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アセスメントとは?ビジネスや看護、福祉など分野ごとに解説

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最終更新日: 2024年09月16日

「○○アセスメント」という言葉を耳にしたことはありませんか?

アセスメントとは、人や物事といった対象を客観的に分析・評価することです。アセスメントはビジネスシーンだけでなく看護や福祉でも使われる単語ですが、業界や分野によって意味が異なります。

本記事では、分野別にアセスメントを行う目的や方法を解説します。

アセスメントとは

アセスメント

アセスメントとは「人物や物事などの対象を客観的に分析・評価すること」です。対人支援の側面から「対象への適切な介入を行うために、集めた情報の意味を分析すること」とも定義されます。

カタカナ語として定着している「アセスメント」の語源は英語の「assessment」。英語では課税や査定、評価額といった税に関する意味を持っています。

アセスメントはビジネスシーンはもちろん、医療や福祉、保育などの現場においても活用されています。しかし「情報を収集して分析を行い、対象の能力や状態を知る」といった大枠は変わりません。

アセスメントとは「対象のことをより深く理解するための評価手法」と考えるとわかりやすいでしょう。

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分野別のアセスメントの概要

次に、分野ごとにアセスメントを行う目的やプロセスをご紹介します。

人材アセスメントとは

人材アセスメントとは、主に人事分野にて行われます。外部機関や第三者へ適性検査やシミュレーションを依頼するケースが多いという特徴があります。

採用時や昇格・昇進の対象となる社員に対し、適性検査や心理テストを行うことで、従業員の持っている適性を見極めます。具体的には、人材の資質や行動特性の観点から数値的に能力を診断します。

能力や適性を客観的に評価することで人材を組織の中で、適材適所に配置できるようになります。また、客観的な評価基準が設けられることで、面接だけで評価するよりも高い精度で適性を見極めることが可能となります。

組織アセスメントとは

組織アセスメントとは、組織の特徴や現状、組織全体の機能やパフォーマンスを評価することを指します。具体的には、企業理念や経営方針に対する共感度や仕事への満足度、従業員のメンタルヘルスを診断します。

組織全体の状態を分析することで、改善活動や組織変革などの方針立てや実施にも活用することが可能です。また、組織に所属する人物を客観的かつ数値的な基準で評価し、どのような能力や適性を持つ人が多いのか診断することができます。

さらに、人材アセスメントと組み合わせることによって効果を最大限に生かすことができます。組織全体の課題と人材一人ひとりの課題を正確に把握することにより、求める人材要件を明確化するだけではなく、より効果的な人材配置を実現することができます。

リスクアセスメントとは

リスクアセスメントとは、職場の潜在的な危険性や有害性を見つけ出して、除去や低減などの対策につなげることを目的に行います。

社員同士で情報共有をすることができるため、リスクに対する意識を会社全体として高めることができます。また、リスクを把握し考慮することで、安全性が確保されるため、従業員がより安心して働くことのできる環境を作り上げることができます。

具体的には、リスクの特定や見積もりを通じて、低減措置を実施・記録します。リスクアセスメントを行うことで、労働災害を事前に防ぐことが可能となるため、災害時のコストを削減することができます。

ITアセスメントとは

ITアセスメントとは、運営する情報システムの運用環境や利用状況を調査・診断することです。調査することで、現状の課題点を可視化することができ、潜在的なリスクを把握することができます。

また、調査結果や診断内容に基づいて、システムの再構築や運用の改善を行う上で活用することもできます。

環境アセスメントとは

環境アセスメントとは、開発事業を実施する際に、環境に与える影響がどのくらいあるのかを予測・評価することを指します。予測・評価の結果に基づき、環境に配慮した開発事業を行うことができます。

主に、道路や発電所、鉄道などの事業にて行われています。専門家の意見を取り入れることで、周辺住民の健康や周囲の環境に対し被害を及ぼす危険性がないかなどの課題点を洗い出すことが重要となります。

そのため、事業者は単独で開発事業を行うのではなく、住民や関係自治体、外部の専門家の意見を取り入れて客観的に評価することが求められています。

ライフサイクルアセスメントとは

ラフサイクルアセスメントとは、製品やサービスにおける生産や消費などのライフサイクル全体、もしくは特定の段階における環境負荷を定量的に評価することです。

大規模な開発事業を対象とする環境アセスメントに対し、ライフサイクルアセスメントでは、個別の消費が対象となります。

昨今の環境問題に対する意識の高まりから注目されており、原料の調達から廃棄・リサイクルまでのプロセスの中における環境負荷を可視化することができます。

看護アセスメントとは

看護アセスメントとは、患者一人ひとりにあった看護計画や処置、サービスを提供するために実施されます。症状の進行を妨ぐために、患者の情報を収集し、情報をもとに課題点や問題点を分析し、計画を実行します。

看護アセスメントの主なプロセスは、SOAPやゴードンの11の健康機能パターン、ヘンダーソンの14の基本的欲求が挙げられます。

これら3つの方法はプロセスは異なるものの、主観的な情報と客観的情報の両方を把握することで、症状を見逃すことなく、偏りのない判断を下すことができるという点において共通しています。

以下は3つの方法に関して特徴をまとめたものです。比較する際にご活用ください。

方法 概要
SOAP 患者の話を聞き、診察や検査を行い、それらの情報を分析・評価したうえで治療方針や看護計画を行う方法。
ゴードンの11の健康機能パターン 健康知覚・健康管理、排泄、自己知覚・自己概念など11項目が用意されている。情報を収集・分析することで患者の状態を網羅的に把握する方法。
ヘンダーソンの14の基本的欲求 正常な呼吸や適切な飲食など14項目が用意されている。人間の基本的な欲求が段階的に整理されており、患者が満たしているかどうかを把握することで心身ともに健康かを分析する方法。

介護・福祉におけるアセスメントとは

介護・福祉におけるアセスメントでは、適切なケアプランを作成するために行います。現場担当者が本人や家族に対し、心身の状態に関することを質問しながら情報を集めます。

対象者本人だけではなく、そばで生活しているご家族に対し話を聞くことで、必要なサービスや生活しやすくなるようなサポート方法を提案することができます。

また、心身の状態だけではなく、生活環境や交友関係に関する質問を行うことで、一人ひとりに適切なケアプランを作成します。

保育におけるアセスメントとは

保育におけるアセスメントでは、現在の子供の成長や発展を評価することで、保育サービスの質を向上させるためのプログラムを提供するために行います。

子供たちの様子を観察するだけではなく、家庭での子供たちの様子に関してご両親にヒアリングすることで、より適切な指導計画や個別計画を立てることができます。

子供たちの持つ課題に対してだけではなく、伸ばすべき能力を判断するうえでも非常に重要だと言えます。そのためには、複数の情報を収集し、分析することで、より効果的なコミュニケーションを取ることが求められるでしょう。

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アセスメントの進め方

アセスメントは次の6つの手順に従って進めていきます。

  1. 対象の情報収集
  2. 現在起こっていることの原因を分析する
  3. 今後起こりうることを推測する
  4. 情報を対象側から解釈する
  5. 仮説が正しいかどうか判断する
  6. 取るべき行動を選択する

アセスメントは情報収集と分析が中心です。対象とする人や物事の情報を集めて「なぜそうなっているのか」といった観点から仮説ベースの分析を進めます。そして介入するべき焦点の精度を高めた後、立てた計画を実行に移していきます。

今回は「公園のベンチで小学生の男の子がうつむいている場合」を例にあげて、アセスメントの流れをみていきましょう。

1.対象の情報収集

ヒアリングや周辺調査を通じて、対象となる人物や物事の情報を集めていきます。

【集める情報の例】

  • 対象が置かれている現在の状況
  • 対象が影響を受けている環境 (身の回りの人物や集団、組織や社会環境など)
  • 対象の周辺で過去に起こったできごと

ここでは「現在」と「過去」に焦点を当てて、対象の周辺情報を的確に集めていきましょう。本人に意見を伺うのはもちろん、周辺人物に状況を聞いてみるのも効果的です。

たとえば、今回の「公園のベンチで小学生の男の子がうつむいている場合」では「どうしてうつむいているの?」「具合の悪いところや怪我はない?」「今はひとり?」などの声掛けを本人に行います。

また、現場周辺に居合わせた人たちに「何か知っていることはありませんか?」と聞くなどして、実際に何が起こっているのかといった客観的な情報を集めていくのも効果的です。多くの情報を集めて現状に対する解像度を上げていきましょう。

2.現在起こっていることの原因を分析する

集めた情報を元にして、現在起こっていることの原因がどこにあるのかを分析します。

【得られた情報の例】

  • 男の子はしんどそうな表情をしながら「大丈夫」と訴えている
  • 外見に怪我や汚れはない
  • 今は1人だが、20分前までは3人の友だちと一緒にいた
  • 「ついさっきまでは友だちと楽しそうに走り回っていた」との周囲からの証言があった
  • 今日は最高気温が35度近くにもなる真夏日である

このとき、相手の置かれた環境や心理状態からも背景の推測を進めていきましょう。そうすることで、仮説の精度が向上し、今後立てていく計画がピンポイントなものになります。

【原因分析の例】

  • 男の子は友だちと解散してまだ家に帰っていない可能性が高い
  • 外見に変化はなく「大丈夫」と言っているが表情がしんどそうなので、どこか具合が悪い可能性がある
  • 気温が高いから熱中症になっているが、本人が我慢しているか、熱中症だと気づいていない可能性があるのではないか
  • もしかすると、友だちと解散前に揉めてしまってショックを受けている可能性もある

また、このとき集めた周辺情報の事実に基づき、どのような原因があるのかを仮説ベースで考えましょう。

3.今後起こりうることを推測する

現在の状況から今後起こりうることを推測していきます。今後起こりうることを推測して、介入するべき行動を考える筋道づくりをしましょう。

たとえば、今回の場合「男の子は熱中症である」と仮定すると、このままでは脱水症状にもなりかねません。また、「友だちと揉めてしまった」と仮定すると、不安をこのまま募らせてしまって泣いてしまったり、友だちと仲直りができなくなったりするケースが考えられます。

集めた「過去」と「現在」の情報を元にして「未来」に起こりうることをイメージしていきましょう。

4.情報を対象側から解釈する

これまでの情報を対象側から解釈します。再び対象者にヒアリングしたり、周囲の情報を集めたりして、意味を解き明かしていきましょう。

たとえば、今回の場合「体が火照ったりしていないか?」「さっきまで遊んでいた友だちとは仲良しなの?」など、分析内容に基づいた問いかけを対象者に行います。

「体が火照っている」など新たに判明した情報があれば、その情報に対する原因も前の手順と同様にして分析してください。「体が火照っているのに、なぜうつむいたままなのか?」など新しい問いを設定し、状況や言動の真実に迫っていきます。

5.仮説が正しいかどうか判断する

情報収集と分析、解釈を踏まえて仮説を正しいものに定めていきます。

たとえば、「体が火照っている」「少し時間が経ったら収まりそうだと思って休んでいる」などの情報が入手できた場合「この男の子は熱中症になっているのではないか?」といった仮説が真実味を帯びたものとなるでしょう。

対象が発する情報や周辺情報、環境とも再び照らし合わせながら、確かな仮説を導き出します。

6.取るべき行動を選択する

これまでの仮説を元に、取るべき行動を計画して選択します。

【取るべき行動の例】

  • 熱中症になっている可能性が高いので、ミネラルウォーターを与える
  • 様子がよくなりそうなのであれば、日陰に移動してしばらく一緒にいてあげる
  • 10分経っても症状が改善しないのであれば、家まで送り届ける

これまでの情報分析を元にして、ベストな手段を実行しましょう。情報収集をできるだけ多くの側面から実施して、さまざまな手段を考えたのちに取るべき行動を選んでいけば、対象にとって最も適切な介入が実現します。

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アセスメントを導入する方法

アセスメントを実際に導入する方法を2つ紹介します。

360度評価の導入

360度評価は、ひとりの従業員に対し、複数の関係者が評価する人事評価の手法のことを指します。

勤務態度を常に把握することが難しいこと、そして、組織のフラット化を実現することを目的としています。そのため、上司や人事担当者はもちろん、同僚や部下、他部署の社員などによって多角的に評価を進めることが特徴的です。

上司から評価を一方的に下される従来の評価方法と異なり、公平で客観的な評価を得られます。また、評価結果を社員育成やマネジメントにも活用することができます。

以下は、360度評価に関する詳しい解説がされている記事です。より詳しく知りたい方は以下の記事も併せてご覧ください。

関連記事:360度評価とは?メリット・デメリットや事例を解説|ミツモア

人事評価システムの導入

先程紹介した360度評価を採用している企業や、導入を検討している企業は、システムを導入することでより簡単に情報の収集・分析、管理を行うことができます。

人事評価システムは、従業員の多角的な評価を行うだけではなく、従業員のスキルや経験、業績をデータベース化することが可能となります。さらに、目標の設定や進捗状況をリアルタイムで確認することができるため、勤務態度や適性を分析しやすくなります。

人事評価システムに関して詳しく知りたい方は以下の記事も併せてご覧ください。

関連記事:人事評価システム比較おすすめ22選|ミツモア

対象を深く理解して適切な介入を

アセスメントまとめ

アセスメントは適切な介入を行うために、人や物事などの対象に対して客観的な評価を行うことです。

ビジネスや医療などさまざまな分野において活用されるアセスメントですが「対象が発信した情報や周辺情報を分析してより深く理解する」といった本質は変わりません。

他者に関わるにあたって、その方向性を確かなものにできるアセスメント。介入の選択肢を増やすためには意識を対象に向けつつ、その人や物事を取り巻く現在の環境や、これまでの状況を探っていく姿勢が求められます。

「現在」と「過去」に目を向けた情報を構造的に分析しつつ、対象の能力や状態を深く理解することができれば、双方にとってよりよい「未来の選択肢」を導き出せるでしょう。

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