「新規のお客様は順調に増えている。それなのに、一度買ってくれた人がリピートしない。」
「メールを送っても反応は薄く、優良顧客だったはずの人がいつの間にか離れている。」
「既存顧客のLTV向上やファン化を任されたものの、「顧客データはあるのに、何から手をつければいいのか」で止まっている。」
CRMマーケティングを調べ始めたのは、そんな手詰まりからではないでしょうか。
この課題は顧客データを使ったマーケティング、いわゆる「CRMマーケティング」で解けます。ただし成否を分けるのは、ツールを入れることではありません。「自社の顧客が今どのフェーズにいて、どの課題から解くか」を先に決められるかどうかです。ここが定まらないまま施策を並べても、労力が分散して成果が出ません。
この記事ではCRMマーケティングの全体像を押さえたうえで、施策を顧客フェーズで整理する方法、始め方の5ステップ、ツールの選び方までを順に解説します。

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CRMマーケティングとは

CRMマーケティングとは、顧客関係管理(CRM:Customer Relationship Management)の考え方を土台に、購入履歴や問い合わせ履歴などの顧客データを分析し、既存顧客一人ひとりに合った施策を届けて長期的な関係を育てる手法です。
新規獲得ではなく、すでに買ってくれた顧客が主役になります。単発の売り切りで終わらせず、二度目・三度目の購入やファン化を通じて、顧客一人あたりの生涯価値(LTV:Life Time Value)を高めることを目的とします。
この定義を「誰に・何を使って・何のために」の3つに分けると、より具体的につかめます。
相手は「既存顧客」|すでに買ってくれた人が主役
新規のお客様を集めることは、この手法の役割ではありません。CRMマーケティングが向き合うのは、一度でも購入・利用してくれた既存顧客です。
新規獲得のコストが上がるなかで、すでに接点のある顧客からの売上をどう伸ばすかがテーマになります。
手段は「顧客データ」|勘ではなくデータで一人ひとりに合わせる
使うのは購入履歴、問い合わせ履歴、会員情報といった顧客データです。これらを分析し、「初めて買った人」と「何度も買っている人」で届ける内容を変えます。
全員に同じ案内を一斉に送るのではなく、一人ひとりの状況に合わせるところがポイントです。
目的は「長期的な関係」|一度きりをリピート・ファンに変える
狙うのは単発の売り切りではありません。二度目、三度目も自社を選んでもらい、やがてファンとして長く付き合ってもらう関係づくりです。
この積み重ねが、顧客一人あたりのLTVを押し上げます。
CRMマーケティングが今必要かを見極める3つの視点
CRMマーケティングはすべての企業に等しく効くわけではありません。着手すべきかどうかは、次の3つの視点で判断できます。ひとつでも強く当てはまるなら、優先度は高いと考えてよいでしょう。
逆に、まだ新規獲得の仕組みそのものが立ち上がっていない段階では、CRMより先に集客の土台づくりが優先されることもあります。自社がどの局面にいるかを見極めたうえで読み進めてください。
新規獲得のコストが上がり、割に合わなくなってきている
広告費が高騰し、新規を1件取るコストが年々重くなっているなら、既にいる顧客からの売上を伸ばすCRMマーケティングの投資対効果が相対的に高まります。
一度きりで終わる顧客が多く、リピート率が頭打ち
初回購入から二度目につながっていない、購入後のフォローが実質的に無い状態なら、伸びしろはそのまま定着施策の余地です。
顧客データが溜まっているのに、活用できていない
購入履歴や問い合わせ履歴がツールやExcelに蓄積されているのに、施策に反映されていないなら、データを寝かせている分だけ機会を逃しています。
CRMマーケティングの施策は「顧客フェーズ」で決まる

CRMマーケティングの施策は、メール配信、セグメント配信、MAツール(Marketing Automation)との連携、ポイント施策、休眠掘り起こしなど多岐にわたります。数が多いだけに、思いついた順に手を出すと労力が分散し、「自社はどれからやるべきか」が最後まで決まりません。
そこで有効なのが、顧客が今いるフェーズ=解きたい課題で施策を選ぶ考え方です。
既存顧客は「まだ定着していない」「定着済みで伸ばせる」「離れてしまった」のいずれかにいます。この3フェーズで施策を整理すると、打ち手が自然に決まります。
多くの企業がまずつまずくのは定着で、次いで育成、最後に再活性の順に着手余地が大きくなります。自社の顧客の重心がどこにあるかを見極めてください。
定着フェーズ|一度きりの顧客をリピーターに変える
最も多くの企業が最初に直面する課題です。初回購入や初回利用のあと放置してしまい、二度目が生まれない。ここでのつまずきは「買ってくれたことに満足して、次の接点を用意していない」ことに尽きます。
効くのは、購入直後から一定期間、あらかじめ設計した順序で情報を届けるステップ配信と、購入回数で顧客を分けて「初回のみ客」だけに二度目を促すセグメント配信です。
具体的には、初回購入の数日後に使い方や活用例を送り、二週間後に関連商品や次回向けの特典を案内する、といった流れを組みます。これを一度設計すれば、あとは新規顧客が入るたびに自動で回ります。
やり切ると、これまで一度きりだった顧客の一定割合が二度目に進み、リピート率という土台の数字が動き始めます。
まず「初回のみ客」を切り出し、二度目までの動線を自動化する。ここが全フェーズの土台になる。
育成・維持フェーズ|優良顧客のLTVを最大化し、離反を防ぐ
定着した顧客を、より買ってくれる優良顧客へ育て、同時に離れそうな顧客を引き留めるフェーズです。つまずきは「全顧客を一律に扱い、優良顧客にもそうでない顧客にも同じ案内を送ってしまう」こと。優良顧客ほど「自分向けでない」と感じて熱が冷めます。
ここでは購入金額や頻度で顧客をランク分けし、優良層には上位商品やまとめ買いを提案するアップセル・クロスセル、限定情報や会員特典で特別感を出すロイヤルティ施策を届けます。あわせて、来店・購入の間隔が空き始めた「解約・離反の予兆がある顧客」を検知し、離れ切る前に一手を打ちます。
BtoBのサブスクリプションなら、利用頻度の低下を検知してカスタマーサクセスが動く、といった形になります。
結果として、優良顧客一人あたりの売上が伸び、静かに進んでいた離反が食い止められます。
全顧客一律をやめ、上位2割を厚く扱う。同時に「離れる前」に気づける仕組みを持つ。
再活性フェーズ|離れた休眠顧客を呼び戻す
しばらく購入も来店もない休眠顧客を掘り起こすフェーズです。つまずきは「休眠顧客をひとまとめにして、同じ内容を一斉に送ってしまう」こと。離れた理由も期間も違う相手に一律の案内は響きません。
まず最終購入日や離反前の行動で休眠顧客を分け、「なぜ離れたか」の仮説ごとにアプローチを変えます。長期休眠には復帰特典つきのダイレクトメール(DM)やメール、価格が理由と見られる層には期間限定オファー、という具合です。
あわせて離反分析を行い、そもそも離反が起きやすいタイミングをつかんでおくと、定着・育成フェーズの改善にも跳ね返ります。
呼び戻せた顧客は再び定着フェーズの入り口に戻るため、この3フェーズは一本のサイクルとしてつながります。
「いつ・なぜ離れたか」で分け、一斉配信をやめる。復帰後は定着フェーズへ戻して育て直す。
CRMマーケティングの始め方5ステップ
フェーズごとの打ち手が見えたら、実際の進め方に落とします。順番を守ることが大切で、多くの失敗は最初の2ステップを飛ばして施策から入ることで起きます。
ステップ1|顧客データを集めて一か所に整える
購入履歴、問い合わせ履歴、会員情報が部署ごとやツールごとにバラバラだと、その先の分析がすべて狂います。まずは散らばったデータを集約し、同じ顧客の情報が結びつく状態をつくります。
ここが甘いと、後工程のセグメント配信で「同じ人に二重配信」といった事故が起きます。最初は完璧を目指さず、購入履歴と連絡先がひもづくところから始めれば十分です。
ステップ2|顧客を分ける(セグメンテーション)
集めたデータをもとに、前章の3フェーズで顧客を分けます。「初回のみ客」「優良客」「休眠客」の3つに切るだけでも、打ち手の解像度は一気に上がります。
ここで自社の顧客がどのフェーズに偏っているかが見え、注力すべき課題が定まります。
ステップ3|フェーズごとに施策を決める
分けた顧客ごとに、前章の本命施策を割り当てます。全フェーズを同時に始める必要はありません。むしろ顧客数が最も多いフェーズひとつに絞って始めるほうが、成果が見えやすく社内の合意も得やすくなります。
ステップ4|小さく実行し、数字で効果を測る
決めた施策を、まずは一部の顧客や一施策から実行します。配信後は開封率、クリック率、そして最終的にリピート率やLTVといった「事業の数字」まで追います。開封率だけを見て満足せず、売上につながったかまで見届けるところがポイントです。
ステップ5|結果を見て改善し、横に広げる
測定結果をもとに、配信のタイミングや文面、セグメントの切り方を調整します。ひとつのフェーズで成果が出たら、その型を次のフェーズへ広げます。
CRMマーケティングは一度組んで終わりではなく、この改善のサイクルを回し続けることで効いてきます。
CRMマーケティングにおけるCRMツールの役割
ここまでは施策と進め方の話でした。これらを実際に動かすのがCRMツールです。顧客データを一元管理し、フェーズごとのセグメント分けやステップ配信を自動化する、いわばCRMマーケティングの実行基盤にあたります。顧客数が増えるほど手作業では追いつかないため、施策を続けるにはツールが前提になります。
つまりCRMマーケティングが「手法」、CRMツールは「それを回すための道具」という関係です。前章までの施策を実際に動かす段になって、初めてツール選びが必要になります。
CRMツールの選び方3つのポイント
多機能なツールを選べばよいわけではありません。使いこなせず形骸化するのが典型的なつまずきです。「自社の主フェーズと事業モデルに合うか」を基準に、次の3つの軸で選んでください。
事業モデルとの相性(最優先)
店舗・ECなど多数の個人顧客を扱うBtoCなら、大量配信とセグメントの細かさを重視します。少数の法人顧客を扱うBtoBなら、営業活動との連携を優先します。ここが自社と合っていないと、他の機能がそろっていても使いこなせません。
主フェーズに効く機能
自社が注力するフェーズに強い製品を選びます。定着重視ならステップ配信、育成重視なら顧客分析やスコアリングが充実した製品が候補になります。
既存システムとの連携
今使っているECカートや基幹システム、MA・SFAと連携できるかを確認します。ここが弱いと、ステップ1のデータ集約でつまずきます。
CRMマーケティングに使える代表的なCRMツール
代表的なツールを、得意領域で整理すると次のとおりです。
| 製品名 | 得意領域 | 主に効くフェーズ | 費用の目安 |
|---|---|---|---|
| Synergy! | BtoC全般の顧客管理とメール配信を一体運用 | 定着・育成 | 要問い合わせ |
| うちでのこづち | EC・通販に特化した分析と自動施策 | 定着・再活性 | 要問い合わせ |
| Salesforce Marketing Cloud | 大規模・多チャネルの高度な自動化 | 育成・維持 | 要問い合わせ |
| b→dash | ノーコードでデータ統合から活用まで | 育成・再活性 | 要問い合わせ |
| HubSpot | BtoB中心にマーケと営業を一気通貫 | 定着・育成 | 無料〜有料 |
| Zoho CRM | 低コストで営業・顧客管理を幅広く | 全般 | 低コスト帯 |
BtoCで「まず脱・一度きり」を狙うなら顧客管理と配信が一体のSynergy!やEC特化のうちでのこづち、法人顧客で営業連携まで見据えるならHubSpotやZoho CRM、大規模に多チャネルを自動化したいならSalesforce Marketing Cloudやb→dashが検討の起点になります。
いずれも料金は要件で変わるため、正確な費用は各社への問い合わせで確認してください。自社に合う一製品を機能表だけで決めきれないときは、ミツモアの無料診断で候補を絞るのが近道です。
また、次の記事ではおすすめのCRMツールを一挙紹介して比較しています。製品の詳細をみながら比較検討を進めたい場合は、ぜひあわせて参考にしてください。
CRMマーケティングを成功へ導く4つのポイント
CRMマーケティングは、ツールを入れても使われず終わってしまうことが多い領域です。裏を返せば、成否を分けるポイントは絞られます。次の4つを押さえれば、形骸化を避けて成果につなげられます。
ひとつのフェーズに絞って始める
定着・育成・再活性を一度に立ち上げると、どれも中途半端になります。顧客数が最も多いフェーズひとつから始め、成果が出てから横に広げます。
施策より先に、データ集約をやり切る
顧客データが整っていないまま配信を始めると、二重配信や的外れな案内が起き、かえって信頼を損ねます。地味でもステップ1を先に終わらせます。
開封率で満足せず、事業の数字まで測る
開封率やクリック率は途中経過です。リピート率・LTVという売上につながる数字まで測って初めて、施策の良し悪しが判断できます。
運用を仕組み化し、属人化を防ぐ
設計や配信が一人の頭の中だけにある状態は、その人が抜けた瞬間に止まります。セグメントの定義や配信ルールを誰でも追える形で残します。稟議で社内を通すときも、この「仕組みとして回る」点を材料にすると通りやすくなります。
まとめ
CRMマーケティングの要点は3つです。
- CRMマーケティングは「既存顧客との関係を育てて売上を伸ばす」手法で、相手は既存顧客、手段は顧客データ、目的は長期的な関係づくり
- 施策は羅列で選ばず、顧客フェーズ(定着・育成・再活性)=解きたい課題で決める
- 進め方はデータ集約→セグメント→施策→測定→改善の順。全部を同時にやらず、顧客が最も多いフェーズひとつから小さく始める
半年後、初回で終わっていた顧客の何割かが二度目に進み、優良顧客の離反が止まり、休眠客がぽつぽつ戻ってくる。顧客フェーズごとに打ち手が決まっていれば、その状態は十分に現実的です。
大切なのは、完璧な設計図を先に描くことではありません。施策が多すぎて選べない、という手詰まりの正体は「全部を一度にやろうとしていること」です。今日決めるべきは、自社の顧客が最も多いフェーズをひとつ選び、そこの本命施策から始めること。それだけで、止まっていた足が動き出します。
今年こそ、「一度きりで終わる顧客」を見送るのをやめましょう。
よくある質問
CRMとCRMマーケティングは何が違いますか
CRMは顧客関係を管理する仕組みやツールそのものを指し、CRMマーケティングはそのCRMに溜まった顧客データを使って施策を打つ活動を指します。ツールを入れただけでは関係は深まらず、データを施策に変えて初めてマーケティングになります。
CRMツールはMA・SFAと何が違いますか
3つとも顧客や案件を扱うツールですが、担当するフェーズが異なります。
CRMは買ったあとの既存顧客との関係管理を、MAツールは買う前の見込み客の育成を、営業支援システム(SFA:Sales Force Automation)は商談中の案件と営業活動の管理を主に担います。
対立するものではなく、MAで集めた見込み客をCRMで継続顧客に育て、その情報をSFAへ渡す連携が一般的です。
CRMマーケティングはBtoBでも有効ですか
有効です。BtoBは顧客数が少ない分、一社あたりの関係づくりが売上に直結します。定着・育成フェーズを、営業活動やカスタマーサクセスと連携させて回すのが基本形です。フェーズで施策を整理する考え方はBtoB・BtoC共通です。
導入済みなのに成果が出ません。何を見直せばよいですか
多くの場合、原因は施策の中身よりも「全フェーズを一律に扱っていること」か「開封率など途中の数字しか見ていないこと」にあります。まず顧客をフェーズで分け直し、注力するフェーズをひとつに絞り、リピート率・LTVまで測る形に立て直してください。
効果はどれくらいで説明できるようになりますか
顧客数が多いフェーズひとつに絞れば、数か月で開封率・クリック率、続いてリピート率の変化が見え始めます。上への説明は完璧な比較より意思決定材料が要る場面なので、小さく出た成果を根拠に横展開を提案するのが通しやすい進め方です。
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