「絶対評価と相対評価は何が違う?」「絶対評価と相対評価はどのように使い分ければいい?」企業の人事評価でよく使われますが、2つの違いがよくわからない方も多いのではないでしょうか。
絶対評価は一定の基準をもとにした評価方法で、相対評価は人との比較に基づいた評価方法です。
本記事では両者の違いやメリットデメリット、効果的に運用する際のポイントを解説します。
両者を理解したうえで、自社の方向性にあった評価方法を取り入れて、公平な人事評価を実現しましょう。
絶対評価と相対評価の違い【学校や会社での活用例も】
絶対評価と相対評価の違いについて、それぞれの「意味」「評価基準」「モチベーション」「評価の偏り」の4つの切り口でまとめると以下の通りです。
絶対評価 | 相対評価 | |
意味 | 一定の基準に基づいて行う評価方法 | 評価対象となる人全員を比べて、全体のどこに位置するかを決める評価方法 |
評価基準 | あらかじめ定められた基準を満たしているか | 周囲との比較による順位付け |
モチベーション | 評価基準が目標の指標となって「モチベーション向上」 |
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評価の偏り | 多数が同一の評価を得る可能性もあるため「偏りやすい」 | 一定の分布割合に振り分けるため「偏りにくい」 |
学校で活用されるケース
学校では成績評価の場面で、絶対評価と相対評価のいずれかを使うのが一般的です。
5段階評価で成績を分ける場合、それぞれの評価方法でどのように異なるのか、例を見てみましょう。
【絶対評価】
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【相対評価】
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多くの学校では絶対評価を使う場面が多いですが、相対評価が使われる場面として「偏差値」が挙げられます。
受験は、限られた枠の中で条件を満たす学生を確保するための試験です。絶対評価だと、同じ点数であればすべての学生を合格にしなければならなくなり、合否の基準がゆるくなってしまいます。
そこで「偏差値」という相対評価を用いることで、上位の学生に合格を与えることができ、適切な人数の学生を確保できるのです。
会社で活用されるケース
会社では人事考課において絶対評価と相対評価が使われます。5段階のランク付けで評価が行われる場合の例を見てみましょう。
【絶対評価】
部署や職種、業務の難易度に応じてノルマを設定し、達成率に応じて評価
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【相対評価】
グループ内で順位付けするか、グループの実績をもとに個人の貢献度で順位付け
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絶対評価の場合、ノルマさえ達成すれば一番よい評価が得られるのでモチベーション向上につながります。
一方、相対評価を採用すれば組織内での順位がわかり、そこから競争意欲が高まって個人の成長を促すこともあります。
いずれを採用するにしても「納得のいく評価」が大切です。2つの評価方法を柔軟に取り入れて、従業員が満足できる評価を行いましょう。
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絶対評価のメリット・デメリット
絶対評価はあらかじめ定められた基準で評価されるので、評価の結果に納得しやすいのがメリットです。
一方、基準さえクリアすれば誰でも高い評価が得られるため評価が偏りやすくなります。
メリットだけでなくデメリットもしっかり理解したうえで、検討を進めてみましょう。
絶対評価のメリット
絶対評価のメリットは以下の3点です。
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評価される側が納得しやすい
評価の基準が明らかになっているため透明性が高く、下された評価に対する納得が得やすくなります。
社員のモチベーションアップにつながる
基準から具体的に何をすれば評価されるのかが分かるので、仕事に対するモチベーションも維持しやすくなるのです。
課題を明らかにしやすい
評価基準によって社員自身も目標を設定しやすくなり、想定していた評価に至らなかった場合には課題を見つけやすいのも特徴です。
絶対評価のデメリット
絶対評価のデメリットは以下の3つです。
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業績が数値化できない職種では基準設定が困難
明確な基準を設定しづらい職種に関しては、評価が難しくなる点が1つのデメリットです。営業職のような成績を数字で出しやすい職種は特に問題ありません。
しかし、管理部門である総務や人事の場合、客観的な指標を設定するのが難しいでしょう。その場合は相対評価の導入を検討するのもよいかもしれません。
評価が偏りやすい
社員の多くが好成績を収めた際は、多数が軒並み高い評価を得ることになります。
さらに、評価者によっては評価が甘い人と厳しい人に分けられます。同一の評価基準が設けられていても、評価者の能力によって大きく左右されるのです。
そうなると評価格差がつきにくく全体としての評価バランスが崩れ、人事評価が不適切なものになってしまう懸念があります。
評価基準の設定に手間と時間がかかる
社員が納得できる基準を設定するには、細かな部分までを考慮する時間と手間がかかります。
評価基準は、評価にある程度のバラつきが出るような適切な設定が必要です。社員の能力を認識したうえで現状を把握し、基準を設定しなければなりません。
各部署・部門でも目標が異なるため、会社が一方的に設定した基準では社員を納得させることは難しいでしょう。
適切な基準を設けるには現場を分析する時間と手間、基準を上手く設定するスキルも求められます。
相対評価のメリット・デメリット
相対評価は周りとの比較によって自身の評価が決定するので、より上を目指そうとする意欲が向上するでしょう。
しかし、周りが皆高い結果を出していると、過去より良い実績を残しても高い評価が得られないこともあります。
このように相対評価にもメリット・デメリットがいくつかあります。運用する際はどちらも把握したうえで、適切に導入していきましょう。
相対評価のメリット
相対評価のメリットには以下の3つが挙げられます。
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競争意欲が高まる
相対評価は、対象となる集団の競争意欲やライバル意識を高めるのに効果的です。
順位によって評価が左右されるので、自然と意欲が生まれて社員のモチベーションにもつながるのです。
特に、全体の能力が拮抗している組織の場合は、お互いが緊張感を持って努力しあう関係を構築できるでしょう。
評価がしやすい
相対評価では絶対評価のように細かな基準を設ける必要がありません。比較的評価がしやすいのも大きなメリットです。
ある程度の基準に従って評価対象を階級に振り分ければいいので、評価者も評価がしやすく評価が偏りにくくなります。
評価が甘い厳しいに関わらず、会社で決められた分布割合で評価を下します。結果が評価者に左右されにくいのも特徴です。
人件費の管理が容易
全員が高評価になるような自体にはならないため、企業としては社員に支払う給与やボーナスを一定の範囲内に収められるのもメリットです。
社員に支払う報酬の予測がつきやすく、人件費管理にも役立ち、評価者の負担も軽減できるでしょう。
相対評価のデメリット
相対評価には以下の3つのデメリットもあります。
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評価対象が不満を持ちやすい
ある程度の基準を満たしても低い評価が下されることもあるので、社員が不平や不満を持ちやすくなります。
特に自己評価と実際の評価にギャップ感じた社員は、モチベーション低下にもつながりかねません。
足の引っ張り合いが起きる
相対評価は周りの社員のレベルが評価基準でもあるため、メンバー同士の足の引っ張り合いが起き、団結力が欠けてしまうこともあります。
競争意欲が高まれば企業全体のパフォーマンス向上につながりますが、そのぶん評価基準が高くなるでしょう。
周囲のレベルが上がっても、自分の評価が上がるわけではないのでモチベーションの低下を招く可能性があります。
評価の正当性が欠ける可能性
順位付けと分布の割合によって評価が決定します。そのため組織の全体的なパフォーマンスによっては個人の評価が適切ではなくなることもあります。
企業全体のパフォーマンスが低かったとしても、基準となる順位付けによって高い評価を得た社員が生じる場合もあるのです。
そのような場合、正当な人事評価が行われたと言い切ることは難しいでしょう。
絶対評価と相対評価の運用事例【3社紹介】
実際に周りの企業が絶対評価・相対評価を運用して、会社に良い結果をもたらした例を参考にして、どちらの評価方法を取り入れるか検討してみましょう。
絶対評価を採用している「サイボウズ」と「リコーリース」、絶対評価を基本としつつ相対評価も取り入れた「サイバーエージェント」の事例を紹介します。
絶対評価を採用「サイボウズ」
従来、サイボウズ株式会社では相対評価を採用していました。しかし、等級と給与が釣り合わないケースが多くなったことから、現在は「絶対評価」に切り替えています。
絶対評価へのシフトと共に、改めて評価の目的を考え直した結果、2つの目的を掲げるようになりました。
「個人の成長のため」と「給与を決めるため」の評価であるとし、この2つに社員が納得すれば等級制度である必要がないと判断したのです。
各社員が自ら目標設定を行い、その進捗について上司からフィードバックをもらうことで成長をサポートしています。
また、給与については社内的価値と社外的価値の2つの軸によって決定されます。
- 社内的価値:信頼、社内的需要、社内での相対感
- 社外的価値:市場価値(会社から出た時に、どれくらいの給料で雇われるか)
このように人事評価を改めたことで、給与や評価に対して社員から納得が得やすくなり、公平性も高められる結果となったのです。
絶対評価を採用「リコーリース」
リコーリースでは2020年4月から、評価制度を相対評価から絶対評価にシフトさせました。
従来の相対評価だと社員全体が難しい目標を達成しても、決められた人数しか高い評価が得られないことを問題だと感じていました。
そこで新たに採用した絶対評価では、各社員が設定した目標難易度を評価者が判断し、難しい目標を達成した社員が高く評価を受けられます。
「目標達成の難しさ」が絶対的な基準のうえで評価されるようになるので、評価の公平性や人材育成にもつながるのです。
しかし、目標の難易度を判断するにも評価者の主観が入りすぎると、絶対評価に切り替えた意味がありません。
そのため、リコーリースでは評価者研修を行うほか、最初の目標設定は人事担当が行うなどの仕組みづくりも行っています。
ミスマッチ制度で相対評価を導入「サイバーエージェント」
株式会社サイバーエージェントの人事評価では基本的に絶対評価を採用しています。また、それに併せて「ミスマッチ制度」を取り入れることで、相対評価も導入しています。
ミスマッチ制度とは、相対評価に基づいて下位5%の社員をミスマッチ人材候補として選出し、役員会で最終的に「ミスマッチ認定」される人材が決まる制度です。
ミスマッチ認定された社員は人事と話し合いを行い、その結果から部署異動を提案されたり、組織と価値観が合わないことがわかれば転職を決めたりもします。
この制度は、社風と合わない社員を追い出すのではなく、あくまでも各社員に適切なフィールドを提案し、個人成長につなげることが目的です。
この結果、自分にあった場所で最高の結果を残すことができ、最終的には組織全体の成長にもつながっているのです。
【絶対評価を採用する場合が多い!】企業で重視される2つの理由
近年、企業の人事においては社員のモチベーションを向上させるためにも、絶対評価を取り入れる流れが増えてきています。
その理由としては「評価の透明性」と「社員のモチベーション向上」が期待できるという2点にあります。
評価の透明性が高い
絶対評価は基準が明快で「どういった根拠で評価が下されたのか」が明らかになるので、制度に対する信頼性が高まります。
企業は社員の仕事へのモチベーションを維持するためにも、人事評価の透明性を担保しなければなりません。
制度に対する不信感が社内に広がると、離職率の上昇といった企業として避けるべき事態に発展する可能性もあります。
基準が曖昧だったり不透明だったりすると、正当に評価されていないと感じる社員が出てくるでしょう。そこで、絶対評価を採用して評価の透明性を高めているのです。
社員のパフォーマンス向上につながる
絶対評価によって業務に対するモチベーションや生産性を上げ、社員個人のパフォーマンス向上が期待できます。
他者の影響が評価に関係しません。評価結果を自分の責任として受け取ることができ、改善点も探しやすくなります。
反省を次に活かしやすいのが絶対評価の特徴です。自分の頑張りが認められたと感じたときにモチベーションが向上し、結果として個人の成果も上げられるでしょう。
目的別で絶対評価と相対評価を使い分けよう【人材育成・給与決定等】
何を目的に評価を行うかによって、絶対評価と相対評価を使い分けることをおすすめします。
- 人材育成 → 絶対評価
- 価値観の浸透 → 絶対評価
- 報酬決定 → 相対評価
- 人員配置 → 相対評価
目的に応じて評価方法を決定することで、それぞれのメリットを最大限に発揮することができます。
人材育成には「絶対評価」
社員の成長を目的とするのであれば、絶対評価がおすすめです。
相対評価に比べて絶対評価では他の人と比較することなく、自身が設定した目標達成に向けて取り組むことができます。
評価基準を満たすために没頭しやすいので、社員自らの成長も期待できます。
価値観の浸透には「絶対評価」
企業の理念や方向性を社員に浸透させるには、絶対評価を採用するとよいでしょう。
企業の文化や価値観に沿った行動を絶対評価の基準として定め、目標として意識させることで自然と浸透するようになります。
報酬決定には「相対評価」
限られた金銭的資源の分配には相対評価が最適です。
絶対評価でも給与を決定することはできますが、多くの人が高評価を得た場合は企業の資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があります。
各評価の分布割合が定められている相対評価の方が、報酬決定には好ましいでしょう。
人員配置には「相対評価」
昇格や異動などの人員配置は、相対評価によって周りと比較して適切なポジションを決めることが大切です。
絶対評価で判断してしまうと他の人より優れた部分があり、自分に適したポジションがあっても認識することができません。
社員にはそれぞれ優れた部分があり、それを見つけるには相対評価によって周囲と比べる必要があるのです。
公平な人事評価のためには【絶対評価・相対評価の運用のポイント】
公正かつ効果的な人事評価を行うためのポイントは以下の3つです。
- 誰もが納得できる評価基準の設定
- 対象に応じた評価法を柔軟に使い分け
- 絶対評価と相対評価の併用
誰もが納得できる評価基準の設定
人事評価はそれぞれの企業が独自に設定した基準で行われるため、できるだけ社員の誰もが納得できる評価基準にする必要があります。
周囲の変化に応じて納得できる内容も異なるので、評価基準を自社の業績やビジネス環境の変化によって適宜見直さなければなりません。
なぜその基準を用いるのか、その基準にした根拠は何かなど、社員にしっかりと説明して理解させることが重要です。
対象に応じた評価法を柔軟に使い分け
評価対象や状況に応じて、絶対評価と相対評価どちらを取り入れるかを決定する柔軟性も求められます。
近年は企業の人事評価だけでなく、学校の成績でも絶対評価が取り入れられる傾向にありますが、相対評価も優れた評価方法です。
相対評価には社員の競争意識を高め、評価の偏りを防ぐメリットがあります。
例えば、評価基準が設定しやすい仕事には絶対評価を採用し、成績を把握しづらい仕事は相対評価にするといった運用も可能でしょう。
両者のいずれかだけを取り入れるのではなく、状況に応じて双方を柔軟に取り入れる姿勢が大切です。
自社のビジネス環境や、部門・部署の特性に適した評価制度の構築が必要になるのです。
絶対評価と相対評価の併用
絶対評価と相対評価のどちらか一方ではなく、どちらも採用して評価を行うことでより効果的になるケースもあります。
以下の3つのケースを紹介していきます。
- 一次評価は「絶対評価」二次評価は「相対評価」
- 業績は「絶対評価」仕事ぶりは「相対評価」
- リーダーは「絶対評価」若手は「相対評価」
一次評価は絶対評価、二次評価は相対評価
複数の評価段階を用いた人事評価を取り入れる企業も多いと思います。そこで、一次評価は絶対評価、二次評価には相対評価を行うケースが多く見られます。
全ての段階で同一の評価方法を採用するのではなく、公平性を高めるために段階で使い分けてみましょう。
業績は絶対評価、仕事ぶりは相対評価
業績や評価には絶対評価、能力や行動を評価するには相対評価が使われることもあります。
人事評価では数字で表される業績だけでなく、勤務態度や仕事ぶりなども評価の対象です。
数値化できる項目については、絶対評価の方が結果が評価者によって左右されません。一方で、働きぶりの評価は評価能力によってバラつきが生じるため相対評価が適しているでしょう。
このように、評価項目によって双方のメリットデメリットのバランスを調整すると、より公正な人事評価が期待できます。
リーダーは絶対評価、若手は相対評価
役職に応じて異なる評価方法を取り入れることも、正しい人事評価に有効です。
成果主義が浸透しつつありますが、それでも成果だけが収入決定の要因ではありません。
成果によって大きく収入に差が出るのはリーダークラスの社員であって、若手の社員に対しては業務内容に応じて報酬が決定する傾向にあります。
そのため管理職社員には絶対評価、若手社員には相対評価を行うことが効果的でしょう。
それぞれの特徴を把握して適切な評価を!
絶対評価は基準が明確で社員の納得を得やすく、相対評価は評価の偏りを防いで組織内の競争意欲を高める特徴があります。
いずれの評価方法にもメリット・デメリットがあります。どちらか一方だけを取り入れるのではなく、ビジネス環境や組織の特性に応じて双方を柔軟に使い分けましょう。
誰もが完全に納得できる体制にすることは難しいですが、最も適切な評価システムを構築するために継続的に検討することが重要です。
試行錯誤を繰り返しながら、自社にとってベストな人事評価制度に近づけていきましょう。
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