オフィスや店舗の空調設備を検討する際、「パッケージエアコン」という言葉を耳にする機会もあるでしょう。しかし一般家庭で使用するルームエアコンとの違いや、具体的な特徴については詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
最終更新日: 2024年12月12日
この記事では、パッケージエアコンの基本的な特徴から、種類、選び方、設置にかかる費用相場まで幅広く解説します。オフィスや店舗の空調設備を検討している方はもちろん、ビルのオーナーや施設管理者の方々にも役立つ情報をお届けするので、ぜひ最後までお読みください。
パッケージエアコンとは
パッケージエアコンは、主に店舗やオフィス、工場などの業務用施設で使用されるエアコンで、室内機と室外機がセットになっている空調システムのことです。「パッケージ」という名前の由来は、室外機と室内機が一つのパッケージになっていることから来ています。
一般的に、パッケージエアコンは1台の室外機に対して複数の室内機を接続できる構造になっています。そのため、広い空間や複数の部屋を効率的に暖かくしたり、涼しくしたりすることが可能です。
ビル用マルチエアコンとの違い
パッケージエアコンとビル用マルチエアコンの大きな違いは、電源の接続方法です。パッケージエアコンでは室外機に電源を接続し、そこから室内機に給電します。一方、ビル用マルチエアコンは、室外機と室内機それぞれに別々の電源を接続します。
この違いにより、ビル用マルチエアコンは室内機ごとの個別運転が可能になり、より柔軟な空調管理ができるのが特徴です。ただし、一般的にビル用マルチエアコンは3000㎡以上の中大規模建物向けとされており、パッケージエアコンとは用途も異なります。
ルームエアコンとの違い
パッケージエアコンとルームエアコンの主な違いは、冷暖房能力と設置場所にあります。ルームエアコンが主に一般家庭向けであるのに対し、パッケージエアコンは業務用途に特化しており、ルームエアコンよりも高い冷暖房能力を持っているのが特徴です。
一般的に4kW（1.5馬力）から30kW（12馬力）程度の能力範囲を持っています。また、設置場所の自由度も高く、天井埋め込み型や床置き型など、様々な形状の室内機を選択できるのも特徴です。
パッケージエアコンの種類
パッケージエアコンには、用途や設置場所に応じて様々な種類があります。ここでは主な3つのタイプについて解説します。
店舗・オフィス用パッケージエアコン
店舗やオフィス向けのパッケージエアコンは、最も一般的なタイプです。1台の室外機に対して1〜4台の室内機を接続でき、天井カセット形や壁掛け形など、様々な形状の室内機を選択できます。
このタイプは、比較的小規模な店舗やオフィスに適しています。比較的設置の自由度が高く、室内機の種類も豊富である点が魅力です。
設備用パッケージエアコン
設備用パッケージエアコンは、工場やホールなど、より広い空間の空調に適したタイプのエアコンです。一般的に、14kW（5馬力）から150kW（54馬力）程度の高い冷暖房能力を持っています。
設備用パッケージエアコンには空冷式と水冷式があり、空冷式は通常の室外機と室内機の組み合わせですが、水冷式は冷却塔や冷却水配管を使用するため大規模な施設向けとなっています。広い空間を効率的に空調できる反面、設置にはより専門的な知識と技術が必要です。
ルーフトップ型パッケージエアコン
ルーフトップ型パッケージエアコンは、室内機と室外機が一体になっており、ダクトを使用して給排気を行うタイプです。天井が高く、広い空間に適しています。
一般的に10 kW（4馬力）から85 kW（30馬力）程度の冷暖房能力を持ち、100％外気を取り入れて外調機として利用できる機種もあります。
パッケージエアコンの室内機の種類
パッケージエアコンの室内機には、設置場所や空間の特性に応じて選べる様々な形状があります。ここでは、主な6つのタイプについて解説します。
天井カセット型
天井カセット型は、天井に埋め込んで設置するタイプの室内機です。吹き出し口の位置や数によって気流を分散させられるため、店舗内の形状やフロアの間取りに合わせた空調環境を作り出せます。
また、天井に埋め込むため見た目がすっきりとしており、オフィスや店舗など、インテリアにこだわりたい空間に最適でしょう。ただし、設置には天井裏のスペースが必要で、工事費用も他のタイプに比べて高くなる傾向があります。
天吊型
天吊型は、天井から吊り下げて設置するタイプの室内機です。天井内の空間が狭い場合や、照明などで天井スペースが限られている場合に適しています。
天井に穴を開ける必要がないため、天井カセット型よりも設置は簡単です。ただし、室内機が露出するため、インテリアへの影響を考慮する必要があります。
ダクト型
ダクト型は天井裏に設置するタイプの室内機です。吹出口と吸込口がダクトでつながれており、ダクトを通じて冷暖房を行います。室内機本体が見えないため、インテリアを損なわずに空調を行えるのが特徴です。
広い空間や複数の部屋を効率的に空調できるため、オフィスフロア全体の空調などに適しています。ただし、ダクト工事が必要なため、設置コストが高くなる傾向があります。
ビルトイン型
ビルトイン型は、家具や壁面に組み込んで設置するタイプの室内機です。室内のデザインに合わせてカスタマイズできるため、インテリアにこだわりたい空間に適しています。
設置の自由度が高く、空間の特性に合わせて最適な位置に配置できるのが魅力です。ただし、設置には専門的な知識と技術が必要で、工事費用も比較的高くなります。
床置型
床置型は、床に直接設置するタイプの室内機です。設置が簡単で、天井が低い場所や天井に設置できない場所に適しています。床に設置するため、暖房効果を感じやすいのも特徴です。ただし、床面積を占有するため、スペースに余裕がある場所でないと導入は難しいでしょう。
壁掛型
壁掛型は、壁面に取り付けるタイプの室内機です。一般家庭用のルームエアコンと同様の形状で、取り付けや手入れが比較的簡単です。
業務用エアコンの中では設置費用を最も抑えられるのが特徴ですが、室内機のサイズは家庭用よりも大きくなります。小規模な店舗やオフィスに適していますが、大空間の空調には不向きです。
パッケージエアコンを選ぶポイント
パッケージエアコンを選ぶ際には、以下のポイントに着目しましょう。
既存のエアコンに合わせる
既存の空調設備がある場合、新しいパッケージエアコンを導入する際は、既存のシステムとの互換性を考慮することが重要です。例えば、既存の配管や電源設備を活用できれば、設置コストを抑えられる可能性があります。
また、既存のリモコンやシステムとの連携も確認しましょう。同じメーカーや同じシリーズの製品を選べば余計な動作が減り、管理を簡素化できる場合があります。
空調能力で選ぶ
パッケージエアコン選びのなかで特に重要なのが、適切な空調能力（馬力）の選択です。空調能力は、設置する空間の広さや用途、人数などによって決まります。
一般的な目安として、事務所であれば10坪あたり3馬力程度が必要とされています。ただし天井高や窓の大きさ、日当たりの良さなども考慮する必要があります。
例えば、5馬力のパッケージエアコンの場合、一般的な事務所であれば24〜36坪、飲食店なら11〜18坪程度の空間に対応できるとされています。ただし、これはあくまで目安なので、詳しくは見積もり時などに確認しましょう。
パッケージエアコンに関するよくある質問
最後に、パッケージエアコンに関するよくある質問をまとめました。
それぞれ解説していきます。
パッケージエアコンとルームエアコンの見分け方は？
パッケージエアコンとルームエアコンは、主にサイズと設置場所で見分けられます。パッケージエアコンは一般的にルームエアコンよりも大型で、業務用施設に設置されています。
また、パッケージエアコンの室内機は、天井カセット型や床置型など、ルームエアコンにはない形状のものが多いのも特徴です。室外機も大型で、複数の室内機を接続できる構造になっています。
確実に調べたいときには、室内ユニットもしくは室外ユニットに貼られたシールを確認しましょう。「パッケージエアコン」「ルームエアコン」といったように、それぞれの名称が明記されています。
パッケージエアコンは何台まで同時に運転できる？
パッケージエアコンの同時運転可能台数は機種によって異なる場合がありますが、一般的な店舗・オフィス用パッケージエアコンでは、1台の室外機に対して1〜4台の室内機を接続できます。
ただし、パッケージエアコンの仕様上、接続されている全ての室内機が同時に運転・停止する仕組みになっています。個別の室内機ごとに運転・停止を制御したい場合は、ビル用マルチエアコンを検討する必要があります。
パッケージエアコンの取り付けにかかる費用相場
パッケージエアコンの取り付けにかかる費用は、必要となる施工工事によって大きく異なります。パッケージエアコンの取り付けにかかるおおよその費用は、以下の通りです。
- 壁掛けエアコン（業務用）：40,000円～100,000円
- 天井埋め込み式エアコン：80,000円～200,000円
- 天井吊り下げ式エアコン：70,000円～150,000円
パッケージエアコンの選定や設置は、専門的な知識と経験が必要な作業です。最適な機種選びや正確な費用見積もりのためには、専門業者に相談することをおすすめします。
パッケージエアコンの機能を知って施設で活用しよう
本記事では、パッケージエアコンについて概要や種類、選び方のポイントを解説しました。パッケージエアコンはオフィスや店舗、工場など、業務用施設の空調に欠かせない設備です。本記事で紹介した種類や特徴、選び方を把握しておくことで、建物に合ったパッケージエアコンを導入しましょう。
また、パッケージエアコンの導入時には業者への依頼が必要となるため、信頼できる業者を探しておくことも必要です。業者ごとに価格が異なる可能性があるので、相見積もりを取得して比較検討しながら選びましょう。
