ピアノ教室の先生を含め、個人事業主として働く人は確定申告を行う義務があります。
しかし申告の流れややる必要性・意味が分からないという方も少なくありません。
本記事ではピアノ教室の先生向けに、ピアノ教室の確定申告を行うメリットや手順、行わない場合のリスクなども徹底解説します。
確定申告とは?ピアノ教室もやるべき理由
「確定申告」と聞くとなにやら難しい印象を受ける方も少なくありません。実際のところ、手続きの流れを知らないとややこしく感じる計算や作業もあります。
確定申告の手順などを解説する前に、まずは確定申告とはなにか、どうして必要なのかその理由を解説します。
もし先に確定申告の手順を知りたいのであれば、「ピアノ教室の確定申告を行う手順」をクリックして手順をご確認ください。
確定申告は1年間の所得と納税額を計算する手続き
確定申告とは、1年間に得た所得と、それをもとにした納税額を計算する手続きです。日本では納税者1人ひとりが税を計算し、申告して納税する「申告納税方式」を採用しているため確定申告があります。
所得というのは売上から経費を引いた額で、ピアノ教室であれば生徒さんから受領した月謝から楽譜代など、ピアノ教室の運営に必要なお金を引いた額となります。
たとえば月謝が1万円の生徒が10人いるピアノ教室であれば、売上は1万円 × 12ヶ月 × 10人 = 140万円です。
140万円の売上から楽譜代やピアノのメンテナンス費用、文房具代などの経費を差し引いた額が「所得」です。
所得をもとに課税されるのが所得税です。会社員やパート・アルバイトといった会社から給料をもらう「給与所得者」であれば、毎月一定額が源泉徴収により差し引かれています。
ピアノ教室のように会社から給与を得ていない「個人事業主」の場合は、所得税を自分で計算して納税します。
確定申告の流れは国税庁のホームページで確認でき、毎年「確定申告特集」という特設ページが公開されます。税の情報は移り変わりが激しいので、常に最新の情報を取得するように心がけましょう。
確定申告をしないと大きなペナルティが発生する
所得税を計算した結果、「こんなに納税しないといけないの!?」と思われるかもしれません。
数万円、十数万円にも及ぶ所得税を一括で支払う金銭的な負担も大きいと感じる方もいます。
しかし確定申告をせず、納めるべき税を納付しないままでいることは脱税という犯罪です。
脱税をすると以下のペナルティが発生します。
- 無申告加算税・延滞税などが請求される
- 財産差し押さえの対象となる
- 懲役刑や罰金など刑事罰が科せられる
刑事罰を受けると俗にいう「前科もち」になり、社会的信用が大きく損なわれる原因となります。
「確定申告をしなくても大丈夫」は間違い
ピアノ教室の先生の中には「うちはそんなに生徒さんがいないから、確定申告をしなくても大丈夫」「お教室に関連することでたくさんお金を使っているから、そんなにもうけがない」と思い込んでしまっている人もいます。
確定申告が大変だからといって未申告のままにしてしまう方も少なくありませんが、納める税べきを納めていなかったら脱税となり、税務署の調査や追加徴税、さらには差し押さえなどの対象になってしまいます。
「個人でやっている小さなお教室だから、税務署の職員も分からないはず」と考えてはいけません。税務署の職員は様々な方法で情報を集めており、近年ではX(旧Twitter)やInstagramなどSNSの投稿からも脱税をしている人がいないか調査しています。
とはいえ根本にあるのは「税の公平負担」という理念です。会社員の人は毎月源泉徴収で所得税が引かれているのに、個人事業主は所得税を払っていなくても問題ない、となってしまったら誰も真面目に納税をしなくなってしまいます。
納税は国民の義務ですから、面倒に思えても必ず確定申告をして納税をしましょう。
また確定申告をすることで各種控除を受けられ、結果的に納税額が少なくなるなどのメリットもあります。
代表的な控除として、配偶者控除や社会保険料控除、医療費控除が挙げられます。これらの控除を受けるためには必要な書類があるので、確定申告の時期になる前に書類を集めておきましょう。
控除を受ける際に必要な書類について先に知りたい方は「控除を受けるための書類」をご確認ください。
確定申告が必要なピアノ教室の特徴
確定申告が必要なピアノ教室には3つの特徴があります。
以下に挙げる特徴のいずれかに当てはまったら、確定申告の準備をしましょう。
年間48万円以上の所得がある
確定申告が必要かを考えるうえで重要なのが、所得と控除です。
どれほど売上が高くても経費を差し引いて手元に残る所得が少なければ確定申告は必要ありません。
控除についても同じで、控除を活用することで納税額を少なくすることは「節税」として認められています。
確定申告が必要な個人事業主の目安は年間48万円以上の所得がある人です。48万円未満の場合は基礎控除により課税所得が0円になるので、確定申告の必要はありません。
節税か脱税か悩んだときの簡単なチェックリストを用意したのでぜひご活用ください。
月謝を手渡しで受け取っている
個人で開いているピアノ教室の場合は、月謝を先生に手渡しするケースが多いです。
銀行口座振り込みと異なり、手渡しの場合はどの生徒がいつ月謝を払ったかというデータが残りません。
すると売り上げがあるにも関わらずお金の流れが把握できなくなり、納税のチャンスが失われます。
月謝を手渡しで受け取っている教室は、月謝をいつ、誰から受け取ったかの記録をつけて確定申告を行う必要があります。
確定申告を行うことで脱税の疑いをかけられることもなくなるので、安心してピアノ教室の運営ができます。
生徒の数が多い
生徒の数が多いとその分売上も高くなるので税務署の目に留まりやすくなります。
多くの生徒が通っているのに確定申告をしていないのはとても不自然に映るので、税務調査が行われる確率も高いでしょう。
調査の対象となる前に確定申告をしておくことで、堂々とピアノ教室運営を行えます。
ピアノ教室が確定申告をする3つのメリット
ピアノ教室が確定申告をすることには3つのメリットがあります。
ただしい額の納税を行える
確定申告を行わないことによる最も大きなリスクは脱税状態になることです。
脱税をすると刑事罰を受けるなど社会的信用が落ちてしまい、ピアノ教室を続けられなくなる可能性もあります。
確定申告を行えば所得に応じた正しい税額の納付ができるため、「税務調査が来るかも…」などの不安を抱えることなくピアノ教室を運営できます。
また確定申告というと「申告したら多額の税金を納めるもの」と考えている方も少なくありませんが、実際には控除が適用されて思っているよりも少ない納税額になることも珍しくありません。
納税額がないことを確定できる
所得が48万円未満で本来は確定申告の義務がない場合でも、確定申告を行うことにはメリットがあります。
確定申告の目的は税務署に今年1年間の所得と所得税がいくらになるかを申告することです。仮に課税所得がなく、納税額が0円だった場合は0円であると申告することで「脱税はしていません」と報告することになります。
控除を適用して節税ができる
確定申告で申請することで各種控除が適用され、節税ができます。
確定申告で申告する対象の控除は以下の15項目です。
- 基礎控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄附金控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- ひとり親控除
- 寡婦控除
- 勤労学生控除
- 障害者控除
- 雑損控除
このうち、「配偶者控除」「社会保険料控除」「医療費控除」はピアノ教室の先生でも控除の対象になることが多いので、詳しく解説します。
配偶者控除とは?
配偶者控除とは法的に結婚している場合に受けられる控除のことです。内縁状態では受けられないので注意が必要です。
配偶者控除の対象となるのは女性(妻)側であるケースが多いため、以下は妻がピアノ教室の先生として解説します。
配偶者控除を受けるのは納税者、つまり夫です。夫に配偶者控除を適用させるためにはピアノ教室での売上を計算する必要があります。
納税者(夫)の合計所得額 | 控除される額 |
---|---|
900万円以下 | 38万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 |
納税者(夫)の合計所得額が1,000万円を超えると配偶者控除は適用されないので注意が必要です。
配偶者控除に関するよくある疑問や計算方法について、関連記事でも詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
社会保険料控除とは?
社会保険料とは納税者が自分や自分と家計が同じ家族の社会保険料を支払ったときに受けられる控除です。
配偶者控除と同じく、ピアノの先生本人ではなく夫が利用できる控除です。
控除できる金額は、その年に実際に支払った保険料の全額あるいは給与・公的年金から差し引かれた金額の全額です。控除額が大きいため確定申告の際には必ず適用したい控除です。
ここで重要なことは、夫(納税者)に控除を受けてもらうためにはピアノ教室の先生である妻も確定申告が必要という点です。
夫婦間の確定申告の申告内容に大きな矛盾が発見された場合は税務調査の対象となるので、「控除を受けさせるために過少申告しよう」などとは考えないようにしましょう。
医療費控除とは?
医療費控除とは、1年間のうちに10万円以上の医療費を支払った人・世帯が対象となる控除です。
確定申告で申告することで控除が適用されるので、医療費として支払った額のいくらかが還付金として返還されます。
医療費控除で返ってくる還付金は以下の計算式で求められます。
還付金を求めるためには「医療費控除対象額」と「所得税率」を知らなければならないので解説します。
医療費控除対象額とは、医療費の合計や保険金や給付金、所得金額に応じた控除額を差し引いたあとに残る金額のことです。
所得額に応じた控除額は、所得が200万円以上か200万円未満かによって変わります。
所得金額 | 控除額 |
---|---|
200万円以上 | 10万円 |
200万円未満 | 所得額の5% |
たとえば所得額が180万円で保険金・給付金は0円、1年で支払った医療費の合計が20万円だった場合、医療費控除対象額は以下のように求められます。
ここで求めた医療費控除対象額に所得額に応じた税率をかけます。所得が180万円の場合の税率は5%です。
所得税の税率は所得の額によって変わるので、自分の所得税率がいくらかは国税庁のホームページでチェックしましょう。
ピアノ教室が確定申告をしない2つのリスク
ピアノ教室が確定申告をしないことには2つの大きなリスクがあります。
脱税となり多額の追加徴税が必要となる
確定申告をしないことで考えられる1つ目のリスクは、脱税状態となり多額の追加徴税を加算されることです。
確定申告をしていないことが原因で加算される「加算税」の税率は申告するタイミングによって変動します。
申告するタイミング | 税率 |
---|---|
税務署からの調査通知の前 | 5% |
税務署からの調査通知の後 | 10% |
税務署からの調査を受けた後 | 15% |
税務署から「税務調査を行います」と通知される前に気づいて確定申告をすれば、加算税の税率は5%ですみます。
ただし「税務調査を行います」と通知されてから確定申告をした場合は加算税の税率は10%になってしまうので注意が必要です。
税務調査後に確定申告をした場合は15%もの税率になってしまうため、たとえ面倒に思えたとしても確定申告は早めに終わらせておくことを推奨します。
さらに加算税のほかにも延滞税がかかります。延滞税は納税の期日の翌日から税をすべて納めた日までの日数に応じた額が加算されるので、完納まで時間がかかればかかるほど多くの延滞税が課せられます。
税務調査が行われ差し押さえなどが行われる
確定申告をしないことで考えられる2つ目のリスクが、税務調査が行われ資産の差し押さえなどが行われることです。
初回の税務調査で差し押さえまで行われることは多くありませんが、意図的に無申告でいるなど悪質性が高い場合や税の未納額が大きい場合は差し押さえまで発展するケースが多いです。
資産が差し押さえられると自分の意志では処分・換金などが行えなくなります。差し押さえられた資産は競売にかけられて手元を離れてしまうので、ピアノ教室を続けられなくなる可能性が高いといえます。
ピアノ教室の確定申告で必要な書類
ピアノ教室の確定進行で必要な書類は以下の6種類です。
開業届
ピアノ教室を開いた年から青色申告をするのであれば、開業届を税務署に提出し、青色申告承認申請書を提出します。
開業届はピアノ教室を開いた日から1か月以内に提出するように決められています。
ただし提出できなかったとしても罰則はないので教室を開いてからしばらく経過してから提出しても問題ありません。
開業届はe-Taxでも作成・提出ができます。自宅で手続きが完結するので、手間が少なくおすすめです。
開業届を提出するときに、青色申告承認申請書と消費税に関する課税事業者選択届出書の提出有無について答える欄があります。
青色申告承認申請書を提出すると青色申告ができるようになり、節税効果の高い申告ができます。所得が多いのであれば青色申告がおすすめですが、ピアノ教室の先生であれば節税効果が低いものの手間が少ない白色申告でも良いでしょう。
課税事業者選択届とは、消費税を納める課税事業者になるかの申請です。ピアノ教室の先生であれば消費税の課税業者になる必要性が低いので、あえて選択する必要はありません。
青色申告承認申請書
青色申告承認申請書とは、所轄の税務署に対し「青色申告での申請を希望しています」と申請するための書類です。
確定申告期間の前に提出する必要があり、青色申告承認申請書を提出していない場合は白色申告しか選べないのでご注意ください。
青色申告承認申請書は青色申告をする年の3月15日までに提出する必要があります。
本人確認書類
確定申告をするときはマイナンバー(個人番号)が必要です。本人確認書類はマイナンバーをチェックできるものを必ず用意しましょう。
マイナンバーカード
納税時にもっとも手軽な本人確認書類はマイナンバーカードです。
マイナンバーカードは顔写真付きで、裏面にマイナンバー(個人番号)が記載されています。
マイナンバーカードを持参すれば、窓口での提出時も持参したマイナンバーカードだけで本人確認とマイナンバー(個人番号)の確認が完了します。
マイナンバー記載住民票 + 運転免許証 など
マイナンバーカードを所持していない場合は、マイナンバーを記載した住民票にくわえ、ほかの本人確認書類で代替できます。
おすすめの組み合わせはマイナンバー記載住民票と運転免許証です。運転免許証は顔写真付きの身分証明書なので、本人確認もスムーズに進みます。
帳簿
確定申告で使う「帳簿」とは、お金の出入りを記録した書類のことです。
ピアノ教室の先生であれば、収入は生徒さんから受け取った月謝、支出はレッスンに使う楽譜やピアノのメンテナンス・調律費、そのほかにも文房具の購入費などが挙げられます。
青色申告で使う帳簿の付け方には一定のルールがあり、ルールを守っていない場合は帳簿として認められません。
帳簿の管理は無料で配布されているテンプレートを使うと手軽に行えます。表計算ソフトのExcel(エクセル)を販売しているマイクロソフト社もテンプレートを配布しているので、エクセルが使えるのであればダウンロードして使ってみると良いでしょう。
関連記事では青色申告で使う帳簿の付け方について詳細に解説しています。あわせてチェックしてください。
青色申告決算書
青色申告決算書とは、1年間にいくらの収入と支出があるかをまとめた書類のことです。
帳簿をもとに作成する書類で、こちらはフォーマットが決まっています。
印刷して手書きで作成することも可能ですが、「確定申告書等作成コーナー」を利用してオンライン上で作成することもできます。
「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、自動で計算してもらえるので所得税の計算間違いがないのも嬉しいポイントです。
控除を受けるための書類
確定申告で控除を受けるのであれば、控除を受けるために必要な書類を準備しましょう。
今回は控除の対象者が多い3つの控除で必要な書類を解説します。
配偶者控除を受ける場合
配偶者控除および配偶者特別控除を受けるときに用意する書類はありません。婚姻届を提出し、法律上の配偶者であることが認められていれば配偶者控除や配偶者特別控除が適用できます。
配偶者控除の適用方法は以下の通りです。
-
- 確定申告の申告書を用意する
-
- 「所得から差し引かれる金額」21,22番の「配偶者控除」に控除される額を記載する
控除される額は以下の表をご確認ください。
納税者(夫)の合計所得額 | 控除される額 |
---|---|
900万円以下 | 38万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 |
社会保険料控除を受ける場合
社会保険料控除を適用する場合、納税者(夫)が会社員(給与所得者)であれば年末調整の際に控除の適用作業が完了します。
納税者(夫)も個人事業主の場合は、支払った国民年金や国民健康保険などの社会保険料を納付した記録が必要です。
- 国民年金保険料
- 国民健康保険料
- 介護保険料
納税者本人とその配偶者、家族の分も控除の対象となるので支払いの記録はなくさないように注意しましょう。
医療費控除を受ける場合
医療費控除を適用する際に必要な書類は以下の通りです。
- 病院にかかった際の領収書・明細書
- 薬局で受け取った領収書
- 医療費のお知らせ
領収書を集めて自分で計算しても良いですが、健康保険協会に加入している場合は毎年1月10日ころから「医療費のお知らせ」が送付されます。
医療費のお知らせには1年の間に支払った医療費が全額記載されているので、総額を転記するだけで書類を作成できるため手間が省けます。
ピアノ教室の確定申告を行う手順
ピアノ教室を開業してから確定申告を行うまでの流れと手順は以下の通りです。
① 「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に提出する
個人事業主としてピアノ教室を運営する場合は、税務署に「開業届」と「青色申告承認申請書」を提出しましょう。
管轄の税務署は国税庁ホームページの「税務署の所在地などを知りたい方から確認できます。
郵便番号や自宅住所から管轄の税務署を検索できます。
② 月謝などお金のやり取りを帳簿につける
開業届と青色申告承認申請書を提出したら、事業にともなって発生したお金のやり取りを帳簿で管理します。
一定のルールを守っていれば帳簿への記載方法や頻度は大きな問題にはなりません。ただしなるべくこまめに記帳することをおすすめします。
1か月1回にまとめて記帳すると、抜け漏れが発生したり領収書を紛失したりといったトラブルが発生する可能性が高いです。
理想は毎日チェックすることですが、長くとも2週間に1度を目安に帳簿をつけましょう。
③ 確定申告の書類を作成する
国税庁は毎年1月初旬頃から、確定申告に関する特設サイトを公開し始めます。
確定申告の書類提出受付時期は毎年2月15日~3月15日ころです。
2024(令和6)年分の確定申告の受付時期は2025年2月17日~3月17日です。2025年2月15日は土曜日であるため、後ろ倒しになって2月17日(月)から確定申告書類を受け付けます。
書類作成は申告書類に直接手書きで行うほか、確定申告書等作成コーナーを活用してオンラインで作成することも可能です。
オンラインで作成した場合そのまま電子申請も可能なので、書類を提出する手間がかかりません。
④ 税務署に確定申告書類を提出する
確定申告書を作成したら税務署に提出します。提出方法は3つあります。
- 窓口に直接提出
- 郵送で提出
- e-Taxを利用した電子申請
近年はIT化が進み、電子申請を利用する人が増えています。確定申告書の作成から提出まで自宅で完結するので、忙しいピアノ教室の先生にもおすすめの方法です。
ピアノ教室の先生が「経費」にできるものの例
ピアノ教室の先生が経費にできるものや費用の例を紹介します。
ピアノ教室で使うものは「新聞図書費」や「消耗品」として計上することが多いです。
事業に関する出費であれば経費として認められるものの、そのためには客観的な証拠が必要です。
領収書などはなくさないようにしっかり管理して、帳簿にも記載することを忘れないでください。
① レッスンに利用するレッスン本や楽譜
レッスンに利用するレッスン本や楽譜などの書籍は「新聞図書費」として経費計上ができます。
購入時に領収書を受け取ることを忘れないようにしましょう。
② ジャスラックへの著作物利用料
個人のピアノ教室で支払うことはまれですが、ジャスラックが管理している楽曲を利用した場合は著作物利用料を支払います。
項目としては「リース料」「手数料」「使用料」として計上することが多いです。シンプルに「著作権使用料」として計上しても問題ありません。
③ レッスンに使う楽器のメンテナンス費用
レッスンに使う楽器の購入費やメンテナンスの費用は、音楽教室の経費として認められます。
ピアノ教室の場合はピアノの調律にかかる費用も経費として計上できます。
そのほか防音設備のメンテナンス代金も経費計上可能です。
④ 文房具などの消耗品
ピアノ教室で使っているペンやシールなどの消耗品も経費として計上できます。
幼稚園や小学生向けにレッスンを開催していると、課題曲を上手に弾けたらシールなどのご褒美を用意することもあるでしょう。
そのようなケースでも、ピアノ教室で利用しているのでシールの購入費用を経費にできます。
⑤ 発表会で着るドレスや衣装のレンタル代
生徒さんたちの発表会でドレスや特別な衣装を着る場合は、ドレスの購入費やレンタル費も経費として計算できます。
ただしクリーニング代が経費として認められることは難しいです。
経費として計上できるのはあくまで「業務に関係することがら」に限りますので、発表会用の服のクリーニングを経費計上するなら、クリーニングを行った日付から発表会前に行ったことが分かるように領収書をもらうようにしましょう。
⑥ 発表会でのヘアメイク代
生徒さんの発表会でドレスを着る場合、ドレスや衣装にあったヘアメイクをすることがほとんどです。
このヘアメイク代も業務に関係があると判断されるため、経費として計上できます。
ヘアメイクをしてもらったら領収書を受け取ることを忘れないようにしましょう。
⑦ スタジオ・発表会会場の利用料
自宅ではなく別の場所にスタジオを借りてレッスンをしている場合や、発表会の際に会場を借りて利用料を支払った場合、それらの利用料金も経費になります。
ピアノのレッスンでは難しいものの、実際にバイオリンやフルートは街中のカラオケボックスなどでレッスンをすることもあり、その際のルーム利用料は原則として経費として認められます。
時間貸しの場合は1時間あたりの単価と借りた時間、月貸しの場合は月額利用料が経費として計上可能です。
ピアノ教室の確定申告をカンタンにするための工夫
ピアノ教室の確定申告の手間を減らすための4つの工夫をご紹介します。
① 月謝の受け渡し方法を「振込」にする
月謝を手渡しで受け取っている教室では、誰がいついくら月謝を払ったかということを記録する手間が発生します。
銀行振り込みにしてもらえば振込記録が残ります。お金の行き来が明確になるので、確定申告のときにも困りません。
② ピアノ教室に関する買い物では必ず領収書をもらう
経費として計上できるものを明確化するために、ピアノ教室に関する買い物では必ず領収書をもらいましょう。
この時の注意点は、自宅で個人的に使うものとピアノ教室で使うものはわけて会計をし、領収書を発行してもらうことです。
経費として計上したいときの考え方を簡単に以下にまとめます。
購入の仕方 | 経費として計上していいか |
---|---|
ピアノ教室でだけつかうボールペンを購入する | ○ |
生徒さんに配るお菓子を購入する | ○ |
生徒さんと自分が食べるお菓子を購入する | △※生徒さんに配った分のみを経費計上する |
自宅でのみ使うペンを買う | × |
大切なのはピアノ教室でのみ使うものと自宅でのみ使うものを明確に分けることです。
「あれもこれも経費で落とそう」と考えて領収書をもらう人もいますが、経費として認められるのは事業に関係のある費用のみなので勘違いしないように注意が必要です。
③ 月に1度ピアノ教室に関するお金の流れをまとめる
毎日の収支を管理するだけでなく、月に1度ピアノ教室に関するお金の流れをまとめることも重要です。
このとき役に立つのが会計ソフトです。無料で使えるものもあるので、まずは無料のものを使ってみて、手の届かないところがあると思ったら有料のソフトを購入することをおすすめします。
会計ソフトは項目に数字を入力するだけで自動的に計算をしてくれたり、確定申告の提出時に使える書類としてまとめてくれたりなど、便利な機能が揃っています。
導入直後こそ使い勝手が悪くまごついてしまうこともありますが、慣れれば会計業務を肩代わりしてくれる頼もしい存在となります。
関連記事では会計ソフトを比較し、おすすめのソフトを紹介しています。
④ 税理士に確定申告を代わりに行ってもらう
会計ソフトを使ってみたけれど操作に慣れない、あっているのか不安という場合は、税理士に依頼することをおすすめします。
税理士に確定申告の代行を依頼すると数万円ほどの費用がかかりますが、控除による還付金や節税効果を考えるとコストパフォーマンスが高いです。
ピアノ教室を安心して経営し続けるには確定申告が必要
ピアノ教室の先生にとって確定申告は難しい課題です。しかし難しいからといって確定申告をしないままだと大きなペナルティを受ける可能性があります。
税に関するペナルティが発生するのではないかという不安を感じずにピアノ教室を経営し続けるためには確定申告を行いましょう。
確定申告について悩み事があるのなら、自力で解決するほかにも税理士に依頼する方法があります。
税理士をさがす時は複数の税理士から相見積もりを取って比較しましょう。相見積もりをとって比較することで自分に合った税理士を見つけられる可能性が高くなります。