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総合課税とは? 分離課税との違いや計算方法をわかりやすく解説

最終更新日: 2024年06月28日

所得税の計算方法には、総合課税と分離課税の2種類があります。どちらの計算方法を使うかは所得の種類によって異なるので、税額計算を間違えないためにも所得税の仕組みを正しく理解しておくことが大切です。

この記事では総合課税の概要と分離課税との違い、また計算の仕方や、総合課税の場合に確定申告書を書く方法についてもわかりやすく紹介します。

この記事の監修税理士

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

総合課税の概要と対象の所得

総合課税の概要と対象の所得
総合課税の概要と対象の所得

1月1日から12月31日の1年間に得た所得には所得税がかかります。

総合課税は所得税の基本的な計算方法です。総合課税とはどのような方法か、また総合課税の対象になる所得や詳しい計算方法、総合課税にすることで得られるメリットを見ていきましょう。

総合課税とは

総合課税とは、1年間の所得をすべて合計して税額を計算する方法です。

対象となる所得をすべて合計したあと、所得控除があれば所得の合計額から差し引いて、所得税率を掛けます。

所得税の計算方法は、この総合課税が基本です。

総合課税の対象となる所得

課税対象になる所得は10種類あります。そのうち総合課税の対象になるのは山林所得と退職所得を除く次の8種類です。

  • 事業所得:営業や農業から得られる所得など
  • 不動産所得:家賃や地代、権利金、礼金など
  • 利子所得:国外で支払われる預金等の利子など
  • 配当所得:法人から受け取る剰余金の配当など
  • 給与所得:会社員が勤務先から得る給料、パート・アルバイトの収入、賞与など
  • 譲渡所得:ゴルフ会員権や機械などを譲渡して得られる所得など
  • 一時所得:生命保険や損害保険の一時金や満期返戻金、懸賞の賞金品、立退料など
  • 雑所得:公的年金や年金払いの保険金、原稿料や講演料など他の所得のいずれにもあたらないもの

ただし上記の所得区分に分類される所得であっても、総合課税ではなく分離課税が適用される場合もあります。例えば、土地や建物を譲渡したことによる譲渡所得は分離課税の対象です。

総合課税の計算方法

総合課税の計算式は以下です。

(総合課税の対象となる所得の合計額 − 所得控除の合計額) × 所得税率 – 控除額 = 所得税額

まず対象となる所得をすべて合計し、所得控除があればそこから差し引きます。課税所得金額に応じた所得税率を乗じて納税額を求めましょう。

<所得控除とは>

「所得控除」は、納税者のさまざまな個人的事情に合わせ負担を軽減する制度です。所得税を計算する際に、所得から一定の金額を差し引きます。

基礎控除・配偶者控除・社会保険控除・医療費控除・生命保険料控除をはじめ、様々な所得控除があります。

所得控除に関しては下記の記事で解説しています。

参考:【所得控除とは?】種類と控除額の計算方法~確定申告のやり方|ミツモア

<所得税率とは>

所得税率は5%から45%の7段階に区分され、課税所得が多いほど税率が高くなる仕組みです。所得税率と控除額に関しては、下記の速算表で確認してください。

所得税の速算表
所得税の速算表 出典:No.2260 所得税の税率|国税庁

総合課税のメリット:所得税と住民税の負担を減らせることがある

所得によっては総合課税だけでなく、分離課税もしくは申告不要という方法を選ぶことが可能です。所得ごとに適切な課税方法を選択すれば、所得税と住民税の負担を減らせる可能性があります。

たとえば上場株式の配当の場合、受け取るときに所得税と住民税で20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の源泉徴収が行われるため、すでに納税は完了しています。そのため、確定申告をしないで納税を終わらせることも可能です。

ただし課税所得が900万円以下であれば、総合課税を選ぶことで累進課税制度(所得が多くなると税率が高くなる制度)が適用になり、所得税の税率が源泉徴収された15.315%よりも低くなります

一方住民税は確定申告した場合10%で、源泉徴収の5%よりも税率が高いです。そのため所得税は総合課税で確定申告し、住民税は申告不要を選択するのが一番お得な方法といえるでしょう。

課税所得が900万円を超える場合は、累進税率が源泉徴収の税率よりも高くなるため、申告不要もしくは分離課税を選択する方が納税額が低くなります。

分離課税の概要と対象所得

分離課税の概要と対象所得
分離課税の概要と対象所得

所得税の計算方法には総合課税の他に分離課税があります。課税の基本となるのは総合課税で、分離課税は例外的な方法と考えてよいでしょう。総合課税は累進税率で所得が多いほど税率が高くなるのに対し、分離課税は所得ごとに別途定められた税率が適用されます

ここでは分離課税の概要や、対象となる所得について紹介しましょう。

分離課税とは

分離課税とは、他の所得と合計せず、独自の税率を乗じて所得税を算出する計算方法です。分離課税の方式には、「源泉分離課税」と「申告分離課税」の2種類があります。

源泉分離課税

源泉分離課税とは、報酬を支払う時点で所得税を源泉徴収する方法です。特定の所得につき、他の所得とは完全に分離して所定の税率で課税され、所得から差し引かれます。

2023年(令和5年)1月現在の源泉分離課税の税率は、20.315%(所得税15.315%、住民税5%)です。たとえば1万円の利息を受け取る場合、20.315%の2,031円が差し引かれて7,969円を受け取ることになります。この源泉徴収により納税は完了し、確定申告をする必要はありません。

なお一定の割引債の償還差益については、源泉徴収税率が20.315%ではなく18.378%となります(特定のものは16.336%)。

申告分離課税

申告分離課税は、確定申告の段階で分離課税を行う方法です。申告の際に分離課税の対象になる所得を分離し、それぞれ申告する必要があります。

申告分離課税については下記の記事で詳しく解説しています。

参考:申告分離課税とは?選択すると所得税が節税できるケースも|ミツモア

分離課税の対象となる所得

分離課税の対象になるのは以下に記載する8つの所得です。同じ所得区分に分類される所得でも、内容によって総合課税が適用されるのか分離課税が適用されるのか課税方法が異なります。

  • 事業所得:事業規模で行う、株式譲渡や先物取引など
  • 利子所得:預貯金や特定公社債の利子など
  • 配当所得:上場株式の配当、公募株式等証券投資信託の収益分配など
  • 雑所得:株式譲渡の収益、FXや先物取引など
  •  譲渡所得:土地や建物、借地権、株式譲渡など
  • 一時所得:保険・共済期間が5年以下の一定の一時払養老保険や一時払損害保険など
  • 山林所得:所有期間が5年を超える山林を伐採して譲渡した場合など
  • 退職所得:退職金や一時恩給、確定給付企業年金法や確定拠出年金法による一時払の老齢給付金など

総合課税と分離課税の対象所得の違い

「事業所得」「利子所得」「譲渡所得」「雑所得」「配当所得」「一時所得」の6つの所得は、同じ所得でも総合課税と分離課税に分かれるため注意が必要です。

なお株式譲渡は事業で行った結果の収益かどうかの違いで事業所得や雑所得、譲渡所得に分類されますが、どの所得の場合でも分離課税になります。雑所得にあたるFXや先物取引による利益も、分離課税の対象です。

配当所得である株式の配当金や投資信託などの分配金は、源泉分離課税の対象となり、支払われる際に源泉徴収されています。

ただし配当所得の種類によっては総合課税にするか申告分離課税にするかを確定申告の際に選ぶことも可能です。総合課税か申告分離課税のどちらが得かを考えて選ぶとよいでしょう。

参考:所得の種類と課税方法(国税庁)

総合課税の確定申告書の書き方

確定申告書を見る女性

確定申告は所得の内容により使用する用紙が異なるため、申告する所得に合った確定申告書を用意します。確定申告書には第一表と第二表があり、順序を考えて記入することが必要です。

ここでは、総合課税で確定申告をする場合について図を見ながら説明しましょう。配当所得や譲渡所得がある場合を例にして、実際の書き方を紹介します。

確定申告書を準備する

総合課税の確定申告をする際には、まず確定申告書を用意しましょう。確定申告書はA様式・B様式の2種類ありましたが、令和5年提出分より1種類に統合されました。

給与所得者であっても、個人事業主であっても同じ確定申告書を使用しましょう。

参考:確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)

①第二表の「所得の内訳」を記入

確定申告書には第一表と第二表があり、まず第二表から記入していきます。

譲渡所得や一時所得がある場合には「総合課税の譲渡所得、一時所得に関する事項」、それ以外は「所得の内訳」に記入しましょう。

5年以上保有したゴルフ会員権の譲渡所得600,000円(必要経費100,000円)、

上場株式の配当金が100,000円(源泉徴収税額が20,315円)の場合は次のように記入します。

確定申告書第二表 株式の配当金
確定申告書の記入例

②第一表の「収入金額等」「所得金額等」を記入

確定申告書第一表 収入金額・所得金額
第一表の「収入金額等」「所得金額等」を記入

第二表に記入した「所得の内訳」「総合課税の譲渡所得、一時所得に関する事項」をもとに、第一表の「収入金額等」を記入します。

「所得金額等」には、給与所得の場合は給与所得控除を、事業所得や雑所得などの場合は必要経費を差し引いた金額を記入してください。

③第二表の控除欄を記入

確定申告書第二表 控除欄
第二表の控除に関する欄を記入

総合課税の対象になる所得から差し引く所得控除がある場合、第二表に記入します。

④第一表の「所得から差し引かれる金額」を記入

確定申告書第一表 所得から差し引かれる金額
第一表の「所得から差し引かれる金額に関する事項」を記入

第一表の「所得から差し引かれる金額」を記入

第二表に記入した内容をもとに、第一表の「所得から差し引かれる金額」を記入します。第二表での記入欄はありませんが、第一表には基礎控除の記入欄もあるため忘れずに記入しましょう。

会社員などの給与所得者で年末調整で受けた所得控除に変更がない場合、源泉徴収票の額を転記するだけでも大丈夫です。

⑤所得税額と復興特別所得税額を計算して第一表の「税額の計算」欄へ記入

確定申告書第一表 税金の計算
所得税額と復興特別所得税額を計算して第一表の「税額の計算」欄へ記入

第一表の「所得金額等」の合計額から「所得から差し引かれる金額」の合計額を引いて、「㉚課税される所得金額」の欄に記入します。「課税される所得金額」に応じた所得税率を掛けて所得税額を算出し、㉛の欄に記入します。所得税率は以下の速算表から確認可能です。

所得税の速算表
所得税の速算表 出典:No.2260 所得税の税率|国税庁

たとえば課税される所得金額が200万円だった場合、所得税率は10%、控除額は97,500円なので、所得税額は、

200万円 × 10% – 97,500円 = 102,500円

となります。この102,500円を「課税される所得金額」の下の欄に記入してください。その後、配当控除などの税額控除があれば、それらを該当する欄に記入していきます。

2037年までは、所得税だけでなく復興特別所得税の計算も必要です。復興特別所得税の税率は所得税額に対して2.1%なので、上記の102,500円に対する復興特別所得税の計算式は、

102,500円 × 2.1% = 2,152.5円

となり、端数は切り捨てた税額2,152円を「復興特別所得税額」の欄に記入してください。算出した所得税額と復興特別所得税額の合計が、給与や報酬から源泉徴収された額の合計「源泉徴収税額」よりも高ければその差額を納付し、低ければその差額の分だけ還付を受けられます。還付を受けられる場合は、その下の「還付される税金の受取場所」欄の記入も忘れないようにしましょう。

監修税理士からのコメント

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

土地建物等の譲渡所得、退職所得、山林所得が分離課税に該当します。配当所得については、総合課税と分離課税との選択が可能となるケースもあります。分離課税によって所得税を算出する際には、税理士などの専門家に相談してください。

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この記事を監修した税理士

菅野歩税理士事務所 - 宮城県仙台市宮城野区

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