過労死等防止対策推進法が施行されるなど近年は働き方改革が推進されており、企業は労働環境を適切に整える必要に迫られています。しかし毎年自社内の過労死対策を見直しながらも、中々効果を感じ切れていない方もいるのではないでしょうか。
そこで当記事では企業が取り組むべき過労死対策のポイントや効果が出た実例、政府の取り組みをご紹介します。過労死を未然に防ぎ、過労死ゼロの職場環境づくりをしていきましょう。
企業が取り組むべき過労死対策【4つのポイントと11の施策】
過労死とは業務の過重負荷による脳血管疾患や心臓疾患・精神障害の発症、もしくはこれらの疾患を原因とする死亡のことです。必ずしも死亡だけを指すわけではないので注意してください。
過労死ラインは「発症前1ヵ月間に100時間あるいは発症前2~6ヵ月間平均で80時間を超える時間外労働」とされており、このような長時間労働が過労死対策におけるポイントです。
そこで過労死対策として企業が取り組むべき4つのポイントをご紹介します。
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長時間労働の是正
まずは過労死の根本原因である長時間労働そのものを是正する必要があります。企業による長時間労働対策のポイントは3つです。
適正な労働時間の把握
使用者は労働基準法および労働安全衛生法により、従業員の労働時間を適切に管理する責任があります。従業員の労働時間が時間外・休日労働時間協定で定められた時間以内に収まるように管理しましょう。
例えば従業員が会社に申請した労働時間と実労働時間に乖離がある場合が挙げられます。従業員が実労働時間で労働時間を申請できる環境を整えましょう。
時間外・休日労働時間協定(36協定)の周知の徹底
使用者は従業員に法定労働時間(原則1日8時間週40時間)を超えて時間外労働をさせる場合または休日労働させる場合、36協定を過半数労働組合(ない場合は過半数従業員)と締結し労働基準監督署に届けることが義務付けられています。
上限を超えた労働をさせないために、従業員に36協定の内容および過半数労働組合(または過半数従業員)と36協定が適切に締結されていることを周知することが非常に重要です。
36協定については以下の記事で詳しく説明しているため、参考にしてみてください。
勤務間インターバル制度の導入
従業員の休息や睡眠時間のため、勤務間インターバル制度の導入をおすすめします。
勤務間インターバルとは1日の勤務終了後から翌日の出社までに固定の休息時間(インターバル)を設けることを指します。過労死の原因となるストレスや睡眠不足の解消が期待できるでしょう。
医療体制の充実
過労による病変を早めに見つけて従業員を守るため、医療体制を充実させることが必要です。
定期健康診断受診の徹底
従業員全員に必ず定期健康診断を受診させましょう。過労死に結び付きやすいハイリスクな持病(高血圧、糖尿病など)を持つ従業員は特に注意が必要です。
健康診断の結果、問題がある場合は再検査の徹底
健康診断の結果に問題がある場合は必ず再検査を受けるよう徹底させましょう。再検査代を福利厚生として拠出している会社もあります。
産業医による過重労働面談
健康診断の結果をもとに定期的に産業医と面談をしましょう。具体的な健康面へのアドバイスを行うことで、従業員自身に気付きを与え改善を促すことができます。
ストレスチェックの実施
従業員の精神的な健康を守るために定期的なストレスチェックをするのも効果的です。アンケート方式で実施することが一般的です。
相談体制の整備
産業医やカウンセラーと提携して相談体制を整備し、従業員が気軽に健康面の相談をできるようにしましょう。
産業医や産業保健師の設置
従業員が心身の健康に問題があると感じた場合、すぐに相談できる環境を作ることが重要です。早期に産業医、産業保健師、もしくは主治医に相談できるように環境整備をしてください。
企業内カウンセラーの導入
職場の人間関係や仕事における悩みを気軽に相談できる企業内カウンセラーを導入することも検討しましょう。上司には相談できない悩みを抱えている人も少なくありません。
産業医や産業保健師と連携しつつ、従業員のメンタルヘルスケアを行いましょう。
職場ハラスメントの防止
気を付けているつもりでも、思いもよらない部分で職場ハラスメントをしてしまうことがあります。従業員全体がハラスメント知識をきちんと持って行動できるよう、手助けを行いましょう。
従業員意識調査の実施
アンケートや産業医へのヒアリング、個人面談などを通してハラスメントの実態を調査することが重要です。調査においては、対象者が偏ることがないようにし、正確な調査を行うために匿名での実施を行いましょう。
ハラスメント研修の開催
ハラスメントの防止に最も効果が大きいとされているのが「ハラスメント研修」です。新卒従業員だけでなく従業員全員が参加するように呼びかけ、定期的な実施を行いましょう。
集合研修が難しい場合は自主形式で学べるツールの利用やポスターによる周知を強化するのもひとつの手です。
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実際の企業の取り組み事例
企業で実際に取り組まれ効果の上がった対策として、朝方勤務や残業禁止時間の規定、健康相談室の開設、削減できた分の残業代の再分配などが挙げられます。
朝型勤務の推奨
総合商社のA社は長時間労働を削減するため「朝型勤務」を行っています。朝方勤務とは20時以降の残業を原則禁止、22時以降の残業を禁止とする代わりに早めに勤務を開始するという残業を行わない働き方です。
A社では5時~8時の朝の勤務は割増賃金として150%の賃金がもらえます。またパンなどの朝ごはんも食べられるようにしています。
この対策の結果、20時以降の残業率を30%から5%に下げることに成功しました。
19時以降の残業禁止
証券会社のB社は残業を削減するため、社長からのトップダウンで19時以降の残業を禁止する施策を行いました。
それまで証券マンは大した仕事がなくても夜中まで残業することが一般的でした。しかし施策の結果、従業員はコアタイムでの生産性向上を図るようになり、月間の平均残業時間を20時間程度に抑えることに成功しました。
社内看護師が常駐する「健康相談室」の開設
建設会社D社は現場で働く従業員が健康上の悩みを相談しやすいよう、看護師が常駐し、医師も週2回訪れる「健康相談室」を社内に開設しました。
その他にもストレスチェックや休憩所の設置などを行い、従業員が健康的に働くための施策を積極的に行っています。
健康増進アプリを活用した体調管理
不動産会社のE社はAIを搭載した健康増進アプリを活用し、従業員とその家族の健康管理を行っています。
また社内で健康を損なわない働き方や食事に関するセミナーを実施し、従業員の意識改革にも取り組んでいます。
従業員自身が健康問題を素早く把握し、過労死の予兆を見逃さないようにする体制も大切です。
残業減少で削減した費用を従業員へ再分配
IT企業のF社は月20時間以下の残業・年20日以上の有給取得を促す「スマートワーク・チャレンジ20」を実施しました。具体的には残業・有給取得の目標を達成した従業員にボーナスを出したり、全社で一斉に有給休暇を取得する日を設定したりといった施策があります。
するとこの運動によって月平均残業時間は35時間から18時間に、年平均有給取得日数は13日から18日に改善しました。
削減した残業代を従業員に還元することを前提に対策を行っているため、残業代を目的に働く人にも受け入れられやすく、働き方改革を従業員全体に浸透させることができています。
過労死防止に向けた政府の取り組み
11月の過労死等防止啓発月間を始め、過労死等防止対策推進法やホットラインの整備など、政府でも過労死対策を進めています。
過労死等防止対策推進法の整備
政府による過労死対策として過労死等防止対策推進法が整備されました。目的および概要は以下のとおりです。
▼過労死等防止対策推進法概要
目的 |
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概要 |
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「過労死等ゼロ」緊急対策の整備
過労死等防止対策推進法の整備後、より過労死へのより強力な対応策として「過労死等ゼロ」緊急対策が整備されました。目的および概要は以下のとおりです。
目的 |
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概要 |
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相談窓口の設置
全国には都道府県労働局労働基準部監督課、労働基準監督署、総合労働相談コーナーなどの相談窓口が設置されています。
労働条件や健康管理に関する相談を無料で行ってもらえるため、気軽に相談してみましょう。
海外で長時間労働が発生しにくい理由は?
特に先進国の多いヨーロッパでは労働時間が短く抑えられています。理由としては法律に加えて労働協約で厳しく労働時間に制限を設けていること、成果主義・タスク管理が徹底されていることが挙げられます。
法律に加え、厳しい労働協約がある
ヨーロッパでは法律に加え、労働協約で厳しく労働時間の上限を定めている国が多いです。
例えばオランダの産業別労働協約は週の労働時間を平均38時間と定めています。デンマークも労使協約で労働時間を週37時間としており、シフト制で夜間勤務に就いているなどの場合はさらに短くなります。
またドイツには週6日最大48時間までという法規制があるものの、労働協約によりほとんどの業種で週40時間以内の労働時間に抑えられています。
このようにヨーロッパ諸国では労働時間の上限を法律で明記するのみならず、労働協約も使って従業員を保護しているのです。
成果主義・タスク管理が徹底されている
一見労働時間を増やすようにも思える成果主義ですが、ヨーロッパ諸国ではむしろ労働時間や残業の削減に繋がっています。
例えばワークシェアリングという考え方が誕生したオランダでは、個人の業務範囲が明確です。自分の業務で成果を出していればどんな働き方をしてもよい、と考えられています。
スウェーデンなど北欧の国では基本的に働くのは月曜日から木曜日の4日間です。金曜日はフレキシブルデーとして、仕事が残っている人のみ会社または自宅で働きます。
またドイツでは業務が少ない時期は早く帰宅し、繁忙期の残業時間を振り替えるのが一般的です。
こうした働き方が実現しているのは、個人の週あたりの業務量が適切に管理されているためです。業務量やタスクに応じた柔軟な働き方が労働時間のバランスを保っています。
過労死の対策には労務管理システムの導入がおすすめ
過労死対策において重要となってくる労務管理。労務管理システムは効率的に過労死対策を行うために重要です。
労務管理システムで労働時間の可視化を行う
出勤・打刻を集計する勤労管理システムを活用して、労働時間を可視化することは過労死対策につながります。パソコンやスマートフォンなどで簡単に打刻できるシステムを活用すれば、テレワークなどの働き方にも対応可能です。
長時間労働の管理を行うだけでなく、業務負担を軽減できるというメリットもあります。また労働時間だけでなく、有給取得なども合わせて管理するとより効率的に業務を遂行できるでしょう。
事前の対策で過労死ゼロの職場づくりを
過労死に繋がる長時間労働やハラスメントは、労働時間厳守や医療体制の整備、ハラスメント研修などで改善が望めます。朝方勤務や健康相談室といった対策、労務管理システムの導入も積極的に推進しましょう。
また政府でも過労死対策を進めています。過労死に対する対策で不明点があれば、政府が用意している相談窓口を積極的に利用しましょう。
過労死を未然に防ぎ、従業員が幸せに働ける環境を皆で作り上げていく姿勢が非常に重要です。
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