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確定申告の障害者控除 対象となる人や必要書類、書き方を詳しく解説

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最終更新日: 2023年04月20日

確定申告(自分で行なうor税理士に代理申告してもらう)や年末調整(会社が行なう)は所得税を計算する制度です。所得税は年間の収入から経費や様々な控除を差し引いて計算されます。

その控除の一つとして「障害者控除」があります。「障害者控除」は範囲も広いため適用を受ける事ができたという事を知らなかったという人も多いのではないでしょうか?

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確定申告で障害者控除の対象となる人

確定申告で障害者控除の対象となる人
確定申告で障害者控除の対象となる人

納税者本人や扶養している家族等が所得税法上の障害者に該当する場合、確定申告時や年末調整時に必要書類に一定の情報を記載する事で所得税や住民税の「障害者控除(所得控除)」の適用を受けることできます。

また、障害者控除は「療育手帳の交付」や「要介護」の認定を受けている場合等、対象者の範囲も広く、過去に会社に申告し忘れていても確定申告をすれば遡及して「還付」を受ける事もできます。

障害者控除とは

「障害者控除」とは「所得控除」の一つで、確定申告時に障害者控除を受けるためには確定申告書に、年末調整時に障害者控除を受けるためには扶養控除等申告書に必要な情報を記載することにより税金が安くなる制度です。「所得控除」として他に代表的なものに「扶養控除」や「医療費控除」があります。

例:個人事業の方の所得税計算イメージ

収入-必要経費=所得金額

所得金額-所得控除(「障害者控除」、「扶養控除」等)=課税所得

課税所得×税率=納税額

※分かりやすく説明するため税額控除等の細かい部分は省略しています。

障害者控除の対象となる条件

本人または親族が以下のいずれかの場合に該当すれば障害者控除の対象者となります。

障害者控除の対象者
  • 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
  • 身体障害者手帳の交付を受けている人
  • 療育手帳の交付を受けている人
  • 精神上の障害により事理を弁識する能力に欠く常況にある人
  • 65歳以上で市町村長や福祉事務所長の認定を受けている人
  • 常に就床を要し、複雑な介護を受けなければいけない人
  • 戦傷病者手帳の交付を受けている人
  • 原子爆弾被爆者で厚生労働省が発行する認定書を持っている人

※療育手帳は「愛の手帳(例:東京都、横浜市)」、「みどりの手帳(例:さいたま市)」、「愛護手帳(例:青森県、名古屋市)」等の名称でも呼ばれています。

障害者控除の対象となる親族

障害者控除の対象者となる親族の範囲は以下の通りです。

障害者控除の対象となる親族
  • 納税者本人
  • 配偶者
  • 配偶者以外の扶養親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)
障害者控除の対象となる親族の注意点
  • 本人以外の場合は納税者本人と生計を一にしている必要があります。
  • 年間の合計所得金額が48万円以下であること。
     所得とは「収入-経費=所得金額」です。
    (給与のみの場合は給与収入(額面)が103万円以下)
  • 障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族にも適用されます。

※青色事業専従者給与(青色申告の場合)、事業専従者控除(白色申告の場合)の適用を受けている場合は対象外です。

障害者控除の金額

障害者控除の金額
障害者控除の金額

「障害者控除」の対象者は「障害者(一般)」、「特別障害者」、「同居特別障害者」に区分され所得税、住民税でそれぞれ控除額が定められています。確定申告書、会社に提出する扶養控除申告書等(添付書類は必要なし)の必要書類にはそれぞれの区分に応じて適切な書き方があり、その内容により金額が算出されます。

所得税・住民税の障害者控除額

障害者控除額は「障害者(一般)」、「特別障害者」、「同居特別障害者」に区分され、以下の通り控除金額が定められています。

障害者 特別障害者 同居特別障害者(※)
本人が障害者である場合の所得税における控除額 27万円 40万円
配偶者、扶養親族が障害者である場合の所得税における控除額 75万円
本人が障害者である場合の住民税における控除額 26万円 30万円
配偶者、扶養親族が障害者である場合の住民税における控除額 53万円

障害者、特別障害者の場合、本人がそれらに該当する場合と配偶者、親族がそれらに該当する場合の控除額は上記の通り同額です。同居特別障害者とは本人以外の扶養親族が特別障害者に該当する場合の制度です。同居特別障害者とは控除対象配偶者か扶養親族が特別障害者に当てはまり、かつ、本人、本人の配偶者、本人と生計を一にするその他の親族のどなたかと同居を常況としている人をいいます。

障害者(一般)と特別障害者の違い

障害者(一般)と特別障害者の違いは以下の通りです。

障害者控除の対象者 障害者 特別障害者
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人 2級、3級 1級
身体障害者手帳の交付を受けている人 3級〜6級 1級、2級
療育手帳の交付を受けている人 3度、4度

(中度、軽度)

1度、2度

(最重度、重度)

精神上の障害により事理を弁識する能力に欠く常況にある人 特別障害者に該当
65歳以上で市町村長や福祉事務所長の認定を受けている人 市町村等により障害者と認定 市町村等により特別障害者と認定
常に就床を要し、複雑な介護を受けなければいけない人 特別障害者に該当
戦傷病者手帳の交付を受けている人 右記に該当しない場合 特別項症〜第3項症
原子爆弾被爆者で厚生労働省が発行する認定書を持っている人 特別障害者に該当

本人が障害を持つ場合、住民税は非課税になる可能性あり

障害者本人の1年間の課税所得が125万円以下なら住民税は非課税になります。年収ではなくあくまで課税所得であることに注意しましょう。また、年末調整で障害者であることを記載する必要があるので記入漏れがないように注意してください。

その他で障害者本人が受けられる特例

所得税法上の障害者の対象者となると上記以外でも様々な控除が受けられます。

控除の内容 説明
相続税の障害者控除 相続人が障害者の場合、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者は20万円)が障害者控除として、相続税額から差し引かれます。
贈与税の非課税 特別障害者である特定障害者の方については6,000万円まで、特別障害者以外の特定障害者の方については3,000万円まで贈与税がかかりません。
心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の非課税  地方公共団体が条例によって実施する心身障害者扶養共済制度に基づいて支給される給付金(脱退一時金を除きます。)については、所得税はかかりません。

(給付金を受ける権利を相続や贈与によって取得したときも、相続税や贈与税は非課税)

少額貯蓄の利子等の非課税 身体障害者手帳等の交付を受けている方等が受け取る一定の預貯金等の利子等については、一定の手続を要件に非課税の適用を受けることができます。

※これらの控除の対象者は「本人」が障害者の場合です。

障害者控除の年末調整における必要書類と書き方

障害者控除の年末調整における必要書類と書き方
障害者控除の年末調整における必要書類と書き方

サラリーマン等の給与所得者(会社員)の方で年末調整しか行なっていない方(確定申告をしないor確定申告をする必要がない方)の場合は、扶養控除等申告書の障害者控除の欄に必要な情報を記載し会社に提出します(添付書類は不要です)。

会社側は年末調整時にその情報をもとに障害者控除の額を計算し適用を受ける事ができます。

年末調整に必要な書類

サラリーマン等の給与所得者が「障害者控除」を受けるためには「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に障害者である旨を記載するのみで適用を受ける事ができます。添付書類(療育手帳等のコピー等)の提出を会社から求められる場合もありますが提出は義務ではありません。

扶養控除等申告書の書き方

サラリーマン等の給与所得者が障害者控除の適用を受けるため扶養控除等申告に記載する方法を説明します。

例:扶養親族である父親が一般の障害者(身体障害者3級)、交付年月日:平成27年4月11日の場合

扶養控除等申告書の「障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生」欄、抜粋
扶養控除等申告書の「障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生」欄、抜粋
  1. 図左上の障害者にチェックを入れる
  2. 「一般の障害者」枠の扶養親族にチェックを入れ、人数を「1人」と記載
  3. 氏名、障害の内容、交付年月日を記載

※配偶者が障害者の場合には「同一生計配偶者」の欄にチェックを入れます。

扶養控除申告書の全体は以下の国税庁のリンクから確認可能です。

参考:給与所得者の扶養控除等の(異動)申告

障害者控除の確定申告における必要書類と書き方

障害者控除の確定申告における必要書類と書き方
障害者控除の確定申告における必要書類と書き方

個人事業主の方、年末調整で障害者控除の適用を受けなかった(会社にばれたくない等の理由で障害者である旨を記載しなかった等)方、年金受給者で確定申告をする必要がある方等は確定申告で障害者控除の適用を受ける事ができます。

確定申告に必要な書類

確定申告で障害者控除を受けるためには「確定申告書」に必要な情報を記載すればよく、添付書類は必要ありません。

※令和4年までは確定申告書A様式・B様式がありましたが、令和5年より一元化されました。

確定申告書の書き方

確定申告書の障害者控除の書き方を説明します。

例:扶養親族である父親(山田太郎)が特別障害者(身体障害者1級)の場合

確定申告書第一表_障害者控除
確定申告書第一表(国税庁の画像を加工)

第一表の「勤労学生、障害者控除」の欄に「400,000円」と記載(障害者控除欄以外の入力は省略しています)

確定申告書第二表_障害者控除
確定申告書第二表(国税庁の画像を加工)

第二表では、対象者が本人か、扶養家族かによって記載する場所が異なります。

今回は「扶養親族である父親(山田太郎)が特別障害者」なので、赤枠の「配偶者や親族に関する事項」欄に記入しましょう。続柄が「父」で、「特障」に〇をつけます。

本人が対象者であれば、青丸の「特別障害者」部分に〇をつけてください。「障害者」の場合は、それぞれ左の枠に〇をつけます。

確定申告書に障害者控除の対象者である旨を図の通り記載して提出すれば、その情報が市にいきますので住民税の控除額は市の方で計算してくれます。年末調整の場合も同様に扶養控除等申告書に記載して会社に提出すれば市の方で計算してくれます。

確定申告書の提出方法

確定申告書の作成が終わると税務署に申告書を提出します。

提出方法は税務署へ出向き紙で提出する方法と郵送で提出する方法の他に「e-Tax(電子申告)」で提出する方法もあります。紙で提出する場合は税務署の「受付印」、電子申告で提出する場合は「メール詳細」が申告した根拠資料になります。

「e-Tax(電子申告)」で提出する場合は、電子証明書が必要なため事前にマイナンバーカード等(ICチップが搭載されたもの)を取得しておく必要があります。

以下が「e-Tax(電子申告)」のURLです。

国税庁 確定申告書等作成コーナー|国税庁

障害者控除を申告し忘れた場合でも5年以内なら還付される

障害者控除を申告し忘れた場合でも5年以内なら還付される
障害者控除を申告し忘れた場合でも5年以内なら還付される

確定申告の義務がない方でも、年末調整時に障害者控除の申告を忘れていた場合、還付申告(遡及申告)をすることができます(個人事業主等、すでに確定申告書を提出している場合は更正の請求)。

遡及的に還付申告できる期間は、申告する年度の翌年1月1日から5年間となっており、それ以降は時効という扱いとなります。

障害者控除を申告し忘れていたら

障害者控除を申告し忘れていても過去5年間は遡及申告を行うことができます。例えば2023年に過去の申告書を提出する場合「2018年~2022年分」までの申告書を提出する事ができます。

申告する人 申告内容
過去に提出した確定申告書を修正し、税金の還付を受けようとする方 更正の請求
年末調整で障害者控除の適用を受けなかった方 還付申告

期限内申告の修正は「訂正申告」で取り扱われます。還付申告の申告書は、還付申告書という様式があるわけではなく、通常の確定申告の場合と同様となります。

還付申告の手続き

還付申告を受けるためには通常の確定申告と同様、税務署に紙で提出するか「e-Tax」で提出する方法があります。

提出場所は通常の確定申告と同様、原則住民票に記載された住所地を所轄する税務署に提出します。個人事業主等の方で納税地を事務所等の所在地としている場合等は、その場所が納税地となります。

障害者控除の対象者を知り正しく確定申告を行なおう

障害者控除の対象者を知り正しく確定申告を行なおう
障害者控除の対象者を知り正しく確定申告を行なおう

障害者控除は正しい知識さえあれば、簡単に適用を受ける事ができ納税額も少なくなりますし、サラリーマン等の給与所得者が扶養控除等申告書に記載し忘れていたり、確定申告時に申告し忘れていたりしても過去5年分は遡及適用を受ける事ができます。

親族が障害者控除の対象者となるかどうか不明な場合等は税務署に問い合わせるのも良いでしょう。

障害者控除を受けるために必要な情報
① 誰が対象者となるのかを把握する。
② どの控除の区分に該当するのかを把握する。
必要書類に適切に記載する。

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