スマートフォンを内線化し、ビジネスフォンの子機として使えるようにする手段として、SIPサーバーを用意する方法があります。
最終更新日: 2024年06月28日
従来の電話網と異なり、企業にとってはさまざまなメリットがあるのです。SIPサーバーの仕組みやメリット・デメリット、構築方法などを紹介します。
SIPサーバーの仕組み
昨今では従来の電話線を使った電話機器ではなく、IPネットワークを利用した電話機器も多く存在します。電話線に替えてIPネットワークでの通話を可能にする、SIPサーバーの仕組みやできることを紹介します。
SIPサーバーとは
SIPサーバーとは、音声を制御する「SIP」と呼ばれるプロトコル(Session Initiation Protocol)を扱うサーバーのことです。SIPはIPネットワーク上で発着信や応答、転送や保留などの通話機能を可能にします。
IP-PBXに似ていますが、SIPサーバーは通常のサーバーに通話機能を持たせたシステムです。IP-PBXは元々電話線で通話を制御していたPBX(電話交換機)を、IPネットワーク上で動作できるようにしたものです。
タイプの古いビジネスフォンやPBXには、SIPサーバーと同じ機能が搭載されていない場合が多くあります。
仮に古いビジネスフォンやPBXで、IPネットワークを利用するのであれば、SIPサーバーを用意しなくてはなりません。しかし近頃の主なビジネスフォンやPBXには、SIPサーバーと同様の機能を持っているものが増えています。
SIPサーバーの主な機能
SIPサーバーは端末同士の通話や、音声に関する機能を制御します。そのため通話ができる端末は、必ずしも電話機だけではありません。
マイクとスピーカーが付いているパソコンであれば、ソフトフォンを利用して通話できます。
もちろんIP電話機同士で発着信や応答もできますが、IP電話機とパソコンまたはパソコン同士でも通常の電話機ができるほとんどのことが実現可能です。
事務所の床や天井に電話線とLANケーブルをそれぞれ配線しなくても、LANケーブルさえ配線されていればデータ通信も音声通話もできるようになります。
SIPサーバーを導入するメリット・デメリット
メリット
SIPサーバーは従来のビジネスフォンやPBXと異なり、電話工事が不要です。元々パソコンで利用していたLANケーブルが配線されていれば、それを流用してすぐに運用を始められます。
そろえる機器もパソコンやサーバーがあれば、新しく電話機を購入する必要はありません。新しい事務所に移転する際も、パソコンのネットワークを利用すれば大きく費用を削減できます。
席替えやレイアウト変更する場合は、従来であればビジネスフォンの工事や設定変更、新しく電話線を配線する必要がありました。
SIPサーバーによる電話機能を利用すれば、必要な場所にLANケーブルが配線されている限り新しい工事は不要です。
デメリット
SIPサーバーの弱点として挙げられるのが、通信障害に弱いことです。1台のSIPサーバーで複数拠点の電話網を構築した場合、SIPサーバーが故障してしまうと全拠点で通話できなくなるなどのトラブルが起こります。
また各拠点間を結ぶネットワークに障害が起きると、SIPサーバーが故障していなくても全拠点で電話が使えなくなってしまう大規模なトラブルが起こる場合もあるので注意が必要です。
通信障害でSIPサーバーが使えなくなってしまうことを避けるため、例えばネットワーク回線を2本契約しておくなど、冗長構成を採用する方法があります。しかし対策を強化すると、導入コストや管理コストが大きくかかってしまうこともデメリットです。
SIPサーバーの構築方法
必要な機器をそろえる
SIPサーバーに必要なものは、まずはサーバーです。拠点数が多かったり、電話機など通話する端末が多かったりすればそれだけ負荷に耐えられる機器が求められます。
逆に利用者が少ない場合は、パソコンにSIPサーバーを構築してもよいでしょう。
続いて必要なものといえば、子機となる電話機やパソコンです。コールセンターのように通話しながらパソコン入力が必要になれば、パソコンでソフトフォンを利用したほうがよいでしょう。
他にもIPネットワークを構築する給電スイッチやルーター、LANケーブルによる配線が必要になります。
サーバーの構築
必要な機器がそろったら、サーバーやパソコンにSIPサーバーを構築します。これは専用のソフトをインストールし、必要な情報を入力したり設定したりする必要があります。
SIPサーバーを導入するソフトにはフリーソフトも存在するため、先にこれらで検証すると知識や経験が得られるでしょう。
そのままフリーソフトで本番運用を開始してもよいのですが、ビジネスシーンで利用する場合は有償ソフトを導入するのがおすすめです。
フリーソフトは何か起きた場合に保証してくれる企業や人がいません。しかし有償版のソフトであれば、問い合わせ受付や故障対応などのサービスが購入できます。
IPネットワークを利用した3つの音声商品
IPネットワーク上で音声通話を可能にする機器やサービスは、SIPサーバーだけではありません。他の音声商品を複数紹介します。
（1）IP電話
IP電話とはインターネット回線を利用した電話であり、VoIP(Voice over Internet Protocol)という技術を使っています。
VoIP技術とは電話で話した音声を細かくわけ、デジタル化して相手に送信する技術です。デジタル化したものを再び音声に変換することで、相手は音声として聞き取ることができます。
使用するインターネット回線には種類がいくつかあります。工事が必要にはなりますが快適な通信速度の光回線や、工事不要ですぐ使えるモバイル回線などがあります。
使用環境は人それぞれ異なり、割引やアフターサービスなども業者によって違うので、どの回線が合っているかは比較検討して決めましょう。
（2）FMCサービス
FMCサービスとは今会社にあるビジネスフォンやPBXに、携帯電話やスマートフォンを子機として利用できるようにするものです。
FMCサービスの特徴として、さまざまなビジネスフォンの機種に対応していることが挙げられます。一定以上の性能を持ったビジネスフォンであれば、ほとんどの機種が利用できるでしょう。
メーカーが問われない特徴もあります。ドコモのFMCサービスだからといって、NTT製のビジネスフォンにしか対応していないというわけではありません。
新しいビジネスフォンを購入する必要がほとんどないため、手軽にスマートフォンの内線化を始められるサービスです。
（3）クラウドPBX
クラウドPBXとはインターネット回線を通じた電話回線サービスで、クラウドサーバー上にPBXの主装置が設置されています。
クラウド上のPBXに接続すると離れているオフィスや工場、自宅のPCや社用スマホで、企業の電話番号宛の電話を受けたり内線通話に対応したりできます。
従来のPBXは店舗やオフィスに主装置の設置が必要で、導入には工事のための期間と高額な初期費用がかかっていました。一方クラウドPBXは設置工事が不要で初期費用を抑えながら、最短即日からの利用が可能です。
導入の手軽さや初期費用の安さ、スマホ普及率の向上、リモートワークの一般化などを受けて、クラウドPBXの導入が増加しています。
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SIPサーバーだけでなく他の音声サービスも検討しよう
SIPサーバーを利用すれば、IPネットワーク上で電話網を構築できます。パソコンをつなぐLAN配線を流用できるため、電話のために新しく電話工事をする必要がありません。
ただしSIPサーバーが故障した場合、全拠点で電話が利用できなくなってしまいます。
予期せぬ障害に対応するためSIPサーバーやネットワークを冗長化すれば、それだけコストが大きくかかってしまうでしょう。
SIPサーバーの機能は昨今のビジネスフォンやPBXに搭載されているため、SIPサーバーを単体で用意する必要はなくなりつつあります。
スマートフォンを子機として利用したい場合は、クラウドPBXなどの専用サービスを利用するのも一つの手段です。
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