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相続税がかかるのはいくらから?3,600万円が基準?注意点や課税の判断方法も

最終更新日: 2024年02月05日

「相続した遺産はいくらから相続税がかかる?」「相続税額はどのくらい?」という疑問を持つ人も少なくないのではないでしょうか。

子供がいない夫婦の相続の場合、遺産の総額が3,600万円までは相続税がかかりません。夫婦と子供が1人いる場合は4,200万円までです。どちらも相続税の申告は必要ありません。子供がより多ければ、金額は上がります。

この記事では相続税額の計算方法や節税方法について、ケース別に解説しています。親族が残してくれた財産について不必要に税金を多く払わなくてもよいように、相続税と控除制度について知っておきましょう。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・1級FP技能士)1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格、2010年京都大学経済学部経営学科卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

基礎控除額を超える遺産は相続税がかかる【最低3,600万円】

基礎控除額を超えると相続税がかかる

相続税は受け取った遺産が基礎控除額を超える場合に生じる税金で、基礎控除額の最低金額は「3,600万円」です。つまり、遺産総額が3,600万円以下であれば相続税はかかりません。

遺産を継いだからといって必ずしも相続税が発生するわけではないのです。相続税の課税対象となる被相続人は全体の約8.8%で、11人に1人の割合となっています。

相続税の基礎控除額は最低3,600万円ですが、法定相続人の数によって異なるため、状況に合わせた計算・確認が必要です。

相続税の基礎控除額の計算

相続税の基礎控除額は次の計算式を使って求めます。法定相続人の数が多いほど基礎控除額が大きくなるようになっています。

相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

遺産総額から基礎控除額を控除して残った部分が課税遺産総額で、この金額が相続税を計算する際に用いる額です。

3,600万円以下の遺産であれば課税遺産総額がゼロになるので、相続税はかかりません。

法定相続人の数え方

法定相続人として数えられるのは「民法上で規定された相続人+相続放棄をした人」です。

民法上の相続人には配偶者が必ず含まれ、そのあとに血族相続人(子、親、兄弟姉妹)が含まれます。血族相続人には相続順位があり、以下の順で相続権が発生します。

【血族相続人の相続順位】

  1. 子(直系卑属)
  2. 親(直系尊属)
  3. 兄弟姉妹

もし被相続人に配偶者と子がいた場合、相続人は配偶者と子のみになり、親や兄弟姉妹には相続権が発生しません。

子がいなければ配偶者と親、子・親がいなければ血族相続人の順位が下がって配偶者と兄弟姉妹が相続人となるのです。

法定相続人の人数で注意すべきこと

法定相続人の人数で注意するべきこととして、以下の2点があげられます。

  • 代襲相続と養子を考慮する
  • 相続放棄しても法定相続人の人数にはカウントされる

これらの要素を考慮せずに法定相続人を数えてしまうと、相続税の金額を誤ってしまう恐れが大きいのできちんと把握しておきましょう。

代襲相続と養子を考慮する

死亡や欠格、排除といった理由から子や兄弟姉妹が相続権を失っている場合は、その子どもに代襲相続が発生します。

たとえば、法定相続人である子Aがすでに亡くなっており、AにB・Cという2人の子ども(被相続人の孫)がいるとします。

その場合はB・Cが法定相続人の人数に含まれます。つまり、法定相続人2人のカウントが必要なのです。

また養子の場合、法定相続人に算入できる人数に一定の制限があります。

被相続人に実子がいる場合、基礎控除額の計算で数えられる養子は1人、実子がいない場合は2人です。

たとえば、被相続人に子が3人いて、1人が実子・2人が養子の場合、法定相続人に算入できる子の人数は、実子1人と養子1人の計2人となります。

代襲相続と養子を考慮しなければ法定相続人の数が減ってしまい、本来受けれるはずの基礎控除額が少なくなってしまうので注意が必要です。

相続放棄しても法定相続人の人数にはカウントされる

相続権は、相続があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出ることで放棄できます。

しかし、相続放棄をしても、法定相続人の人数としてカウントが必要です。

たとえば配偶者と実子D・E・Fがいて、そのうち実子Fが相続放棄をしたケースを考えます。

配偶者と実子D・Eの3人が相続人になると思われがちですが、相続放棄した人も法定相続人に含まれるので基礎控除額の計算に使う法定相続人は4人です。

相続税がかかるかは「正味遺産額」で判断【課税対象・対象外の資産】

画像提供:miya227/Shutterstock.com

相続税がいくらから発生するかは、基礎控除額で判断することができます。しかし相続した財産が基礎控除額を超えていても、必ずしも相続税が発生するとは限りません。

相続税は相続財産そのものの金額ではなく、正味遺産額が基礎控除の額を超えていた場合に発生します。正味遺産額の意味や、相続税の対象となる財産について解説します。

正味遺産額はプラス財産(積極財産)からマイナス財産(消極財産)を引いたもの

画像作成:ミツモア

正味遺産額は相続税の対象となるプラスの財産から、非課税となるマイナスの財産を差し引いた後の遺産額です。相続税算出の際は正味遺産額を利用します。

次のように相続財産と債務が存在する場合で、正味遺産額を計算してみましょう。

相続遺産
  • 預貯金:3,000万円
  • 株式:2,000万円
  • 土地建物:1,000万円
債務
  • ローン:1,000万円
  • 葬式費用:400万円

この場合、相続財産の合計額は「3,000万円+2,000万円+1,000万円=6,000万円」 です。一方で債務が「1,000万円+400万円=1,400万円」存在します。

債務は相続税の控除対象となるマイナス財産のため、相続財産の額から控除が必要です。

したがって、このケースでの正味遺産額は「6,000万円-1,400万円=4,600万円」です。この4,600万円から基礎控除の額を控除し、そのうえで相続税の計算を行ないます。

相続税の対象となる財産(プラス財産)

相続税の対象となる主なプラス財産は現金だけではなく、次のようなものも挙げられます。

【課税対象となる財産】

  • 現金・預貯金
  • 土地や建物などの不動産、および不動産上の権利
  • 株式や社債などの有価証券
  • 事業用財産
  • 死亡保険金・死亡退職金(非課税限度額を除く)…これらは「みなし相続財産」と呼ばれます
  • 3年以内に生前贈与を受けた財産
  • 生前贈与に際して、相続時精算課税贈与を適用した財産
  • その他(家具、什器、電話加入権、書画、骨董品、宝石、車両、未収の配当金や地代家賃、著作権、貸付金、損害賠償請求権等)

財産価値のあるものは、ほとんどが相続税の対象です。

相続税の非課税制度

財産価値があるものの、相続税の課税対象外となる財産が存在します。相続税の非課税財産の例は以下のとおりです。

【非課税対象の財産】

  • お墓や仏壇などの礼拝用具
  • みなし相続財産(死亡保険金・死亡退職金)の非課税部分

お墓や仏壇を生前に購入する節税策は、相続税の非課税財産制度に由来します。

みなし相続財産とは、生命保険金や退職手当金など、本来の相続財産ではないものを課税上は相続財産とみなすというものです。

このような死亡保険金・死亡退職金等のみなし相続財産については「500万円×法定相続人の数」までは非課税となるルールとなっています。

控除の対象となる資産(マイナス財産)

正味遺産額を算出する際は財産から債務を引かなければなりません。ここでの債務等に含まれるマイナス財産には次のようなものがあります。

【控除対象となる資産】

  • 債務
  • 葬式費用

債務は借金、住宅ローン、未払いの地代家賃や医療費、税金、買掛金、支払手形などですが、プラス財産を含むすべての相続を放棄することで債務を相続しないこともできます。

また限定承認といって、相続人全員で共同して3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出ることで、被相続人の財産の範囲内で債務を承認する方法もあります。

これにより、万が一債務超過であった場合も自分の財産から債務を弁済する義務を免れることが可能です。

ただし相続開始時の時価にて、みなし譲渡所得が発生する点に注意しなければなりません。

葬式費用は葬儀にかかった費用、御遺体の運搬費用などが該当しますが、香典のお返しの品は対象外です。

基礎控除額を超えても相続税がかからないことも【各種制度活用で節税】

基礎控除額を超えても相続税がかからないことも
各種制度を使えば控除額が増えて税額がゼロになることも!

正味遺産額が相続税の基礎控除額を超えても制度を活用することで控除枠が増え、相続税が発生しないケースがあります。

また、相続税がゼロにはならなくても税額が軽減されるなど大きく節税につながる8つの制度を紹介します。

 

  • 暦年課税にかかる贈与税額控除
  • 小規模宅地等の特例
  • 相続時精算課税制度
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除
  • 外国税額控除

制度の活用は大きな節税につながるため、適用できるものはチェックしておきましょう。

【生前贈与がある場合】暦年課税にかかる贈与税額控除を活用

生前贈与があった場合、暦年課税にかかる贈与税額控除を活用できます。

相続財産のうち、3年(令和6年1月1日以後の贈与については7年)以内に生前贈与を受けた財産に課せられた贈与税額が控除される制度です。

3年(令和6年1月1日以後の贈与については7年)以内に生前贈与を受けた財産は、原則として相続財産の対象となります。

この考えでは、生前贈与についてすでに贈与税を納めている場合は相続税と贈与税の二重課税が発生することになります。

そこで、二重課税を回避するための制度が贈与税額控除なのです。

控除できる金額は「相続税の課税価格として計算された贈与財産に係る贈与税の税額」です。

3年(令和6年1月1日以後の贈与については7年)以内に生前贈与が発生しており、かつ、贈与税を納付済みの場合に適用できます。

小規模宅地等の特例を活用

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、相続した居住用もしくは事業用宅地等のうち、次の要件を満たすものは相続税評価額を減額できる制度です。

【小規模宅地等の特例の要件】

  • 特定居住用宅地(住宅として使っていた土地)
  • 特定事業用等宅地(事業用に使っていた土地)
  • 貸付事業用宅地(貸していた土地)

減額される割合は土地代のうち、50%もしくは80%です。

要件や限度面積などに細かな規定があるため、小規模宅地等の特例を適用するには、生前からどの適用パターンに該当するかを考えたうえでの運用が大切です。

配偶者の税額軽減制度を活用

「配偶者の税額軽減制度」を使えば、配偶者が相続した財産のうち1億6,000万円までは相続税が発生しません。

もし正味遺産額が基礎控除額を超えたとしても、配偶者が相続する財産はほとんどの場合、非課税で相続することができるのです。

また、これを超えたとしても配偶者の法定相続分以下であれば、同じく相続税はゼロとなります。

しかしこの税制を利用すると、納付税額が0円であっても相続税の申告書を税務署に提出しなければなりません。

詳しい申告方法は以下の国税庁ホームページをご覧ください。

贈与税の配偶者控除を活用

贈与税の配偶者控除とは、夫婦間で行われた贈与のうち一定の要件を満たすものを、贈与の課税対象から控除できる制度です。

【贈与税の配偶者控除を受けるための要件】

  • 婚姻期間が20年以上
  • 居住用の不動産あるいはその取得資金の贈与

課税対象から控除できる金額は最大で2,000万円です。

また、暦年贈与(贈与税の基礎控除額である年間110万円の非課税枠を利用した贈与)との併用もできます

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子・孫への生前贈与で適用できる制度です。

相続時精算課税制度を適用した財産は贈与税の対象となり、その分の税額が相続税から控除されます。

また、相続税額から控除しきれなかった贈与税額は還付対象となります。

相続時精算課税制度を活用するには、最初の贈与を受けた年の翌年の贈与税申告時に「相続時精算課税選択届出書」や各種書類の提出が必要です。

なお相続時精算課税制度を選択した後は、暦年課税への変更ができないので注意してください。

未成年者控除

未成年者控除は、相続人が18歳未満の場合に適用できる制度です。20歳に達するまでの年数1年につき10万円が、相続税額から控除されます。

たとえば相続開始時の年齢が15歳の場合は「10万円×(18歳-15歳)=30万円」が控除されることになります。

障害者控除

障害者控除とは、相続人が85歳未満の障害者の場合に適用できる制度です。以下すべての要件を満たす場合に適用できます。

【障害者控除を受けるための要件】

  • 相続などで財産を取得したときに日本国内に住所がある
  • 財産を取得したときに障害者である(相続後に事故などの理由で障害者となった場合は適用対象外)
  • 法定相続人である

障害者控除の適用額は「対象の相続人が満85歳になるまでの年数1年×10万」です。

相続開始時の年齢が60歳の場合「10万円×(85歳-60歳)=250万円」が控除額です。なお、特別障害者の場合は1年につき20万円となります。

控除額の全額が引き切れない場合は、その障害者の扶養義務者の相続税額から引ききれない部分の金額を差し引いて計算します。

相次相続控除を活用

相次相続控除とは、10年以内に続けて相続が発生した際に活用できる制度です。

【相次相続控除を受けるための要件】

  • 被相続人の相続人である
  • その相続の開始前10年以内に開始した相続で、被相続人が財産を取得している
  • その相続の開始前10年以内に開始した相続で発生した相続財産について、被相続人が相続税を納付している

たとえば祖父が死亡し父が相続を受け、相続財産について父が相続税を納付済みとします。

この相続が開始してから10年以内に父が死亡し相続が発生した場合、相続人である子は、相次相続控除の活用が可能です。

相次相続控除の金額は少し複雑なものとなっているため、詳しくは国税庁のホームページを参考にしてください。

【遺産が海外にある場合】外国税額控除を活用

海外に資産がある場合は「外国税額控除」

遺産が海外にある場合、相続税の計算時に外国税額控除を適用できるケースがあります。

外国税額控除とは、日本国内と外国での二重課税を回避するための制度です。

相続財産が外国にある場合、ケースによっては外国で相続税を課されます。この場合、日本で通常通りに相続税の申告をしてしまうと、日本・外国の両方で相続税を支払うことになってしまいます。

しかし外国で相続税が課された場合、以下の要件を満たしていれば外国税額控除が適用され、日本の相続税から控除が可能です。

【外国税額控除を受けるための要件】

  • 相続または遺贈により日本国外の財産を取得
  • 該当の相続財産について、外国での相続税の対象となる

国外に存在する財産でも、その国で相続税の対象とならなければ、外国税額控除の適用はありません。

【外国税額控除の控除額】

次のうち、いずれか小さい金額

  • 外国で支払った相続税の額
  • 日本での相続税額×外国の相続財産額合計/相続人の相続財産額合計

なお、相続税における外国税額控除の適用を受けるには「相続税申告書第8表」のほか、外国で納付した相続税の額を証明する書類が必要です。

二次相続は基礎控除額が減るため注意が必要

二次相続は初めての相続(一次相続)で配偶者と子供が相続した後、その配偶者が亡くなったときに発生する相続のことです。

たとえば父親が亡くなり、母親と子供がその遺産を相続した場合、これが一次相続となります。その後母親が亡くなり、子供が再びその遺産を相続すると、これが二次相続です。二次相続には以下の特徴があります。

  • 法定相続人が減少し、基礎控除額が減少する
  • 死亡保険金と死亡退職金の非課税限度額が減少する
  • 配偶者控除が適用されなくなる
  • 配偶者がもともと所有していた財産が合算される
  • 小規模宅地等の特例の適用条件が厳しくなる

1次相続とは税金の計算方法が若干異なるため、気をつけて相続税を計算しましょう。

基礎控除額を超えそうなら生前贈与もおすすめ

生前贈与とは自分が生きている間に財産を他者に無償で与えることです。つまり相手に対して自分の財産を贈り与える行為を指し、上手く活用すれば相続税を軽減できます。なお相続は自分が亡くなった後に財産が相続人に引き継がれる点が大きな違いです。

生前贈与には、「相続時精算課税制度」と「暦年贈与」の2つがあります。

相続時精算課税制度 暦年贈与
利用される場合 主に60歳以上の父母や祖父母が18歳以上の子どもや孫に贈与する場合 通常の生前贈与
課税時 贈与を受けた時点では一定額まで贈与税がかからないが、相続時に贈与額が相続財産に加算され、相続税が発生 1月1日から12月31日の1年間において、一人につき110万円までの贈与は非課税。

それ以上は課税

税務署への申告 贈与を受ける側(受贈者)による申告が必要 110万円以下の贈与であれば、税務署への申告は不要

一度相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税には戻せません。

相続税の金額の計算方法

相続税の早見表・計算方法

相続税の金額は、正味遺産額および法定相続人の数によって大きく変動します。また配偶者控除の制度が与える影響も大きいです。

言い換えると、正味遺産額・法定相続人の数・配偶者控除を考慮すれば、相続税のおおよその金額を計算できます。

相続税の計算手順

相続税の計算手順を紹介します。大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 課税価格を計算:「相続財産の総額-(非課税財産+債務+葬式費用)」で計算する
  2. 課税対象の遺産総額を計算:「課税価格-基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)」で相続税の課税対象額を算出する
  3. 課税対象の遺産総額を法定相続分で按分:「課税遺産総額×各法定相続人の法定相続分×税率」で計算する
  4. 各人の相続税額を算出・合算し、相続税の総額を算出する
  5. 4.で合算した相続税の総額をもとに、実際の相続分に応じて按分計算して各人の相続税を算出

計算手順自体はシンプルですが、課税価格の計算や適用できる税額控除など、考慮する要素は多数あります。

相続税の計算は複雑になりがちなので、心配な方は税理士に相談してみるのがおすすめです。

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土地や不動産、株式等の評価額の算出方法は?

その他財産の評価額算出方法

財産は種類によってそれぞれ評価額の算出方法が異なります。土地は「相続税路線価による評価額」か「固定資産税評価額」、不動産は「固定資産税評価額」、株式は「相続事由発生の当日の日の終値」「過去3か月間の終値の平均額のうち、いずれか一番低い月の平均額」を使います。

財産に応じた方法で評価額を計算し、正しい相続税評価額を求めましょう。

土地

土地の相続税の計算には「相続税路線価による評価額」か「固定資産税評価額」を使った倍率方式による評価額を使います。

路線価による評価額は、所有する土地が面した道路にそれぞれ振られている、その土地1㎡当たりの価格に、地積をかけることで算出できます。

路線価図は国税庁のホームページに掲載されているので計算してみましょう。

たとえば、100㎡の敷地の前面道路の路線価が20万円だとすると「20万円×100㎡=2,000万円」となります。

路線価というのは、整形地で間口が十分に取れているなどの優良な土地を想定しているものです。

したがって、実際に土地を評価する場合には、路線価による評価額を基礎として地形、接道状況、用途地域、周辺環境、利用状況などを加味する必要があります。

また、路線価が振られていない地域については「固定資産税評価額」にその地域ごとの倍率を掛けて評価額を計算します。評価倍率表も、国税庁のホームページに掲載されているのでチェックしましょう。

「固定資産税評価額」は、毎年市区町村から送付される「固定資産税の課税明細書」に記載されています。

不動産

建物の評価の計算方法は「固定資産税評価額」を使います。

「固定資産税の課税明細書」に記載されている額を相続税の土地の評価額としますが、建物を人に貸している場合は評価額は記載額の7割となります。

マンションの評価の計算方法は、固定資産税評価額に持ち分割合を掛けて計算します。

持ち分割合は、契約書や登記簿謄本に記載されているものを参考にしてください。

株式

上場株式の場合、相続発生日の終値だけでなく、相続発生日の属する月を含む過去3か月間の終値の平均額のうち、いずれか一番低い月の平均額」を選べます。

上場株式の場合、値動きが大きいので相続発生日のみを対象にすると、あるイベントによって暴落した株価は適切な時価と言えないからです。

非上場株式については、国税庁指定の計算方法である類似業種比準価額方式、配当還元方式、またはその併用方式のいずれかの方法で相続税評価額を計算します。

ただし、評価の計算は非常に専門性が高く、税理士に依頼する方がいいでしょう。

その他の遺産

土地、不動産、株式の評価額に見てきましたが、ここではその他遺産の評価額を見てみます。

評価額
普通預金 相続開始日時点の残高
定期預金 相続開始日時点の残高に既経過利息を足したもの

※既経過利息:相続開始直前の利払い日から相続開始時点までの定期預金の利息

ゴルフ会員権 相続開始日時点の取引相場の70%
自動車 相続開始日時点の取引相場

財産の種類によって評価額の算出方法が異なるので、相続税額を計算する前にまずは各財産の計算の仕方を把握しておきましょう。

相続税支払いの簡単な流れを紹介

相続税を納付するためには相続財産や相続人の範囲を確定した上で、相続税額を計算する必要があります。手順は以下の通りです。

①相続人の確定

まずは亡くなった方の相続人を特定します。相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×相続人の数」であり、基礎控除額を超える相続財産がある場合には申告が必要です。

相続税の法定相続人には子供がいれば子供がなります。子供がおらず親がいれば、親が法定相続人です。どちらもいない場合は兄弟姉妹が法定相続人となります。配偶者は生きていれば必ず法定相続人です。

②遺産の把握

相続財産の詳細を調査し、プラスの財産とマイナスの財産を確認します。相続税は相続した財産の価値に基づいて課税されるため、不動産や預貯金などのプラスの財産と借入金などのマイナスの財産を把握することが必要です。

③遺産分割協議(遺言書がない場合)

遺言書が無い場合には、法定相続人が相続財産を話し合っての分割が必要です。相続税を納付しなければならない場合は、各人の相続財産に基づいて税額を計算します。

④相続税の計算

正味の遺産額を計算し、相続税の基礎控除額を差し引いた課税遺産の総額を計算します。次に相続税の総額より相続人それぞれの納税額の計算が必要です。

⑤相続税の申告・納付

被相続人の死亡日から10か月以内に相続税の申告と納付を行います。相続人ごとに納付書を作成し、それぞれが相続税を納めることが義務です。

相続税の申告期限を過ぎそうな場合の対処法

申告期限を過ぎても許されるケース

通常、納税が必要にもかかわらず申告漏れしてしまうとペナルティが課されますが、以下のような特例もあります。

「延納制度」と「物納制度」があり、条件に当てはまれば申告期限を過ぎてしまっても罰則を受けることはありません。

延納制度

延納制度とは、通常一括での納付が必要な相続税を分割で納付できる制度です。

【延納制度の条件】

  • 相続税の額が10万円を超える
  • 納付すべき日までの金銭での納付が難しい理由がある
  • 不動産などの担保を提供できる
  • 納付期限までに延納申請書を提出する

相続税の延納制度を適用する場合、利子税が課せられる点に注意が必要です。

物納制度

物納制度とは金銭での納税ができない場合に、相続財産で相続税を納付できる制度です。

【物納制度の条件】

  • 延納制度でも納付できない理由がある
  • 物納制度の要件を満たす相続財産がある(物納適格財産など)
  • 納付期限までに物納申請書を提出する

すべての相続財産が利用できるわけではないため、物納制度の要件を満たす財産については事前の確認が必要です。

相続税が払えない場合はどうするの?

相続税が支払えないケース

相続税が支払えない状況として、以下の2つのケースが考えられます。

  • 相続財産に占める不動産の割合が多い場合

相続された財産の中で不動産の比率が高い場合に、現金を用意して一括で相続税を支払うのが難しい状況です。

  • 相続不動産の売却ができない場合

相続された不動産を売却することが難しい場合で現金を得る手段が限られ、相続税を支払うのが難しい状況です。

相続税が支払えない場合の対処法

相続税が支払えない場合には以下の対処方法が考えられます。なお延納・物納に関しては、先述の通りです。

  • 相続放棄

相続は必須ではないため相続に関する権利についての一切を放棄すれば相続税はかかりません。相続する財産にはプラスだけでなくマイナスの財産も含まれるため、相続放棄はマイナスの負担から解放されるメリットがありますが、デメリットも検討が必要です。ただし、相続放棄の手続きは、相続発生から3ヶ月以内に行なわなければならない点に注意が必要です。

  • 相続不動産の売却を前提につなぎ資金調達

不動産の売却が難しい場合には、不動産売却前提ローンを利用します。不動産を担保にして相続税の納入資金を調達し、売却後に返済することで、相続税の支払いに対応可能です。

  • 不動産を売却し資金調達しつつ、不動産を利用し続ける

不動産を売却して相続税納入の資金を調達し、その後も引き続き賃貸として住み続ける方法です。不動産の売却後も住み続けられます。

期限までに相続税の支払いができない場合、延滞税などの追加料金が発生します。余分な税金を避けるためには、必ず期日までに納付するよう心がけましょう。

相続税の計算が難しければ税理士に依頼しよう

遺産を把握しただけで相続税計算は終わりではありません。「課税価格の計算」から「相続税額の算出」「相続税の申告・納付」まで複数の過程に対応する必要があります。

税金を正しく計算・申告できないと、ペナルティとして余分なお金を払うことになることもあります。そんな事態を防ぐためにも税理士に依頼するのがおすすめです。

【税理士にお願いするメリット】

  • 確実に正しい申告ができる
  • 複雑な計算・手続きの手間が省ける
  • 税務調査が入っても税理士が立ち会ってくれて安心

税理士に依頼すれば正しく遺産相続の手続きが進められ、税務調査が来ても安心して対応することができるでしょう。

監修税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

相続税の申告はとても複雑です。預貯金しかないような場合を除き、自力での申告はかなり難しいと言えます。税理士へ依頼した方が安心と言えます。ただ、相続をあまり扱っていない税理士もいるため、相続税申告の経験が豊富な税理士に依頼しましょう。

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