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在籍出向とはどんな働き方?内容やメリットを詳しく紹介!

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最終更新日: 2024年03月07日

社会情勢の変化に伴い、事業の縮小や従業員の解雇を余儀なくされた会社は、少なくないでしょう。従業員を守るために雇用の確保だけはしたい、というところもあるかもしれません。そんな会社と従業員を守る働き方として注目されているのが、在籍出向です。

在籍出向とはどんな働き方?

疑問に思っているビジネスマンたち在籍出向という働き方は、近年増加傾向にあります。しかし「初めて聞いた」という人もいるかもしれません。どんな働き方を指すのか、詳しい内容や特徴を知っておきましょう。

元の会社に籍を置いたまま他の会社へ出向すること

在籍出向とは、自社に籍を置いたまま従業員を他の会社へ出向させる制度です。そのため従業員は出向元である自社と、出向先の両方で雇用されることになります。

在籍出向の主な目的は「雇用の維持」と「人材確保」です。出向元は在籍出向によって、雇用の継続が困難になった従業員を解雇せずに済み、人手不足で困っている出向先は人材を確保できます。出向期間が終了すれば、元の会社(出向元)に戻れるので、従業員も安心して働けるでしょう。

在籍出向は出向元と出向先、従業員のいずれにも利益があることから、厚生労働省もさまざまな支援策を打ち立てて、推進している働き方です。

社会情勢の影響で増加傾向にある

社会情勢によって仕事が激減した、業績が大きく低下したという会社は少なくないでしょう。人件費削減のために、従業員の解雇を検討せざるを得ない状況かもしれません。

しかし一旦解雇してしまうと、景気が回復したときに今度は人手不足になる恐れがあります。新たに雇い入れて人材育成するとしても、コストと時間が必要です。在籍出向はこうした問題を回避する、有効策とされています。

出向先で経験を積み、新しい技術を得るなど、従業員のモチベーションアップや能力向上も期待できるとして、大企業に限らず中小企業でも、在籍出向を活用するところが増えてきているのです。

転籍出向や労働者派遣との違い

在籍出向は転籍出向や労働者派遣と混同されがちですが、立場は全く異なります。

在籍出向と転籍出向の違いは、出向元の籍の有無です。転籍出向は出向によって雇用契約が終了するため、転職と同じ扱いになります。出向期間後も出向元には戻りません。雇用維持が目的の在籍出向に対し、転籍出向は雇用調整や人件費削減のために行われます。

労働者派遣は厳密には「出向」といえません。労働者と雇用関係にあるのは派遣会社であり、労働者と派遣先(出向先)が直接的に雇用契約を結ぶ訳ではないからです。労働者は派遣期間が終了すれば、派遣先から希望がない限り、残ることはできません。

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出向元と出向先のメリットとは

win-winを表すイメージイラスト在籍出向は出向元と出向先だけでなく、従業員にも有益な働き方とされています。どのようなメリットがあるのか、それぞれの立場から見ていきましょう。

出向元は雇用を維持して人件費を抑制できる

在籍出向で出向元が受けられるメリットとして、業員の雇用を維持したまま、人件費を一時的に削減できることが挙げられます。

一度従業員を解雇してしまうと、将来人材不足になったときに改めて確保したり、一から教育したりする手間やコストが必要です。能力的に解雇した人と同じレベルに到達するまで、時間もかかるでしょう。

せっかく景気が回復して仕事が増えても、こなせる従業員がいなくては、業績アップが難しくなります。長い目で見れば、大きな損失になりかねないのです。その点在籍出向なら、出向期間が終了すれば従業員が戻ってくることが決まっているので、自社の人的リソースをなくさずに済みます。

出向先は即戦力になる人材を確保できる

在籍出向の対象になる従業員は、出向元にとって「解雇したくない」優秀な人材であることがほとんどです。そのため出向先でも即戦力として活躍が期待できます

採用や育成にかかるコストが抑えられるのも、出向先のメリットです。自社で育成しなくても、一定レベルの能力や技術を持った従業員を出してもらえるからです。会社同士が出向契約を結んでいることから、従業員が出向先で退職する心配も少なく済みます。

また他社から出向者が来ることで、従業員が刺激を受けたり、モチベーションが高まったりして、自社の活性化につながる可能性もあるでしょう。

従業員にもメリットがある

同じ会社に勤めているとスキルを磨ける、安定した人間関係を構築できるというメリットがありますが、マンネリ化する恐れもあります。

在籍出向は新たな環境に身を置き、これまでとは違った視点を得られたり、交流を広げられたりできるチャンスといえるでしょう。

在籍出向にはいずれ自社に戻れるという確約があります。「戻ったら籍がないかも」と心配することもありません。復帰したときに経験を活かせるよう、積極的に仕事や技術の習得に取り組む、モチベーションにもつながるでしょう。在籍出向によって従業員としてだけでなく、人間的な成長も期待できます。

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在籍出向で助成金が受けられる可能性も

国から助成金をもらう時のイメージ写真一定の条件の下に在籍出向を行うと出向元・出向先の両方に、国から産業雇用安定助成金が支給されます。助成金の内容と受け取るための条件を知っておきましょう。

出向元・出向先双方が受けられる「産業雇用安定助成金」

産業雇用安定助成金は従業員の雇用維持を目的とした助成金です。在籍出向を行うと、出向元・出向先の事業主に対して助成されます。前提として出向者は出向期間終了後、元の会社(出向元)に戻らなくてはなりません。

助成金の対象となるのは、出向する従業員の賃金や、教育訓練・労務管理などに関する経費の「出向運営経費」の一部と、就業規則や出向契約書、出向者の受け入れに必要な機器や備品の整備などにかかった「出向初期経費」です。

出向運営経費は中小企業で経費の9/10、それ以外では3/4が出向元・出向先の合計で一日あたり12,000円を上限として助成されます。出向初期経費の助成額は、出向者一人につき出向元・出向先それぞれ100,000円です。

助成金を受ける条件とは

産業雇用安定助成金を受ける条件は、生産指標(売上高または生産高など事業活動を示す指標)が一定以上減少していることです。具体的には出向元の最近1カ月の生産指標が、前年または2・3年前の、いずれかの同月比で5%の減少とされています。また在籍出向の目的は、雇用調整でなくてはなりません。

出向先は出向開始日の前日から起算して6カ月前から、支給対象期の末日の間に、従業員を解雇していないことと、雇用量の一定以上の減少(最近3カ月の平均が前年同月と比べ、大企業で5%を超えて6人以上、中小企業で10%を超えて4人以上)がないことが条件になります。

また出向元と出向先の独立性も条件の一つです。親会社と子会社の関係だったり、代表取締役が同一人物だったりする場合は、助成金の対象になりません。

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在籍出向の条件

雇用契約書の書面の写真在籍出向はすぐにはできません。従業員の雇用を守るためといっても、出向元・出向先・従業員の三者間で、準備や手続きをしなくてはならないからです。在籍出向にはどのようなことが必要なのか、詳しく解説します。

四つの要件のいずれかに該当すること

在籍出向は職業安定法第44条で禁じられている、労働者供給事業(自社の管理下にある労働者を、他社の指揮命令の下に使用させて利益を得るもの)に該当します。

労働組合法に基づき、労働組合などが厚生労働大臣の許可を受けて無料で行う場合を除いては、本来違法になる働き方です。そのため適正と認められるには、以下の4要件のいずれかを目的としなければなりません

・労働者を離職させるのではなく、関係会社において雇用機会を確保する
・経営指導、技術指導の実施
・職業能力開発の一環として行う
・グループ会社内の人事交流の一環として行う

参考:在籍型出向「基本がわかる」ハンドブック(第2版)

従業員の同意も不可欠

実際に出向する従業員の同意も得なくてはなりません。就業規則に出向に関する記載があれば、包括的同意をしたとして、会社は無条件で命ずることができますが、従業員の不満につながる恐れがあるためです。

手続きや準備をして送り出しても、従業員が出向先で退職したり、休職したりしてしまっては、自社にとってもダメージになります。納得して出向してもらえるよう、出向が必要な理由や、なぜ選ばれたかなどを従業員に丁寧に説明しましょう。在籍出向は本来出向元と出向先、従業員の三者すべてに利益が見込める制度だからです。

ただしどうしても従業員が応じないときは、服務違反として懲戒処分も検討しなくてはならないでしょう。そのようなことにならないよう、出向させる従業員は慎重に選ぶ必要があります。

出向元と出向先で労働条件を取り決める必要がある

就業規則や労働条件は会社によって異なるため、どちらのものを出向する従業員に適用するかという問題があります。在籍出向を行う際に、出向元と出向先の間で取り決めなくてはなりません。

しかし出向する従業員の労働条件、給与の支払い方法や休暇、人事評価はどうするかなど、主な内容だけでも多岐にわたります。

籍はそのままとはいえ、従業員にとっては他の会社へ出向することは、大きな環境の変化であり、プレッシャーにもなるはずです。出向元と出向先でよく話し合って詳細を取り決め、従業員が納得して出向できる基盤を、整えておく必要があります。

出向手続きに必要な書類

在籍出向には事前の準備や多くの手続きが必要です。取り決めの内容も記録しておかなければなりません。出向元・出向先・従業員間で取り交わす書類と、その内容について解説します。

出向契約書

出向元と出向先の会社同士が、在籍出向にあたって取り交わす契約書です。出向する従業員の情報や出向期間、出向先でどのような仕事をするのかなどに加えて、以下のような内容を記載します。

就業時間と休憩時間
・時間外労働
・休日や各種休暇
・就業規則や服務規程など
・給与や賞与の支払い方法
・社会保険料や交通費の負担(出向元と出向先のどちらが負担するか)
・守秘義務

など

実は法令では必ずしも出向契約書は必要ありません。出向元・出向先間での口頭のやり取りだけでも、出向は可能とされています。しかし後にトラブルになるのを防いだり、従業員を守ったりするためにも、出向契約書は不可欠なものです。

出向通知兼同意書

出向元が自社の従業員に、出向先での労働条件や職務内容を通知し同意を得るための書類です。出向先の情報に加えて、出向契約書の内容も記載されています。

ただし従業員に対し、出向を一方的に命じることが目的ではありません。出向通知兼同意書は出向元が従業員に適切に出向を伝えたこと、双方が出向先での労働条件や、在籍出向に同意したことを証明するものです。

本来就業規則に出向に関する規定が明記されていれば、従業員個別の同意はなくてもよいとされています。しかし円滑に在籍出向を行うには、やはり従業員が出向について理解し、納得していることが必要でしょう。

覚書

覚書は労働条件や出向期間などの、出向契約書で取り決めた内容を補足するのが目的です。より詳しく記したものと考えると分かりやすいでしょう。

給与を例に挙げると、出向元と出向先のどちらが従業員に支払いを行うかだけでなく、締め日と支給日、支払方法、支払いにかかる費用の負担など、給与に関するさまざまな取り決めが含まれます。

また覚書には出向元と出向先の担当者名も記載します。在籍出向に関する責任者を明確にするためです。出向元と出向先両方の同意を証明する意味もあるので、署名も必要になります。窓口担当者名も合わせて、記載しておくとよいでしょう。

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在籍出向の注意点

チェックリストにチェックをつける男性のイラスト在籍出向を実際に行うには注意が必要です。これから導入しようとしている場合、特に知っておきたいポイントを紹介します。

給与や社会保険はどうなる?

出向する従業員に対する給与の支給方法には、出向元が支払う「間接支給」と、出向先からの「直接支給」があります。このうち一般的なのは「間接支給」ですが、負担するのは出向元ではありません。

出向先から契約に基づいて、給与に相当する額の出向負担金が支払われるので、出向元は給与にかかる費用の削減が可能です。間接支給の場合残業代や賞与、退職金なども、出向元の規定に基づいて計算されます。

健康保険や介護保険、雇用保険などの被保険者資格は、出向元で継続します。しかし各種保険料の会社負担分を、出向元と出向先のどちらが負担するかは、両者で協議しなくてはなりません。

労働条件や就業規則はどちらに従う?

出向する従業員は、出向元と出向先の両方と雇用関係にあります。そのため労働条件や就業規則に関してはどちらを適用しても構わないことになりますが、まず出向元と出向先が取り交わした、出向契約書の労働条件に従わなくてはなりません

ただし在籍出向を従業員に命じる条件として、「出向先での賃金・労働条件、出向の期間、復帰の仕方などが、就業規則や労働協約等によって、労働者の利益に配慮して整備されている」ことがあります。

出向が従業員にとって不利益にならないよう、出向元と出向先の両者がよく話し合った上で、整備しておく必要があるでしょう。

参考:在籍型出向「基本がわかる」ハンドブック(第2版)

在籍出向で自社と従業員を守ろう

ガッツポーズをするビジネスマン在籍出向の目的は、従業員の雇用維持と人件費などのコストを抑えることです。従業員にとっても、安定した雇用を確約してもらえるというメリットがあります。

自社にとって戦力になる人材を「仕事が減ったから」と解雇してしまうと、景気が回復したときに、別の意味でダメージになりかねません。

在籍出向は自社と従業員を守る働き方として、国も推進しています。支援策や助成金を活用しながら、雇用と事業を継続していきましょう。

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