近年、ビジネスフォンのクラウド化が加速しており、多くの企業がクラウドPBXの導入を検討しています。しかし、「月額費用が気になる」「通話品質は大丈夫なのか」「セキュリティは安全なのか」といった不安を抱える方も少なくありません。
本記事では、クラウドPBXを導入する際に知っておくべきデメリットと、具体的な対策方法を徹底的に解説します。これから導入を検討している方はもちろん、すでに導入している方にとっても、サービスを最大限に活用するためのヒントとなるはずです。
クラウドPBXの6つのデメリット
クラウドPBXには多くのメリットがありますが、同時にいくつかの重要なデメリットも存在します。デメリットを理解し、適切に対策を講じることが成功的な導入と運用につながります。
〈クラウドPBXの6つのデメリット〉
- 月額費用が発生する
- インターネット回線が通話に影響を与える
- 緊急通報番号に制限がある
- これまで使っていた電話番号を使えない可能性がある
- セキュリティ面に課題がある
- 提供会社によって品質差がある
月額費用が発生する
クラウドPBXはサブスクリプション型のサービスであり、継続的な月額費用が発生します。基本料金に加えて、利用するアカウント数に応じたライセンス料金が必要となります。通話録音や自動応答といったオプション機能を利用する場合は、追加の費用が発生します。
一般的な相場として、1アカウントあたり月額1,500円から3,000円程度の費用がかかります。従来型のPBXと比較すると、長期的には総額で高額になる可能性があります。
ただし、初期投資や保守費用が不要な点、通話料の削減が可能な点なども考慮する必要があります。
インターネット回線が通話に影響を与える
クラウドPBXはインターネット回線を利用するため、通信環境の品質が通話品質に直接影響を与えます。地下や高層階などの電波の届きにくい場所、トンネル内や電波状態の悪いエリアでは、音質の低下や通話の途切れが発生する可能性があります。
インターネット回線の帯域が不足している状況やネットワークの混雑時間帯においても、通話品質が低下することがあります。特に多くの従業員が同時に通話を行う場合や、大規模なウェブ会議を実施している場合に顕著となります。
緊急通報番号に制限がある
IP電話をベースとしたクラウドPBXでは、110番(警察)や119番(消防・救急)などの緊急通報番号への発信ができない場合があります。インターネット回線では発信者の位置情報を正確に特定できず、緊急機関が適切な対応を取れない可能性があるためです。
177(天気予報)、117(時報)、115(電報)などの特殊な番号についても、利用できないケースが多くなっています。制限は、特に緊急時の対応が必要な事業所や、頻繁に特殊番号を利用する業務では重大な課題となり得ます。
これまで使っていた電話番号を使えない可能性がある
クラウドPBXに移行する際、既存の電話番号を継続して使用できるかどうかは、サービスの種類や現在の契約状況によって異なります。特にIP電話タイプのサービスでは、これまで使用していた市外局番の電話番号を継続できず、新しい050から始まる番号に変更が必要になることがあります。
番号の変更は、取引先への周知や印刷物の修正、広告媒体の更新など、事業活動に広範な影響を与える可能性があります。長年使用してきた電話番号には企業の信用や認知度が付随していることも多く、その変更は事業価値にも影響を与えかねません。
セキュリティ面に課題がある
クラウドサービスである以上、データ漏洩やサイバー攻撗などのセキュリティリスクは避けられません。通話データの傍受や盗聴、不正アクセスによる情報漏洩、マルウェアやランサムウェアの感染などが主な脅威として挙げられます。
モバイル端末を利用する場合、端末の紛失や盗難による情報流出のリスクも存在します。従業員による意図的または非意図的な情報漏洩といった内部不正のリスクも考慮する必要があります。
提供会社によって品質差がある
クラウドPBXの品質は提供会社によって大きく異なります。音声品質、機能の充実度、サポート体制など、様々な面で差が生じます。特に音質については、提供会社の技術力や実績によって大きな開きがあり、通話がスムーズに行えないケースも報告されています。
サポート体制についても、24時間365日の対応が可能な会社から、平日の営業時間内のみの対応となる会社まで、その内容は様々です。障害発生時の対応速度や、問題解決能力にも大きな違いが見られます。
クラウドPBXのデメリットへの対策方法
前述したデメリットは、適切な対策を講じることで大幅に軽減することができます。以下、具体的な対策方法を解説していきます。
コストを最適化する
月額費用の負担を軽減するためには、まず自社の利用実態を正確に把握することが重要です。必要最小限のライセンス数から始め、利用状況を見ながら段階的に拡大していく方法が効果的です。複数の料金プランを比較し、利用形態に最適なものを選択することで、無駄な支出を抑えることができます。
定額制プランと従量制プランのどちらが有利か、実際の利用データに基づいてシミュレーションを行うことも重要です。特に通話量の多い部署と少ない部署で異なるプランを選択するなど、きめ細かな対応を検討しましょう。
インターネット環境を整える
安定した通話品質を確保するためには、適切なネットワーク環境の整備が不可欠です。高速で安定したインターネット回線の導入は基本として、通話用の帯域を確保するためのQoS設定も検討に値します。
主回線に障害が発生した場合に備えて、バックアップ回線を確保することも推奨されます。社内のWi-Fi環境についても、電波の死角をなくし、安定した接続を確保するための最適化が必要です。
緊急通報対応で工夫する
緊急通報への対応については、オフィス内に最低限の固定電話回線を確保することが望ましいでしょう。各拠点の最寄りの警察署や消防署の直通電話番号をリスト化し、社内で共有することも有効な対策となります。
社員のモバイル端末での緊急通報を想定し、位置情報の送信設定を確認することも重要です。緊急時の対応手順をマニュアル化し、定期的な訓練を実施することで、実際の緊急時にも混乱なく対応できる体制を整えましょう。
番号継続のための準備をする
電話番号の継続利用のためには、まず現在の契約状況を詳細に確認することが必要です。番号ポータビリティの可否は、現在の電話会社や契約内容によって異なるため、早い段階での確認が重要です。
万が一、番号の変更が必要となった場合に備えて、取引先への周知方法や、印刷物の更新計画なども事前に検討しておくことをお勧めします。新旧番号の並行運用期間を設けるなど、移行による影響を最小限に抑える工夫も必要です。
セキュリティ対策を実施する
セキュリティ対策としては、まず強固なパスワードポリシーの設定と、定期的なパスワード変更の徹底が基本となります。社員に対する定期的なセキュリティ教育を実施し、情報セキュリティに対する意識向上を図ることも重要です。
端末の紛失や盗難に備えて、リモートでのデータ消去機能やアクセス制限機能を導入することも検討すべきです。通話データの暗号化やアクセスログの監視など、技術的な対策も併せて実施することで、総合的なセキュリティ強化を図ります。
導入前の無料トライアルを活用する
サービスの品質を確保するためには、導入前のトライアル実施が非常に重要です。実際の業務環境で十分な検証を行い、音質や使い勝手を確認しましょう。導入後も定期的な品質チェックを実施し、問題が発生した場合には迅速に対応できる体制を整えておく必要があります。
ユーザーからのフィードバックを積極的に収集し、必要に応じて設定の最適化や運用方法の改善を行うことも、継続的な品質維持には欠かせません。
クラウドPBX導入を成功に導くポイント
クラウドPBXの導入を成功に導くためにおさえておきたいポイントを解説します。
事前準備は入念に行う
クラウドPBXの導入を成功させるためには、入念な事前準備が欠かせません。現状の通話運用を詳細に分析し、必要な機能を洗い出すことから始めましょう。社内体制の整備や、教育研修計画の策定も重要な準備項目となります。
特に、既存の業務フローとの整合性を確認し、必要に応じて業務プロセスの見直しを行うことも検討が必要です。セキュリティポリシーや利用規程の整備など、制度面での準備も忘れずに進めましょう。
段階的に導入する
一度に全面移行するのではなく、段階的な導入を検討することをお勧めします。まずは特定の部門で試験導入を行い、運用上の課題を洗い出します。その後、フィードバックを基に必要な調整を行いながら、徐々に展開範囲を広げていく方法が効果的です。
並行運用期間を設けることで、万が一の際のリスクも軽減できます。各段階でのフィードバックを収集し、継続的な改善を行うことで、より効果的な運用が可能となります。
まとめ
クラウドPBXには確かにいくつかのデメリットが存在しますが、適切な対策と準備によって十分に管理可能です。特に重要なのは、自社の利用形態や要件を明確にし、合った適切なサービスを選択することです。
クラウドPBXへの移行は、単なる電話システムの変更ではなく、働き方改革やDXの一環として捉えることが重要です。デメリットを理解した上で適切な対策を講じることで、クラウドPBXの持つメリットを最大限に活用することができます。
導入を検討する際は、この記事で解説した各デメリットとその対策を参考に、自社に最適な導入計画を立てていただければと思います。充分な準備と適切な対策があれば、クラウドPBXは必ず業務効率化とコストの最適化に貢献するツールとなるはずです。
次の記事ではおすすめのクラウドPBX各製品を機能や料金の観点から比較しています。ぜひ、あわせて参考にしてください。
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