労働者が十分に休めるよう法律で定められている有給休暇は、基本的に会社による買い取りはできません。しかし例外的に買い取りが認められているケースもあります。買い取りできる3パターンと買い取り時の金額の計算方法を解説します。
有給休暇の買い取りは可能?
企業が従業員の有給休暇を買い取るのは基本的には禁止です。収入の心配をすることなく必要な休みを取得できるよう定められた制度のため、買い取ってしまっては従業員にとって不利になる可能性があります。
原則的に買い取りは不可
労働基準法第39条では6カ月継続して勤務し、その間に勤務日の8割以上出勤している労働者に対し、10日の有給休暇の付与を定めています。有給休暇が定められた目的は、労働者に十分な休みを与えるためです。
体を休めるために休日を取りたいと思っても、収入が減ることを考えると休めないという労働者は少なくありません。そこで収入を心配せずに必要な休日を取れるように制度ができました。
そのため買い取りは、原則として認められていません。買い取りにより有給休暇がなくなると、労働者が必要な休日を取得する際に欠勤扱いとなり収入が減ってしまうからです。
買い取りできる三つのパターン
原則として有給休暇の買い取りはできません。しかし労働者に不利にならない状況であれば、例外的に買い取りが認められています。具体的にどのようなケースで、買い取りが可能なのでしょうか?
労働基準法の規定以上の有給を与えている
6カ月継続して勤務すると、10日間の有給休暇が労働者に付与されます。これは法律で保障されているため、どの企業でも同じ日数です。
ただし福利厚生の充実している企業では、法律で定められている以上の有給休暇を付与しているケースもあるでしょう。その場合法定の有給休暇を超える日数分は、企業が買い取っても構いません。
例えば法律で定められている10日間に加え、企業が独自に3日間の有給休暇を認めている場合、その3日分は買い取りが可能です。
取得期限を過ぎた有給
有給休暇は付与されてから2年間で時効を迎え、消滅します。消滅した有給休暇は取得できず、労働者は利用できません。また間もなく時効を迎える場合も、期限までに取得できない可能性が高いでしょう。
このように取得期限を過ぎたか間もなく過ぎる予定の有給休暇も、企業が買い取れます。買い取りが認められているのは、既に休日の取得には使えない、もしくはもうすぐ使えなくなる有給休暇であり、買い取ったとしても労働者に不利益にならないためです。
退職時に未消化の有給
労働者が企業を退職するときに、有給休暇が残っているケースもあるでしょう。この残った有給休暇も企業は買い取りできます。
労働者が退職した後では企業は労働者に有給休暇を与えられません。そのため買い取ったとしても労働者を休ませるという有給休暇の目的に反しないため、買い取りが認められているケースです。
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有給休暇を買い取る際の計算方法
企業が労働者から有給休暇を買い取る場合には、いくらで買い取るか計算しなければいけません。計算の仕方は3種類あるため、それぞれの方法を確認します。
3種類ある計算方法
有給休暇を買い取る際の計算方法には3種類あります。「平均賃金」で計算する場合は、過去3カ月の賃金を勤務日数で割ると有給休暇1日あたりの金額です。
例えば月300,000円の賃金を受け取り、3カ月の勤務日が60日なら「300,000円×3カ月÷60日=15,000円」と計算できます。有給休暇5日分を買い取るなら75,000円です。
「通常賃金」で計算する場合であれば、時給制なら所定労働時間をかけて計算します。時給1,200円で所定労働時間が7時間なら8,400円です。月給制なら月給を1カ月の勤務日数で割って求めます。日給制なら日給額がそのまま買取金額です。
他に健康保険や厚生年金の保険料額算出に用いられる「標準報酬月額」を日割計算し、買取金額とする方法もあります。
有給休暇を買い取る際の注意点
有給休暇の買い取りを実施するにあたり、いくつか注意点があります。誤った処理をしないよう自社でどのように定めているか確認し、対応しなければいけません。
有給取得日の賃金は通常の賃金と同じ
労働者が有給休暇を取得して休んでも、賃金の支払いは発生します。有給休暇は本来であれば勤務日ですが、労働を免除されているため仕事をしなくても賃金を支給する仕組みです。
加えて賃金は働いている日と同額を支給しなければいけません。仕事をしていないからといって減額し、労働者にとって不利になる条件を設定するのは禁止です。
買い取り分は賞与として計上
企業が有給を買い取ると、労働者には代金が支払われます。このとき支払った金額は、給与ではなく「賞与」として計上する決まりです。
賞与を支給する場合、企業は「賞与支払届」を事業所の所在地を管轄する年金事務所か事務センターへ提出しなければいけません。提出は賞与の支給から5日以内と短いため、迅速に対応する必要があります。
全ての企業が買い取りしているわけではない
買い取りについては法律で定められておらず、企業の義務ではありません。有給休暇の中でも買い取れるものに関しては、企業がそれぞれ独自に定めたルールによって処理します。
そのため自社で有給休暇の買い取りを実施しているか確認するには、就業規則を参考にします。労働者から買い取りを求められた場合、就業規則にのっとった対応が必要です。
有給休暇の買い取りは慎重に検討を
十分な休みを取れるよう定められた有給休暇は、原則として企業による買い取りはできません。ただし「法律で規定している以上の日数を付与している」か「取得期限を過ぎている」または「退職時に未消化」のいずれかであれば企業は買い取れます。
買い取りを実施する際は「平均賃金・通常賃金・標準報酬月額」のいずれかを用いて金額を計算します。また支払う金額は賞与扱いです。
有給休暇の買い取りは企業ごとにルールが定められているため、就業規則を確認し適切に対応しましょう。
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