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法定外福利厚生とは?法定福利厚生との違い・種類・費用相場を完全解説【2025年版】

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最終更新日: 2025年11月18日

人的資本経営の重要性が叫ばれ、慢性的な人材不足と物価高騰が続く2025年現在、福利厚生はもはや単なる「コスト」ではなく、企業の生存戦略を左右する「投資」へと変貌を遂げました。

「他社と差別化できる福利厚生は何だろうか?」

「予算内で従業員満足度を最大化するにはどうすればいいのか?」

多くの人事担当者様が抱えるこの悩みに対し、本記事では経営コンサルタントの視点から明確な解を提示します。法定外福利厚生の基礎知識から、2025年度の税制改正に対応した非課税ルール、最新の人気トレンドランキング、そして失敗しないアウトソーシングサービスの選び方まで、実務に必要な情報を完全網羅しました。

法定外福利厚生とは?法定福利厚生との決定的な違い

法定外福利厚生とは、健康保険や厚生年金保険といった法律で義務付けられた「法定福利厚生」とは異なり、企業が独自に従業員とその家族に提供する制度やサービスの総称です。

最大の特徴は、経営戦略や従業員のニーズに合わせて自由に設計できる点にあります。若手が多い企業なら住宅支援、女性活躍を推進するなら育児支援といったように、自社の課題解決に向けた「独自色」を打ち出すための戦略的ツールとなります。

まずは、両者の決定的な違いを以下の比較表で整理します。

法定福利厚生と法定外福利厚生の比較一覧表

項目 法定福利厚生 法定外福利厚生
義務の有無 法律で義務(導入しないと違法) 任意(企業が自由に決定)
主な内容 健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険、介護保険、子ども・子育て拠出金 住宅手当、通勤手当、健康診断(法定外)、慶弔見舞金、自己啓発支援、レジャー補助など
費用負担 事業主と従業員で折半(一部全額負担あり) 原則として全額事業主負担(一部従業員負担の設定も可)
対象者 条件を満たす全従業員 規定による(原則として全従業員対象が望ましい)
目的 最低限の生活保障・セーフティネット エンゲージメント向上、採用力強化、生産性向上

法定福利厚生が企業としての「最低限の義務」であるのに対し、法定外福利厚生は競合他社との差別化を図るための「武器」であると認識してください。

なぜ今、法定外福利厚生が重視されるのか?

市場環境の変化により、法定外福利厚生の重要性はかつてないほど高まっています。理由は主に以下の3点に集約されます。

第一に、採用競争力の強化です。

給与水準だけでは差別化が困難な中、求職者、特にZ世代は「働きやすさ」や「生活支援」を企業選びの決定的な要素としています。充実した福利厚生は、優秀な人材を惹きつけ、入社後の定着率を高める強力なアピールポイントとなります。

第二に、従業員エンゲージメントと生産性の向上です。

健康経営やウェルビーイングの視点から、従業員の心身の健康をサポートすることは、欠勤率の低下やパフォーマンスの最大化に直結します。従業員が安心して働ける環境は、組織全体の生産性を底上げします。

第三に、実質賃金の向上手段としての価値です。

インフレによる物価高騰が続く中、非課税メリットのある現物給付(食事補助など)や手当を活用することで、税金や社会保険料の負担を増やさずに、従業員の「手取り額(可処分所得)」を実質的に増やすことが可能です。

これは、単純なベースアップ(賃上げ)よりも企業・従業員双方にとってコスト効率の良い還元策となり得ます。

代表的な法定外福利厚生の種類と最新トレンド

法定外福利厚生には、昔ながらの「定番」から、時代の変化に合わせて生まれた「最新トレンド」まで多岐にわたる種類が存在します。自社の課題に合わせて最適なポートフォリオを組むことが重要です。

【定番】生活を支える基盤となる制度

従業員の生活インフラを支える、最もニーズが高いカテゴリーです。

  • 住宅関連: 家賃補助や借上げ社宅制度は、従業員の経済的負担を劇的に軽減するため、最も人気が高い施策の一つです。特に借上げ社宅は、企業が契約して従業員に貸与する形式をとることで、給与課税されずに住居費を支援できるため、高い節税メリットがあります。
  • 健康・医療: 法定の健康診断に加え、人間ドックやインフルエンザ予防接種の費用補助を行います。従業員の健康リスクを未然に防ぐための投資です。
  • 慶弔・災害: 結婚祝い金、出産祝い金、弔慰金、災害見舞金など、従業員のライフイベントや万が一の事態に寄り添う制度です。

【トレンド】働き方の変化に対応する制度

多様な働き方や価値観に対応し、エンゲージメントを高めるための制度です。

  • 働き方支援: テレワーク手当、フレックスタイム制度、ワーケーション支援など、場所や時間に縛られない働き方をサポートします。
  • 自己啓発・キャリア: 資格取得支援や、Udemy等のオンライン学習プラットフォームの利用補助、書籍購入補助など、従業員のスキルアップを直接支援します。
  • 育児・介護両立: ベビーシッター利用補助や、男性育休取得時の独自給付金など、ライフステージが変わっても働き続けられる環境を整備します。
  • 食事補助: 「置き型社食(オフィスコンビニ)」や、全国の飲食店で使える電子マネー型食事補助(チケットレストラン等)は、出社・リモート問わず利用でき、健康管理と節約の両面で需要が急増しています。

従業員に人気の福利厚生ランキング【実態調査】

導入する施策を決定する際、経営層の思い込みではなく、従業員の「生の声」を反映させることが失敗を防ぐ鍵です。2024年8月の最新調査(株式会社ベター・プレイス調べ)によると、従業員が「導入・注力してほしい」と考える福利厚生トップ3は以下の通りです。

  1. 社宅・住宅手当・家賃補助
  2. 通勤手当
  3. 健康診断、人間ドック補助

次いで「長期休暇」「フレックスタイム制度」「社員食堂・食事補助」と続きます。
ここで注目すべきは、上位がすべて「生活直結型(金銭的メリットや健康)」の支援であるという事実です。一方で、かつて人気だった「運動会」や「社員旅行」といったレクリエーション系の優先度は相対的に下がっています。
企業が導入したい制度と、従業員が求める制度にはギャップが生じがちです。まずはこの「生活インフラ」部分を固めることが、満足度向上の最短ルートです。

法定外福利厚生の費用目安と相場データ

「他社はどれくらい福利厚生にコストをかけているのか?」という疑問にお答えします。

従業員1人あたりの月額平均費用

日本経済団体連合会(経団連)等のデータおよび最新の市場調査によると、企業が負担する法定外福利厚生費の平均は、従業員1人あたり月額約24,000円程度です。
ただし、これは大企業を含んだ平均値であり、中小企業(SME)の実態としては月額5,000円〜15,000円程度が現実的な相場です。内訳としては、依然として「住宅関連」が約半数を占めますが、近年は「ヘルスケア」や「ライフサポート」への配分が増加傾向にあります。

コストを抑えて導入するためのポイント

予算が限られる中堅・中小企業が大企業並みの福利厚生を実現するには、以下の2点がポイントになります。

  1. アウトソーシングの活用:
    自社で保養所を持ったり、割引契約を個別に結んだりするのは管理コストが膨大です。月額数百円から利用できるパッケージ型のアウトソーシングサービスを活用することで、固定費を変動費化し、管理工数を削減しながら数万種類のサービスを提供可能にします。
  2. カフェテリアプランの検討:
    従業員一人ひとりに「年間〇〇ポイント」と予算枠を付与し、その範囲内で好きなメニューを選ばせる方式です。企業側は総額人件費をコントロールしやすく、予算オーバーのリスクを防ぐことができます。

導入前に知っておくべき「課税・非課税」のルール

経営層への提案時に最も強力な説得材料となるのが「節税メリット」です。しかし、福利厚生費として経費計上(非課税)するためには厳格なルールが存在します。

福利厚生費として経費計上(非課税)するための3要件

原則として、以下の3つの要件を満たす必要があります。これらを逸脱すると「給与」とみなされ、従業員に所得税・住民税が課される(手取りが減る)だけでなく、企業側も源泉徴収漏れのリスクを負います。

  1. 全従業員が対象であること: 役員のみ、特定の高給与者のみを対象とする制度は認められません。機会の平等が必要です。
  2. 金額が社会通念上妥当であること: 常識の範囲を超えて著しく高額な支給は、給与課税の対象となります。
  3. 換金性がないこと: 現金支給(手当)は原則として「給与」扱いとなり課税されます。非課税とするには、現物支給や実費精算、サービス利用という形態をとる必要があります(※通勤手当など一部例外あり)。

注意が必要な具体例:2025年通勤手当改正と食事補助

実務上、特に注意が必要なのが以下の2点です。

1.【最重要】通勤手当の非課税限度額改正(2025年4月遡及適用)

2025年度の税制改正に伴い、マイカー・自転車通勤者の通勤手当非課税限度額が引き上げられる見込みです。特に重要なのは、これが2025年(令和7年)4月1日に遡及して適用される点です。

例えば、片道55km以上の通勤者の非課税枠は、月額31,600円から38,700円へと7,100円も拡大します。この改正に対応し、遡及して差額調整を行わないと、従業員が不利益を被る可能性があります。

これはコスト増ではなく、非課税枠内で手当を増額し、従業員の手取りを増やせるチャンスと捉えるべきです。

2.食事補助の非課税要件

従業員に人気の食事補助を非課税で行うには、「従業員が食事価額の50%以上を負担していること」かつ「企業の負担額が月額3,500円(税抜)以下であること」の両方を満たす必要があります。

この管理が煩雑なため、要件管理を自動化できる電子カード型サービスの導入が進んでいます。

失敗しない法定外福利厚生の選び方と導入形態

「何を入れるか」と同じくらい重要なのが「どう運用するか(導入形態)」です。企業の規模と目的に応じて、最適な形態は異なります。

導入形態の比較:パッケージ vs カフェテリア vs 自社運用

形態 パッケージプラン(定額制) カフェテリアプラン(選択制) 自社運用
仕組み 定額料金で、用意された数万種類のメニューが使い放題 ポイントを付与し、メニューから選択して消費 企業が独自に企画・運営(手当、イベント等)
メリット 低コスト・手間なし。導入スピードが早い 満足度が高い。予算管理が容易で公平性が高い 独自性が出せる。企業文化を醸成しやすい
デメリット カスタマイズ性が低い。不要なメニューも含まれる 設計・運用コストがやや高い。ポイント管理の手間 管理工数が膨大。スケールメリットがない
向いている企業 コストと手間を抑えたい中小企業 多様なニーズに対応したい中堅・大企業 独自文化を重視し、リソースがある企業

中小企業が最初に導入するなら、スケールメリットを享受しやすい「パッケージプラン」が最も費用対効果が高くなります。

自社に合ったサービスの選び方 3ステップ

  1. 目的の明確化: 「採用強化(他社より見栄えを良くしたい)」なのか、「健康増進(休職者を減らしたい)」なのか、「離職防止(エンゲージメント向上)」なのか。目的によって選ぶべきサービスは異なります。
  2. 従業員ニーズの把握: 経営陣の思い込みで「スポーツジム」を入れても、従業員が「家賃補助」を求めていれば利用されません。簡単なアンケートでニーズのギャップを埋めああください。
  3. 運用負荷の確認: 導入後の入退社手続き、利用実績の集計、請求処理は誰が行うのか。人事担当者の工数を圧迫しないよう、管理画面の使いやすさやサポート体制を確認します。

おすすめの福利厚生代行サービス比較

市場には多数の代行サービスがありますが、特徴ごとに分類すると選びやすくなります。ここでは代表的なサービスを紹介します。

総合型パッケージプラン:「福利厚生倶楽部」(リロクラブ)

出典:「福利厚生俱楽部」公式サイト

業界シェアNo.1の実績を誇り、中小企業の導入実績が非常に豊富です。
特徴: 地域格差の少ないサービス網が強みで、地方拠点がある企業でも公平に利用できます。月額数百円から導入でき、「内定者向けサービス」が無料で付帯するなど、採用支援機能も充実しています。
向いている企業: とりあえずスタンダードで安心感のあるサービスを低コストで導入したい企業。

総合型パッケージプラン:「ベネフィット・ステーション」(ベネフィット・ワン)

出典:「ベネフィット・ステーション」公式サイト

会員数No.1を誇り、Netflixなどのエンタメ系やeラーニングコンテンツが充実しています。
特徴: デジタルギフトやポイント決済など、利便性の高い機能が多く、若手社員への訴求力が高いのが特徴です。
向いている企業: 若手社員の満足度を高めたい、デジタル活用や自己啓発支援を強化したい企業。

健康・食事特化型:「チケットレストラン」

出典:「チケットレストラン」公式サイト

特定の課題解決に特化したサービスです。
特徴: 「チケットレストラン」は全国のコンビニやファミレスで使える食事補助で、利用率が99%と非常に高く、全員平等に恩恵を受けられます。
向いている企業: 従業員の健康管理を強化したい、全員が確実に利用できる制度を入れたい企業。

健康・食事特化型:「オフィスおかん」

出典:「オフィスおかん」公式サイト

特定の課題解決に特化したサービスです。

特徴:「オフィスおかん」は置型社食サービスで、手軽に健康的な食事を提供できます。

向いている企業: 従業員の健康管理を強化したい、全員が確実に利用できる制度を入れたい企業。

まとめ:戦略的な法定外福利厚生で組織を強くする

法定外福利厚生は、もはや単なる「従業員サービス」ではありません。それは、採用競争を勝ち抜き、従業員のエンゲージメントを高め、組織の生産性を最大化するための「戦略的投資」です。

2025年は、通勤手当の税制改正や、従業員ニーズの「生活防衛」シフトなど、変化の激しい年となります。

古い制度を放置せず、自社の課題(採用・定着・健康)に合わせて最適なポートフォリオを組み直すことが、強い組織を作る第一歩です。

まずは、自社の規模や予算に合ったサービスがどれなのか、一括比較・診断で「現在の相場」を知ることから始めてみましょう。

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