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親が亡くなったら家はどうやって売る?売却のコツや節税ポイントを解説

最終更新日: 2024年08月02日

親が亡くなり、実家を継ぐのではなく売却する選択肢を取ることもあるでしょう。亡くなった親の家を売るときには、通常の不動産売却では行わない相続登記の手続きをするなど、注意すべきポイントがあります。

亡くなった親の家を売却するときの相続の注意点、売却のコツなどを解説します。

監修者

髙杉義征

髙杉義征(セカイエ株式会社元執行役員/宅地建物取引士)

株式会社日京ホールディングスの元取締役、セカイエ株式会社の元執行役員を経て、現在は株式会社ミツモアの事業部長として全体を統括。一貫して不動産業界に携わり、不動産仲介会社、不動産管理会社、不動産テック企業での経験を有する。不動産売却希望者と不動産会社をマッチングするサービスでは、執行役員として事業立ち上げからグロースまでを担当。また、不動産関連のセミナーやライブ配信にも登壇している。

亡くなった親の家を売る流れ

亡くなった親の家を売る流れは以下の通りです。

不動産を売るとき注意が必要なのは、他人名義の不動産を売却することは原則的にできないという点です。親が亡くなり、家を売ろうと考えたときはまず名義を変更する必要があります。

1.家の名義を変更する

亡くなった親の家を売るためにはまず名義変更の手続きをしましょう。この場合の名義変更とは、相続に伴い登記上の名義を変える手続きを指します。これを「相続登記」と言います。

2024(令和6)年4月1日から相続登記が義務化されました。手間は増えるものの、所有者を明確にできるので、相続後に所有権を巡るトラブルが発生しづらくなると考えられています。

不動産を相続したときの相続登記や遺産分割については、法務省ホームページに詳細があるので、目を通しておくと良いでしょう。

相続登記を行う前に以下に挙げつ3つの方法のうちどれかを行って、誰が何を相続するのかといった情報を整理します。

  • 遺産分割協議
  • 法定相続
  • 遺贈によって不動産を取得する

相続と遺贈の違いは、相続では相続人が配偶者や親族などに限定されますが、遺贈は第三者や法人を受取人と指定できる点です。今回は亡くなった親の家を相続したケースについて解説するので、遺贈によって不動産を取得した場合の相続登記については説明を省略します。

相続登記の流れ

相続登記は以下の流れで行います。

紹介している流れの中では、ステップ2「それぞれの不動産の所有者を確定させる」において、遺産分割協議と法定相続で若干の違いがあります。

  1. 戸籍の証明書を取得する
  2. それぞれの不動産の所有者を確定させる
  3. 登記申請書を作成する
  4. 管轄の法務局へ申請する
  5. 法務局から登記完了証・登記識別情報通知書が交付される

不動産を相続した場合、そのまま均等に分けることは難しいので売却代金を相続人で均等に分けることが多いです。

① 戸籍の証明書を取得する

相続を行うには、はじめに法定相続人が何人いるかを明確にしなければなりません。法定相続人の数を確定させるには、被相続者(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍の証明書が必要です。

被相続人の子であれば、戸籍謄本または全部事項証明書を取得できます。

戸籍謄本等の発行を請求できるのは本籍地の役場窓口です。亡くなった親の本籍地が遠方の場合は郵送での申請を活用しましょう。

② それぞれの不動産の所有者を確定させる

法定相続人の数を確定させたら、遺言状や遺産分割協議をもとに誰がなにを相続するかを決定します

遺言状がない場合は法定相続分に則って遺産を分配することが多いです。法定相続分は被相続人との続柄によって割合が決まります。なお内縁関係の場合は相続人にはなれないので注意が必要です。

法定相続分の例
配偶者と子供2人が相続人の場合
配偶者:2分の1
子供:2人合わせて2分の1(1人当たり全体の4分の1)
被相続人の子供と被相続人の兄弟姉妹が相続人の場合
法定相続分の割合は均等

法定相続分は民法で定められているものの、相続人全員の合意があれば自由な割合で遺産の分配ができます。

③ 登記申請書を作成する

相続する不動産が決定したら、法務局(登記所)に提出する登記申請書を作成します。

登記申請書は登記所や法務局証明サービスセンターの窓口で交付してもらうほか、法務局のホームページで様式をダウンロードすることも可能です。

登記に関する申請はオンラインでも可能です。登記・供託オンラインシステムを活用すれば法務局に足を運ぶ必要もないので手軽に行えます。

登記申請書を作成する時は法務局の相続登記に関するページを確認することをおすすめします。公開されているPDFファイルは手続き内容を詳細に解説しているので、初めて相続登記を行う人でも安心して手続きを進められます。

④ 管轄の法務局へ申請する

登記申請書と添付書類を用意できたら、相続登記の対象となる不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)に提出します。提出方法は窓口への持ち込みと郵送のいずれかです。

相続登記申請で必要な添付書類は以下の通りです。

  • 戸籍の証明書
  • 遺産分割協議書
  • 住所証明情報

添付書類はコピー不可で原本を送付する必要があります。

⑤ 法務局から登記完了証・登記識別情報通知書が交付される

法務局(登記所)に必要書類を提出し、登記が完了すると登記完了証および登記識別情報通知書が交付されます。これを受け取れば相続登記の手続きが完了します。

登記完了証と登記識別情報通知書は窓口か郵送で受領可能です。

窓口で受け取る場合は登記申請書に押印したもの同じ印鑑が必要です。

郵送で受け取る場合は、登記申請書提出時に宛名を記載した返信用封筒および郵便切手を合わせて出す必要があります。

2.査定を受け売却準備をする

相続登記が完了し、家の名義を変更できたら家の売却準備を始めましょう。

まずは簡易査定を受け、売却したい家のおおよその相場を確認します。査定額やその根拠、対応の速さなどを加味して絞り込み、3社ほどに訪問査定を依頼してください。

訪問査定では実際に物件を確認するので、査定額は簡易査定よりも実際の売却額に近くなります。

媒介契約を結ぶ不動産会社を決めたら、売却活動の準備を始めます。アピールポイントや魅力的に見える写真の提供など、不動産会社と二人三脚で売却するという意識を持つと納得できる売買ができるでしょう。

亡くなった親の家の査定を受ける

3.家の売却活動をする

家の売却活動を始めたら、売買契約を早期に結べるように残っている家財の処分や掃除などを行いましょう。内覧の対応を行うときは清潔感のある格好を心がけ、購入希望者に悪い印象を与えないように気をつけてください。

親が亡くなったときは相続のほかにも様々な手続きを行います。売却スケジュールは余裕を持って設定することをおすすめします。引き渡しまで6か月程度と想定しておくとイレギュラーな事態が発生しても落ち着いて対処できるでしょう。

4.売買契約を結び引き渡す

購入希望者が現れ、無事に売買契約の締結まで至ったら引き渡しの準備をしましょう。

契約書に特別に明記されていない限り、家を引き渡すときには家具・家電などをすべて処分しておく必要があります。

また親が亡くなって相続した家に住人がいるのであれば、引き渡し日までに引越しを完了しておかなければなりません。

5.確定申告をする

売買契約を結び、亡くなった親の家を無事に売却できたらひとまず売却活動は終了です。売却の翌年に確定申告を忘れないように気をつけてください。

確定申告とともに税の控除の特例適用のための手続きをするので、たとえ譲渡所得がなくても確定申告をすることをおすすめします。もし確定申告を忘れてしまうと特例の適用を受けられず、損をしてしまうかもしれません。

確定申告をするタイミングは売却した年の翌年の2月16日~3月15日です。

亡くなった親の家をスムーズに売る方法

親が亡くなって受け継いだ家をスムーズに売るためにはいくつかの工夫が必要です。代表的なものを3つご紹介します。

ホームインスペクションを受ける

ホームインスペクションは住宅診断といい、住宅になにかしらの不備がないかを確認するための検査を指します

ホームインスペクションを行うことで、売主は住宅に関する欠陥の有無を把握できます。重大な欠陥であれば修繕してから売り出すことも、買主に告知して売却することもできます。

買主からすると「購入してもすぐ修繕等が必要になるのではないか」などの不安を解消できるので、ホームインスペクションの実施は売主・買主双方にメリットがあるといえます。

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瑕疵担保保険に入る

不動産の取引で注意したいのが瑕疵についての取り扱いです。2020(令和2)年4月に民法が改正され、それまで瑕疵担保責任と呼ばれていたものは「契約不適合責任」に改められました。

民法の改正により、引き渡した不動産に何らかの瑕疵があれば、買主はその瑕疵を解消するよう売主に要求できるようになりました。

そこで既存住宅売買瑕疵保険に加入することをおすすめします。保険に加入すれば売主と買主双方が安心して取引ができます。

既存住宅売買瑕疵保険は住宅診断と保険がセットになっているので、住宅診断を受け基本的な構造に問題がないことを担保しつつ、不具合が発生した場合の修理保証も受けられるという点で大きなアピールポイントになるでしょう。

遺品を早めに整理する

亡くなった親の家を売却するのであれば、売却活動と並行して遺品整理を行いましょう。遺品整理は遺族の悲しみを和らげる作業として有効です。しかし故人への思い入れが強いとなかなか整理が進まず、売却活動に悪影響を及ぼしてしまいます。

もし遺品整理が手につかないのであれば遺品整理業者を利用しましょう。遺族の感情に寄り添って遺品を整理してくれるので、たとえ最終的には捨ててしまうものであっても丁寧に取り扱って欲しいという人にもおすすめです。

ミツモアは遺品整理士資格保有者がいる遺品整理業者が多数登録しています。複数の業者の見積もりを取って、どの業者に依頼するか比較検討をしましょう。

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相続した親の家を売るときの節税ポイント

不動産売買での取引額は高額になることが多いので、納税すべき額も大きくなる傾向があります。節税に利用できるポイントを抑えて、適切な額を納税できるようにしましょう。

取得費用を明確にする

譲渡所得を計算するときには売却した物件の取得費が重要です。

譲渡所得は以下の計算式で求められます。

譲渡所得 = 譲渡価格 – (取得費 + 譲渡費用)

取得費が不明な場合は売却金額の5%相当を取得費として計算します。例を挙げると3000万円で売却できた不動産の取得費は150万円として計算することになります。

取得費が少なすぎると譲渡所得が発生してしまい、譲渡所得税が課税されます。すぐには取得費が分からなくても、権利書の整理等をしていると売買契約書等が出てくることもあります。取得費を示す書類がないかきちんと確認してから手続きをしましょう。

譲渡費用をもれなく計上する

譲渡所得の金額を求めるときには譲渡費用も重要です。譲渡費用とは不動産を売買するにあたってかかった経費を指します。具体的には以下の項目等が含まれます。

  • 不動産業者に支払った仲介手数料
  • 測量費用等の実費
  • 建物を取り壊した際の取り壊し費用

譲渡費用を漏れなく計上するためには、細かな出費もきちんとメモと領収書をとっておきましょう。不動産売買に関する書類とひとまとめにしておけば、書類の紛失等も防げます。

利用できる税金の特別控除や特例がないか確認する

売買契約の締結が現実味を帯びてきたら、適用できそうな税金の控除の特例がないか確認しましょう。
代表的な特例を4つご紹介します。

  • 相続空き家の3,000万円特別控除
  • 相続財産の取得費加算の特例
  • 居住用不動産を売ったときの軽減税率の特例
  • 低未利用土地を売却したときの100万円特別控除

税の特別控除や特例を適用するには確定申告のときに必要書類等をあわせて提出する必要があります。

相続空き家の3,000万円特別控除

相続や遺贈によって取得した、被相続人居住用家屋・敷地等を2016(平成28)年4月1日から2027(令和9)年12月31日までの間に売り、特例適用の要件を満たせば譲渡所得から最高3000万円を控除できます

特例の対象となる家屋や敷地等の条件は以下の通りです。

特例の対象となる家屋

  • 1981(昭和56)年5月31日以前に建築された住居(旧耐震基準の住宅)
  • 区分所有登記がされていない建物
  • 相続開始直前において被相続人以外に居住していた人がいないこと

特例の対象となる敷地等

  • 被相続人居住用家屋が建っていた敷地
  • 離れ等がある場合は主に居住の用途に用いられていた建築物の床面積

相続財産の取得費加算の特例

相続や遺贈によって取得した土地や建物等を一定期間内に譲渡すると、相続税の一定金額を譲渡資産の取得費に加算できます。これを「相続財産の取得費加算の特例」といいます。

特例の適用を受けるための要件は以下の通りです。

  • 相続や遺贈によって財産を取得した者
  • その財産を取得した人に相続税が課税されていること
  • 取得した財産を相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること

取得費に加算する相続税額の求め方は以下の画像をご参照ください。

出典:国税庁

計算式が複雑なため、正確な額を求めたいときは税理士等に相談することをおすすめします。

低未利用土地を売却したときの100万円特別控除

2020(令和2)年7月1日から2025(令和7)年12月31日までの間に、都市計画区域内にある低未利用土地等を500万円以下で売却したときは土地の譲渡所得から100万円を控除できます

低未利用土地等とは、居住や事業、その他の用途に使われていないか、使われていても非常に低廉な利用状態である土地や建物を指します。

特例の適用条件は以下の通りです。

  • 売った土地等が都市計画区域内にある低未利用土地等であること
  • 売った年の1月1日において所有期間が5年を超えていること
  • 売手と買手が親子や内縁関係を含む夫婦、生計を一にする親族など特別な関係でないこと
  • 売った金額が低未利用土地等の上にある建物等の対価を含めて500万円以下であること
  • 売った後にその低未利用土地等の利用がされること
  • 売った土地等について他の課税の特例の適用を受けていないこと

譲渡所得が100万円未満だった場合はその譲渡所得の価格が控除額になります。

コツを知って亡くなった親の家をスムーズに売ろう

亡くなった親の家を売るときには家の名義が誰かが大きな問題になります。相続人の人数を確定し、相続の手続きを行いましょう。

家の売却後は節税に利用できる控除や特例がないかを確認し、利用できるものがあれば確定申告の際に忘れずに申請してください。

亡くなった親の家を高く売るには不動産会社選びが重要です。複数社から査定を受けて、より高く売ってくれる業者を選定しましょう。

ミツモアなら地域密着型営業をしている不動産会社を含めた最大5社からの不動産簡易査定を受けられます。査定額だけでなく担当者の対応やレスポンスの速さなど、総合的に判断して媒介契約を結ぶ不動産会社を決めましょう。

亡くなった親の家の簡易査定を受ける

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