近年、テレワークの普及やデジタル化の進展に伴い、クラウドPBXの導入を検討する企業が増えています。従来のPBXやビジネスフォンと比較して、初期費用を抑えられることや、場所を問わず利用できる利便性の高さから注目を集めています。
しかし、適切な準備や検討なしに導入を進めると、様々な問題が発生する可能性があります。
本記事ではクラウドPBX導入における典型的な失敗事例と、防ぐための具体的な対策方法について詳しく解説します。
クラウドPBXの失敗事例8選
クラウドPBXの導入において、数々の失敗事例が報告されています。事例を事前に知っておくことで、同様の問題を回避することができます。以下、具体的な事例とその影響について詳しく見ていきましょう。
①通話品質が低下する
クラウドPBXはインターネット回線を利用して通話を行うため、通信環境によって音質が大きく左右されます。Wi-Fi環境が不安定な場合や回線が混雑している時間帯には、音声が途切れたり、エコーやノイズが混じったりする問題が発生します。
通話中に突然切断されるといったトラブルも起こり得ます。通話品質の問題は、ビジネスに深刻な影響を及ぼす可能性があります。たとえば、重要な商談中に音声が途切れてしまい、商談の機会を逃してしまうこともあるでしょう。
顧客対応において音声が聞き取りづらい状況が続けば、顧客満足度の低下にもつながります。
②電話番号の継続性がない
クラウドPBXでは既存の電話番号をそのまま引き継げないサービスを選択してしまうケースが多く見られます。電話番号が変更になると、その影響は想像以上に広範囲に及びます。まず、すべての取引先や顧客に対して番号変更の周知が必要となります。会社案内や名刺、封筒など、電話番号が印刷されているすべての販促物の修正も必要です。
さらに深刻なのは、番号変更を知らない顧客からの連絡が届かなくなることです。長年使用してきた電話番号は企業の重要な資産であり、その変更は潜在的な営業機会の損失につながる可能性があります。取引先との関係にも影響を与えかねない重大な問題といえるでしょう。
③想定外のコストが発生する
クラウドPBXは月額料金制が一般的ですが、実際の運用では様々な追加コストが発生することがあります。基本料金に加えて、利用する端末数に応じた課金や、同時通話可能回線数の追加料金が必要となることもあります。
通話録音などの業務に必要な機能が有料オプションとなっているケースも多く、追加していくと当初の想定を大きく超える金額となってしまいます。
④必要機能が利用できない
クラウドPBXはサービスによって提供される機能が大きく異なります。十分な機能比較を行わないまま導入してしまうと、業務に必要不可欠な機能が使えないことが判明し、業務効率の大幅な低下を招くことがあります。
たとえば、これまで当たり前のように使っていた保留転送機能や、通話録音機能が利用できないといった事態が起こり得ます。
中には「この程度の機能なら当然搭載されているだろう」と思い込んでしまい、事前確認を怠ってしまうケースも見受けられます。しかし、クラウドPBXの機能は各社各様であり、基本的な機能でも搭載されていないことがあります。
結果として、業務フローの大幅な見直しを迫られたり、別途ソリューションを追加導入したりする必要に迫られることもあります。
⑤セキュリティ事故が起きる
クラウドPBXでは、顧客情報や通話履歴などの重要な情報がクラウド上で管理されます。そのため、適切なセキュリティ対策がなされていないと、情報漏洩のリスクが高まります。特に従業員の私用スマートフォンを業務利用する場合、マルウェア感染や端末紛失による情報流出などの危険性が増大します。
実際の事例として、ある企業では従業員のスマートフォンがマルウェアに感染し、社内システムにも被害が及んだケースがありました。結果として顧客情報が流出し、多額の損害賠償と信用失墜という深刻な事態を招いています。
退職した元従業員のアカウントが適切に無効化されておらず、システムへの不正アクセスを許してしまうといった事例も報告されています。
⑥リース契約が残っている
既存のビジネスフォンやPBXのリース契約期間が残っているにもかかわらず、クラウドPBXへの移行を急いでしまうケースが見られます。この場合、違約金や残リース料の一括支払いが必要となり、予想外の出費を強いられることになります。
ある企業では、リース契約の確認を怠ったまま移行を進めてしまい、数百万円規模の違約金が発生してしまった事例があります。結果として、新旧システムの二重コストに加えて違約金までも負担することとなり、経営を圧迫する事態となりました。
⑦サポート体制が不十分
導入後のトラブル発生時に、ベンダーのサポート対応が不十分で問題解決に時間がかかるケースが多く見られます。特に専門的な知識を持つスタッフが不在だったり、休日や夜間の対応ができなかったりすると、業務に大きな支障をきたす可能性があります。
実際の事例では、クラウドPBXのシステム不具合が発生した際にサポートセンターに連絡したものの、オペレーターの対応が不十分で問題解決までに数日を要し、その間の業務に多大な支障が出たケースがありました。マニュアルが不十分で、トラブル時の一次対応さえもままならないといった状況も報告されています。
⑧従業員が使いこなせない
操作が複雑すぎたり、マニュアルが不十分だったりすると、従業員がシステムを使いこなせず、かえって業務効率が低下してしまうことがあります。特に、ITリテラシーの個人差が大きい組織では、問題が顕著になりやすい傾向にあります。
中には高度な機能を備えたクラウドPBXを導入したものの、従業員が基本的な操作しか使いこなせず、投資に見合った効果が得られないケースも少なくありません。操作の複雑さにストレスを感じる従業員が増え、モチベーションの低下につながってしまうという事例も報告されています。
クラウドPBXの失敗を回避するための対策方法
クラウドPBXのこのような失敗を防ぐために、以下では具体的な対策方法について詳しく解説していきます。
事前検証を行う
クラウドPBXの導入を検討する際は、実際の利用環境での事前検証が極めて重要です。多くのベンダーは無料トライアル期間を設けており、この期間中に通話品質や操作性を十分に確認することができます。
実際の検証では、ピーク時の通話品質や、社内の様々な場所での電波状況、複数人での同時通話時の安定性などを確認する必要があります。実際に利用する従業員に操作してもらい、使い勝手の評価を得ることも重要です。
ある企業では、2週間の試験期間を設け、各部署から選抜したメンバーによる詳細な検証を行うことで、導入後のトラブルを最小限に抑えることに成功しています。
契約内容を精査する
クラウドPBXの導入を決定する前に、契約内容を細部まで精査することが重要です。特に注意すべきは、既存の電話番号の継続利用の可否、月額料金の詳細な内訳、契約期間と解約条件などです。
見落としがちなのが、基本料金以外にかかる付随的なコストです。端末の購入やレンタル費用、オプション機能の利用料、保守料金など、実際の運用に必要となる費用をすべて洗い出し、総コストを正確に把握する必要があります。将来の拡張性も考慮に入れ、利用人数が増えた場合のコスト変動についても確認しておくことが望ましいでしょう。
機能要件を明確にする
クラウドPBX導入の検討段階で、業務に必要な機能を漏れなく洗い出すことが重要です。現在の業務フローを詳細に分析し、どのような機能が必須となるのかを明確にしていきます。特に注意すべきは、当たり前のように使用している機能も含めて、すべての必要機能を書き出すことです。
たとえば、通話の保留や転送といった基本機能から、通話録音、FAX連携、顧客管理システムとの連携など、業務に関わるすべての機能について、その必要性と優先度を整理していきます。
部門ごとに異なるニーズがないかも確認し、組織全体として必要な機能を把握することが重要です。
セキュリティを強化する
情報セキュリティの観点から、クラウドPBX導入時には様々な対策を講じる必要があります。まず、通信の暗号化や、アクセス権限の適切な設定など、システム面でのセキュリティ対策を確実に実施します。
従業員が私用端末を業務利用する場合は、セキュリティポリシーを明確に定め、必要なセキュリティソフトの導入や、定期的なパスワード変更などのルールを策定します。
情報漏洩防止の観点から、退職者のアカウント管理や、リモートワイプ機能の設定なども重要です。セキュリティ対策は一度実施すれば終わりではなく、定期的な見直しと更新が必要となります。従業員に対する定期的なセキュリティ教育も欠かせません。
ベンダーのサポート体制をチェックする
サポート体制の充実度は、クラウドPBX導入後の運用を左右する重要な要素です。単にサポート窓口の有無だけでなく、対応時間帯や、専門スタッフの常駐状況、過去の対応実績なども確認する必要があります。特に重要なのは、緊急時の対応体制です。
システムトラブルは、往々にして業務のピーク時や休日に発生します。そのため、24時間365日の対応が可能か、オペレーターの技術レベルは十分か、現場での技術サポートは可能かといった点を、事前に詳しく確認しておくことが重要です。
導入実績や業界での評価なども、サポート品質を判断する重要な指標となります。
段階的に移行する
システムの移行は、一度に全面移行するのではなく、段階的に進めることが望ましいです。まずは一部の部署や機能から試験的にクラウドPBXの導入を始め、問題点の洗い出しと対策を行いながら、徐々に展開範囲を広げていく方法が効果的です。
特に、既存システムからの移行では、業務への影響を最小限に抑えることが重要です。部門ごとの業務特性や繁忙期を考慮しながら、移行のタイミングを慎重に選定する必要があります。移行期間中は新旧システムの並行運用が必要となる場合もあり、その際の運用ルールや費用についても事前に検討しておく必要があります。
従業員に教育する
新しいシステムの導入成功には、従業員への適切な教育が不可欠です。導入前の説明会や研修を通じて、クラウドPBXの基本的な操作方法から応用的な活用法まで、段階的に習得できるようにすることが重要です。特に、従業員のITリテラシーには個人差があることを考慮し、レベルに応じた教育プログラムを用意することが望ましいでしょう。
マニュアルの整備も重要です。基本的な操作手順だけでなく、よくあるトラブルとその対処方法、問い合わせ先など、実務で必要となる情報を網羅した資料を準備します。資料は、導入後の運用経験を踏まえて適宜更新していくことも大切です。
まとめ
クラウドPBXの導入は、適切な準備と計画があれば、業務効率の向上や通信コストの削減など、大きなメリットをもたらすことができます。しかし、安易な導入は様々なトラブルを招く可能性があります。
成功のポイントは、事前の十分な検証と段階的な導入、そして従業員への適切な教育です。セキュリティ対策や、信頼できるベンダーの選定も重要な要素となります。点を十分に考慮し、慎重に導入を進めることで、クラウドPBXの持つメリットを最大限に活かすことができるでしょう。
導入を検討する際は、本記事で紹介した失敗事例と対策を参考に、自社の状況に合わせた適切な導入計画を立てることをお勧めします。必要に応じて専門家のアドバイスを受けることも、導入成功への近道となるでしょう。
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