「株式投資にかかる配当金の税金ってどうなるのだろう」「確定申告すれば税金が戻ってくるって本当?」などの疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
最近はパソコンはもちろんスマホからの取引など、サラリーマンでも気軽に株式投資ができる時代です。
配当金の確定申告で税金がいくら戻るのかを左右する「配当控除」について、お得になるケースや注意点などをわかりやすく解説します。
配当控除とはどんな控除?
配当金の収入を確定申告すると受けられる税額控除です。配当金には所得税と法人税が二重で課せられているため、確定申告することでこの二重課税を調整できます。
どんな人なら配当控除でお得になる?
課税総所得額が900万円以下であれば配当控除の利用でお得になります。「所得税は総合課税」「住民税は申告不要」で確定申告すると税額が下がります。
この記事を監修した税理士
風間公認会計士事務所 - 東京都品川区南品川
配当控除とは
配当控除とは、配当金の確定申告時に適用できる税額控除のことです。
生命保険料控除や社会保険料控除などの所得控除とは異なり、所得税額から直接控除できる「税額控除」なので、配当控除には高い節税効果があります。
配当控除は二重課税を調整するためにある
配当控除が設けられている理由は、税金が二重に課税されることを調整するためです。
通常、国内株式における配当金は法人の確定申告後のお金が原資となっています。そのため、個人が受ける配当金は法人税が課税されたあとのお金です。この配当金に、源泉徴収によって所得税がそのまま課税されてしまうと、結果として法人税と所得税の2つが課税されていることになります。
この法人税と所得税の二重課税を調整するために配当控除が設けられているのです。
「総合課税」で申告した場合のみ適用される
配当金の収入を確定申告する場合「総合課税」か「分離課税」のいずれかの計算方法で所得計算しなければなりません。
このうち「総合課税」で申告した場合に、配当控除が適用されます。総合課税とは、1年間のすべての所得を合計して税額を計算する方法のことです。
一方「申告分離課税」とは他の所得と合算しない代わりに、上場株式などの損失との損益通算ができる制度で、配当控除は適用されません。
配当控除は年末調整で申請できない
配当控除を適用する場合には、必ず確定申告を行なう必要があります。会社員など給与所得者の場合、会社の年末調整で所得税の納税手続きまで行なわれますが、配当控除は年末調整で適用できません。
年末調整はあくまでも給与所得に関する申告手続きです。配当所得のような給与以外の所得がある場合や、給与とは関係のない配当控除といった特殊な控除を適用したい場合は確定申告が必要です。
配当控除の税率は課税所得金額によって異なる
配当控除の税率は「配当所得を含む課税所得金額」によって異なります。課税所得とは「所得から所得控除額を引いた金額」です。
【配当控除税率表】
課税総所得金額
(配当含む) |
所得税
配当控除税率 |
住民税
配当控除税率 |
1,000万円以下 | 10% | 2.8% |
1,000万円超 | 5% | 1.4% |
【有利】課税総所得額が900万円以下の人
配当金を受け取る際は所得税が一定の税率で源泉徴収されています。税金をすでに納めているため、確定申告は行わなくても問題ありません。
確定申告をおこなうかどうかの判断については、次の2点を比較することが重要です。
- 確定申告しない状態(前線徴収のみ)で税率がいくらであるか
- 確定申告した状態で税率がいくらであるか
結論からいうと、配当金を含む課税総所得額が900万円以下の場合は、配当控除を活用して確定申告した方が有利です。具体的な税率を確認しながら、どのくらい有利になるのか、また確定申告時に注意したいことを見ていきましょう。
課税総所得額別の税率シミュレーション
以下の3つのパターンに分けてそれぞれの税率を見ていくと、課税総所得額が900万円以下の場合にお得になることがわかります。
|
【課税総所得額別の税率】
課税総所得額 | パターン1 (確定申告しない) |
パターン2 (住民税・所得税ともに総合課税) |
パターン3 (所得税は総合課税、住民税は申告無し) |
~330万円 | 20% | 7.2% | 5% |
~695万円 | 20% | 17.2% | 15% |
~900万円 | 20% | 20.2% | 18% |
~1,000万円 | 20% | 30.2% | 28% |
~1,800万円 | 20% | 36.6% | 33% |
※源泉徴収税率は、一般的な所得税15.315%・住民税5%を参考に計算しています。非上場株式または大口株主の場合、所得税20.42%住民税0%となり、必ず確定申告が必要です。
太字の箇所が、確定申告しない場合の20%(正確には20.315%)より税額が低いパターンです。
このように課税総所得額は900万円以下の場合は、総合課税で確定申告をして、住民税申告不要制度を活用することで税額を低く抑えられます。
そして900万円を超える場合は所得税・住民税ともに申告しないパターンが最も有利な組み合わせとなります。
住民税・所得税ともに総合課税にする場合には注意が必要
上記の表によると、695万円以下であれば、住民税・所得税ともに総合課税でも20%より低い税率です。
ただし確定申告は所得税だけでなく、住民税や国民健康保険税の税額にも影響を与えます。配当金を確定申告した結果、還付される金額よりも国民健康保険料が多くなってしまう例がある点に注意が必要です。
住民税や国民健康保険料は、前年の1月~12月の総所得金額によって決まります。
総合課税制度は1年間のすべての所得を合計する仕組みであるため、住民税においても総合課税制度を選択すると、配当金を含めた総所得金額が住民税や国民健康保険料の決定に適用されてしまうのです。
住民税は申告不要制度を利用すればデメリットなし
このように住民税と国民健康保険料が多くなってしまうデメリットは、住民税の「申告不要制度」を活用すれば解消可能です。
例えば次のように、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できます。
- 所得税の計算では配当金を含めて確定申告を行ない、配当控除などを受ける
- 住民税の計算では申告不要制度を適用し、収入金額を最低額に抑える
住民税の申告不要制度はこれまでも存在した制度ですが、従来では確定申告書を税務署に提出後、所定の文言を記載した住民税の申告書を市区町村へ提出する必要があり、納税者にとって手続きが面倒でした。
しかし令和3年(2021年)分の確定申告からは、所得税の確定申告書に「住民税の申告不要制度に関する適用の有無」を記載する欄が設けられ、手続きも簡単になっています。
手続きの際は確定申告書第二表「住民税・事業税に関する事項」の「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄に○を記入しましょう。
配当控除でいくら戻る?還付金額を計算
配当控除の計算のやり方や流れについて、もう少々具体的に解説します。
所得税・住民税それぞれの税率と、課税所得額700万円の場合を例に、何円還付されるのかを見ていきましょう。
配当控除を加味した税率【所得税・住民税】
【所得税の税率表】
配当控除を考慮したうえで、確定申告しない場合と確定申告する場合の所得税率は以下です。
課税所得 | 申告しない場合 | 申告する場合 ※配当控除を考慮 |
||
超 | 以下 | 源泉徴収税率 | 総合課税 | 申告分離課税 |
195万円 | 15.315% | 0% | 15.315% | |
195万円 | 330万円 | 15.315% | 0% | 15.315% |
330万円 | 695万円 | 15.315% | 10.210% | 15.315% |
695万円 | 900万円 | 15.315% | 13.273% | 15.315% |
900万円 | 1,000万円 | 15.315% | 23.483% | 15.315% |
1,000万円 | 1,800万円 | 15.315% | 28.588% | 15.315% |
1,800万円 | 4,000万円 | 15.315% | 35.735% | 15.315% |
4,000万円超 | 15.315% | 40.840% | 15.315% |
【住民税の税率表】
配当控除を考慮したうえで、確定申告しない場合と確定申告する場合の住民税率は以下です。
課税所得 | 申告しない場合 | 申告する場合 ※配当控除を考慮 |
|
源泉徴収税率 | 総合課税 | 申告分離課税 | |
1000万円以下 | 5.0% | 7.2% | 5.0% |
1000万円超 | 5.0% | 8.6% | 5.0% |
課税所得額700万円の場合の計算例【シミュレーション】
課税所得が700万円、うち配当所得が50万円である場合における税額を計算してみましょう。
50万円の配当所得の場合、源泉徴収前の額は627,471円であるためこの金額をもとに計算します。
(所得税96,097円、住民税31,374円)
確定申告しない場合(源泉徴収のみ)の源泉徴収額
所得税:627,471*15.315%=96,097円 住民税:627,471*5%=31,374円 計:127,470円 |
確定申告する場合(総合課税)の税額
所得税:627,471*13.273%=83,284円 住民税:627,471*7.2%=45,178円 計:128,462円(991円追納) |
確定申告する場合(所得税は総合課税、住民税は無申告)の税額
所得税:627,471*13.273%=83,284円 住民税:627,471*5%=31,374円 計:114,658円(12,813円還付) |
「所得税は総合課税、住民税は無申告」の場合には12,813円還付で、一番お得であることが分かりました。
「自分で計算するのは面倒だ」という方は、以下のようなシミュレーションサイトを利用しても良いでしょう。
配当控除の対象とならない配当
配当控除は原則として総合課税を選択した配当金に適用することができますが、すべての配当金が対象となるわけではありません。
【配当控除の対象とならない配当の例】
|
外国株式の配当金には適用不可
配当控除は国内株式の配当金に対する制度なので、外国株式の配当金に対しては適用できません。
なお外国株式の配当金については、外国で源泉徴収された税金を免除する制度(外国税額控除)があります。そのため、外国への投資でも税金面で不利ということはありません。
特定口座(源泉徴収あり)で配当控除を利用する場合の注意点
源泉徴収のある特定口座で配当控除を利用する場合、譲渡損失を申告する場合は配当全額を申告しなければなりません。また口座ごとに課税方法を選ばなければならない点も注意が必要です。
特定口座は確定申告の負担を減らすために非常に便利な口座ですが、いくつかの注意点を把握しておかなければ大きな損をしてしまう可能性もあります。
譲渡損失を申告する場合は、配当全額を申告する必要がある
特定口座では株式等にかかる譲渡損失を確定申告する場合、配当金額をあわせて申告する必要があります。
<株式等の譲渡益と配当金がある場合>
株式等の配当金 | 申告または、申告不要(総合課税または申告分離課税のいずれか) |
株式等の譲渡益 | 申告または、申告不要 |
配当金と譲渡益がある場合はどちらかのみの申告で問題ありません。
<株式等の譲渡損と配当金がある場合>
株式等の配当金 | 譲渡損を申告する場合は申告(総合課税または申告分離課税のいずれか) |
株式等の譲渡益 | 申告または、申告不要 |
譲渡損失が発生し翌年以降に発生する譲渡益と損益通算を行なう場合は、配当金も申告対象となります。
口座ごとに課税方法を選択しないといけない
特定口座では申告の有無を口座ごとに選択する必要があります。
配当金は「一般口座」と「特定口座」のいずれかの口座で取引する必要があり、それぞれで課税方式が異なるため注意しましょう。
【一般口座の場合】
一般口座では配当金ごとに課税方法を選択可能です。
<例>
|
【特定口座の場合】
特定口座の場合は配当金ごとに課税方法を選択することができないので、口座ごとに選択します。
<例>
|
また総合課税ではなく分離課税を選択する場合は、一般口座の場合でも配当金ごとの選択はできません。その場合は配当金のすべてが分離課税の対象になります。
投資信託の収益分配金にかかる配当控除
投資信託の収益分配金にも株式配当金と同様、配当控除があります。ただし、投資信託の配当控除率は、投資信託の内訳(組入れ比率)によって異なり、場合によっては配当控除の適用なしもあります。
簡単に言うと、国内資産への投資割合が多ければ多いほど配当控除率は上がりますが、多くても株式配当金の場合の半分となります。
【収益分配金の配当控除税率表】
外貨建資産と非株式の組入比率 | 50%以下 | 50%超75%以下 | 75%超 | |
課税総所得金額
(配当含む) |
1,000万円以下
|
所得税5% | 所得税2.5% |
控除なし
|
住民税1.4% | 住民税0.7% | |||
1,000万円超
|
所得税2.5% |
所得税1.25%・住民税0.35%
|
控除なし
|
|
住民税0.7% |
例えば、投資信託の投資内訳で外貨建資産が50%以下の場合は、課税所得額500万円で、年間10万円の分配金(源泉徴収前)を受け取った場合、所得税は10万円×5%=5,000円、住民税は10万円×1.4%=1,400円の控除が受けられます。
監修税理士からのコメント
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この記事の監修税理士
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