エアコンの吹き出し口の奥には「送風ファン」と呼ばれる部品があります。吹き出し口から覗くと、カビや汚れが付着していて気になってしまった方もいらっしゃるかもしれません。
汚れてしまったファンをどのように掃除するのか、業者に依頼する場合はいくらかかるのかを解説します。実際に自分で掃除をした体験談も載せているので参考にしてみてください。
エアコンのファン掃除は自分でできる?
ファンの汚れが気になっていても、内部にある部品なのでどうやって掃除するのか迷ってしまうかもしれません。
そもそも自分で掃除して良いのでしょうか?
ファンはエアコンの奥にある部品なので掃除が難しい
エアコンの送風ファンはフィルターや熱交換器の奥に位置する筒状の部品です。回転によってエアコンの空気の流れを作る役割を果たしています。具体的には、室内から空気を取り込み、フィン(熱交換器)で冷やした空気を室内に再度吐き出す一連の流れを作っています。
ファンは多くの部品に囲まれており手が届きにくいので、基本的には自分で掃除するのが難しい箇所です。
吹き出し口から見えているのは限られた範囲であり、一般消費者が簡単に分解して取り外せるつくりにもなっていません。
なるべくプロにクリーニングを依頼するのがおすすめ
ファンを掃除するにはエアコンの部品を分解するか、内部まで届く高圧洗浄機やエアコン洗浄スプレーを使うか、奥まで届く掃除道具を使うことになります。
どの方法も正しく行わないとエアコンが故障するリスクがあるので、エアコンに関する十分な知識や経験がない個人が自分で行うのはあまりおすすめできません。
ファンの掃除はなるべくプロのエアコンクリーニング業者に任せることをおすすめします。
エアコンメーカー各社の見解
エアコンのファンを自分で掃除できるかどうかについて、代表的なエアコンメーカー各社の見解をまとめました。
いずれのメーカーも自分で内部の洗浄を行うことを推奨しておらず、専門知識を持ったプロのクリーニング業者やメーカーに問い合わせるように案内しています。
メーカー名 | 見解 |
---|---|
三菱電機 | ・自分で掃除できる箇所は「前面パネル(本体カバー)」「フラップ」「フィルター」のみ ・エアコン内部の熱交換器やファンは、プロのエアコンクリーニングが必要 |
日立 | ・エアコンクリーニング(内部洗浄)は、洗浄方法や、使用する洗浄剤の選定、取り扱い、処理などに高い専門技術が必要 ・自分では行わず、専門知識を持った業者や販売店、メーカーに相談 |
ダイキン | ・エアフィルターをはずした本体内部 ( アルミフィン部分など ) は、自分でお手入れすることができない ・汚れが気になる場合など内部洗浄が必要な場合は、販売店またはメーカーに相談 |
シャープ | (市販の洗浄スプレー使用についての見解) ・エアコン内部の構造についての知識(電気系統の配置、プラスチックに及ぼす薬剤の影響に関する知識)が必要なので、専門知識がない人によるエアコン内部の洗浄はお勧めできない |
東芝ライフスタイル | ・エアコン内部のクリーニングは自分で行わない |
富士通ゼネラル | ・誤った洗浄剤の選定・使用方法でクリーニング(内部洗浄)すると故障の原因となる ・エアコンクリーニング(内部洗浄)は、高い専門知識を有する業者に依頼する |
自分でファンを掃除するときの注意点
エアコンの送風ファンを自分で掃除することにはリスクが伴います。
基本的にはプロのエアコンクリーニング業者に依頼するのがおすすめですが、どうしても自分で掃除したい場合には以下の点に注意しながら進めましょう。
エアコン掃除スプレーのリスクを理解し正しく使う
前述の通り、市販のエアコン掃除スプレーには故障や火災、カビ繁殖のリスクがあり、メーカーからも推奨されていません。
推奨されていない方法で掃除したことでエアコンに不具合が発生した場合、修理保証がきかない可能性もあります。
プロのクリーニング業者に依頼する費用を節約した結果、もっと高額な修理費用を払うことにもなりかねません。
どうしても自分で掃除したい場合、万が一のリスクを十分に把握した上で実施しましょう。
自分でエアコン内部まで分解しない
自分で取り外せるエアコンの部品は、本体カバー、吹き出し口(ルーバー)、フィルターくらいです。
フィルターよりも奥にある部品の分解は、エアコンに関する知識をもたない人が行うのは難しい作業です。
無理に分解しようとすると部品が破損してしまったり、元に戻せなくなったりするおそれがあります。
分解して徹底的に汚れを落としたい場合は、プロのクリーニング業者に依頼しましょう。
エアコンのファン掃除の前に用意する道具
エアコンのファンを掃除するときは、以下の道具を用意しましょう。
道具 | 用途 |
---|---|
送風ファン用洗浄スプレー アルカリ電解水 |
送風ファンに吹きかけて洗浄する |
養生シート | 出てきた汚水を集めて周囲が汚れるのを防ぐ。スプレーに付属していることが多い |
掃除用ブラシ(歯ブラシなど) | ブラシが送風ファンに届く場合、ファンを回転させたり汚れをこすったりするのに役立つ |
加圧式噴射スプレー | 水を入れて、付属の薬剤で落としきれなかった洗剤を洗い流す |
新聞紙・ビニールシート | 洗剤が垂れても大丈夫なように床に敷く |
ぞうきん・タオル | スプレーで洗浄した後に水分を拭き取る |
手袋 | 洗剤がついたり、内部部品にさわってケガをするのを防ぐ |
マスク | 掃除中にカビを吸い込むのを防ぐ |
今回使用したファン洗浄スプレーは、ショーワ社「くうきれい」です。
エアコン用の洗浄スプレーには主にフィン(熱交換器)用と送風ファン用の2種類あるので、間違えないようにしましょう。
エアコン洗浄スプレーの代わりに、アルカリ電解水を使うことも可能です。洗浄スプレーよりも洗浄力は落ちますが、水が主成分なので乾いた後に成分が残らず、すすぎ残しの心配が少なくなります。
養生シートを自作する場合は、以下の道具が必要です。
- 45Lサイズのビニール袋
- 養生テープ
- ハサミ
エアコンのファンを洗浄スプレーで掃除する方法
市販の洗浄スプレーを使ってファンを掃除するときは、以下の手順で行いましょう。
1)電源プラグを抜いてカバーやルーバーを取り外す
エアコンに電気が通ったまま洗浄作業を行うと、感電や故障のリスクがあります。必ず電源を切った上で、コンセントからプラグを抜いておきましょう。
吹き出し口からファンに向かってスプレーを噴射したり、ブラシを差し入れたりしやすくするために、外せる場合はルーバーを取り外します。ルーバーにカビが付着している場合はついでに拭き掃除しておきましょう。
2)周囲を養生する
今回使用しているショーワ「くうきれい エアコンファン洗浄剤」には、養生シートが付属しています。
あらかじめ家庭用エアコンにぴったりなサイズと形状で作られており、両面テープもついているので簡単に取り付けられます。素材もポリ袋より頑丈なのでかなり安心です。
泡や汚れが飛び散るのを防ぎたい場合は、エアコン周囲の壁にビニール袋を貼った上で養生シートを取り付けると確実に守れます。
上の写真は私が実際にフィルタ―・フィン・ファンをすべて掃除したときのものなので、カバーがすべて外されてフィンが露わになっています。
しかし、ファンのみの掃除の場合はエアコンをすべて分解する必要はありません。
自分で養生する場合
洗浄スプレーに養生シートがついておらず自作する場合は、以下の道具を用意しましょう。
- 45Lのポリ袋
- 養生テープ
- ハサミ
まず45Lポリ袋の片側のみをハサミで切ります。
ハサミで切った辺が一番長くなるので、この辺が手前に垂れ下がるように、もともと袋の口だった辺をテープでエアコンに貼り付けます。この時テープはエアコンに接する部分すべてに貼り付けてください。そうでないとビニールの隙間から排水が漏れ出てしまう可能性が高いです。
下の図で三角形の下側の頂点に汚水が溜まっていく仕組みになります。
完成した様子が以下の写真です。
ガムテープは粘着力が強すぎて、壁紙を傷つけてしまうリスクもあります。両面テープか養生用のテープなら適度な粘着性があるのでオススメです。
3)洗浄用のスプレーを吹きかける
ムースの缶(STEP1)にノズルを取り付け、噴射する直前に缶を10回ほど振ります。
エアコンの吹き出し口からノズルを差し込んで、ファンにまんべんなくスプレーを噴射しましょう。
今回使用した「くうきれい」は、スプレーをした1秒後ぐらいに時間差でムース状に泡立つように作られています。ファンの表面に吹きかけるのではなく、ファンの羽根の間にノズルを入れてスプレーすると洗剤が行き渡りやすいです。
ノズルの先やブラシでファンを回転させながら噴射し、ファン全体に泡が行き渡るようにします。
このまま30~60分放置して、泡の力で汚れを浮かせます。
スプレーを噴射している最中に泡や排水が垂れてきて、それが腕をつたって来てしまいました。
腕まで覆うタイプの手袋をはめて作業すると、不快な思いをせずに掃除できそうです。
4)専用のリンス剤や水で洗い流す
リンス(STEP2)の缶にノズルを取り付けます。リンス缶は振るとガスが抜けてしまうので、振ったり傾けたりしないように注意しましょう。
送風ファンに残った泡を消すように、全体的にリンスを噴射します。リンスを吹きかけた部分はみるみるうちに泡が消えていきました。
リンスを使い切ってもまだ泡が残っていたので、ペットボトルに取り付ける加圧式スプレーを使って、泡が見えなくなるまで水で洗い流しました。
「くうきれい」取扱説明書でも、リンスだけで泡が落としきれなかった場合は霧吹きなどで洗い流すように書かれています。
あれば便利かなというぐらいの気持ちで購入しましたが、このスプレーノズルはかなり重宝し、エアコン掃除業者として高圧洗浄機を使っているような気持ちになり爽快でした。
泡がまったく見えなくなるまで水を吹きかけ、洗浄液が完全に落ちてくるまで5分ほど置きます。
養生シートの中に水が大量に溜まると、落下するおそれがあるので気を付けましょう。
5)送風運転で内部を乾燥させる
吹き出し口の水気をタオルで拭き取り、ルーバーを外した場合は元の位置に取り付けます。
電源プラグを差し直して、送風運転でファンに残った水滴を飛ばしましょう。吹き出し口から水が垂れてくることがあるので、タオルなどを当てておくとよいです。
ファンの水滴が落ちたら、養生シートを外して汚水を捨てます。
そのまま送風運転をして乾かすか、1時間ほど自然乾燥させてから通常のエアコン運転を行いましょう。
もし薬剤臭が消えない場合は、再度水を吹きかけてファンを流すか、エアコンクリーニング業者に見てもらうことをおすすめします。
下準備から掃除終了までの総時間は4時間弱かかり、エアコンの養生とファン掃除にかかる時間だけで見ると、合わせて1時間~1時間半ぐらいでした。
ファン掃除は確かにフィルターやフィンの掃除に比べると大変でしたが、養生も手軽でしたし、想像よりずっと楽にできたというのが正直な感想です。
最終的には上の写真以上の汚れ・カビが落ちて、達成感と同時に、これからはこんなに汚れたエアコンから吐き出される空気を吸わなくていいんだという安堵感がありました。
エアコンのファンをブラシで掃除する方法
パーツを分解したり、扱いの難しい洗浄スプレーを使わず、以下のようなブラシを差し込んで掃除する方法もお伝えします。