は30万円未満)のものは消耗品費に計上が可能ですが、その金額以上の場合は固定資産として計上される点に注意してください。
雑費として計上できる経費はいくらまで?
雑費として計上できる経費の金額に上限はありません。しかし決算書の信頼性を担保するためにも、多くても経費の5~10%程度が目安となります。
雑費が多すぎると、内訳の精査のために税務調査が入る可能性も考えられます。
雑費の目安は経費の5~10%程度
雑費の目安は経費の5~10%程度です。雑費として計上できる経費の金額は法律などで明確に定められていないので、全体の規模感から考えるのがよいでしょう。
雑費を使いすぎると、決算書を見ても経費の種類ごとにいくらかかっているのかわからなくなります。そうすると、事業の経営成績を適切に把握できなくなったり、信頼性が低くなったりする可能性が考えられます。
「今後、どの経費を削減していくのか」「事業を拡大していく中でどの経費がいくら増えていくのか」などの事業計画を立てる際にも支障をきたす可能性があるので、雑費の使いすぎには注意してください。
雑費が多すぎると税務調査が入る可能性も
雑費が多すぎると、税務調査で内訳を精査される可能性があります。
雑費ばかり計上されている決算書は不明確な要素が多い決算書になってしまうため、税務署に対してよい印象の決算書とはいえません。雑費を多用せず、きちんと経費を分類し、自身の事業の内容がしっかり反映されている決算書を作ることを心掛けるとよいでしょう。
雑費の金額が多い場合の対処法
雑費の金額が大きくなりすぎた場合は、他に使える勘定科目がないかどうかを見直しましょう。また継続的に発生する費用であれば、新しい勘定科目を作成するのもひとつの方法です。
他に使える勘定科目がないか見直す
まずはじめに、雑費以外の勘定科目にあてはめられないかどうかを見直しましょう。
個人の確定申告書に添付される「青色申告決算書」や「収支内訳書」には、下記17個の勘定科目が「経費」としてあらかじめ記載されています。
勘定科目 | 内容 |
租税公課 | 事業税、固定資産税、自動車税、印紙税などの税金 |
荷造運賃 | 販売商品の包装材料費、荷造りのための賃金、運賃 |
水道光熱費 | 水道料、電気代、ガス代、灯油の購入費 |
旅費交通費 | 電車賃、バス代、タクシー代、宿泊代 |
通信費 | 事業用として使用した電話料、切手代、電報料 |
広告宣伝費 | 新聞などの広告費用、チラシ、折込み広告の費用広告用カレンダーなどの費用 |
接待交際費 | 事業関係者との飲食費など |
損害保険料 | 火災保険料、自動車の損害保険料 |
修繕費 | 店舗、自動車、機械、器具備品などの修理代 |
消耗品費 | 帳簿、文房具、用紙、包装紙などの消耗品購入費 |
減価償却費 | 減価償却資産の減価償却費 |
福利厚生費 | 従業員の慰安など費用・事業主が負担すべき従業員の健康診断費用など |
給料賃金 | 給料、賃金、退職金など |
外注工賃 | 修理加工などで外部に注文して支払った場合の加工賃・建設業などの下請工事 |
利子割引料 | 事業用資金の借入金の利子や受取手形の割引料 |
地代家賃 | 店舗、工場、倉庫等の敷地の地代や店舗、工場、倉庫等を借りている場合の家賃 |
貸倒金 | 売掛金や未収入金、貸付金などについて、得意先の事情により回収不能となった金額 |
該当する勘定科目を見直し、場合に応じて雑費以外で処理を行います。どの勘定科目にするべきか判断に悩む場合は、税理士に相談するのもよいでしょう。
新しい勘定科目を作成する
該当するほかの勘定科目がない場合は、新しい勘定科目の作成を検討します。勘定科目の見直しを行っても雑費が「販売費及び一般管理費」(販管費)の5~10%を超えるようであれば、作成するとよいでしょう。
また頻出する支出であれば、新しい勘定科目の作成によって管理もしやすくなります。
【雑費に代わって追加される勘定科目の具体例】
勘定科目 | 内容 |
新聞図書費 | 新聞代、本代、資料代 |
会議費 | 会議の際のお茶代、お客様にお出しする茶菓子代 |
支払報酬 | 税理士・会計士などに対して支払う報酬 |
支払手数料 | 銀行の振込手数料 |
研修採用費 | 従業員の採用や教育のために支出した費用 |
諸会費 | 市区町村の会費、所属団体に支払う会費 |
記帳の負担を軽減するためにも、勘定科目を新規作成する場合は「頻繁に使用するかどうか」を考えることが大切です。1年に1回しか発生しない少額の費用であれば、雑費に計上するほうがよいでしょう。
雑費の仕訳例
雑費の仕訳例を解説します。書籍の購入と引っ越しの2つのケースを例に、みていきましょう。
本を購入して2,000円を現金で支払ったケース
本を購入して2,000円を現金で支払った場合の仕訳は、以下の通りになります。
借方 | 雑費 | 2,000円 | 貸方 | 現金 | 2,000円 |
事務所兼自宅の引っ越し代50,000円を現金で支払ったケース
例:個人事業主が事務所兼自宅を引っ越すことになり、引っ越し代50,000円を現金で支払った。なお全体の荷物量に対する個人的な荷物は80%、仕事用の荷物は20%だった。 |
借方 | 雑費 | 10,000円 | 貸方 | 現金 | 50,000円 |
事業主貸 | 40,000円 |
事業用途と個人用途の支出が混在しているので、家事按分を行います。今回のケースの場合、50,000円のうち事業に使用する荷物に対する引っ越し代は50,000円×20%=10,000円です。
事業主貸に該当する40,000円が個人的な支出として自己負担すべき金額になります。
雑費を計上する際の留意点
雑費は、他の勘定科目に該当しないものを計上する勘定科目です。そのためどの勘定科目で仕訳をするのか分からない経費も雑費を使って仕訳ができるという点では便利な勘定科目です。
しかし、雑費を多用しすぎたり、高額な経費を雑費に計上すると問題が生じるおそれもあります。これらも合わせて、いくつかの注意点を確認していきましょう。
雑費の消費税区分
雑費として計上される経費の多くは、課税仕入れに該当します。しかし、前述した「安全協力費などの会費」や「市区町村の区費」などのその性質が会費としての性質を持つ経費については、不課税仕入れに該当します。
つまり「雑費だから」と一括りにして課税区分を判断することはできません。取引内容ごとに「これは課税仕入れか?」「不課税仕入れか?」と検討する必要があるのです。
雑費と雑損失の違い
雑損失とは、災害、盗難、横領によって資産に受けた損失額をいいます。上記で述べたとおり、雑費は必要経費のうち他の勘定科目に当てはまらない経費を指すため、雑損失とは性格が異なります。科目名が似ていますが、混同しないように注意しましょう。
個人用途と事業用途の両方で支出する場合は家事按分を行う
雑費の中には、個人的な用途と事業的な用途の両方で支出をする必要のある費用が発生することがあります。
例えば、個人事業主の方が事務所兼自宅を引っ越しする場合です。このような場合、引っ越しに必要となる引っ越し代やゴミ処理代、部屋のクリーニング費用などは個人的な用途でも事業的な用途でも支出が必要なお金となります。
これらを経費として計上するには、家事按分を行い、個人的な費用となる金額と事業の経費として雑費にできる金額をそれぞれ計算しなければなりません。事業の経費にあたる金額のみ雑費として経費計上が可能です。個人的な費用となる金額まで雑費にすることはできません。
雑費を正しく計上して正確な決算書の作成を
雑費について説明してきましたが、大きくは次の5つのポイントが重要です。
- 雑費は17個の勘定科目に当てはまらない場合に利用する勘定科目
- 他の勘定科目と混同しないように注意(特に雑損失・消耗品費)
- 雑費を使いすぎない
- 高額な支出は雑費にしない(特に10万円以上の支出には注意)
- 頻繫な支出には適切な勘定科目を新たに作成する
雑費も立派な経費のひとつ。たかが雑費と軽視せず、適切な科目判定で正確な決算書を作成していきましょう。
監修税理士からのコメント
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