中小企業にとって福利厚生はハードルが高いと考える人も多いでしょう。しかし助成金をうまく活用するなど、費用を抑えるコツを知れば、導入は難しくありません。従業員のやる気を引き出し、定着率と生産性を高めてくれる福利厚生と導入のコツを解説します。
中小企業におすすめの福利厚生
中小企業において福利厚生の導入コストを抑えるには、まず従業員のニーズを知る必要があります。厚生労働省が発表した、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査を参考に、労働者からの要望が多い福利厚生を紹介します。
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家賃補助・住宅手当
住宅関連の出費は生活費の中でも大きな割合を占めるので、家賃補助・住宅手当は、多くの従業員に喜ばれます。社宅の導入は費用が高くなるため中小企業向きとはいえませんが、持ち家手当、家賃や住宅ローンの補助、在宅勤務手当などが考えられます。
ただし実家から通勤していて、家賃負担のない従業員が不満を抱く可能性があるので、不公平感を減らす工夫が必要です。また現金支給の場合は、原則的に給与所得に含まれ、課税対象になるので注意しましょう。
人間ドックや健康診断の費用補助
企業が実施している定期健康診断に含まれない検査項目については、人間ドックでカバーできます。従業員の病気を早期に発見するのに役立つ上、健康維持は多くの人が関心を持つ分野です。
また乳がん検診や子宮頸がん検診などの各種がん検診、食生活指導、メタボチェックなども需要が高いといえます。
人間ドックは保険適用外で医療費控除も受けられないため、高額になってしまうのが難点です。会社からの補助があれば、費用面で受診を見合わせていた人も受けられるようになるでしょう。
病気と仕事の両立を援助
誰でも病気やケガによって、長きにわたり働けなくなる可能性はあります。いざ病気になった際にも離職しないで済み、元気になったらまた職場に復帰できるよう援助する制度は、従業員の不安を軽減します。
例えば病気休暇制度・病気休職制度があれば、業務と無関係な、労災ではカバーできない病気・ケガでも治療に専念できるでしょう。また仕事ができず収入がない期間の生活保障として、傷病手当金も必要です。
勤務時間や日数を通常より減らし、無理せず業務に慣れるためのリハビリ勤務制度も、従業員の職場復帰を促します。
慶弔休暇・慶弔見舞金・災害見舞金
慶弔休暇・慶弔見舞金・災害見舞金など、急な事情に対応できる福利厚生も、強い人気があります。慶弔休暇は自分や近親者の結婚、出産、身内のお葬式といった、冠婚葬祭向けの休暇です。法律で義務化はされていないため、休む日数や条件は企業に任されています。
慶弔見舞金はお祝い金や香典の支給制度です。火災や地震・風水害などの被災者が対象となる災害見舞金は、特別休暇とセットにするとよいでしょう。従業員を大切にする企業イメージの構築につながり、モチベーションアップの効果をもたらします。
育児・介護と仕事の両立を援助
育児・介護と仕事の両立を援助する福利厚生としては、短時間勤務制度や育休期間の延長が代表的です。短時間勤務制度は一般的に、3歳未満の子どもがいる従業員に対して、所定の労働時間を1日当たり6時間にする短縮勤務を指します。
介護に関する相談窓口、介護サービス費用の補助なども有効です。「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」や「介護離職防止支援コース」など、厚生労働省の助成金制度もあります。導入の際には育児・介護休業法に注意しましょう。
生活に合わせやすい勤務形態
個人の事情に合わせられる柔軟な勤務形態として、時差出勤制度やフレックスタイム制度、自宅やサテライトオフィスなどで働くテレワーク制度が挙げられます。フレックスタイム制度は規定の労働時間数を働けば、始業や終業の時間を自分で決められる制度です。
ライフステージに合わせた働き方が可能になると、育児・介護に従事している人だけでなく、従業員全体にとって働きやすい環境につながります。
特に在宅ワークは従業員のワークライフバランスを実現しやすい方法です。インターネットなどの環境や、体制の整備が必要ですが、確保できる人材の幅が広がるため、人材不足への対策としても効果的でしょう。
食事補助
食事補助は従業員の健康維持だけでなく、コミュニケーションの場として活用しやすい福利厚生です。心身の健康が保たれれば、従業員の集中力向上や職場の生産性アップにつながります。
食事補助サービスは社員食堂・弁当サービス・設置型社食・ランチ補助・オフィスコンビニなど種類が豊富なので、自社の勤務形態に合わせて導入が可能です。休憩室にドリンクサービスがあるだけでも、手軽なリフレッシュの場になります。
財産形成に関するサポート
財形貯蓄制度・確定給付企業年金・持ち株制度など、財産の形成に関するサポートも人気です。財形貯蓄制度のうち、老後向けの勤労者財産形成年金貯蓄(財形年金貯蓄)や住宅用の勤労者財産形成住宅貯蓄(財形住宅貯蓄)には、非課税措置があります。
年金や退職金だけでは老後の生活を支えられないと、不安を抱く人は多く、経済的な安心感は企業に対する従業員のエンゲージメントを高めます。仕事への熱意や積極的な取り組みによって、職場の生産性も上がるでしょう。
心身の健康維持に関する福利厚生
心身の健康維持に関する福利厚生として、リフレッシュ休暇や有給以外の夏季・冬季休暇などの特別休暇、宿泊・レジャー施設・スポーツジムの割引手当が挙げられます。
リフレッシュ特別休暇は、一定の年数を勤続した従業員に対して、長めの休暇を与える制度です。特別休暇は家族と過ごす時間を大切にする人にも喜ばれるでしょう。
適度な休息は心身をリフレッシュし、仕事へのモチベーションアップにつながります。スポーツジム機材の社内設置や、スポーツジムの割引手当は、従業員の運動不足の解消に役立ちます。
通信教育・資格取得の費用援助
業務に必要なスキルアップやキャリアアップにつながる学習を支援する福利厚生として、通信教育・資格取得の費用援助があります。通信教育・セミナーの受講や、資格取得などの費用補助、研修制度などがこのカテゴリーです。
スキルアップによって質の高い人材が増えれば、企業全体の業績向上が見込めます。また社内におけるキャリアアップの可視化は、モチベーションアップによる離職防止、意欲の高い人材の確保につながります。
中小企業向け福利厚生の選び方
中小企業でもあまりコストをかけずに導入できる、福利厚生の選び方を確認しましょう。サービスの種類を絞り込むのが難しい場合や、導入・管理に手間をかけられない場合は、代行サービスを利用すると福利厚生の実施が簡単になります。
社内のニーズが高く誰でも利用できるか
中小企業の場合には費用面を考えると、数多くの福利厚生サービスを用意するのは難しいでしょう。コストを抑えながら効果的なサービスを導入するには、特に社内のニーズが高い福利厚生に絞るのがポイントです。
社内のニーズを知るためには、アンケートなどで現場の要望を調査する必要があります。また福利厚生の性質上、正社員だけでなく契約社員やアルバイトなどを含めた、全ての従業員が利用できるサービスにしなければなりません。
助成金を活用して費用を抑えられるか
厚生労働省の「雇用関係助成金」は主に雇用の促進を目的とした制度です。助成金は返済が不要な上、原則的に申請基準を満たせば支給されるのがメリットですが、申請基準を満たすための社内整備や書類作成なども必要になります。
助成金を受給するために通常業務以外のタスクが増えるものの、うまく活用できれば福利厚生サービスの導入費用や、運用費用を抑えられます。自社に必要な福利厚生のうち、助成金の対象になっているサービスを、優先的に検討するとよいでしょう。
導入・管理の手間がかかりすぎないか
福利厚生サービスを導入すれば、従業員の間で行われる申請書の受理や、金銭管理などの事務業務が発生します。自社で福利厚生を導入・管理する前に、福利厚生により発生する人員的・時間的コストが、通常業務を圧迫しないかシミュレーションしてみましょう。
「福利厚生に関する詳しい知識がなくて導入が不安」「管理のための事務作業を減らしたい」という場合は、福利厚生代行サービスが便利です。パッケージプランは定額で複数の福利厚生プランから、各従業員が好きなサービスを利用できるため公平感があり、比較的低コストなのでおすすめです。
福利厚生代行サービスについて詳しく知りたい方は、以下の関連記事をご参照ください。
福利厚生の導入で生産性をアップしよう
福利厚生は従業員の心身の健康を維持し、大きな病気や育児などのライフイベントが起こっても、働き続けられる安心感を提供できるサービスです。従業員を大切にする企業イメージは、職場に対するエンゲージメントの向上だけでなく、より質の高い人材確保にも役立ちます。
大企業のように数多くの福利厚生は無理でも、社員のニーズから種類を絞り込み、助成金を活用するなど、中小企業にも可能な運用方法はあります。できるだけ無理なく導入コストを下げ、福利厚生で自社の生産性を高めましょう。
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