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NPS®とは?顧客満足度に代わる指標の意味や計算方法を解説!

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最終更新日: 2024年06月28日

企業や製品に対して「顧客がどのくらい満足しているのか?」といった部分は、なかなかはっきりと見えてきづらいのではないでしょうか。しかし「NPS® (Net Promoter Score:ネットプロモータースコア)」と呼ばれる指標を活用すれば、数字ベースで顧客の実情が見えてきます。

集計方法や業界ごとの平均値などもふまえながら「NPS®とは何なのか」をわかりやすく解説します。

NPS®とは顧客の「信頼」や「愛着」を図る指標のこと

NPSのイラスト

NPS®とは、顧客が企業やブランド、商品やサービスに対して感じている「信頼」や「愛着」を図る指標のことです。このような「顧客ロイヤリティ」の数値化と可視化を通じて、企業と顧客の接点や顧客体験の評価と改善に活かせます。

NPS®は事業成長とも相関性が高い指標です。これまでの「顧客満足度」に代わる指標として、世界各国のさまざまな企業で活用されています。

顧客満足度よりも業績向上に直結する指標

NPS®は顧客満足度よりも業績向上に直結する指標として注目を集めています。

2003年にNPS®を考案したベイン・アンド・カンパニーの調査によれば、業界トップのNPS®を誇る企業は競合他社と比べて、およそ「2倍」もの成長率を遂げていることが明らかになりました。

顧客満足度はその名の通り『顧客がどれだけ「満足」しているのか』をあらわす指標です。しかし「満足」の定義はあやふやで、判断基準も同じとは限りません。

そのため「満足」と回答した顧客であっても、実際にリピートするとは言い切れず、売上向上につながるとは限らないのです。顧客満足度とは違い、顧客体験(CX)をより具体的かつ明確に定義できる指標こそがNPS®だといえるでしょう。

NPS®はたったひとつの質問で計測可能

NPSの質問と集計の図解
質問でユーザーを3つのセグメントに分類する

NPS®は「この商品・サービスを友人や同僚にすすめる可能性はどのくらいありますか?」の質問で計測可能です。顧客に対してこの質問をアンケート形式で行い、0~10の11段階で評価をしてもらってスコア化します。

そしてアンケートで回答してもらった点数に応じて「推奨者」「中立者」「批判者」の3つのセグメントに顧客を分類します。

推奨者(Promoters):9~10点と答えた人

推奨者のアイコン

推奨者は質問に対して9~10点と答えた人です。このセグメントに分類された人はあなたの会社の製品やサービスを愛用し、周りの人におすすめしてくれます。

推奨者はリピート比率がほかのセグメントと比べて非常に高い特徴があります。あなたの企業にとっての、いわば「大ファン」といっても過言ではありません。

中立者(Passives):7~8点と答えた人

中立者のアイコン

中立者は質問に7~8点と答えた人です。中立者に該当する人は製品やサービスを特にすすめることもなければ、ネガティブな意見を発することもありません。

しかし、中立者はなんらかのきっかけがあれば、競合の製品やサービスに乗り換える可能性が高いです。

批判者(Detractors):0~6点と答えた人

批判者のアイコン

批判者は質問に0~6点で回答した人です。この人達はあなたの会社の製品やサービスを愛用しているとはいえません。

そればかりか、購入を検討している人たちに否定的な口コミやレビューを行い、新規顧客の購入意欲をそいでしまう可能性すらあります。

批判者は顧客に対応する従業員のやる気や意欲をなくしてしまう存在にさえなりえます。

NPS®の計算方法【推奨者の割合-批判者の割合】

NPSの計算式の図解
NPS®の計算式

NPS®のスコアは、アンケート回答者全体に占める推奨者の割合(%)から批判者の割合(%)を差し引くだけで簡単に計算できます。

この計算により、あなたの会社の製品やサービスのNPS®は「-100~100」の範囲のうち、いずれかのスコアで算出可能です。

もちろんスコアは高ければ高いほどよく、そのぶんあなたの会社の「ファン」が多いことを表します。

NPS®の計算例

アンケートの結果が以下の場合だったケースで計算してみましょう。

  • アンケート回答者数:1,000人
  • 推奨者 (9~10点):450人
  • 中立者 (7~8点):300人
  • 批判者 (0~6点):250人

この人数をパーセンテージに変換すると推奨者は45%、批判者は25%です。それぞれの割合を差し引きすると「45-25」となり、NPS®スコアは「20」と計算できます。

統計学の観点から400サンプル以上を集めるのが望ましい

NPS®は統計学の観点からいうと、400サンプル以上を集めるのが望ましいです。400以上の回答数があれば、誤差は±5%以内に収まります。

また2,000サンプル以上がそろっていれば、誤差は±2%まで縮まります。

NPS®調査を行う際にはなるべく多くの回答を集めて、正確なスコアを算出しましょう。

業界別の平均NPS®を紹介!マイナスがほとんどなのはなぜ?

星評価のイラスト

業界別の平均NPS®は以下の通りとなっています。

【業界別の平均NPS® (2021年)】

業界 NPS®
銀行 -49.1ポイント
クレジットカード -40.6ポイント
生命保険 -49.1ポイント
電力 -46.4ポイント
通販化粧品 -10.1ポイント
不動産管理 (マンション) -45.7ポイント
ネットスーパー -10.7ポイント
大手携帯キャリア -51.9ポイント
人材派遣 (BtoB) -44.4ポイント
動画配信サービス -26.4ポイント
参考:NPS®業界別ランキング&アワード|NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社

このように、業界別の平均NPS®はいずれの業界でもマイナスになっています。

また各業界のトップ企業であっても、ほとんどがマイナスの結果となっており、プラスを記録する企業はほとんどありません。

そしてこの現象は、世界的にみても日本特有であることが明らかになっています。

日本人はアンケートで中央値を回答する傾向にある

NPS®の数値がマイナス傾向にあるのは、日本人の国民性に大きく由来しています。

日本人は文化的にいわゆる「集団主義的」な性質があります。「出る杭は打たれる」といった言葉に代表されるように、極端な意思表示や意見を避けて無難な回答をする傾向にあるのです。

これをNPS®のような10段階評価のアンケートに回答する場合に置き換えて考えてみると「とりあえず4~6の評価をつける」可能性が高いことを意味します。

そしてNPS®におけるこれらのスコアは「批判者」に該当するため、マイナス傾向にいたってしまう結果になります。

絶対値ではなく競合との比較や推移を追うのが大切

NPS®は回答結果に一喜一憂するのではなく、競合との比較や結果の推移を追うことが大切です。

日本人の回答中心化傾向からも「マイナスのスコアが出ているから、製品やサービスに重大な欠陥があるはずだ」と決めつけてしまうのは早計だといえるでしょう。

つまり「スコア改善のために何ができるのか」=「顧客体験改善のために何をするべきか」を考えるための手がかりとして、NPS®を活用するのが大切なのです。

NPS®調査で現状の数値が判明すれば、業界平均値や他社の数値と比べながら自社のポジションはどの程度の位置にいるのかをまずは明らかにしましょう。

そして顧客体験を向上させるための施策を実行したのち「スコアがどのくらい改善したのか」を継続的に調査します。そうすることで「顧客に寄り添った製品やサービスに改善できたかどうか」が明らかになるのです。

NPS®が上がると推奨者が増えて売上向上につながる

お金のグラフの上に座る人たちのイメージイラスト

高いNPS®スコアは推奨者であるファンが多いことを意味します。

推奨者はあなたの会社の商品やサービスを多く購入してくれるばかりか、長期にわたって好意的な関係を保ってくれます。

そのうえ、よい口コミを広げてくれる可能性も高いです。「この商品が便利すぎてもう手放せない」「コストパフォーマンスも最高!」などの口コミが広がれば、新規顧客の獲得チャンスも加速度的に広がっていくでしょう。

推奨者を増やしてNPS®を上げ続けていくことができれば、直接的にも間接的にも企業の売上向上につながります。

ユーザーに寄り添った施策で顧客ロイヤリティの向上を

NPS®スコアを上げるためには、ユーザーに寄り添った施策の実行が欠かせません。

もちろん市場環境の変化や競合の状況など、外部的要因によってNPS®が変動する可能性も考えられます。

しかし「NPS®を上げる=ファンを増やす」とシンプルに考えれば、顧客のニーズに応える形で改善を繰り返してこそ、真の顧客満足が得られるのです。

NPS®調査は目的ではなく、あくまでも顧客満足を図るためのひとつの手段です。顧客の声に耳を傾けた結果を具体的な改善アクションに落とし込み、PDCAサイクルをもとにした実行を繰り返してこそ、業績向上につながります。

関連記事:顧客ロイヤリティとは?顧客満足度との違いや向上施策も解説|ミツモア

導入企業に学ぶNPS®の成功事例

オフィスで働く人々のイラスト

NPS®を導入した企業の成功事例を紹介します。NPS®をどのように活用すると効果的なのか、いくつかの例をみてみましょう。

東京メトロ

地下鉄を運営する東京メトロは、銀座線や日比谷線などの路線ごとにパンフレットを作成してNPS®調査を行いました。

パンフレットの裏面がNPS®を中心としたアンケートになっていて、そのまま料金受取人払いの郵送で送れるようになっています。

調査内容は「あなたはこの冊子を親しいご友人やご家族にどの程度勧めたいと思われますか?」といった「パンフレットの推奨度」を聞く質問と、「路線の推奨度」を調査する2点が主な軸となっているとのこと。

スコア分析でみえてきた冊子の人気コンテンツや、これからの路線に期待する未来の期待値が明らかになることで、施策が実施された際のインパクトも見えるようになりました。

ユーザーの反応という確かな根拠をNPS®として計測しているからこそ、自信を持ってサービス改善につなげられている事例といえます。

アメリカン・エキスプレス・インターナショナル

クレジットカード会社として名高いアメリカン・エキスプレス・インターナショナル。これまで顧客満足度の調査は実施していたものの「業績向上に必ずつながっているとはいえない」といった課題がありました。

このことからも、より業績向上に直結する指標として年に2回のNPS®調査を実施。分析の結果、クレジットカードをなくしたときの対応のよさが、顧客ロイヤリティの向上につながっていると判明したのです。

そしてNPS®の分析結果をふまえて「クレジットカードの迅速な再発行」といったサービス改善施策を実施しました。

結果、サービス解約率が全体の25%にまで減少しただけでなく、会員ひとりあたりのカード平均利用金額が10%も向上したのです。

NPS®調査をふまえた施策の実施で、業績向上につながった事例だといえます。

NPS®を最大限に活用して売上改善の実現を

ビジネスとお金のイラスト

顧客の「信頼」や「愛着」を可視化できる指標のNPS®。分析手法が画一化されていることや、顧客満足と将来への発展性を同時に測れることから、世界的にも多くの企業で取り入れられています。

NPS®は調査自体が目的ではありません。調査結果から「なぜ、現状の顧客ロイヤリティがこの数値なのか?」を考えて施策に落とし込み、実行に移すことが大切です。そして継続的にNPS®を測定し、施策実行と効果検証のサイクルを回していきましょう。

NPS®を最大限に活用して、会社の業績改善につなげてみてはいかがでしょうか。

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