現在住んでいるマンションからの住み替えを検討したとき、どのような方法で住み替えるのか、注意点などはあるのか気になりませんか?
マンションを住み替えるときはいくつか注意点があり、知っておくべき手順や知識もあります。
本記事ではマンションを住み替える手順や税金、注意点について解説します。
監修者
髙杉義征(セカイエ株式会社元執行役員/宅地建物取引士)
株式会社日京ホールディングスの元取締役、セカイエ株式会社の元執行役員を経て、現在は株式会社ミツモアの事業部長として全体を統括。一貫して不動産業界に携わり、不動産仲介会社、不動産管理会社、不動産テック企業での経験を有する。不動産売却希望者と不動産会社をマッチングするサービスでは、執行役員として事業立ち上げからグロースまでを担当。また、不動産関連のセミナーやライブ配信にも登壇している。
マンションを住み替えるときの流れ
マンションを売却するときの進め方は、売り先行、買い先行、売り買い同時進行の3パターンがあります。資金面に余裕があるなどの事情がなければ売り先行または売り買い同時進行で進めることが多いです。
ここでは売り先行でマンションを売却し、住み替えるときの流れを紹介します。
1.旧居の売却準備をする
マンションの住み替えを考えたら、まずは現在住んでいるマンションの売却査定を受けましょう。
現在住んでいるマンションが高く売れれば、住宅ローンの一括返済もしやすくなります。また印紙税など取引金額によって変動する税額や手数料の概算もできます。
簡易査定を受けてから訪問査定を受けることが一般的ですが、不動産会社に心当たりがあるのであれば訪問査定から依頼しても問題はありません。重要なことは複数社に査定依頼を出し、提示された査定額が妥当であるか確かめることです。
関連記事ではマンション売却の査定について詳細に解説しています。あわせてご確認ください。
2.旧居の売却活動をする
査定を受けて不動産業者と媒介契約を結んだら、マンションの売却活動を始めましょう。
媒介契約は3種類あり、どのタイプの契約をするかによって売主が売却活動に関与できる範囲が変わります。
媒介契約の名称 | 売主が買主を見つけられるか | 売却活動の主体 |
---|---|---|
専属専任媒介契約 | 見つけられない | 不動産会社 |
専任媒介契約 | 見つけられる | 不動産会社 |
一般媒介契約 | 見つけられる | 売主 |
専任媒介契約と一般媒介契約であれば売主が買主を見つけてもよいので、売却予定のマンションの立地が良いなど需要が見込めるようであれば積極的に売却活動を行って買主を探してもよいでしょう。
売却活動をしながら内覧に備えて室内の片付けや掃除を行いましょう。不用品を処分しておけばすっきりして部屋が広く見えるだけでなく、新居に引っ越すときの手間も小さくできます。
不用品回収を依頼するときは複数業者の見積もりを比較して、料金とサービス内容をよく確認しましょう。回収してもらいたい不用品の量に応じて、軽トラに乗る分だけ回収する「詰み切りプラン」か単品のみを回収する「単品回収プラン」を使い分けましょう。
3.新居を購入し引っ越す
マンションを売却できたら新居を購入し、引っ越しましょう。引き渡しの前までに新居を購入できれば仮住まいがいらないので引越しが1回で済みます。
今まで住んでいたマンションの住宅ローンが残っている場合は残債を一括返済しないと売却できないので、旧居の引き渡し日と新居の引き渡し日を同時にする必要があります。
4.旧居を引き渡す
引き渡し日になったら買主に旧居を引き渡します。契約書に明記されていない限り、家具や家電はすべて引き払って引き渡します。
引き渡し日までに不用品はすべて処分しておきましょう。
マンションの住み替えで起きやすい失敗
マンションを住み替えるときに発生しやすい失敗は8つあります。
それぞれのトラブルの内容と予防策を確認しましょう。
1.売却期間が短すぎた
マンションの住み替えでは売却期間が短すぎて思うように売却活動ができなかったという失敗・後悔が多いです。
十分な準備期間がないまま売却活動を始めてしまうと、売却活動が難航するだけでなく手続き不備なども起こりやすくなるので精神的にも負担が大きくなります。
マンションは売り出しから引き渡しまでが3~6ヶ月で完了することが多いです。立地が良い、築年数が浅いなど好条件の物件であれば売り出してすぐに購入希望者が現れ、引き渡しまで完了することも珍しくありませんが、基本的には3~6ヶ月で売却できるように計画をしましょう。
マンションを売却するときは計画性が重要です。住み替えを検討したらすぐにいつまでに新居で新生活を始めていたいかなどを決めて、余裕をもった売却スケジュールを組みましょう。
2.仮住まい期間が長くなりすぎた
新居を見つける前に旧居を売却し、引き渡す場合は仮住まいが必要です。想定よりも仮住まいでの生活が長くなってしまうと、仮住まいの種類によっては費用がかさんでしまい、新居購入時にいくつか妥協することになるかもしれません。
仮住まい生活が長期化することでデメリットを被らないためには、新居に求める条件に優先順位をつけて理想と折り合いをつけることが重要です。そのほかにもできるだけ快適に過ごせる仮住まいを用意することも検討しましょう。
3.売り出し価格が相場にあっていなかった
スムーズにマンションを売却できるかを決定する要因のひとつが売り出し価格の設定です。売り出し価格が高すぎると売れにくくなることはもちろんのこと、安すぎた場合も「何か事情があるのでは?」と思われてしまい購入をためらう原因になってしまいます。
売却相場や査定額を考慮し、不動産会社の担当者とよく相談をしたうえで売り出し価格を設定しましょう。
売却相場を調べるときは国土交通省の「不動産情報ライブラリ」がおすすめです。駅名や住所から取引された不動産の価格を調べられます。
4.売り急いでしまい安くしすぎた
先に新居を購入してから旧居を売却する「買い先行」で住み替えを行う場合、希望日までに希望額やそれ以上の額で購入する人が現れるか不安になり、不本意ながらも値下げをして売却してしまうことがあります。
売り急いでしまう原因は売却できないままだと旧居が負担になってしまうという危機感です。
一定の期間内で売買契約が成立しなかったら不動産会社に不動産を買い取ってもらう「買取保証サービス」を利用すると落ち着いて1つ1つの交渉に臨めるでしょう。
5.ローンの借入額が大きくなりすぎた
額面年収が高ければ返済能力も高いと判断され、高額な住宅ローンを借りられます。しかし高額すぎるローンを借り入れてしまうと月々の返済負担が重くなり、生活が苦しくなってしまいます。
高額すぎるローンを組まないためには2つの対策があります。
1つは旧居をより高値で売却することです。中古マンションの売買に長けている不動産会社を選ぶことが大切です。
2つめはローンの借入額をシビアに検討することです。住宅ローンは返済比率を考えて借り入れます。
返済比率とは年収と住宅ローンをはじめとしたすべてのローン返済の比率を指しています。
住宅ローンの返済比率は20%が理想です。住宅ローンの返済比率を考えるときは額面ではなく手取り収入をもとに考えることをおすすめします。
マイカーローンやショッピングローン、奨学金の返済をしているのであれば、それらも忘れずに計上しましょう。
返済比率は以下の計算式で求められます。
たとえば年収500万円で年間のローン返済額が100万円の人の返済比率は以下の通りです。
6.諸経費が思っていた以上にかかった
マンションを住み替えるときは様々な費用が発生します。発生する費用について詳細を知らないと、想定外の出費に驚いてしまうかもしれません。
マンションの住み替えで発生する費用についてあらかじめ調べておき、費用の総額がいくらくらいになるかをチェックしておきましょう。
マンションの売買で発生する仲介手数料や印紙税は取引金額に応じて支払う額が変わります。査定額をもとに計算しておくことをおすすめします。
● 仲介手数料の上限計算式
取引金額 | 計算式 |
---|---|
200万円以下 | 売却価格×5%+消費税 |
200万円を超え400万円以下 | 売却価格×4%+2万円+消費税 |
400万円を超える | 売却価格×3%+6万円+消費税 |
● 印紙税の額(一部抜粋)
契約金額 | 印紙税額 |
---|---|
100万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 5,000円 |
1000万円を超え5000万円以下 | 10,000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 60,000円 |
上記表の印紙税額は、2027(令和9)年3月31日まで適用される軽減税率での税額です。
7.割高な物件を購入してしまった
早く新居を購入しなければという焦りから値引き交渉を十分に行わないまま売買契約を締結してしまうと、価格の割に床面積が狭い、収納が少ないなど新居が割高に感じられてしまうかもしれません。
このような事態を防止するためには、住み替えのスケジュールに余裕を持たせることが大切です。マンションの住み替えを考えたらまずいつまでに新居に引っ越し、新生活を始めていたいかというゴールの日付を決めましょう。
マンションは売り出しから3~6ヶ月で引き渡しまで完了することが多いので、ゴールから逆算して計画を立てることが重要です。
8.新居の周辺環境がイメージと違った
新居そのものには満足しているものの、周辺の環境についてこんなはずじゃなかったと後悔することがあります。
住み替えではやるべきことが数多くあるので、新居については十分に調べてもその周辺環境までは調べきれないということもあります。
インターネットで調査をしても以下のようなイメージ違いが発生することがあります。
- 通学時間帯に交通量が多く交通事故のリスクがある
- 街灯やコンビニが少なく夜道が暗い
イメージ違いを防止するためには時間帯を変えて複数回現地を訪問することが大切です。しかし候補地が遠方にある場合は、複数回の訪問は現実的ではありません。そのような場合は地域の防犯情報などを参照し、どのような事故・事件が多く発生しているかを確認しましょう。
マンションの住み替えを考えるタイミングは?
マンションを住み替えるタイミングは人それぞれです。きっかけとして多いのは子供の誕生や独立、転職、介護、結婚・離婚などライフステージの変化です。
家族の人数が増えることで現在住んでいるマンションが手狭になってしまったり、反対に子供が独立して夫婦2人では広すぎたりといった理由から住み替えを検討するのは感覚的にも分かりやすいでしょう。
その他にも学資金の捻出のために、住宅ローンの返済負担が小さいマンションに住み替えるケースもあります。
金銭的負担をなるべく少なくしたいのであれば、購入後10年以上経過したら住み替えを検討しても良いでしょう。住宅ローン減税の控除期間は10年で終了するためです。
他にも修繕積立金が値上がりする前や大規模修繕工事の完了後など、売りやすくなるタイミングがあります。
マンションを住み替えるときに使える控除
マンションを住み替えるときには控除などの税制上の優遇措置を受けられます。代表的なものを3つご紹介します。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
マイホームを売却したときは所有期間の長さに関係なく、譲渡所得から最大で3000万円の控除ができる特例があります。これを「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と言います。
この特例を受けるには「譲渡所得の内訳書」を提出し、確定申告が必要です。譲渡所得の内訳書は国税庁ホームページからダウンロードするほか、税務署に用意されています。
特例を受けるためにはいくつかの要件があります。
- 自分が住んでいる家屋、家屋とともにその敷地や借地権を売る
- 売った年の前年および前々年にこの特例やマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていない
- 売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例を受けていない
- 売った家屋や敷地等について収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていない
- 売手と買手が親子や夫婦など特別な関係でない
他の特例との併用は原則としてできないこと、3000万円控除を受けることのみを目的として入居した物件や建て替え中の仮住まい用の物件、別荘などを購入したときも特例は受けられない点にご注意ください。
住宅ローン減税(住宅ローン控除)
住宅ローンを組むと毎年年末時点での残高の0.7%をその年の所得税から差し引かれます。これが住宅ローン減税です。
2022(令和4)年度に制度が改正され、それまで控除率1%で10年間控除を行っていましたが控除率0.7%で13年間の控除に変わりました。
住宅ローン減税を適用するには、初年度のみ確定申告が必要です。2年目以降は年末調整で問題ありません。
【新規適用終了】特定の居住用財産の買換えの特例
2023(令和5)年12月31日までに特定のマイホームを売却し、新しいマイホームを購入したときは譲渡益に対する課税を将来に繰り延べる特例を適用できました。
この特例が適用されると、マイホームの買い替えで譲渡益が発生してもその年分での課税はなく、将来マイホームを譲渡したときに課税されるようになります。
課税のタイミングが変わるだけで、所得税が免除されるわけではないことに注意が必要です。
この特例を適用させる要件は以下の通りです。
- 自分が住んでいる家屋や家屋とともにその敷地や借地権を売る
- 売った年、その前年および前々年にマイホームに関する他の控除を受けていない
- 売買したマイホームはどちらも日本にあること
- 売却代金が1億円以下
マンションを住み替えるときにかかる費用
マンションを住み替えるときには新居の購入費用などのほかにもかかる費用があります。
税金や住み替えで必ず発生する経費のほか、場合によって必要になる費用もあるのでおおよそいくらくらいの出費になるのか確認しておきましょう。
税金・経費
マンションを住み替えるときは物件の売却時と購入時、それぞれに税金がかかります。不動産の売買で課税される税は、取引金額によって納税する額が変化することが多いです。
費用の内容 | 費用の目安・計算方法 |
---|---|
印紙税 | 200円~48万円(取引金額によって異なる) |
登録免許税 | 1,000円~ |
譲渡所得税 | 課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除 |
仲介手数料 | 売却額 × 3% + 60,000円 + 消費税(売却額が400万円を超える場合) |
不動産取得税 | 課税標準額 × 3% |
印紙税は不動産売買契約書など印紙法で定められた特定の書類にかかる税金です。2027(令和9年)3月31日までに作成される不動産売買契約書に関しては軽減税率が適用されています。
登録免許税は登記手続き時に課税されます。登記手続きを司法書士に依頼するのであれば、登録免許税のほかに司法書士へに依頼料も発生します。
登録免許税は不動産1件に対し1,000円が課税されます。マンションを含む住宅を売買するときは土地と建物それぞれに課税されるので合計で2,000円課税されることが多いです。
不動産取得税は不動産を取得したときに課税されます。有償・無償を問わず課されますが、相続で得た場合は課税されないなど一部例外もあります。2027(令和9)年3月31日までに宅地等を取得した場合、取得した土地の課税標準額は価格の2分の1になります。
場合によってはかかる費用
以下で紹介するのは状況によっては必要になる費用です。たとえば登記手続きを自分で行えるのであれば司法書士への依頼料は不要です。
注意が必要なのは住宅ローンの一括返済手数料です。金融機関によって条件や規定が大きく異なるので、ローンを借りている金融機関の公式サイトなどを必ず確認してください。
費用の内容 | 費用の目安 |
---|---|
住宅ローンの一括返済手数料 | 元本の0.50~2.00%(金融機関によって異なる) |
引越し代 | 40,000円(2~4月、50km未満の引越しの場合) |
ハウスクリーニング代 | 18,000~38,000円(水回り3点セット) |
司法書士への依頼料 | 30,000~50,000円 |
手順を知ってスムーズにマンションを住み替えよう
マンションの住み替えをスムーズに行うには、住み替えの手順や流れ、必要経費などを知っておく必要があります。
住み替えに伴う売却活動を始める前に流れを頭に入れてから行動に移すことで、予想外のトラブルに見舞われる可能性を減らせます。
よくあるトラブルや発生する諸経費を確認することは特に重要です。
手順やトラブルの回避法などを知って、住み替え活動を実行しましょう。