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おすすめのオンプレミス型勤怠管理システム9選!特徴と選び方・導入手順まで解説

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最終更新日: 2025年11月27日

情報漏洩のリスクや自社の要件にマッチするサービスがないなどの理由で、オンプレミス型のシステムを選ぶ企業は少なくありません。特にセキュリティ事故の許されない業種・業界であれば、データを自社内で完全にコントロールできるオンプレミス型勤怠管理システムは最も堅実で、信頼できる選択肢です。

オンプレミス型勤怠管理システムを選ぶ時は、自社の要件に対しどれだけ柔軟に対応できるかを重視してください。カスタマイズ性が高ければ、自社に最適なソリューションの提案を受けられる可能性が高まります。

本記事では、カスタマイズ性に優れた9つのオンプレミス型勤怠管理システムを厳選し、紹介します。得意な企業規模やどのような勤務形態に対応できるかなども解説します。

オンプレミス型勤怠管理システム9製品の比較表

カスタマイズ性に優れたオンプレミス型勤怠管理システムを9つ紹介します。推奨規模や主なターゲット層などから、自社の規模感にマッチした製品があるかチェックしてみましょう。

製品名 推奨規模 主なターゲット層 強み・特徴
TimePro-VG 1,000人以上 官公庁・病院・大企業 絶対的信頼性。ハードウェア(ゲート等)との統合管理。
Tomasオンプレミス 300人~ 勤怠に関し独自ルールがある企業 適合力。企業に合わせてシステムをカスタマイズ。
Universal勤次郎 300人~ 健康経営を推進したい企業 ヘルスケア連携。健康管理と勤怠の一元化。
TimeWorks 250人~ 製造・物流業の中堅企業 設定力。ノンカスタマイズでの複雑な規則対応。
皆伝!勤怠管理 数千人~ 超大規模企業の全社導入 基盤統一。intra-mart上での経費・人事統合運用。
BIZWORK+ 300人~ コスト重視の中堅企業 高コスパ。人数無制限ライセンスと現場機能。
i勤怠 数百人~ カスタマイズ性を特に重視する中堅企業 UI/UX。クラウドの操作感をオンプレミスで。
勤労の獅子 300人~ 病院・ホテル・介護 シフト管理力。16万通りのパターン対応。
らくちん勤怠管理 100人~ 店舗や工場など、コストを特に重視する企業 不正防止。生体認証連携と低価格オンプレ。

オンプレミス型勤怠管理システムを選ぶ3つのポイント

オンプレミス型勤怠管理システムを選ぶときは以下3つのポイントに特に注意しましょう。

カスタマイズの柔軟性

オンプレミス型を選ぶ最大のメリットは、自社独自の就業規則やシステム環境に合わせて柔軟に構築できる点にあります。クラウド型では難しいソースコードレベルでの改修(アドオン開発)や、数千項目に及ぶ詳細なパラメータ設定により、複雑な労働条件や給与計算ロジックにも対応可能です。

また、人事給与システムや物理セキュリティ機器とのデータベース連携も重要な確認ポイントです。API連携よりも強固でシームレスな統合が可能となり、マスタデータの一元管理や入退室記録との突合による客観的な時間管理を実現します。自社の運用に合わせてどこまで深く作り込めるか、拡張性の高さを重視して選びましょう。

導入事例の内容

検討中のシステムが、自社と同様の規模や業種、あるいは特有の課題を持つ企業で導入されているかを確認しましょう。特に従業員数1,000名を超える大規模組織や、医療・建設・官公庁といった特殊な勤務体系を持つ業界では、クラウド型では対応しきれない複雑な要件が存在するケースが多々あります。

導入事例は、他社がどのようにして複雑なシフト管理や法規制対応、グループ統合管理といった課題を克服したかを知るための貴重な情報源です。単なる機能リストの確認にとどまらず、具体的な解決策や運用フロー、そして長期的なコスト削減効果などが明確に示されている事例を持つベンダーを選ぶことが成功への近道です。

導入・運用サポート体制

オンプレミス型の導入は長期プロジェクトとなるため、ベンダーのサポート力がシステムの品質を左右します。単なるソフト提供にとどまらず、専任SEによる業務プロセスの分析や要件定義、Fit & Gap分析といったコンサルティング能力があるかを見極める必要があります。

また、運用開始後の保守サービスの内容も重要です。法改正に伴うパッチ適用のタイミングや、機器トラブル時のオンサイト対応、リモートサポートの有無を確認しましょう。サーバーOSやデータベースの管理はユーザー企業の責任範囲となることが多いため、自社の情シス部門とベンダーの役割分担(責任分界点)を事前に明確にしておくことが大切です。

おすすめのオンプレミス型勤怠管理システム9選

オンプレミス型の勤怠管理システムは、自社サーバーで運用するため、セキュリティ要件が厳しい企業や複雑な就業規則を持つ企業に適しています。

国内で導入実績のあるオンプレミス対応の勤怠管理システム9製品を紹介します。

TimePro-VG

出典:「TimePro-VG」公式サイト

アマノ株式会社が提供する、大規模企業向けのハイエンドソリューションです。90年以上の歴史を持つタイムレコーダーメーカーならではの強みがあります。

入退室ゲートやタイムレコーダーなど自社製ハードウェアとの連携が可能で、標準機能が豊富なため複雑な就業規則にもノンカスタマイズで対応できるでしょう。

神奈川県庁やJTB、大学病院などでの導入実績があり、失敗が許されない大規模プロジェクトで選ばれています。推奨規模は1,000名以上です。

推奨規模 官公庁・病院・大企業など大規模組織
導入実績
  • 神奈川県庁
  • 会計検査院
  • 東京女子医科大学

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Tomasオンプレミス

出典:「Tomasオンプレミス」公式サイト

蓼科情報株式会社が開発した、カスタマイズ前提の設計思想を持つシステムです。「Just Fit」をコンセプトに掲げ、企業独自の就業規則に合わせた柔軟な対応が可能となっています。

既存の業務フローを変えずにシステム側を合わせるカスタマイズが得意で、36協定管理機能やシフト管理機能も充実しています。

製造業やアミューズメント業界での導入実績があり、現場ごとに勤務ルールが異なる企業に向いています。推奨規模は300名~30,000名です。

推奨規模 業務フローを変更せずに勤怠管理システムを導入したい大規模企業
導入実績
  • 管理人数約6,000人の製造業
  • 管理人数約4,000人~5,000人のアミューズメント業

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Universal 勤次郎

出典:「Universal勤次郎」公式サイト

勤次郎株式会社が提供する統合人事労務ソリューションです。勤怠管理だけでなく、健康経営や人事管理までを1つのプラットフォームで実現できます。

勤怠データと健康診断・ストレスチェックデータの一元管理が可能で、大塚商会の「SMILE」などERPとの連携実績も豊富です。

三井記念病院や岐阜県教育委員会などで採用されており、健康経営を推進したい企業や基幹システムと勤怠をセットで刷新したい企業に適しています。推奨規模は300名~数千名です。

推奨規模 従業員の健康管理と勤怠管理を同時に行いたい大規模企業
導入実績
  • 株式会社大塚商会
  • 医療法人社団弘人会 中田病院
  • ファイテン株式会社

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TimeWorks

出典:「TimeWroks」公式サイト

京葉システム株式会社が提供する就業管理システムで、累計2,000社以上の導入実績があります。パラメータ設定による適合を設計思想としており、プログラム改修を伴わずに複雑な就業規則へ対応できる点が特徴です。製造業や物流業など、現場のオペレーションが複雑な業種での採用が目立ちます。

対応勤務形態は46,000パターン以上、各種届け出も1,295種に対応しており、ノンカスタマイズでも幅広い業種・業態に対応できる点が魅力です。

推奨規模 ノンカスタマイズで複雑な条件に対応させたい企業
導入実績
  • 日本精機株式会社

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皆伝!勤務管理

出典:「皆伝!勤怠管理」公式サイト

スミセイ情報システム株式会社が提供するソリューションで、国内シェアNo.1のワークフロー基盤「intra-mart」上で動作します。勤怠管理だけでなく、経費精算や人事諸届も同じプラットフォームで管理できる点が強みです。

住友生命保険や伊藤忠商事、NTNなど日本を代表する大企業での導入実績があり、数万人規模の同時アクセスにも耐えうる安定稼働を実現しています。全社の申請・承認業務を一つの基盤に集約したい情報システム部門に適しているでしょう。

推奨規模は数千名~数万名です。

推奨規模 システムの基盤を統一したい超大規模企業(従業員10,000人以上など)
導入実績
  • 住友生命保険相互会社様

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BIZWORK+

出典:「BIZWORK+」公式サイト

株式会社ウェブサーブが提供する、高コストパフォーマンスを特徴とするパッケージ型勤怠管理システムです。従業員数が増えてもライセンス料が変わらない定額制のプランがあり、クラウド型の従量課金が割高に感じる中堅企業に適しています。

iPadをタイムレコーダーとして活用する機能や、出勤打刻と同時に弁当発注ができる機能など、現場で喜ばれるユニークな機能を備えている点が特徴です。推奨規模は300名~2,000名です。

推奨規模 コスト重視の中堅企業(数百人規模)
導入実績
  • 学校法人 三幸学園
  • ピジョンマニュファクチャリング茨城株式会社
  • 株式会社サクセス

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i勤怠

出典:「i」勤怠(オンプレミス)」公式サイト

株式会社サースフォースが提供する勤怠管理システムで、クラウドの使い勝手をそのままオンプレミス環境で利用できます。

勤怠情報を高いセキュリティ下で管理したい場合のほかに、インターネットの回線帯域に制限がある企業にもおすすめの選択肢です。またスマホ対応などのカスタマイズにも柔軟に対応できるため、クラウド型からオンプレミス型に勤怠管理システムを移行したいと考えている企業におすすめです。

推奨規模 柔軟性を重視し、自社にとって最も使いやすい勤怠管理システムを必要としている企業
導入実績

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勤労の獅子

出典:「勤労の獅子」公式サイト

エス・エー・エス株式会社が提供する勤怠管理システムで、16万通りのシフトパターンに対応できる点が最大の特徴です。病院やホテル、介護施設など、シフト管理が業務の核となる業種に向けて機能が強化されています。

1ヶ月単位や1年単位の変形労働時間制にも完全対応しており、導入後も専任の担当者がつくサポート体制を備えています。

日本テトラパックなどで採用されており、他社製品では運用が難しい複雑なシフトを持つ企業に適しています。推奨規模は300名~3,000名です。

推奨規模 病院・ホテル・介護施設など、シフト管理が煩雑になりやすい企業
導入実績
  • 株式会社ボックス・ワン
  • 株式会社マルー
  • 認定NPO法人ほっとサポートてんとうむし

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らくちん勤怠管理

出典:「らくちん勤怠管理」公式サイト

株式会社ヨドックが提供する、わかりやすさと手軽さを前面に出したシステムです。指紋認証などの生体認証デバイスとの連携に強く、不正打刻の防止を重視する現場ニーズに応えています。

価格体系がシンプルでコストパフォーマンスが高い点が特徴です。大手製品では予算が合わない中小・中堅企業に適しています。

飲食業の多店舗展開や自動車部品製造の工場などで導入されており、必要な機能に絞ったカスタマイズも可能となっています。推奨規模は100名~500名程度です。

推奨規模 低価格で不正打刻がされにくいオンプレミス型勤怠管理を必要としている企業
導入実績
  • 従業員規模100人~500人の飲食関連業
  • 従業員規模500人以上の自動車関連部品製造業
  • 従業員規模100人~500人の病院

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オンプレミス型勤怠管理システムとクラウド型・パッケージ型の違い

電子契約システム

オンプレミス型は「カスタマイズ性に優れている」「初期費用が高い」「システム連携がしやすい」といった特徴があり、クラウド型は「汎用的な仕様」「初期費用が安い」「連携できるシステムが限られている」点が特徴です。また、これ以外に買い切り型となるパッケージソフトもあります。それぞれの比較を見ていきましょう。

比較ポイント オンプレミス型 クラウド型 パッケージ型
従業員数の目安 1,000人以上 1,000人未満 50人~2,000人程度
初期費用 30万~150万円程度 0~数万円程度 30万~150万円程度
ランニングコスト サーバー運用・保守等 月額100~500円/人程度 パッケージ代金・保守
導入までの期間 3ヶ月以上 すぐ 1ヶ月~3ヶ月
カスタマイズ性 高い 低い 低い
他システムとの連携性 高い 製品同士の相性を確認する必要がある 製品同士の相性を確認する必要がある
勘定科目 消耗品費または無形固定資産 通信費または支払手数料 消耗品費

オンプレミス型の勤怠管理システムのメリット

オンプレミス型勤怠管理システムは、セキュリティや機能性、費用面にこだわりがある企業におすすめです。

具体的には以下のメリットがあります。

堅牢なセキュリティ:機密性の高い勤怠情報を自社内で鉄壁ガード

オンプレミス型を選択する最大の、そして最も説得力のある理由は、その堅牢なセキュリティにあります。従業員の出退勤時刻、時間外労働時間、休暇取得状況、さらには給与計算に直結するデータは、個人情報の中でも特に機密性が高い情報です。これらの情報を、たとえセキュリティ対策が施されているとはいえ、外部のサーバーに預けるクラウド型の運用モデルそのものに、リスクを許容できないと判断する企業は少なくありません。

厳格な社内セキュリティポリシーや、プライバシーマーク(Pマーク)、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証基準を遵守する上で、自社のファイアウォール内でデータを完全にコントロールできるオンプレミス環境は、絶大な安心感をもたらします。特に、金融機関や医療機関、あるいは重要な社会インフラを担う企業、顧客からの信頼が事業の根幹をなす企業にとって、この「データの主権」を自社内に保持することは、妥協できない絶対条件です。

この選択の背景には、単に外部からのサイバー攻撃を防ぐという視点だけではなく、より深い考慮が存在します。それは、監査対応の容易さと説明責任の明確化です。オンプレミス環境であれば、監査法人や監督官庁に対して、「データがどこにあり、誰がアクセスでき、どのように管理されているか」を明確かつ迅速に提示できます。データの保管場所が物理的に自社内にあるため、データが国外のサーバーに保管されるといった懸念もありません。

複雑な就業規則への完全対応:独自の勤務形態に合わせる究極のカスタマイズ性

日本の大企業には、長年の歴史の中で培われた労働協約や現場の慣習によって形成された、極めて複雑で独自の就業規則が存在します。これは、標準化されたパッケージ製品では対応が困難な「自社ならではの壁」として、システム導入担当者の前に立ちはだかります。

例えば、Tomasの導入事例に見られる製造業では、工場が365日24時間稼働し、2交替・3交替の複雑なローテーション勤務が組まれています。また、同社のレジャー・アミューズメント業の事例では、正社員、契約社員、多数のアルバイトといった多様な雇用形態が混在し、職種や事業所ごとに賃金形態が異なり、さらにはコンサートなどのイベント開催時には特別勤務が発生するなど、その管理は複雑を極めます。

このような、

  • 24時間体制の交替勤務における、日またぎ勤務や特殊な休憩時間の計算
  • フレックスタイム制や変形労働時間制における、時間外労働の複雑な集計ロジック
  • 特定の作業や時間帯に発生する、多種多様な手当の自動計算
  • アルバイト・パートの時給、日給、歩合給といった、雇用形態ごとの賃金計算

といった要件に、汎用的なクラウドシステムの標準機能だけで完全に対応するのは、極めて困難な場合があります。多くの場合、企業側がシステムに合わせて業務プロセスを変更することを求められますが、長年かけて築き上げられた労使間の合意や現場のオペレーションを、システム導入のために変更することは現実的ではありません。

ここに、オンプレミス型の真価があります。オンプレミス型は、自社の要件に合わせてシステムを構築・カスタマイズできる柔軟性が最大の強みです。「JUST FITな勤怠管理システム」を掲げるTomasのように、企業の業種業態に合わせて柔軟なカスタマイズを提供することで、100%の要件適合率を目指すことが可能です。この「システムを自社に合わせる」アプローチこそが、複雑な課題を抱える大企業にとって、プロジェクトを成功に導く鍵となるのです。

長期利用に最適:大規模利用での長期的なコストメリットがある

「オンプレミスは初期費用が高い」というイメージは確かに事実です。しかし、企業のIT投資は、短期的な導入コストだけでなく、長期的な視点でのTCO(Total Cost of Ownership:総所有コスト)で評価されるべきです。

クラウド型勤怠管理システムは、初期費用が低く抑えられる一方で、その多くは従業員数に応じた月額課金制(サブスクリプションモデル)を採用しています。従業員数が数十名規模であれば、このモデルは非常に魅力的です。しかし、従業員数が数百名、数千名、あるいは1万人を超える大企業の場合、この月額費用は5年、10年という長期スパンで見ると、雪だるま式に膨れ上がっていきます。

一方、オンプレミス型は、導入時にサーバー費用、ソフトウェアライセンス費用、構築費用といったまとまった初期投資が必要となります。しかし、一度システムを導入してしまえば、月々のランニングコストは、システムの保守費用のみとなるのが一般的です。たとえばBIZWORK+の料金体系では、「従業員数が300名を超える企業にはビズワークプラスが最適」とし、長期的に見ると数百万円以上のコスト削減につながる可能性があると示唆しています。

具体的なシミュレーションを考えてみましょう。仮に従業員1,000名の企業が、1人あたり月額300円のクラウドサービスを利用する場合、年間の利用料は360万円になります。5年間では1,800万円です。対してオンプレミス型で初期導入に2,000万円かかったとしても、年間の保守費用が例えば10%の200万円であれば、5年間のTCOは3,000万円(初期2,000万+保守1,000万)となります。この例ではクラウドが有利に見えますが、もしクラウドの単価が500円であったり、オンプレミスの保守料率が低かったり、利用期間が10年になったりすると、コストの優位性は逆転します。

このように、従業員規模と利用期間が大きくなればなるほど、オンプレミス型の経済的合理性は増していきます。大規模利用を前提とする企業にとって、オンプレミス型は長期的な視点に立った、賢明な財務戦略となり得るのです。

既存システムとの確実な連携性:人事給与システムとのシームレスな統合

勤怠管理システムは、それ単体で業務が完結するものではありません。その真価は、人事給与システムや会計システム、ERP(統合基幹業務システム)といった企業の基幹システムと連携して初めて発揮されます。勤怠データは、給与計算の基礎となる最も重要なインプットであり、この連携がスムーズに行えるかどうかは、システム選定における最重要課題の一つです。

特に、長年にわたって独自のカスタマイズを重ねてきたメインフレームやオフコンの給与システム、あるいは特定のERPパッケージを全社標準として運用している大企業にとって、勤怠管理システム側が既存のシステムに柔軟に合わせられるかどうかは、プロジェクトの成否を分けます。

クラウド型の場合、連携は主にAPI(Application Programming Interface)を介して行われますが、提供されているAPIで自社の要件が満たせない場合、対応は困難です。一方、オンプレミス型は、自社のシステム環境に合わせて連携部分を個別に開発・調整することが比較的容易です。これにより、既存システムとの確実かつシームレスなデータ連携を実現し、手作業によるデータ転記や二重入力といった非効率な業務を排除できます。

TimePro-VGとZeeM人事給与、TimeWorksとGeneralist のように、特定の人事給与システムとの強力な連携を公式に謳っている製品は、導入担当者にとって大きな安心材料となります。また、BIZWORK+と給与奉行クラウドのように、勤怠データを自動連携することで給与計算の負担を大幅に軽減できるソリューションも存在します。既存のIT資産を最大限に活用し、業務全体の効率化を図る上で、オンプレミス型の柔軟な連携性は大きな武器となるのです。

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オンプレミス型勤怠管理システムのデメリット

オンプレミス型勤怠管理システムには以下2点のデメリットがあります。

導入コストが高い:費用と開発期間が必要

オンプレミス型勤怠管理システムは、決められた製品を納品するのではなく、1社ごとに要件を定義し、最適なソリューションを構築してシステムを提供します。

そのため、要件定義や開発に時間と費用がかかる傾向にあります。また1つ1つがカスタマイズされた自社専用のシステムとなるため、正確な料金を知るためには見積もりが必須である点に注意してください。

運用コストがかかる:保守点検の人件費などに要注意

オンプレミス型は、自社でサーバーやネットワーク機器を保有・管理するため、運用開始後も継続的なコストが発生します。具体的には、サーバーの電気代や設置スペースの確保費用に加え、定期的なシステム更新やセキュリティ対策、データのバックアップ作業などが必須となります。

また、トラブル発生時の対応も自社で行う必要があるため、専門知識を持ったシステム担当者の配置が欠かせません。そのため、システムそのものの維持費だけでなく、運用を担う人材の採用や教育にかかる人件費も考慮に入れておく必要があります。長期的な運用体制を維持できるか、事前の検討が重要です。

オンプレミス型勤怠管理システムの導入手順

オンプレミス型勤怠システムを導入するときは、良い製品を選べば終了するわけではありません。具体的な導入手順・流れについて解説します。

オンプレミス型勤怠管理システムの導入プロジェクトは、単に「良い製品を選ぶ」だけで成功するわけではありません。ここではプロジェクト全体を俯瞰し、着実にゴールへと前進するための具体的な行動計画(ロードマップ)を提示します。

① 情報収集をしどのシステムにするか比較検討

まずは自社が抱える勤怠管理上の課題(複雑な就業規則、セキュリティ要件、既存システムとの連携など)を改めて整理・言語化します。

その上で、本記事で紹介した製品情報や、各ベンダーの公式サイトなどを参考に、自社の課題を解決してくれそうな候補製品を3~4社程度に絞り込みます。この段階では、完璧な選定を目指す必要はありません。「話を聞いてみる価値がありそうだ」というレベルで候補をリストアップすることが目的です。

② 要件定義と提案依頼書を作成

プロジェクトの成否を分ける最も重要なフェーズです。人事・総務部門だけでなく、経理部門、情報システム部門、そして実際にシステムを利用する各事業部門の現場担当者へ丁寧にヒアリングを行い、新システムに求める要件を洗い出します

その際、「絶対に満たさなければならない必須要件」と「できれば実現したい希望要件」にレベル分けして整理することが重要です。この要件定義書を基に、各ベンダーから公平かつ比較可能な提案を引き出すための「RFP(提案依頼書)」を作成し、フェーズ1でリストアップした候補ベンダーに送付します。

③ ベンダーを選定しデモンストレーションを受ける

各ベンダーから提出されたRFPへの回答(提案書)と見積もりを、事前に定めた評価基準に沿って客観的に評価します。評価の高いベンダー2~3社に絞り込み、製品デモンストレーションを依頼します。このデモが、ベンダーの対応力を見極める絶好の機会です。

単に標準機能の説明を受けるだけでなく、「自社で最も複雑な勤務パターンの従業員の勤怠データを、実際にこの場で計算して見せてほしい」といった、具体的なリクエストをぶつけてみましょう。これにより、製品の真の対応力や、担当者のスキルレベルを測ることができます。

④ システムを構築しカスタマイズする

最終的に1社にベンダーを選定し、契約を締結します。ここから、実際のシステム構築が始まります。フェーズ2で作成した要件定義書に基づき、ベンダーのエンジニアと詳細な仕様を詰め、システムのパラメータ設定や、必要に応じたカスタマイズ開発を進めます。

このフェーズでは、ベンダー任せにせず、週次などの定例会を設けて進捗状況を密に確認し、認識の齟齬がないかを常にチェックするプロジェクトマネジメントが不可欠です。

⑤ 既存システムからデータを移行しテスト運用をする

新システムの本稼働に向けて、既存の勤怠管理システムや人事システムから、従業員マスタや過去の勤怠データを移行します。このデータ移行は、想定外のトラブルが発生しやすい工程のため、慎重な計画と検証が必要です。

データ移行が完了したら、いきなり全社展開するのではなく、まずは特定の部署や拠点をパイロットグループとして選定し、テスト運用を開始します。このテスト運用を通じて、勤怠計算結果の正確性、システムの操作性、パフォーマンスなどを徹底的に検証し、問題点を洗い出して本稼働前にすべて解消しておきましょう。

⑥ 本格的に運用しシステムの保守をする

テスト運用で発見された問題をすべて解決し、利用者向けのマニュアル作成や研修を終えたら、いよいよ全社での本稼働を迎えます。稼働開始直後は、操作方法に関する問い合わせがヘルプデスクに殺到することが予想されるため、ベンダーと連携して手厚いサポート体制を敷いておくことが重要です。

無事に安定稼働の軌道に乗った後は、日常的な運用保守フェーズへと移行します。これには、定期的なサーバーメンテナンス、法改正に伴うシステムのアップデート、新たな人事制度への対応などが含まれます。

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自社の要件に最適なオンプレミス型勤怠管理システムで盤石な労務管理基盤を

若いビジネスウーマン

本記事では具体的な製品選定の評価軸、そして主要9製品の徹底比較、さらには導入を成功に導くためのロードマップまで、包括的に解説しました。

改めて強調したいのは、大企業が直面する、譲れないセキュリティ要件、極めて複雑な就業規則、そして長期的な視点でのTCO(総所有コスト)といった課題に対し、オンプレミス型を選択することは、決して時代遅れではなく、依然として非常に有効かつ賢明な戦略的判断であるという事実です。

自社の最優先課題は何かを明確にし、比較表を参考に候補を絞り込み、まずはベンダーへの問い合わせやRFPの作成といった、具体的なアクションを起こしてみてください。

最適な勤怠管理システムの導入は、単なる業務効率化に留まりません。それは、従業員が公正に評価され、安心して働ける環境を整備し、企業のコンプライアンスを遵守し、ひいては企業の持続的な成長と競争力を支える、盤石な労務管理基盤そのものを築くことに繋がります。まずは製品選びから、その一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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